※ドルパロ(ギャラリーもしくは小説本棚に設定が置いてあるアイドルパロディの世界線のシルデュです。そちらを読まないと意味が分からないことがあるかもしれません)
※時系列:ドーム後、交際宣言後
※パロディにつき一部呼び名変更あり:リドル寮長→事務所長、トレイ先輩→トレイさん、など)
以上大丈夫な方はスクロール↓
「温泉旅行、か……。そうだな。社員旅行の代わり、というわけじゃないけれどね。計画の調整は手伝うから、たまには二人で行ってきたらどうだい?」
思い思いにハーツラビュル芸能事務所の中でくつろいでいる僕たちに、ローズハート事務所長がそんなことを言った。僕たちは驚く。
「ローズハート事務所長、エースから聞いたんですか? 僕たちが商店街のクジ引きで温泉旅行当てたって」
そうだよとローズハート事務所長はうなずいた。
「キミたちがその旅行をそれぞれ親御さんにプレゼントしようとしていたのも聞いているよ。だけど、ペアの旅行券は、お互いの親御さんに送るにはちょっと気まずいんじゃないかい?」
「えっと……」
「それは、確かに……」
僕たちは言葉をつぐむ。そう、ローズハート事務所長の言葉通り、僕たちは、商店街のクジ引きで当てた温泉旅行チケットを、二人とも自分の親にプレゼントするつもりだった。二人でした買い物の抽選券で当てたチケットだったから。だけど、それがペアチケットだというから、どっちの親に譲るかでちょっと揉めていたんだ。お互い、相手の親に送った方がいいんじゃないか、大切な人の大切な人は大切にしたい、と言い合って、どっちが贈るかで譲り合って。……まさかシルバー先輩の親父さんと僕の母さんの二人きりで行ってきてくれ、なんて言うわけにもいかないし。
それを聞いたエースが、ローズハート事務所長にそのことを話したらしい。で、ローズハート事務所長は、いっそ僕たちで旅行に行ってはどうかと提案してるんだ。
「キミたちが旅を楽しんで、お土産に入浴剤なんかを買っていくだけでも、十分親孝行になると思うよ。それに、どうしても何かを贈りたいのなら、旅券の代わりに近くにある温泉の回数券を贈る、なんて手もあると思うしね」
まあ、無理にとは言わないけど、とローズハート事務所長は言葉を切る。でも、今回のチケットをどうしようかと本当に頭を悩ませていた僕たちにとっては、魅力的な提案だった。
「そう、だな。今回は一緒に行こうか、デュース。親父殿のこともそうだが、お前のことも、たまには改めて労ってやらなくては」
「そんなの、僕だってそうですよ。じゃあ、母さんには何のお土産が欲しいか聞いときます!」
「ああ。俺も、親父殿に確認しておく」
「では、5月の連休から少しあとにずらして予定を入れておくといいよ。ゴールデンウイークの間はキミたちには営業やライブを頑張ってもらうから、そのご褒美だとでも思って頑張るといい」
「いいな~、二人旅行! オレもなんかご褒美欲し~」
「キミは、そうだな……。今後の仕事をどれくらい頑張ったか次第だね。楽しみにしておいで」
「えっ、何か用意してくれんの!? マジ? じゃあちょっと頑張ろっかな~!」
ローズハート事務所長とエースがそれぞれ何か雑談を始める。楽しみですね、とシルバー先輩に笑いかけると、先輩は、ああ、と返事をした。
それから、計画と準備をちょっとずつ進めていって、ゴールデンウイークのイベントライブや営業、サイン会や握手会なんかも全部こなす怒涛の日々が過ぎて、旅行当日。天気は快晴だ。
「いい天気ですね。旅行日和だ」
「ああ。この分なら、旅館のまわりも色々と見て回れそうだな」
旅館のチェックイン時間に合わせて予約を入れたシャトルバスに乗って、僕たちは車窓からの景色を楽しむ。
「もう桜は散っちゃってるみたいですね」
「ああ。だが、葉桜も俺は嫌いではない。俺の親しむべき季節、という感じがするから」
「そっか。先輩、誕生日もうすぐでしたよね。じゃあ、早めの誕生日プレゼントってことにできたのかな?」
「ふっ。確かに、あの抽選はお前が当ててくれたのだったな」
バスの中でガイドブックを読んでどんなところを見てみたいですか、なんて盛り上がっていると、前の席の人がスマホの画面を見せてきた。
あ、どうしよう、うるさかったかな、なんて思ってると、そこにはこう書いてあった。
『ひょっとしてVopal Swordのお二人ですか? プライベートだと思うので、こっそり失礼します、いつも応援してます……!』
スマートフォンの画面に書いてあった言葉が嬉しくなって、隣に座るシルバー先輩に耳打ちしてそれを伝える。
お礼がしたいからと手元に持っていたスケジュール帳を1ページ破って、サインを書きつけた。そうしたらシルバー先輩も、俺も、配慮のできるファンには礼がしたいと言って、同じようにサインを書いてくれた。僕たちはそこにそれぞれ一言ずつメッセージを書く。
『プライベートへの配慮と、応援ありがとう。これが少しでも礼になればいいが シルバー』
『いつも応援ありがとう! 旅行楽しんで!! デュース・スペード』
前の人の肩を叩き、これどうぞとその切れ端を渡すと、小さくきゃーと隣の人と一緒に盛り上がる声が聞こえた。喜んでくれたみたいだな、良かった。早速いいことがありましたね、とシルバー先輩に笑うと、そうだな、親父殿に話せる土産話が既に一つできたみたいだとうなずいてくれた。
旅館に到着していると、お待ちしておりました、と仲居さんたちが旅館前に揃って並んで待っていてくれた。それぞれお客さんの担当があるみたいで、僕たちもその中の一人の仲居さんに案内されることになった。さっき声をかけてくれたファンの子たちに手を振って、僕たちも仲居さんについていく。
仲居さんに通された部屋を見ると、そこには黒い机と座椅子が二つあって、奥には縁側? あの部分、部屋の中でも縁側って言うのかな、それっぽいスペースにも椅子と小さな机があって、襖で仕切られた先に布団を敷いて眠れる部屋がある、いかにも日本風の和室、って感じの部屋だった。
「すごいな、綺麗な部屋だ」
案内されるままに中に入ると、仲居さんが下駄箱やスリッパの場所、部屋の使い方や布団の敷き方なんかのルールと温泉の場所なんかを簡単に説明してくれる。分かりましたとうなずくと、仲居さんはでは夕餉の時間は夜の7時半になりますので、それまでごゆっくりお過ごしくださいと下がって行った。
朝早くに出発したから、まだ午前10時もないな。夜の7時半までは、まだまだ時間がある。さっそく荷物を置いて、どこか近くを探索に行きますか、とシルバー先輩に言うと、そうだな、と先輩は窓からの景色を見下ろしていた。
「なんか見えるんですか?」
「ああ。見てみろ、とても綺麗だ」
「わ……本当だ!」
窓からの景色を見ると、藤の花がたくさん垂れ下がっている下に、透明な川が流れていて、とても綺麗だ。滝の中には、どこからか流れてきた赤い紅葉の葉も見える。
「あれ、この季節に赤いモミジ?」
「本当だ、不思議だな。上流の方で何かしているのかもしれない。見に行ってみるか?」
「そうですね! 行ってみましょう!」
僕たちは部屋を出て、さっそく川沿いを歩いて行くことにした。
お出かけですか、と玄関で声をかけられたので、不思議なモミジがあったので川沿いを歩いて追いかけるんですと言ったら、それでしたら駐車場近くの遊歩道から行くのをお勧めします、と言われたので、その通りにすることにした。
遊歩道を歩くと、川沿いにいろんな露店が出ていた。天然石を売るお店だとか、温泉饅頭や温泉卵、温泉水の出店だとか。いかにも温泉街の露店って感じだ。お兄さんたち見ていかない、と声をかけられ、ちょっとだけ天然石のお店を覗いてみる。
「天然石か。幼い頃は、綺麗な色の石を集めたりもしたな」
「そうなんですか? 僕も最近、石をもらいました」
「ファンからか?」
「そうといえばそうなんですけど……。ちょっと違うかもな。ほら、なんか去年はいろいろ事件に巻き込まれがちだったじゃないですか。その話を聞いたマレウスさんが、お守りとして持っておくといい、って。手紙と一緒にこんな感じの石を贈ってくれたんです。セベクがそれを入れておくといいって巾着をくれたから、今はその巾着に包んで財布に入れてます」
「そうだったのか。今度、俺からも礼を言っておかなくてはな。……ん、セベクとも仲良くなったのか?」
「はい。こないだ先輩がちょうど留守にしてたときに二人が遊びに来てたんで、それで帰すのもなんだし一緒に話してみたら、セベクはけっこう年近いんだなって分かったんで、ダチになりました」
お前は案外知らないところでマレウス様たちと親交を深めているのだな、とシルバー先輩はなんだか感心していた。
僕たちはそのまま、染物だとか織物だとか、小籠包だとか、そんな露店を覗いて回りながら、森の小道のように作られた遊歩道を上流へと歩き続けていった。遊歩道の突き当りには石で出来た階段があって、緑の木々に囲まれたそれを登っていくと、その先にはすごい景色があるのが見えてきた。
「わ! 一面の真っ赤なモミジだ!」
「なるほど……狂い紅葉か。見事なものだな」
目の前に広がるのは、滝つぼを囲むようにして赤い葉を揺らしている、真っ赤な紅葉の群れ。まだ秋でもないのにこんな景色が見られるなんて、とシルバー先輩と一緒に感動する。
「上に、何かお店がありますね」
「本当だ。茶屋、だろうか」
階段を登り切った先にあったのは、簡単な和菓子や軽食とお茶を提供してるっぽいお茶屋さんだ。お店の中は滝沿いに屋根のない縁側が広がっていて、端っこの方はわざと水の流れの中に巻き込まれて、浸かるような造りになっている。端っこに立てられてる赤い番傘に、風情みたいなものを感じるな。
「入ってみませんか?」
「ああ。俺も今、そう言おうと思っていたところだ」
お茶屋さんに入り、縁側の机のひとつに案内される。縁側が水に浸かっている場所の近くだったので、近くで川や滝を観察することができた。水に触れることもできるみたいで、ちゃぷちゃぷと指先でちょっとだけ水遊びをして、手を拭った。
「ちょっとだけ飛んでくる水飛沫が気持ちいいな。何を頼みましょう?」
「そうだな。お前は何が食べてみたい?」
僕は、たくさん歩いて腹が減っていたから、それじゃだんご汁と天むすのセットにしようかな、あと抹茶パフェ、と注文すると、たくさん食べるんだな、とシルバー先輩は笑って、それから、自分もお餅のグラタンとだんご汁、それからのり巻き団子を頼んでいた。
「先輩だってたくさん食べるじゃないですか」
「腹持ちが良さそうなものが良いと思ったからな。だが、お前と同じものを食べてみたいと思ったから、汁物をつけた。あとの団子は……」
「団子は?」
「お前がさっき、パフェとどっちにしようかと迷っていたからな。食べられるだけ食べるといい。残りは食べてやる」
すぐ格好いいことするんだからな、と照れてお品書きの書かれた表で顔を隠すと、照れなくてもいいだろうとそれを取り上げられた。
それからむにむにと顔を揉んで元に戻し、気を取り直して、僕は告げる。
「そうだ。写真撮っておきませんか? 滝を背景にして、シルバー先輩のお父さんと、母さんに送る用」
「ああ、そうだな。この見事な紅葉は親父殿にも見せたい」
そうして僕たちは、二人で肩を寄せあって写真を撮る。料理・景色の撮影OKってマークと注意書きが壁にあるから、注意書きに則ってれば撮影しても問題ないはずだ。
「撮れた! 母さんと……あとは、事務所のグループと、セベクにも写真送っておこうかな」
「ふっ、仲がいいな。良いことだ」
「あはは。本当はマレウスさんにも送りたいんですけど、セベクから『マレウス様は機械が得意でいらっしゃらないから、機械を通してマレウス様に用事があるなら僕に送れ』って言われたんで」
「アイツもそんなに得意ではないはずだが。まあ、実際マレウス様のスマートフォンは修理中であることも少なくない。二人に同じものを送ってしまってもいいんじゃないか?」
「そうなんですか? じゃあマレウスさんにも写真送っておきます!」
「ああ。俺からもマレウス様と親父殿に写真を送っておこう。同じものになるかもしれないが……旅の便りが来たこと自体を、きっと喜んでくれる」
それぞれ自分の親や知り合いに旅行を楽しんでいることを伝える。各々返事が来て、みんな喜んでくれたみたいだと笑い合っていると、やがて料理が運ばれてきた。
「うわ~、味噌のいい匂いがする……! もう待ちきれず食べた……、あ、先に写真撮ってからだ!」
僕は料理の写真を撮る。シルバー先輩も、そういうものなのか、と運ばれてきた料理の写真を撮ってみたみたいだ。
「難しいな。なんだか旨そうに撮れなくて申し訳がない」
「料理の写真は、ちょっとコツいりますもんね。えっと、この辺の設定イジるとおいしそうに撮れますよ」
シルバー先輩スマホを借りて、設定を操作する。これで少し斜めから料理に近づけて撮ってみてください、と言ってスマホを渡すと、ああ、と先輩は写真を撮り直した。
「本当だ。さっきよりもよほど旨そうになった。すごいな」
「へへっ。これくらいなら、僕でもできますから」
それじゃ、冷めないうちに食べちまいましょうと箸を持つと、先輩も、そうだな、と赤いさじを取った。スプーンまで和風だなんて、洒落てるな。
それから僕たちはひとしきり料理に舌鼓を打つ。だんご汁は味噌が豊潤で、暖かくて落ち着く味わいがする。メインの団子は柔らかくてツルっとしていて、のど越しが良く優しい味わいだ。天むすの天ぷらもサクサクしていて、ご飯と味噌っていう定番の組み合わせに食べる手が止まらない。
「めちゃくちゃ旨い……!」
「そうだな。こっちも旨いぞ」
一口食べるか、とシルバー先輩に差し出されたスプーンを、そのまま口に入れると、先輩はほほ笑ましそうに笑った。……あ、餌付けしてる気分になってるな。いや確かに、今の状況は餌付け以外の何物でもないんだが。どうやら先輩は僕にいろいろ食べさせるのが好きらしくて、こうして一口食べるか、とか、食べたいものがあるなら分けてやる、とかそういうことをするのが多い。僕も一応アイドルであるからには、ちょっとは体重制限とか気にしてるんだけど(ちょっと太るとエースが目ざとく見つけてくるし)、普段人のことばっかりな先輩がしたいことをしているのも嬉しいから、何とも言えない。
「本当においしいですね、このお餅のグラタンも」
「ああ。中身が餅だからなのか、だんご汁とも合う」
「味噌とチーズも相性悪くないですしね」
そうして談笑しているうちに、あっさりと食事は食べ終わってしまい、甘味の時間だ。
「これは……暖まった身体に冷たいパフェがおいしい……! 小豆と抹茶の相性も最高だし、フレークもサクサクだ!」
「食レポ練習したのか?」
「はい! 前、バレンタインの料理番組出たときに『食レポ下手』ってテロップ出されたのが悔しかったんで、練習しました!」
「そうか、成果が出ているな」
「帰ったらブログでもファンの人たちに成果を見せてやります!」
「頑張れ」
そう言いながらシルバー先輩はのり巻きの団子を歯で串から抜いて食べていく。はー……。和服着てるわけでもないのに、白地に薄い水色の波紋が入った、透明感のある着流しの着物が見える気がする。何しても絵になる人だなあ、なんて見惚れていたら、ボーッとしてどうした、と尋ねられた。
「な、なんでもないですっ」
「そうか」
危ない、危ない。いつもたまにこうやって先輩の格好良さや綺麗さに見惚れてるなんてバレちまったら恥ずかしいし、それに何より、そんな態度ばっかりして、顔だけを目当てに付き合ってると思われたくない。僕がシルバー先輩を好きになったのは、先輩の持ってる寂しさや弱いところを見て、この人を一人にしていたくないなって思ったのが一番のきっかけなんだから。僕が一番好きなのは内面の方だ! いやそりゃ外見も格好いいし、好きかって言われたらめちゃくちゃ好きだけど……。
なんてスプーンをがじがじと噛んでいたら、行儀が悪いぞとスプーンを取り上げられ、のり巻団子を代わりに持たされた。
「おいひいれす……」
「そうか、良かった」
パリパリした塩味の海苔と、みたらし風の醤油だれのあまじょっぱさが相まってすごくおいしい。ただ、僕は……団子を食べるのは、ちょっと苦手だ。こうなるからな。
「うう、やっぱり口の周りベタベタになっちまった……」
「ほら、こっちを向け」
先輩に口元を拭かれる。えっと……。先輩が僕の世話を焼くのが好きなのは知ってるんだが、さすがに外、それも屋外でとなるとちょっと恥ずかしい。交際を隠してるわけじゃないから、世話焼かれるのは別にいい、いいんだが、なんか……あんまり堂々とそういうことばっかりしてると、僕ら、バカップルみたいじゃないか? とはいえ、先輩の愛情を拒むことなんて僕は到底できやしない。大人しくされるがままになっていた。
「ありがとうございます……」
先輩は僕の頭をぽんぽんと撫で、満足したか、と尋ねた。
「そうですね。腹はいっぱいになりました」
「遊歩道はまだ先がある。一度あそこに見える橋を渡って、腹ごなしに川向こうの道を下っていくのもいいだろう」
それから僕たちは、先輩の言う通りに赤い橋を渡る。川の上に曲線を描くようにしてかかっているその橋を渡りながら、水めっちゃ透明ですね、底に魚がいるの見えますとか、この橋めっちゃ見かけるけど名前なんて言うんだろうとか、そんな雑談をしながら歩いて行った。
川の向かいには、親水用の広場があって、そこでは川の近くにある湧き水を汲んだり、ひしゃくで湧き水をすくって飲んだりできるようだった。
「綺麗だな……」
透明すぎてわずかに青く光る水面を覗いていると、隣に同じように水面をのぞき込むシルバー先輩の顔が映った。近くを遊んでいた子供が投げた飛び石が、僕たちの顔が映る水面に波紋を作って揺らす。それを見たシルバー先輩が、穏やかな笑顔を浮かべた。
「清涼な空気だ。水の音と、木々の匂いがする。こうした場所にいると、落ち着く」
「そうなんですか?」
「ああ。昔から、自然の中にいるのは好きだ」
「なら、来られて良かったですね」
「ああ」
それから僕たちは、湧き水をひしゃくで飲んでみて、遊歩道を下っていくことにした。なんとなくそうしたかったから先輩の手に指を絡めると、先輩はぎゅっと確かに握り返してくれた。
小さな子が「あのお兄ちゃんたち手つないでるー」って指を差してきたときは気まずかったけれど、僕が止める間もなくシルバー先輩が「いいだろう、仲良しなんだ。君もいつか、大切な人とするといい」って自慢すると、その子はうんって楽しそうに笑っていて、お母さんの方も、お幸せに、と見送ってくれた。
そのあとはまた気になっていた露店でお土産品を買い回ったりちょっとしたものを食べ歩いたりして、そうするといつの間にか夕方になっていた。楽しい時間って、あっという間だな。
「宿に戻るにはまだ早いですかね?」
「まだ辺りを見回ってもいいが……」
「じゃ、あとちょっとだけ散策しましょう」
川があったのとは反対の方に温泉宿を越して歩いて行くと、そっちには今度は神社があった。こっちも石造りの階段の上にある形で、滝の音が少し遠くから聞こえるのもあって、なんだか神秘的な空気を感じる。
「せっかくだし、お参りしていきましょうか」
神社の境内に入り、手水場で手や口を清めて、お賽銭を入れて二礼二拍手一礼で参拝をする。以前、神社訪問的な番組があって、そのときにローズハート事務所長から礼儀作法を叩きこまれたので、予習はバッチリだ。……まあ、ちょっとあやふやになったところはシルバー先輩に助けてもらったんだが。
そんな感じで、僕たちは知らない土地の神様にお邪魔してますと祈りを捧げた。僕は、その他に先輩とこれからも、仕事も関係もうまくやっていけますように、とか、母さんが健康で長生きしてくれますように、とかそんなことを祈ったけれど、先輩は何を祈ったんだろうな。ちらりと横目で見ると、それを察したのか、先輩は、そうお前と変わらないことを願っているだろう、と言った。……僕、まだ何も言ってないのに、通じるんだなあ。
あとはお守り売り場を見て、何か買っていこうかなと適当に手に取ったお守りが恋愛成就の願いを込めたお守りだったから、先輩がちょっとむっとしてしまった。俺以外と誰か成就させたいのか、って。違いますよ、エースのお土産にしようかなと思ったんですと言うと、なんだそうかと落ち着いてくれたものの、まだちょっと気にしてるっぽかった。……こういう風に先輩が子供っぽく拗ねてるとき、ちょっと嬉しくなるんだよな。僕はやっぱり年下だから、そういう顔なかなか見せてもらえないっていうか。先輩が僕にそういう隙のある油断した顔を見せてくれるのが、めちゃくちゃ嬉しい。
神社を後にして石段を下りようとすると、夕日が境内を照らして、灰鼠色の石畳や灯篭が夕日の茜色に染まる、とても神秘的な光景が広がった。
「わあ……」
「綺麗だな」
「ですね! ね、せんぱ……」
隣に立つシルバー先輩の顔を見ると、それが夕日に照らされて、とても綺麗で、格好良く見えた。それに目を奪われていると、シルバー先輩は僕に手を伸ばしてきて、ちゅ、とくちづけた。
「えっ、あ、なんで」
「俺に、恋をしている顔をしていたから」
「な、何言ってるんですか、もう。……神様に怒られちゃいますよ……」
「何故だ? 大切な人を愛しているだけだ。俺は何も、神の前に恥じる真似はしていない」
もう、いいから戻りましょうと急いで石段を下り始めると、分かった分かった、とシルバー先輩は僕をからかうようにして一緒に石段を下りた。僕は神様の家の玄関先でイチャついてしまったのが申し訳なくて鳥居に会釈し、その神社を去った。
宿に戻れば、時間は6時半を過ぎた頃だった。寝室側の部屋には、サービスなのか布団が一組敷かれていた。布団が一組なのは、予約の電話するときに僕が慌てすぎてカップルだってバレたからだな……。いや、部屋を掃除してくれるんだろう旅館の人に悪いし、旅先でエッチなこととかする気はないんだが! でも、用意してあるってことは……いい、のか? なんて煩悩を振り払う。今回は日頃の疲れを癒しに来たんだから、そんなおねだりで先輩を疲れさせてちゃ意味がない。
……ともかく、あとは部屋で休んでいれば、そのうち布団がない側の机に料理が運ばれてくるんだろう。それまでは小休止と言ったところだ。
「しばらく休憩ですね」
「ああ、そうだな」
シルバー先輩は備え付けのポットの近くにあったらしいコーヒーを入れ、縁側っぽい場所(今度ローズハート事務所長にあの場所の名前聞いておこう……)の椅子に座って、窓の外の景色を見ながらくつろいでいる。僕も紅茶を入れてその向かいに座った。
星空と夕日の入り混じる黄昏時の光に照らされ始めたシルバー先輩の横顔を見て、思う。ああ、何か物思いに耽っているな。今日のこと、思い返しているのかな。楽しかったと思ってくれていたらいいな。あ、でも、先輩のことだから、帰ったら親父さんたちに何を話そうか、ってことを考えてるのかも。なんて、僕はシルバー先輩のことばっかり考えているな。
そのうちシルバー先輩はこくりこくりと船を漕ぎ出して、ぐうと寝息を立ててしまった。まあ、今日はたくさん歩いたもんな。夕飯の時間になったら起こしてあげればいいか。
そう思って、今はただ、ゆったりと眠っているシルバー先輩の顔を独り占めできるこの時間を堪能していた。ずっと、たくさん、今日のことを思い出して、先輩のことを好きだなあって考えながら。……うん、贅沢な時間だな。きっと僕は今、世界中の誰よりも、贅沢な時間を過ごしてる。
やがて、窓から見える空の色が紺色になり、午後7時半近くになって、仲居さんが襖を開け、お料理お運びいたします、と声をかけてきた。はい、ありがとうございますと返事をして、僕はシルバー先輩を起こした。
「先輩。起きてください。晩御飯の時間ですよ」
「ん……俺は、眠ってしまっていたか」
もうすぐ料理運んできてくれるみたいです、と言うと、至れり尽くせりなのは落ち着かない、自分から取りに行きたくなるとシルバー先輩は言った。
「あはは、気持ちはわかりますけど、仲居さんたちを困らせちゃいますよ」
「それもそうか。今は頼るとしよう」
やがて運ばれてきた料理は、一人分のすき鍋や、旬の野菜の天ぷら、いろいろな小鉢や刺身にすまし汁と混ぜご飯のついた御膳で。
「旨そうだ!」
「ああ。……ん? 見慣れない天ぷらがあるな。野菜か?」
仲居さんは御膳を手際良く置いていくと、すき鍋用の燃料に火を点けながらシルバー先輩の質問に答えた。
「そちらは紅葉の天ぷらになります。あっさりとしておいしいので、お塩をつけてお召し上がりになられてください。抹茶塩もお勧めです」
「紅葉の……珍しいな」
「はい、お客様もご覧になられたかと思いますが、滝の上には見事な紅葉の木がありますので」
それでは失礼します、と最後にお米の入ったおひつを置いて、仲居さんは下がっていった。僕はおひつを取って、ごはんをよそう。先輩のもつぎますよと言うと、なら頼むと茶碗を渡されたので、たくさん食べてもらおうとしっかりと盛り付けたが、それでもおひつには二人がそれぞれお代わりできるくらいのご飯が残った。
「じゃあ、食べましょうか。いただきます!」
「いただきます。……ん、うまい」
シルバー先輩はさっそく紅葉の天ぷらを食べてみたみたいだ。気になってたのかな?
「あ、天ぷらの中にシイタケもありますね」
「ああ。抹茶塩を勧められたので、どちらにもつけてみたが、本当にうまいな。気に入った」
「良かったです!」
僕もどこから手をつけようかな、なんて思いながらすき鍋や混ぜご飯に手をつける。すると、これがまた絶品だった。
「混ぜご飯、甘い感じだ。牛しぐれって感じかな……。なんか普通の混ぜご飯と違う味がして、これはこれですごく旨い!」
「ああ。小鉢が多くて、腹が空かないだろうか? とは思ったが……これだけのものであれば、しばらくは満足だろうな」
それから僕たちはそれぞれの御膳をおひつが空っぽになるまで食べてしまい、夜の食事を終えた。
「そろそろ温泉が開く時間でしたっけ。行きますか?」
「ああ。そうだな。確か、露天もあるのだったか」
僕たちは準備をして、大浴場へ向かう。こういうときは一緒に入れるのが嬉しいですね、と言うと、そうだな、とシルバー先輩はうなずいた。
脱衣所で服を脱いで、浴場の中へ入る。打たせ湯だとか寝湯だとか、電気風呂だとか、室内だけでもいろいろな種類の温泉があって、あちこち試してみたくなった。
「いろんなお風呂がありますね。僕、全部一回ずつは入ってみたいなあ」
「そうか。なら、俺は露天で待っているから、満足したら来い」
「はい! 分かりました!」
僕とシルバー先輩はそれぞれ身体と頭を洗ってからかけ湯をし、いったん分かれる。先輩は温泉に入るとき、いろいろなお湯を試したりはしないタイプだ。でも、露天風呂の空気は好きみたいで、だいたい露天があるとそっちでゆっくりしてしまう。なんて先輩のお風呂の好みを知ってることにちょっと優越感を覚えながら、僕はまずはあのジャグジーってか泡風呂とかかな、なんて温泉を楽しみ始めた。
それからちょっとずついろんなお湯に入って室内の温泉を制覇したところで、ゆっくり湯船に浸かりたくなって先輩の待つ露天風呂へと向かった。
「……すう……」
先輩はすぐに見つかった。露天にはなぜか、先輩の他に誰もいなかったからだ。岩で出来た露天風呂の隅っこで、頭にどこからか来た小鳥を乗せながら器用に座ったまま眠っている。僕が隣に座ると、小鳥は羽ばたいて逃げていった。
「先輩、お風呂で寝ちゃ危ないですよ」
「……はっ。心地良くて、つい」
シルバー先輩は僕が来たのを認めると、ぱちぱちと瞬きをして意識をはっきりさせた。
「お前はもういいのか?」
「はい、たっぷり堪能してきました。どれもかなり良かったですよ。寝湯では僕も眠りそうになりました」
「そうか。俺も、そこにある打たせ湯くらいは試した。肩こりに効きそうで、親父殿にも紹介したいと思った」
「ははっ、そうなんですね」
二人でゆっくりと、温泉に浸かって夜空を見上げる。うーん、いいな。ゆっくりした時間が流れてる、って感じだ。日々の疲れが取れる感じがする。
「空が綺麗ですね」
「ああ……本当だな。月明かりが揺蕩っている」
「お湯の温度もちょっと熱めで丁度良くて、眠くなっちゃうのも分かるなあ」
「ああ。……こうして、暖かな湯の中で、お前のそんな声を聞いていると、余計に眠く……」
「ははっ、もう。僕はうるさい方だと思いますけど」
「そんなことは、ない。お前の声を聞いていると、落ち着く。落ち着いて、気が抜ける」
本当に眠ってしまいそうだ、と先輩は立ち上がり、俺は先に上がっているぞと露天を出た。僕は、一人きりになった露天風呂で、水面に映った月を眺めて、なんていうか、うまく言葉にできないような、穏やかで満たされたくすぐったいような気持ちでいっぱいになっていた。……こんなに胸が熱いのは、きっと、温泉の効能だけじゃない、よな。
それから、僕たちは温泉を上がって、浴衣に着替え、土産屋を見た。基本的にお土産は二人で共同して買うことにした。それで、まずはエースや事務所の人たちへのお土産と、それぞれの親へのお土産。それから、マレウスさんとセベクのも土産を選んだ。エースには恋愛成就のお守りをなんだかんだ買ってやったから、それと合わせて、ひとくちサイズのチェリータルトがたくさん入ったお菓子の箱。母さんには、温泉のお酒が飲みたいわ、と頼まれていたから、日本酒と温泉水のセット。先輩は親父さんに旅先の土産といえばペナントがいいと言われたからと、壁に飾ってあるのと同じペナントと、それからペナントと同じデザインの手ぬぐいを選んだみたいだった。
マレウスさんはアイスが好きだって聞いたけど、溶けちゃいそうだったから、凍らせるとシャーベットになっておいしいゼリー。セベクは魚が好きだそうだから、小魚のふりかけを買ってみた。これには旅館の朝食に出るものと同じ海苔が使われてるらしい。僕らも明日同じ味を試せるってことで、楽しみだ。ローズハート事務所長には、ちょうどいいものがあった。イチゴのプチタルトのギフトボックスだ。
それから辛口好きなダイヤモンドさんにはお菓子を避けてご当地っぽい辛口ラーメンや柿の種っぽいおつまみの詰め合わせと、クローバーさんには旅館のいろいろなお菓子が食べてみたいと頼まれていたから、マドレーヌとかクッキーとか、いろんな焼き菓子の入ったボックスを買った。
「お土産選びって迷いますね。本当に喜んでくれるかな?」
「相手のことを考えて選んだものなら、その気持ちを受け取ってくれる人ばかりだ。きっと、問題ない」
主要なお土産だけ手荷物で持って帰ることにして、あとの仕事先とかへのお土産は宅配便で郵送してもらうことにした。
「けっこうな荷物になりましたね」
「そうだな。事務所の外も含めれば、それなりの人数への土産になる」
「喜んでくれるといいな」
「ああ」
それからまた部屋に戻って、疲れた~と布団に寝転んでゆっくりしていると、座椅子に座った先輩がまた眠たそうにしていた。
「ははっ、先輩。今日はいつもより眠たそうですね」
「……ここは、落ち着きすぎる。川のせせらぎ、畳の匂い、お前の声……。どれを取っても、落ち着いていられる場所だ」
また僕の声が落ち着くって言ってるな。お風呂で言われた言葉を思い出してちょっと気恥ずかしくなったけど、身体を起こして先輩を布団に呼ぶ。
「じゃあ、もう寝ちゃいますか? ちょっと早いですけど……」
「……そう、だな」
先輩は僕の寝転んでいた布団に入り、身体を横にする。僕も部屋の電気を消して、月明かりの差す障子の窓を閉めて、その隣に滑り込んだ。静かな川のせせらぎだけが、部屋の静寂の中に流れる。薄暗闇の中、僕たちはひとつの布団で見つめ合う。
「せんぱい」
「ん……」
眠たげな先輩の手に、自分の手を重ねる。ああ、なんか、ドキドキするな。いつもと違う服で、いつもと違う、静かな部屋で、いつもと違う匂いの布団の中にいて。
「……」
先輩のはだけた胸元に抱き着くと、先輩はいつも通り優しく僕の頭を撫でて、抱き寄せてくれた。僕はその首元に、顔を埋める。
「先輩、好き」
「ああ。俺も、だ」
「……ドキドキ、する」
「ん」
先輩は僕を抱き寄せたまま、額にキスをする。それからそのまま、うとうとと目蓋を閉じてしまった。ふふ、寝るのが早いな。
それでも、僕は幸せだった。先輩の暖かな腕に抱かれたまま、先輩の匂いと腕の温度に包まれて。僕もこのまま眠ってしまおうと、ゆっくり目を閉じた。
――翌朝。目を覚ました僕は、変わらず先輩の腕の中に抱かれていた。どうやら昨日はあのまま眠ったみたいだな。
「先輩、起きて。腕どけてください」
「んん……」
「僕起きられないです」
「……まだここにいてもいいだろ……」
「ったく、もう」
渋る先輩をちょっとずつ起こして、どうにか先輩の腕の中から抜け出す。僕がいなくなったのを認めると、先輩は不満そうに身体を起こした。
「僕顔洗ってきますね」
「ああ……」
まだ寝起きでぼうっとしてる先輩を置いて、僕は洗面所で朝の支度をした。
戻ってくると、先輩はかなり意識がハッキリしたようで、窓から遊びに来た小鳥に挨拶をしていた。どこの小鳥ともすぐ仲良くなる人だな。
「ああ、戻ったか。なら、俺も顔を洗ってこよう」
「はい。僕は着替えてますね」
僕は浴衣を着替えようと、肩から浴衣の布を下ろす。すると、シルバー先輩はそれを見て、悪くないなと呟いた。なんだよもう、ちょっと珍しい冗談だな。
「朝から何言ってんですか、もう」
「すまない。つい、口から出た」
自分では全然意識してないときにそういう目で見られたのが照れくさくなって、なんなんですかとシルバー先輩を洗面台に押しやり、ようやっと落ち着いて浴衣を着替えた。そんな僕たちの物音や声を聞きつけたのか、仲居さんがやってきて、支度がお済でしたら朝食をお運びしますね、と言うので、それじゃあ15分くらいしたらお願いしますと頼んでおいた。
それから僕たちは支度を済ませて、15分後。時間通りに仲居さんたちが朝食を運んできてくれた。
朝食の内容は、スタンダードな白ご飯に、サワラの西京焼き。大根おろしのついた厚焼き玉子に、豆腐と揚げ、じゃがいもと大根の入った具だくさんの味噌汁。それにほうれん草のおひたしと冷ややっこ、味海苔がついて、すごく落ち着く感じの取り合わせだ。
「うう、うまい……。なんだかんだこういうのが一番落ち着く贅沢なんですよね」
「そうだな。……俺の玉子も食べるか?」
「朝はちゃんと食べてください」
隙あらば僕に餌付けしようとする先輩を制しつつ、僕たちは朝食を終えた。
朝食を終えたら、荷物をまとめてチェックアウトの時間だ。慌ただしいけれど、元々、長く家を空ける気もなくて、一泊二日の予定だったからな。
「忘れ物はないだろうか」
「たぶん大丈夫です! 使った布団はそのままにしてくれって言われたし、ゴミ箱とか、アメニティも大丈夫……問題ないと思います!」
「そうか。なら、出発しよう」
玄関ロビーでチェックアウトの手続きをして、帰りのシャトルバスに乗り込む。短い旅行だったけど、なんだかたくさんのことが出来た気がするな。
「癒される旅行だったな……。先輩はリフレッシュできましたか?」
「ああ、とても。だが、本当にたまに程度にしなくては、やはり落ち着きすぎてしまうな」
たまには気を抜いたっていいのに、と言っても、油断は良くない、と先輩は固辞した。それから帰りのバスを下りて、僕たちはそのままお土産だけでも渡そうと事務所に寄っていく。
「おや、お帰り。二人とも、旅行は楽しめたかい?」
「はい! すっごく楽しかったです!」
「ああ。貴重な機会をくれて、感謝する」
それから事務所の面々にお土産を配っていると、エースが言った。
「次はオレとも一緒に行こーよ、ね! なんとか予定合わせてさ!」
僕はシルバー先輩と顔を見合わせ、それはそれで今回の旅とは違った面白い旅行になるかもな、なんて笑い合う。
シルバー先輩は落ち着きすぎるのは良くない、なんてちょっと渋ってるけど――それでもまた、一緒に行けたらいいな。僕には、そう思える旅行だった。
*おしまい
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