※ドルパロ(ギャラリーもしくは小説本棚に設定が置いてあるアイドルパロディの世界線のシルデュです。そちらを読まないと意味が分からないことがあるかもしれません)
※時系列:ドーム後、交際宣言後
※パロディにつき一部呼び名変更あり:リドル寮長→事務所長、トレイ先輩→トレイさん、など)
※モブによるけっこうガチめの性犯罪描写が出てきます。苦手な方、トラウマがある方の閲覧はご遠慮ください。
※薬品・治療関連のことはフィクションです。
大丈夫な方はスクロール↓
夜のコンビニエンスストア。デュースが、何か甘いものを食べたいというので、それならば俺も着いていこうと二人で店まで歩くことになった。せっかくなので手を繋いで歩きますか、というデュースに俺は笑ってしまう。以前は外で恋人のような接触をするのには照れていたが、あまりにも気を付けすぎて週刊誌に『Vopal Sword実は不仲!? 恋人宣言はBL営業か』というような見出しで俺たちのことをすっぱ抜かれて以来(もちろんその後否定はした)、デュースは時々わざとパパラッチなどに仲が良いことを見せつけようとこんなことを提案することが増えた。
もちろん、仲の良さはいくら撮られても困るものではない。公に交際宣言をする前ならともかく、もう、皆に知られたあとだ。だから、俺はデュースのこうした誘いを断ることはなかった。
道中は手を繋いで歩いていたが、コンビニに着くと、店員さんの前やお店の中だとさすがに恥ずかしいから、とデュースから手を外された。まあ、店を出たらまたあとで繋げばいいことだ。
俺は単にデュースと共に出かけたかっただけで、さして用事があったわけでもないので、デュースのスイーツ選びに付き合う。期間限定でフレーバーが変わっているプリンと、同じく期間限定でこだわった食材になっているエッグタルトのどちらを食べようかと真剣に悩むデュースに、どちらも食べてはダメなのか? と尋ねると、そんな贅沢は良くないですと返された。自分の欲をしっかりと律せていて、良いことだ。
結局悩みに悩んだ末、デュースは期間限定のプリンを買うことにしたようだ。デュースが会計をしている間に外に出て、デュースを待つ。そのとき、良いことを思いついた。デュースが悩んで選ばなかった方のタルトをこっそり買っていってやろうか。普段販売しているものならともかく、期間限定で発売されているのなら次に店に来た時には並んでいないかもしれないからな。今日すぐに出すと贅沢をしてしまったと言われそうだから、あとでこっそり冷蔵庫に入れておいてやろう。明日の朝、デュースが朝食を作ろうとした際にでも見つけてくれるように、メッセージでも添えておけばいい。
そんなことを企み、自動ドアから出てきたデュースに、買い忘れたものを思い出したから少し待っていてくれと告げ、エッグタルトを購入する。そして店から出ると、そこにデュースの姿はなかった。代わりに、デュースのいた場所には先ほどまで迷っていたプリンが入った買い物袋だけが落ちている。
「……デュース!?」
おかしい。どこへ行ったのだろう? すぐに棚から商品を取って会計に並んだとはいえ、レジが混んでいたから確かに時間はかかってしまった。それでも、15分は経っていないはずだ。そう遠くへは行っていないだろうと、ひとまず店のまわりをぐるりと一週する。すると、店の隣にある公園に違和感を持った。……もう夜だ。こんな時間に、成人男性が三人もつるんで何をしているんだ? それも、ベンチに座って語らうとかそんな風ではなく、ドーム型の遊具のすぐ傍で。童心に戻って遊具で遊んでいるという風にも見えない男たちに気付かれないよう、俺はそっと気配を殺して近付いた。
しかし、そこにデュースの姿はなかった。てっきり、ドーム状の遊具の中に閉じ込められているのかと思ったが、そうではないようだ。
「お兄さん、なんか用事すか?」
「ああ、人を捜していて。そこの店ではぐれたきり、見当たらないんだ。……群青色の短い髪をした青年なのだが、見なかったか?」
三人の男たちは顔を見合わせてふるふると首を振る。
「いや、俺らはちょっと……見てないですね。ずっとこの公園いましたけど、誰も来なかったし」
「そうか。手間を取らせてすまなかった」
俺は失意の中、公園を後にしようとする。すると、遊具に隣接されていた背後の公衆トイレから、バタンと何かが倒れる音がかすかに聞こえた。
「……もう一度お尋ねするが、本当に誰も見なかったか?」
「ホントに誰も来てないですけど。見落としてたらすいません」
「そうか。では、手洗いにでも行ってもう一度探すとしようか」
「今そこのトイレ、清掃中すよ」
「大きな音がしたが?」
「モップかなんか倒しただけじゃないっすか?」
「それでは、手伝いに行った方がいいだろうな」
茶番だ。俺が彼らの忠告を無視して公衆トイレへ足を進めると、彼らは兄貴のお楽しみを邪魔すんじゃねえよと叫びながら俺に攻撃を仕掛けてくる。とはいえ、素人の攻撃だ。すべて躱し、一直線に公衆トイレへと向かう。どこだ。どこにいる。目の前に多目的トイレと書かれたカギのかかった個室を見つけ、俺はドンドンとドアを叩く。俺に攻撃を仕掛けた男たちは散り散りに逃げていったが、今は彼らに構っている場合ではない。
「デュース、いるのか!?」
「なんだアンタ!! こっちは今使用中だぞ、他を当たれよ!!」
ちぐはぐだ。外にいる連中は清掃中だと言っていたのに、こちらは使用中。何も嚙み合っていない。清掃中の札は外に出されているが、清掃員らしき人間は見当たらないし、清掃員ならばカギをかける意味もない。そもそも、外にわざわざ見張りをつけているような人間が、まともな使用をしているわけがないだろう。
中にいるだろうデュースは返事をしない。恐らく、なんらかの方法で口を塞がれているのだろう。確か大体の手洗いは、中にいる者が倒れていないかの確認や、または閉じ込められた際の緊急時のため、外からもカギを開けられる構造になっていると親父殿に聞いたことがある。緊急用の開錠装置があればそれができる。が、この公園のトイレにはそれが備え付けられていなかった。いや、他の個室にはあるが、イタズラ防止の観点からなのか、この多目的トイレにだけはそれがないようだった。
「くっ……!」
どうしたら。目の前にいるはずなのに、助けられない。そのとき、背後から誰かにぽんと肩を叩かれた。
「あのー、すいません。ちょっとお話いいですか?」
「今、それどころでは……!」
振り向くと、そこに立っていたのは警察官の制服を着た壮年の男性だった。これは渡りに船だ、スマートフォンを持ってこなかったから警察に連絡できずにいたが、パトロール中だったのか向こうから来てくれた。だが、彼が口にしたのは俺の想像していたのとは真反対の言葉だった。
「この公園に、多目的トイレの前で叫ぶ不審な男の人がいる、って通報があって来たんですけど、あなた以外にそういった人は見当たらなくて……。ちょっとお話詳しく聞かせてもらっていいですかね」
その警察の言葉に、中にいる男も叫ぶ。
「アンタ警察!? じゃあそこの男早く連れてってくれよ! さっきからそいつにドア叩かれて、こっちは迷惑してるんだ!!」
「じゃ、ちょっとあっちで話しましょうか?」
俺を連れて行こうとする警察に、俺は確かにそこにデュースがいた証拠だとでも言うようにコンビニの袋を見せて縋る。
「待ってくれ! ……事情がある、あの中に大切な人がいるかもしれないんだ! 買い物をしていたら、この袋だけを落としてどこかへ消えてしまった! 誰かが連れ去ったのかもしれない、緊急事態なんだ!! どうにかして中を改められないか!? もし間違っていたら、土下座でもなんでもして謝る!!」
「ちょっと、ちょっと、落ち着いて……。じゃあ、ちょっとだけ声かけてみますからね」
警察官は多目的トイレのドアをノックし、男に声をかける。
「すいませんね、この方がどうしても中を確認したいって言うんでね。ちょっとだけ中改めさせてもらってもいいですかね?」
「何言ってるんだ!? 嫌に決まってるだろ! ここはトイレだぞ!?」
「分かります、分かりますけどね。僕が中見て誰もいなかったら、ちゃんと謝ってもらいますから」
「今、腹壊してて、ドアまで行けないんだよ! 外に出られないんだ!!」
「カギだけでも開けられないですか?」
「腹壊してるっつってんだろ! いいからさっさとその野郎を連れて行けよ!!」
警察官と男の押し問答は続く。ああ、早く助けてやりたいのに。やがて警察官は諦めたように首を振った。
「プライベートな空間ですから、これ以上は……」
「そんな、それじゃあ……!」
「まあ、でも、どうせこういうトイレは、ずっと閉まってると2~30分ごとに開くようにはなってますから。それまでくらいは待ちますから、それでも誰もいなかったらさすがに納得してくださいね」
その警察の言葉を聞いた途端、チッ、と中の男が大きく舌打ちをするのが聞こえて、ガチャリとドアのカギが回る音がした。ドアが開いたその瞬間、男は勢いよく走り出していく。奥にもうひとり人間が倒れているのが見えた瞬間、壮年の警察官はトランシーバーで他の警察官チームに先ほどの男の様相を伝えたようだった。俺はそれと入れ違いに、個室の中に倒れる人影へと駆け寄る。
「デュース!!」
デュースは口にタオルを突っ込まれ、服が正面から破られた状態で個室の床に倒されていた。軽く全身を確認するが、不幸中の幸いなのは下半身には触れられた形跡がないことだ。しかし、口に突っ込まれたタオルのせいで呼吸がしづらかったのか、顔色が悪い。丁寧に口のタオルを外してやり、デュースを抱え上げて外へ出る。
「近くの病院は!?」
半ば怒鳴るように警察官に尋ねたというのに、彼はハッキリとした声で答えてくれた。
「救急に通報済みです! すぐに到着するそうです!」
「ありがたい!」
俺は地面に自分の上着を脱いで置き、デュースをそこに横たわらせて気道確保し、呼吸がしやすいように回復体勢を取らせる。普段なら自分で歩けると言いそうなところなのに、とても顔色が悪く、腕や足にも力が入っていない。
「デュース、意識はあるか!? 俺の声が聞こえるか!?」
「……う……、せん、ぱい……?」
「デュース、呼吸は苦しくないか、身体にどこか痛い場所はないか!?」
「……どこ……、そうだ、僕……」
デュースは俺の問いに答えない。何か、意識が朦朧としているようだ。
「デュース、俺の言っていることが分かるか!?」
「せんぱい、僕……ファンの人に……サインねだられて、それで……」
言いようのない怒りが湧いてくる。デュースは、自分を応援してくれる人にはできるだけ気持ちを返したいからと言って、プライベートの時間でも写真やサインを出来る限り断らない。今回のことは、その善意に付け込んだ犯行だったようだ。
「ああ……それで、どうしたんだ?」
「写真撮るから、って、肩組んで、そしたら、後ろから……」
デュースはゲホ、と咳込む。息苦しそうだ。
「デュース、もう少しだ。もう少しで救急隊が到着するから……!」
そう励ましているうちに、本当に救急隊が到着する。俺は同乗し、救急隊員に事情を説明しつつ、デュースを励ましながら病院へと向かった。
それから、デュースは病院へと運ばれ、無事回復した。タオルには薬液が染み込まされていたようで、一時的に意識が朦朧としていたようだが、すぐに処置をすることができたため命に別状はなく、後遺症も残らないということだった。
あのとき警察官を呼んだのは、あの男の手下だったらしい。警察官を利用して俺を排除しようとしたのが仇になったのだそうだ。その後、あの男は警察官のチームが近隣に包囲網を張って捕まえたと病院の待合で報告を聞いた。
翌日の昼、病室で目が覚めたばかりのデュースを無事で良かったと抱きしめると、ぽかんとした顔でどうしたんですか急にと言われてしまった。見舞いに来ていたリドル事務所長も、エースも、これにはさすがに呆れた顔をしていた。
その後、すぐに来た医者と看護師によると、意識もハッキリしていて、事件のことも覚えており、精神に動揺もないようだから、半日様子を見たら自宅に帰って普段通り生活してもいいだろうということだった。
夜、デュースを連れ、芸能人寮の二人の部屋へと帰る。デュースになんともないか、と何度も尋ねれば、自分でもびっくりするほどなんともないです、と元気な返事が返ってくるばかりだった。
「何か、してほしいことはないか? なんでもいいぞ」
「もう、先輩、心配しすぎですよ。僕は大丈夫だって言ってるのに」
俺はなんでもなさそうな顔でソファに座っているデュースの身体をそっと抱きしめ、告白する。
「……俺が、落ち着かないんだ。お前が恐ろしい目に遭っているとき、俺は、目の前にいたのに。すぐ近くにいたのに、何もできなかった。それが今でも歯がゆくて、悔しくて……何もせずにいられないんだ」
そう告げると、宥めるように俺の頭を撫でてから、んー、と迷ってデュースは答えた。
「じゃあ、また一緒にお風呂入りたいです」
「かまわないが……一緒に、か?」
「はい。一緒にお風呂入って、先輩に身体洗って欲しいです」
お前がそうしたいのなら、と承諾する。俺の胸に寄りかかるデュースの身体を抱きしめてやろうとすると、まだだめ、と言われた。
デュースに言われた通り、共に風呂に入る準備を勧める。僕も掃除くらいできますってと言っていたが、自宅で様子見とはいえ絶対安静だ。少なくとも今日一日は何もさせないつもりでいた。そんな俺の様子を見て、心配かけちゃったからしょうがないな、とデュースは諦めてくれたようだった。
デュースを連れ、共にバスルームへと入る。身体を洗ってくれと頼まれていたから、洗うぞと声をかければ、隅々までお願いしますと言われた。前は照れていたというのに……。やはり、無意識にあの男に触れられたことへの嫌悪感が残っているのだろうか。
俺は頼まれた通り丁寧に、あの男の穢れを落とすようにデュースの身体を洗ってやり、バスタブの中へ下ろす。それから自分の身体も洗い、同じバスタブの中へと腰を下ろした。すると、デュースは俺にすり寄ってくる。
「先輩」
「なんだ?」
「……僕、ほんとにあんまり怖かったとか、嫌だったとかないんですよ。意識が朦朧としてたから、ほとんど覚えてなくて……」
「……そうか」
でも、とデュースは続ける。
「まだ比較的意識がハッキリしてた頃に、アイツに服破られて……。『男にこうされるの好きなんだろ?』って、身体撫でまわされたのは覚えてて、それがすごく気持ち悪かったから、シルバー先輩に洗って落として欲しかったんです」
「そう、だったのか」
だから、もう悪いのは全部シャワーで流しちゃったんで、大丈夫なんですよ、と笑うデュースの身体を抱きしめる。コイツが今無事でここにいるのは、偶然が重なった結果だ。もし、あの男が諦めず、俺たちがいるのもかまわずにドアが開くまでその場で犯行を続けていれば。もし、警察官が傍に居らず、すぐに救急を呼んでくれていなければ。もし、あのとき公園で音がしなければ、違和感を見落とせば……。たくさんのもしもが、俺の頭の中をずっとぐるぐると走り続けている。
「先輩、悩まないでください。僕、すごくホッとしたんです。先輩が、ドア叩いてくれたとき。ああ、来てくれたんだ、見つけてくれたんだ、って」
「デュース」
俺はデュースの頬に手を触れ、額を合わせる。
「……病み上がりのお前に気を遣わせていては、申し訳ないな」
「ふふ。先輩がそんなんだと、僕、お風呂あがってからも甘えちゃいますよ」
「かまわない。今日は好きなだけ甘えていいぞ」
「もう、最近僕のこと甘やかしすぎですよ」
デュースはそう言いながらも、じゃあお風呂上がってから、身体のマッサージしてください、と俺に甘えてくる。
「ああ。……風呂から上がったら、身体をマッサージして……そうしたら、手を繋いで一緒に寝よう、デュース」
お前がもうどこにも行かないように、と告げれば、デュースはどこにも行きませんよと俺にキスをした。願わくば、その言葉が本当になるといい。
俺は、事後の世話しかすることができない、不甲斐ない自分への叱咤と、デュースが傍にいることの安堵をすべて飲み込んで、ただただぎゅっとデュースを抱きしめた。
――もっと、もっと強くなろう。強くなりたい。腕の中にいる、この存在を守れるように。
*おしまい
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