推理風娯楽小説「ミステリに憧れて」 - 4/5

◇情報のまとめ・推理編

◆情報のまとめ
「これで、一応全部の部屋を見たことにはなりますね。シルバー先輩、何か分かりましたか?」
「ああ……」
 今までに集めた情報のメモと、見取り図を見返す。
(※見取り図)

「ここに、足りていない情報はあると思うか?」
「えーっと……。そういやヴァンルージュ先輩の部屋に行ったとき、窓もドアも開いてましたよね。普通なら閉めてくと思うんですけど……。これ、なんか、手がかりになりますかね? それと、ヴァンルージュ先輩の部屋の窓のフチに泥がついてたから、犯人はそこから出入りした可能性が高いと思います。あ、あと、僕とシルバー先輩の部屋にも鍵かかってませんでした……。ゲームの中とはいえ、不用心ですね、僕ら」
 デュースから聞いた情報を、一応メモに書き足しておいた。

◆情報メモ一覧
・親父殿の部屋:イデア先輩との会話
【情報1・イデア先輩はずっと娯楽室にいた。ずっと鍵をかけて、部屋に閉じこもっていたらしい。プレイログでアリバイが証明できる。】
・親父殿の部屋:デュースとの調査
【情報2・部屋一面、壁中すべて刀傷だらけだ。恐らく、俺の剣を使ってつけられたものだろう。……争いでもあったのだろうか?】
【情報3・廊下から玄関へ向けて、何かを引きずったような血と泥の跡がある。恐らく、ここから親父殿の遺体を桜の木の根元まで運んだのだろう。】
【情報4・本棚の本の中身の順番が整列されておらずバラバラだ、とデュースから指摘があったが……。親父殿が使っていた本棚なのであれば、そういうこともあるだろうな……。】
【情報5・今はここにないが、レオナ先輩が俺の剣は親父殿の部屋で拾ったと言っていた。恐らく、この部屋の中にあの剣はあったのだろうな。】
・遺体発見現場:ジェイドとの会話
【情報6・親父殿は1000万マドルの本を持っていた。食堂で皆にそのことを伝えている。本は少し古い装丁だが、普通のものだ。】
【情報7・ジャミルとレオナ先輩の二人は、古本の価値が分かる目利きだ。】
・遺体発見現場:ジャミルとの会話
【情報8・ジャミルとジェイドは、遺体発見後からずっと遺体の傍にいた。二人が見張っている間、誰も細工はしていないはずだ。】
・遺体発見現場:遺体の情報
【情報9・死因は多数の切り傷による、出血多量。恐らく、刃物によるものだと思われる。が、どれもナイフのように小さな刀で斬ったような傷跡で、大きな刀傷はない、らしい。】
【情報10・死亡推定時刻は、午前1時ごろ……少なくとも、皆が寝静まった夜中の犯行だと思われる。遺体発見は、午前7時だ。】
【情報11・遺体は桜の木の根元の土に埋められていた。どこからか身体を引きずられたらしい跡がある。】
・俺の部屋
【情報12・俺の部屋には剣の鞘だけが転がっていた。どうやら、犯人は剣を抜き身で持って行ったらしい。】
・キッチン、バスルーム、ダイニングなど
【情報13・キッチンの包丁は揃っている。バスルームやダイニングには、特に変わった様子はない。】
・談話室:ケイト先輩とヴィル先輩の話
【情報14・俺とデュースが、親父殿の死亡推定時刻である1時頃に眠っていたのをケイト先輩が目撃。証拠の写真も撮っている。】
【情報15・深夜1時ごろ、2Fでは娯楽室からイデア先輩のゲームプレイの音がしていた。また、雷雨で物音は聞こえなかった。】
【情報16・ヴィル先輩とケイト先輩は、午前1時前まで映画を見ていた。3時間のものだったらしいから、午後10時から見ていることになる。】
・書斎:レオナ先輩の話
【情報17・親父殿の持っていた希少な本に書いてあったのは、蘇りの秘術、のようなことかもしれない……?】
・娯楽室:イデア先輩の話
【情報18・イデア先輩のプレイログは、電波が圏外になったという午後22:30から午前7:00ごろまでのものが残っている。】
【情報19・娯楽室にはカーテンがないようだ。イデア先輩によれば、最初からずっとこうだったらしい。】
・追加情報
【情報20・親父殿の部屋は、ドアも窓も鍵が開いていた。窓のフチには泥がついていたらしい。】
【情報21・俺とデュースの部屋には鍵がかかっていなかった。】

◆情報のまとめ・再考

 調査をひととおり終え、落ち着いて話せる場所へ行こうとダイニングへといったん移動する。まだ昼前というには早い時間だからなのか、俺たちの他には誰もいなかった。
「人がいないのなら、ちょうどいい。まず、犯人候補から外していい人たちのことから考えよう」
「はいっ! 僕、頭使うのはあまり得意じゃないですけど……ここが大詰めですもんね! 頑張りますっ!」
 デュースと共に、メモと見取り図を見比べながら推理していく。
「まず、俺とお前が犯人ではないという前提で話をしていく。俺とお前は、昨日のゲーム内の描写を見る限りでも、ケイト先輩の話を聞いても、談話室で眠っていた……ことになっている。ただ、最初に少し確認しておきたい」
「なんですか?」
「お前は、2日目の朝、俺より先に行動できていたみたいだが、あのとき何をしていたんだ?」
「えーっと、僕は6時半に起きたことになってて……。自由に屋敷内をうろうろできたんです。それで、とりあえず自分の部屋に戻ろうとしたら、ヴァンルージュ先輩の部屋から続く血痕を見つけて、慌ててシルバー先輩を起こしにきた、っていう感じです」
「なるほど。そのとき、部屋の中などは見なかったのか?」
「すいません、見ませんでした……」
「そうか、分かった。これはただの確認だし、お前のことは疑っていないから、そう気にすることはない」
「ありがとうございますっ!」
「それで、まずは俺とお前、それから被害者である親父殿を犯人の候補から外す。これで残りは6人だ」
「一気に3人減りましたね! うう、でもあと6人か……」
「ケイト先輩は、俺たちの写真という確かな証拠を持っているから、この人も外していいだろう。ケイト先輩を外せるのなら、午前1時まで一緒に映画を見ていたというヴィル先輩も外すことができる。これで、残りは4人だ」
「となると、夜1時まで食事の用意をしてたっていうバイパー先輩とリーチ先輩も外せる、んですかね?」
「その二人が口にしたように、彼らが共犯でないのなら、だが……、実際、キッチンに仕込んだ食材も置いてある。一応、候補から外すことはできるだろう」
「そうしたら、あと残ってるのは、シュラウド先輩と、キングスカラー先輩……」
「……イデア先輩はゲームのプレイログも残っているから、これがアリバイとなる。なので、彼も外せる。すると、レオナ先輩にだけ夜のアリバイがないことになるが……」
「じゃあ、簡単ですね! アリバイのないキングスカラー先輩が犯人なんですよ! 鍵をかけてなかったシルバー先輩の部屋から剣を盗んで、ヴァンルージュ先輩と争いになって、シルバー先輩がやったって風に小細工をして、ヴァンルージュ先輩を埋めたんです!」

 デュースの言葉に、息が詰まる。……レオナ先輩が犯人? それで、本当にいいのだろうか? もし、この推理が間違っていたら……罪のない人を、無実の罪で責めてしまうことになってしまうのではないだろうか? まだ、俺は何か、この事件の中に――見落としをしていないだろうか? 調査は、ちゃんとすべてをしつくすことができたのだろうか……?

「……最後の推理をする前に、もう一度……。メモと見取り図を見返してみる。何か、見落としがあるかもしれない、から」
「はい! 何度でも付き合いますっ!」
 傍にデュースがいてくれて、良かったかもしれない。親父殿の言うように、俺は人を疑うことが得意ではないようだから、ひとりでは心が折れてしまっていたかもしれないと思うと……。そんなことを思いながら、もう一度メモをめくっていく。
 デュースも、これでキングスカラー先輩が犯人、は簡単すぎるかなあ、と言いながら、俺と一緒にメモと睨めっこをした。
「……うーん、難しい……。これ本当に監督生が僕でも解けるように考えてくれたのか……? 難しいこと考えてたら、なんだかだんだん、眠くなって、きて……」
「デュース、寝てはいけない。これは眠らずに頭を使う訓練でもある」
 起こそうと手を伸ばした瞬間、デュースはガバリと顔を上げた。
「……先輩。僕、分かったかもしれないです。犯人かどうかは分かんないんですけど……。嘘を吐いてる人がいる、かもしれない」
「嘘?」
「はいっ! 実は……」
 デュースが気付いたらしい事実を、聞かせてもらう。……なるほど。それは俺としても経験のある、納得の行く話だ。だとしたら、犯行が可能なのは……。
「では、もう一度その人に話を聞きに行ってみようか、デュース」
「はいっ!」

 俺はデュースと共に、ダイニングを後にした。

:→次ページ【解決編・結末】

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