※ドルパロ(ギャラリーもしくは小説本棚に設定が置いてあるアイドルパロディの世界線のシルデュです。そちらを読まないと意味が分からないことがあるかもしれません)
※時系列:ドーム後、交際宣言後
※パロディにつき一部呼び名変更あり:リドル寮長→事務所長、トレイ先輩→トレイさん、など)
※パロディとはいえ、デュ過去のお巡りさんの性格を捏造しています。
※7章バレ、デュの過去バレなどいろいろなネタバレを含みます。
大丈夫な方はスクロール↓
ひとり、部屋でホットココアを飲む。今日はシルバー先輩が実家の剣術道場に顔を出していて留守の日だ。シルバー先輩は、元々アイドルだったお父さんが今の自分の居場所がバレるのを嫌がるから、と顔を出す頻度は落としているけれど、それでもやっぱり顔を見たいからと1週間に1度は必ずPCやスマートフォンのアプリでお父さんと画面共有して通話しているし、月に1度は実家に帰ってお家の片付けや様子見をしている。今日はその日だ。
だから僕は留守番だ。こういうときは僕もいい機会だからと母さんに電話したり、あるいはその辺を散策してみたりとひとりでゆったり過ごすことが多い。とはいえ僕はちょっとした用事で母さんとは細々と電話することが多いから、今日はどちらかといえば、ゆったり過ごす日に充てていた。
こうしてひとりでいると、よく、シルバー先輩と出会った日のことを思い出す。僕はあの頃、どうしていいか、道に迷っていた。
――小雨の降る夜の街。キラキラと輝くビル群のネオンが反射する中、僕は適当な店の小さな階段前に座り込んでいた。
「ああくそっ、俺にどうしろっつーんだよ……!」
雨に濡れるのも構わず、ぐしゃぐしゃと頭を掻く。雨が降っているのは、その時の僕にとても都合が良かった。……もうどうしようもなくて、泣きたい気分だったからだ。
僕がそんな風になった理由は、決まってる。家に帰ろうとしてドアノブに触れたとき、アパートのドアの向こう側から聞こえたんだ。母さんが、泣きながら、「私の育て方が悪かったのかしら」って、おばあちゃんに相談する声が。
僕は、それを聞いて、すごく、すごく後悔したんだ。今、その場にいる自分を。その恰好を。それまでにやってきたことの全部を。
当然そのまま家に入ることなんかできなくて、夜の街をさ迷った。そうして、街の片隅で、階段に座ってひとりで小さくなっていたら、急に傘を差しかけられたんだ。それが、クローバーさんだった。
「なんだよアンタ、わざわざ不良に傘を差しかけるなんて変わってるな」
「いや……、悪いな。俺もそう思うんだけれど、明らかに落ち込んでます、って様子の奴を無視をするのは、ちょっと罪悪感があってな」
僕はしばらく黙っていたけど、クローバーさんはどこかへ行こうとしなかった。
「……ちょうどいいや、アンタ、話聞いてくれよ。どうしようもない馬鹿の話をさ」
そうして、僕がかいつまんでそれまでの流れを説明すると、クローバーさんは言ったんだ。
「なあ、デュースって言ったか? お前、アイドルとか……興味ないか?」
「は? アイドル……?」
クローバーさんが言うには、自分はアイドル事務所の事務員で、もし適正がありそうな奴がいたらスカウトしてこいと言いつけられている。そこで僕に目をつけたらしい。今でも、クローバーさんが僕を見出してくれた理由は、正直よく分からないんだけどな。本人に聞いたら、「アイドルってのは、太陽みたいに眩しく綺麗に光り輝くだけじゃないと俺は思うんだ。お前みたいに少し影のあるやつがいるから、もっと強い光に見えるんだと思う」とかよく分からないアイドル論を語っていたけれど。
それで僕は結局、よく分からないままに名刺をもらった。そうしていると、いつも僕を補導してくれていたお巡りさんがやってきてさ。未成年を怪しい仕事に勧誘してるんじゃないかってクローバーさんに疑いをかけて、僕を守ろうとしてくれたんだ。あのとき、ものすごく慌てて怪しい者じゃないって弁解していたクローバーさんには悪いけど、僕は嬉しかった。お巡りさんが、僕のことも守ろうとしてくれたことが。どうしようもないガキで、いつも迷惑ばかりかけていた僕のことを、それでも危ない仕事からは守ろうってしてくれたことが。
結局そのあと、クローバーさんがお巡りさんにもちゃんと名刺とか身分証を出して、本当にアイドル事務所の人だったってことが分かって、お巡りさんは去ろうとした。だけど、僕は決めたから、お巡りさんに言ったんだ。
「なあ、今まで――今まで、迷惑かけてごめん。俺、やり直せるかな。俺、どうしようもないクズだけど、アンタらがいるなら、アンタらみたいな大人がいるなら、やり直せるのかな……っ」
情けないことに、そのまま僕はぐしゃぐしゃに泣いちゃって。そしたらお巡りさんが言ってくれたんだ。
「やり直せるさ。間違えることで、分かることだってある。人は失敗することで、強くなっていくんだから……お前なら、きっと大丈夫だ」
それで、次の日から僕は、ハーツラビュル芸能事務所に所属することになった。
……と言っても、最初からすんなりいったわけじゃない。クローバーさんに連れられて事務所へ行った日、リドル事務所長は、まだ髪を金に染めていて、絆創膏や生傷だらけだった僕が事務所の部屋に入るなり、僕のことをどうしてお前みたいなのがここにいるんだ? って顔で睨みつけていたのをよく覚えてる。
シルバー先輩は先に事務所にいて、ローズハート事務所長と契約の話を詰めていたみたいだった。応接セットのソファに座る二人に、クローバーさんが僕のことを新人アイドル候補だ、って紹介した途端、ローズハート事務所長はとんでもない剣幕で怒った。
「トレイ、まさかとは思うけれど、ボクの聞き間違いではないだろうね!? この事務所に不良を入れるつもりかい!?」……って。
クローバーさんはやっぱりこうなったかあ、って苦笑いしてローズハート事務所長を宥めていた。僕は、正直ちょっとムカついたけど、でも、それでもそれが僕のやってきたことへの評価なんだ、この姿はそれだけでそういう扱いを受けるんだ、って、ちゃんとその場で思い直せた。だから、頭下げたんだ。
「お願いします! 確かに俺は、どうしようもないクズで、ワルで、人に迷惑ばっかかけてきた!! だけど、母さんが……母さんが、泣いてたんだ!! 母さんのために、これからはまともな人間になりたい!! ちゃんとした仕事で稼いで、仕送りだってしてやりたい!! そのきっかけを、手放したくないんです!! どうか、お願いします……!!」
それでも、ローズハート事務所長は冷たく答えた。
「事情は分かった。とはいえそれはキミの家の事情であって、ウチの事務所にメリットがある話でもなんでもない。金を稼ぎたいだけならば、ウチの事務所でなくとも、アイドルでなくとも、別の手段がいくらでもある。ウチのスタッフが連れてきた以上、こちらにも落ち度があるとはいえ――悪いけれど、この話は無かったことにして、今日は大人しく、お引き取りを願おうか」
クローバーさんが、悪い、と小さな声で呟いた。失意の中、僕が俯いていると、誰かの声が響いたんだ。それは、シルバー先輩の声だった。
「待ってくれ。リドル事務所長、契約の条件に追加がある」
「……なんだい、シルバー?」
「俺は、デビューするならコイツとがいい。俺はコイツを信じる。コイツとでなければ、この事務所とは契約しない」
「なんだって!?」
「俺は、あの伝説のアイドル『夜明けの騎士』の実子で、その好敵手だった『リリア・ヴァンルージュ』の義息だ。話題性は抜群で、他の事務所に取られたくはない……のだったろう?」
「このボクを脅かそうという気かい?」
「もし、コイツがこの先問題を起こしたのなら、責任は俺が取る」
ローズハート事務所長は、頭を抱えて、大きな溜め息をついて、指をトントンと苛立つように鳴らして、それからようやく答えを出した。
「……お前。この事務所にけして迷惑をかけないと約束できるね!?」
「はいっ、もちろんです!!」
「約束を違えたその日には、すぐにでも出て行ってもらうよ!! ……分かったら二人とも、契約書にサインを!!」
こうしてボクは、無事にハーツラビュル芸能事務所に所属できることになったってワケだ。今思えば、ローズハート事務所長はこのとき既にエースとか、他にもいろんなアイドルを抱えていたわけで……。ソイツらを傷つけたり、迷惑かけたりするかもしれないような奴でしかなかった僕のことを、迷いながらとはいえよく受け入れてくれたなって思う。今、ローズハート事務所長をはじめとしたハーツラビュル芸能事務所が、アイドルとしての僕をたくさんの危ないことから守ってくれるから、余計にそう思うんだ。
僕はローズハート事務所長と契約を交わしたあとで、シルバー先輩にお礼を言った。
「あのっ、さっきは本当に……ありがとうございましたっ!!」
「デュース、だったか? ……お前が、母親のためにアイドルを目指したいというのは本当か?」
「本当です!! 見ての通り、俺、今はただの馬鹿でしかないけど……。一から全部、やり直したいんだ!!」
「ならば、良い。その言葉が嘘でないと思ったからこそ、俺はお前を庇った。……どうか、失望はさせないでくれ」
「はいっ!!」
「良い返事だ」
それが、シルバー先輩との初対面。初めてしっかり話したとき、だ。あのときはまさかキスをしたりエッチをしたり、シルバー先輩とそんな関係になるとは思っていなかったな。
事務所に無事入れたあと、僕はすぐに髪の色を地毛に戻した。服も、そのとき持ってたお金はたいて全部、真面目そうに見えるやつに変えた。そしたら次に会ったとき、会う人会う人全部に驚かれたな。クローバーさん、シルバー先輩、果てはローズハート事務所長にまで。
とはいえそれからも、しばらくローズハート事務所長と僕の微妙な対立は続いた。早朝から事務所に呼び出されて、レッスン室の掃除をさせられたり、居残りレッスンも、他のアイドルの倍くらいしごかれたり。芸能人寮に引っ越す前までは家から通ってたから、事務所に泊まり込むことも多かったし、正直キツかった。でも、何もしないでいるのも、中途半端なまま母さんと一緒に家にいるのもきっと落ち着かなかったと思うから、あの忙しい日々は今思えばありがたかったのかもな。
そうしているうちに、だんだん僕を遠巻きに見ていた他のアイドルたちが僕に話しかけてくれるようになったのは良かったことかもしれないな。怪我の功名、ってやつなのか、お前、事務所長に目つけられて大変だな、みたいな感じでみんなが気安く話してくれるようになった。その頃にエースともよく話すようになったんだ。
……そのあと、エースは僕のことをきっかけに、ローズハート事務所長と大喧嘩したりもしたんだけどな。それは、ローズハート事務所長が不意に口にした、「キミはこんなこともできないのかい? まったく、今までにどんな教育を受けてきたのか、親の程度も知れるものだね」って発言がきっかけで。僕は、「母さんのことは関係ないだろ」って言い返そうとして、それでも、今までやってきたことを思うと、「母さんのことは……っ」って、最後まで言えなくて。ひとり拳をぎゅっと握っていたら、シルバー先輩が庇ってくれて。「リドル事務所長、言い過ぎだ」って。それでもローズハート事務所長がイラついた様子で「彼は不良だ、ボクは間違ったことを言っているかい!?」って言い返したから、それに対してエースが言ったんだ。
「アンタさあ、いい加減にしなよ。いくら悪いことをしたやつ相手にでもさ、言っていいことと悪いことがあるのくらい分かるでしょ!? だいたい、コイツの何にイラついてるのか知らないけどさあ、いつもいつもデュースのことだけ特別にしごきすぎじゃない!? 本当にワルやめたかどうか確かめるなら、もう十分でしょ? 事務所のみんなも、もうコイツがどういう奴か分かってる。これ以上はいい加減イジメみたいで気分悪いよ、そろそろやめたら!? それとも、なんかコイツにイラつくような私情でもあるの!?」って、喧嘩売って。
その上シルバー先輩まで怒っちゃって、「デュースはもう、俺たちにとって大切な仲間であり、友人だ。その大切な仲間の家族を悪く言うような人間の下にはついていたくない」ってエースに同調して。
当然ローズハート事務所長はふたりの言葉にすごい剣幕になって、事務所全体を巻き込んで大揉めしたんだけど……。そのとき、大揉めしながらも、僕たち所属アイドルは知ったんだ。ローズハート事務所長は小さい頃から、すごく厳しい親の元で育ってきて、その親から逃れるためにマレウスさんに出資してもらって、ひとりで今の事務所を立ち上げたってことを。だから、ハーツラビュル芸能事務所を守るために、いつも必死なんだってことを。
結局僕は、そんなローズハート事務所長を許すことに決めたんだ。もちろん、母さんの悪口を言われたのは今でも許せない。でも、僕だって何も間違わずにやってきたわけじゃないって思って。ローズハート事務所長は、間違った僕を、迷いながらも受け入れる決断をしてくれたわけで。許せないけど受け入れるってことを教えてくれたのは、ローズハート事務所長その人だった。あのとき僕が、ローズハート事務所長の大事な場所にいることを許してくれたから、だから、エースやシルバー先輩みたいに、僕のために怒ってくれる人たちを見つけられたわけで。だから、ローズハート事務所長だって、僕と同じように失敗しながら強くなっていくんだって思って、受け入れたんだ。そんな僕を見て、ようやく二人は留飲を下げてくれた。……エースは他にもいろいろと鬱憤が溜まってたみたいで、オレは許さねえけどってしばらくぶちぶち言ってたけどな。
あのときに、僕のアイドルとしての形は決まったんだと思う。母さんのために、まともで立派なアイドルを目指す、だけじゃない。僕みたいにどうしようもない奴らにも、届けばいい。僕みたいに馬鹿でどうしようもない奴でも、ちゃんと頑張れば、ちゃんと評価してくれる人はいるってこと。それが、僕と同じように悩んでいるやつらに届けばいいと思った。
……エースとの大喧嘩が効いたのか、何か思うところがあったのか、大揉めしたあとのローズハート事務所長は、他のアイドルと同じように、僕をだんだん『不利益を成すかもしれない存在』から『身内』として扱ってくれるようになって、今ではすっかり守るべき存在だとさえ思ってくれている。
そのあともいろいろ大変なことがあったけど、なんとか事務所のみんなでここまでやってこれた。
今思うと、本当に懐かしいな。デビューライブも前の駆け出しの頃のことなんか、本当に懐かしいことばっかりだ。本当にたくさんの人に背中を押されて、僕はここにいる。だけど、今でもこうして思うのは、
『俺はコイツを信じる』
どこの誰かも分からなかっただろう僕に向けて、そうまっすぐに言い切ってくれたあの日、あのときから。僕はシルバー先輩を好きになることがずっと決まっていたんじゃないか、って。そう、今でもこうしてふとしたときに、たくさんのありがとうって気持ちと一緒に、思うんだ。
ガチャリ、と玄関のドアが開く音がする。僕はからっぽになったココアをテーブルに置いて、玄関先へと急ぐんだ。いっぱいのありがとうの気持ちを込めて、今日も大好きだって気持ちを込めて、愛しい人を出迎えるために。
「ただいま、デュース」
「……お帰りなさい、シルバー先輩!」
帰って来るなりシルバー先輩に抱き着くと、シルバー先輩はただいまのキスをくれる。この日々もきっと、あの日、あのとき、僕が、変わろうって決めたから。母さんやクローバーさんみたいに、僕が変わるきっかけをくれた人がいたから。シルバー先輩やお巡りさんが、僕が変われると信じてくれたから、エースやローズハート事務所長のように、変わった僕を認めてくれた人がいたから。全部、全部そうなんだ。
そう思うと、僕は今の毎日が奇跡みたいだなって思って、今日もキラキラと輝いて見えるんだ。ステージの上に立つ、アイドルみたいに。
「デュース、今日は何してたんだ?」
手洗いうがいを終えたシルバー先輩はリビングに入るなり、僕の座るソファの隣に座る。
「へへ、当ててみてくださいっ」
「雑誌でも読んでいたか?」
「残念、違います!」
「……ふむ」
シルバー先輩は僕の肩に顔を埋め、くんくんと僕の香りを嗅ぐ。
「ふっ、分かったぞ。なにか飲んでいたな? この香りは、ココアだろうか」
「正解! でも、ふふ……っ、くすぐったいです!」
首筋に髪の毛が当たってくすぐったい。僕が身をよじっていると、シルバー先輩はそのまま僕の腰に手を添え、僕をソファに倒しながら僕の腹を両手でくすぐった。
「は、はは……っ、くすぐったい! シルバー先輩、も、やめ……っ!」
「このような状況で、やめろと言われて素直にやめる男はどれほど居るのだろうな」
「や、やあっ、もう……っ、んん……っ」
笑いすぎて息が苦しい。はあ、と息を吐くと、シルバー先輩がピタリと動きを止めた。
「せんぱい?」
「……やりすぎたな。すまない」
僕の上から退こうとするシルバー先輩を、腕を伸ばしてぎゅっと捕まえる。
「先輩、まだ僕いちゃいちゃしてたいです」
「……まったく、お前というやつは」
そう言いながらもシルバー先輩はちゅ、と唇にキスをくれる。
「へへ。ご飯作る時間まで、いちゃいちゃしてましょうね」
そう言うとシルバー先輩は、夜食が後回しになっても知らないからな、と言いながらまた僕の口にキスをして、体を撫でてくれる。それはマッサージみたいな感触で、僕の身体をほぐしていく。
本来僕は、誰彼構わずベタベタするようなスキンシップが苦手だ。なのに、今こうやって、シルバー先輩とえっちって程でもないいちゃいちゃをするのはすごく好きだ。
それ以上のことは恥ずかしくなるからって言うのもあるけど、恥ずかしさ以上にやっぱりシルバー先輩のことが好きだからなんだって思う。毎日どんどん好きになってる気がして、天井はいったいどこなんだろうって不安になるくらいに。
「シルバー先輩」
撫でてくれているシルバー先輩の手を取り、指を絡めてうっとりと目を見つめる。今日も先輩は優しくてかっこいい、僕のシルバー先輩だ。……なんて、ちょっと贅沢だったかな。
「なんだ?」
「ココア飲んでた以外にも、もうひとつあるんです。僕のしてたこと」
「それも当ててみろと言うのか?」
シルバー先輩は僕の絡めた手の甲にキスをしながら、楽しそうに返事をする。
「いえ、こっちは教えます。耳貸してください」
「ん?」
素直に耳を貸してくれるシルバー先輩に、僕は内緒話するみたいに耳打ちして言うんだ。
「シルバー先輩のこと、考えてました。好き、って」
そうしたらシルバー先輩は、僕のことを黙ってぎゅうっと強く抱きしめて。
「……やはり夜食は後回しにしていいか、デュース。今ものすごく、お前を抱きたい」
「へあっ」
「いい、だろう?」
どうやら僕は、うっかりシルバー先輩のスイッチを押してしまったみたいだ。でも、そんなシルバー先輩だって……僕は、嫌じゃない。だから。
「シルバー先輩のえっち」
耳元でささやけば、シルバー先輩は顔を赤くして、悔しそうに目を鋭くして僕を睨むように見つめる。
「……どうやら、よほどめちゃくちゃにされたいようだな」
いいだろう、とシルバー先輩の顔が近づいてきて、ぐっと深くくちづけられる。素直に背中へ手を回せば、今日もまたシルバー先輩を大好きにさせられる、めくるめく夜が始まるのだった。
*おしまい
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