*リクエスト『オメガバース』に挑戦してみたものです。安定のシルデュ。
*このため、設定および世界観が『オメガバース』の世界になっています。
*シルバー(α)×デュース(Ω)です。
*正直オメガバースミリしら状態から書いたので何かいろいろ間違ってる気がします
*R15程度のシーンはあるので一応制限かけてますが、かなり描写がぬるいです。すいません。
*リクエスト文よく読んだら『あるいは』とのことでしたが、せっかく書いたのでアイディアを頂いたということでリク本棚に入れてます。ありがとうございます!
以上大丈夫な方はスクロール↓
――この世界には、男女の他に、第二の性別がある。
それは、「α(アルファ)」と、「β(ベータ)」と、「Ω(オメガ)」。
えーっと、それで……なんか、アルファはいろいろ強くって、ベータは普通の人で、オメガは、社会的とかにも弱くて、『発情期』だとかが来て……いろいろ大変、らしい。で、なんか……『運命の番』? みたいなのも、いるんだってさ。
大変だよな、まあみんな、なんかいろいろと。
と、病院でもらった冊子を読んだ僕が、隣にいたエースにあっけらかんと言う。
するとエースは呆れた顔で言った。
「『大変だよな』、じゃねえよ。お前、なんで他人事なわけ? 入学後すぐの健康診断で、Ωって診断されたんでしょ?」
「そうだな。でも、僕……。『発情期』とか、来たことねえしな。『抑制剤』みたいなやつ、あれも使ったことないし……」
この学園に入学してからの、ここ半年。僕がそう言うと、お前、Ωとしてなんかバグってんじゃねえの、とエースに言われた。
「大丈夫なの? Ωって、なんか……就職とかにも不利なんじゃなかったっけ? なのに、繁殖すらまともにできないかもって、お前……」
「大丈夫だろ。『オメガ』が就職に不利なのは、発情期とかのせい、らしいし。逆に、そういうの、発情期とかフェロモンとか面倒なの全然ないですって言えたら、お前みたいな『ベータ』と変わらない扱いをしてもらえるんじゃないか?」
それもそうね、とエースは言った。一応、保健の先生には定期的に診てもらいなよ、とも。
僕はそれに一応うなずいたが、だからと言って、まともな『オメガ』になる気は、なかった。
……だって。邪魔じゃないか、正直。発情期だの、フェロモンだの、番だのって。
ただでさえ遅れがちな勉強を、発情期なんかで邪魔されたくないし、運命の番だなんて、もってのほかだ。僕は僕の愛する人は、自分の力で選びたい。
それに、僕にはもう好きな人がいるんだ。自分の心で決めた、自分だけの好きな人だ。
「シルバー先輩」
「ん……、デュース、か」
学園裏の森で、シルバー先輩は眠たそうにしている。僕はそれに声をかける。
「デュース、元気か?」
「はい、元気です。シルバー先輩はどうですか?」
「俺は……、問題ない。お前が元気なら、俺も元気だ」
「ははっ、なんですか、それ」
こうやって、森の木漏れ日の中で、シルバー先輩とふたり、他愛ない話をする。
僕の大好きな、落ち着く時間だ。
学園に入学してから半年、シルバー先輩とは、こうして会うことが何度もあった。
その度にシルバー先輩は、挨拶代わりに元気か、と僕の体調を気遣ってくれて、僕が元気です、と答えると、良かったとほほ笑んで、そして、他愛もない話をしてくれる。
時に僕が悩むことがあれば、そっと背中を押してくれたり、時には叱咤激励をしてくれたり。そんな風に、そっと、当たり前のように隣に座って、傍に居てくれる。
この時間も、優しいシルバー先輩も、大好きだ。
だけど、僕には少し、気になることがあった。それは……。
「……すまない、デュース。少し、今日は、気分が悪くなってきたようで……。一度、寮に戻って、休むことにする」
「は、はい。気を付けてくださいね……」
シルバー先輩は時々、こうして……突然具合が悪くなって、席を外してしまうことがある。
僕は、その度に、なんだか心がきゅっと淋しいような気持ちになることがあった。
……これも、『オメガ』ってやつの性質、なんだろうか?
シルバー先輩は、『アルファ』なんだと、前に聞いたことがある。
僕みたいな、発情期すら来ないような、不完全な『オメガ』でも、シルバー先輩のように魅力的な『アルファ』には、惹かれてしまっているのかもしれないな。
僕はそんな考えを、ぶんぶんと頭を振って断ち切る。そんなことないぞ。僕は、僕の意思でシルバー先輩のことが好きなんだから。ワケわかんねえ、第二の性に振り回されてるわけじゃないんだからな!
「……でも、心配だな、シルバー先輩。早く治るといいけど……」
僕は、そんなことをひとり、森の中で呟いた。
シルバー先輩の姿が見えなくなってから、少しだけ、いや、とても静かになったように感じる森の空気を喉にすっと吸い込む。
それから、僕も自分の勉強に戻ろうと踵を返した。
少し歩いた先で、サバナクロー寮のキングスカラー先輩と、ジャックに会った。
「こんちはっす!」
挨拶をして、通り過ぎようとする。そうするとキングスカラー先輩は鼻先をひくつかせ、酷く不愉快そうに目を細めた。
「……おい、お前。さっきからそこで何を垂れ流してやがる」
「は? 垂れ流すって、何を……」
「とぼけんな。その、反吐が出るほど甘ったるい匂いだ。……どこのどいつだ、お前のうなじにこれほど深く、消えねえ『印』を刻みやがった野郎は」
「……え?」
キングスカラー先輩の言葉に、僕は困惑する。僕は、『印』なんて刻まれてない。そもそも、『番』だっていないどころか、『発情期』だって来ないし、『フェロモン』だって出ない、欠陥品の『オメガ』なんだ。
「何の話だよ!? 僕には『印』なんてあるわけない! 『番』だっていないんだぞ!?」
「……マジか、お前……」
混乱の中、僕が問いかけると、ジャックは呆れたように言った。
キングスカラー先輩が、悪そうな顔で言う。
「だが、お前からは匂いがするぜ? 『番』を持つ『Ω』特有の匂いが、なァ。……ちっ、どうにも甘ったるくて、しつこい匂いだ。とっとと失せろ」
「悪いな、デュース。俺も、あんまりその匂いは得意じゃねえ。……また今度、な」
サバナクローの面々が去り、僕も、なんだか違和感というか不愉快さを感じながらも、教室に帰る。
教室に帰って、なんでもないような顔で、エースたちと授業を受けて。
それで、寮に帰ったあと、改めて、考えた。
……何故って。僕は、心当たりが、なくもないような気がした、からだ。
『運命の番』とやらが、僕にいるのなら。あの時、あの人しかなかったはずだ、と。
……半年前。入学してからすぐに、僕は、すごく、具合が悪くなったことがある。
呼吸が苦しくて、目の前が覚束なくて、身体には力がちっとも入らなくて。
立ち上がることさえできずくらくらしていたとき、誰かが介抱してくれた。
それは、たぶん……上級生の人だったと思う。
ナイトレイブンカレッジの式典服を着ていて、フードを被っていたから、顔はよく見えなかった。
その人は、『君が辛くなくなるおまじない』だと言って、僕のうなじに、そっとキスをした。……んだと、思う、たぶん。なんせ、僕からは見えなかったから。何か熱いものが、触れたような気しかしなくて。
そうしたらすぐに身体の不調は治まって、ありがとうございますとお礼を言ったら、その人は、『ああ』とだけ返事をして、すぐに、顔も見せずに立ち去ってしまった。
もし、僕に本当に、もう既に番がいるんだとしたら。それがあの人なのだとしたら。
そのお陰で、発情期とか、フェロモンとかにも悩まされていないのだとしたら。
……その人に、会ってお礼を言いたい。いったい、あの人はどこにいるんだろう。
僕はそんなことを、ぐるぐる考えていた。
――翌日。僕は、シルバー先輩とよく落ち合う、学園裏の森に向かっていた。
シルバー先輩にも、このことを相談してみようと思って。
でも、シルバー先輩の元へ向かった先、では。
……とても苦しそうなシルバー先輩が、胸を抑えて、うずくまって、いた。
「大丈夫ですか、シルバー先輩!?」
「デュース……っ、近寄るな!!」
シルバー先輩の腕が、僕を突き飛ばす。僕は、悲しくなった。
胸が張り裂けそうなくらい、その拒絶に、悲しくなった。つい、反射的に、涙が出ちまうくらいに。
でも。今は、シルバー先輩の身体が最優先だ。泣いてるヒマなんかじゃねえと、目元を拭った。
「違う……、違うんだ、デュース、すまない、今は……っ!」
は、と息苦しそうに、シルバー先輩が、泣きそうな顔で、僕を拒む。
僕は、少し距離を保ったところから、シルバー先輩に声をかけた。
「……シルバー先輩が、苦しいなら……僕を嫌がるなら、僕はこれ以上、近づきません。でも、放っておけないんです……。何か、僕にできること、ありませんか」
シルバー先輩は、苦し紛れに答える。
「放って、おいてくれ……。頼む、から。お前は、普段通り、学園生活を送っていてくれれば、それで、いい」
「シルバー先輩……」
「頼む、デュース……っ」
僕は、シルバー先輩に、一歩、近づいた。それは、もしかして、という予感ってか、都合の良い予想を、確信に変えるため、踏み出した一歩だった。
「デュース……!? こちらへ、来てはいけない……!」
「……それは、僕が危ないから、ですか?」
「……そう、だ」
シルバー先輩が、頷く。僕の中で、予感は確信へと変わっていった。
「どうして、危ないんですか?」
「それ、は……」
「僕が『オメガ』で、先輩が『アルファ』で。……先輩が、僕の出すフェロモンに、誘われてしまうから、なんですか」
「………………っ」
シルバー先輩は、答えない。でも、その無言と逸らされた瞳こそが何よりの肯定だと、僕は感じた。
「シルバー先輩。先輩は、僕の、『番』なんですね? 入学式のあの日、気づかないまま、『発情期』に苦しんでた僕を、助けてくれたのは……シルバー先輩、だったんですね?」
「……っ、」
シルバー先輩は、ただ、耐えている。身体を、苦しそうに震わせて。
「僕が、今日まで、他の『オメガ』たちと違って、『ベータ』みたいな普通の人の顔して、平気でいられたのは……っ、シルバー先輩が、こうやって、『番』の苦しみを、ひとりで引き受けててくれたから、なんですね……っ!!」
僕は、シルバー先輩の元へ、駆け寄る。そうして、シルバー先輩の身体を、抱きしめた。
「シルバー先輩、僕、先輩のことが、好きです。先輩は、僕のこと、好きじゃないかもしれない。でも、僕、先輩が僕のせいで苦しんでるの、これ以上、放っておきたくないです……っ」
「……っ、デュース……っ!」
シルバー先輩は、僕をその場に押し倒す。そして、僕の匂いを吸い込むように嗅ぐと、かぷりと、僕のうなじに噛みついた。
「は、デュース、俺も、お前が……!」
「はい……、シルバー、せんぱい」
潤んだ熱い目で僕を見つめるシルバー先輩の頬に、手を添える。僕はシルバー先輩を、拒む気なんてさらさらなかった。
森の中、草原の土の上。外気に晒されながら、素肌をシルバー先輩の手に好きにされていく中で。僕たちは、想いを確かめ合った。
「は……、お前に、一目会ったとき、お前のことが、『運命の番』だと、分かった。頭を直接殴られるような衝撃があって、お前を愛さなければならない、と思った」
だけど、とシルバー先輩は言った。
「……ただひとりの、運命の人のことを、俺に縛り付けては、いけないと思った。せっかく、出会えたの、だから。自由に、このような制約に、縛られずに生きていってほしい、と……」
だから、名乗り出なかった。発情期やフェロモンで不自由がないよう、番の契約だけして、あとの不利益は、すべて俺が引き受けようと思った、とシルバー先輩は言った。
「なのにこんな……、結局、お前を巻き込んでしまって、不甲斐ない……!」
「……いいんです、シルバー先輩。僕は、アンタが好きなんだから。それに……」
シルバー先輩が、僕に、普通の時間を作ってくれたから。僕は言った。
「シルバー先輩のことを、ちゃんと、人として、好きになれたんです。番だから、とかじゃなく。……シルバー先輩自身のことを、ちゃんと見て、好きになれた」
だから、僕の身体で良ければ、好きにしてください。
その言葉を皮切りに、僕はそのまま、シルバー先輩に好きなだけ愛されることになった。
今まで、シルバー先輩がひとりで耐えていた分も含めて、全部、全部。
僕の何もかもを、シルバー先輩に捧げた。
「……すまない。お前のフェロモンに当てられていたとはいえ、このような場所ですることではなかった」
事が終わったあと、シルバー先輩と、近くの湖と水魔法を使って服や身体を清める。
「いえ、先輩が苦しいなら、一刻も早く元に戻すべきですから……」
「だが、その……。お前は、初めて、だったろう」
気まずそうに言うシルバー先輩に、僕は確かにな、と苦笑いを返す。
「ま、まあ、ハイ。……確かに、初めてが外ってのは、今考えるとちょっと恥ずかしいかも」
だから、と僕は続けた。
「次、ガマンできなくなったら、今度は……部屋に呼んでくださいね」
限界が来る前に、と僕が言うと、シルバー先輩は、驚いたように目を丸くした。
「……許してくれるのか、俺を」
「許すも何も、僕、怒ってませんよ。……全部、僕の好きな人が、僕のためにやってくれたことだ。なんで怒ったりする必要があるんですか」
「……ありがとう、デュース」
僕は、シルバー先輩の頬に、キスをした。もうさすがにこんなことしても、許されるよな、と甘えたつもりで。
そうするとシルバー先輩は、僕の頬にキスを返してくれた。
「もう、勝手にひとりで無茶したらダメですよ?」
「……ああ。分かった。事後承諾になってはしまったが……。俺と、これから共に歩んで欲しい、デュース。お前のことが、好きだ。俺の、運命の相手として、一生を共にしてくれ」
シルバー先輩が左手を背中の後ろに添え、僕に右手を差し伸べる。
僕は、はいもちろん、喜んでとシルバー先輩の手を取り、その胸の中に飛び込んだ。
……結局僕は、『欠陥品のオメガ』とかじゃなくて。ただシルバー先輩という、誰よりも優しい番(つがい)に守られていただけの、普通の『オメガ』のひとりだったわけだけど。
それでも、たったひとりの大切な人と結ばれることができるなら、悪くもないことなのかなって。今はそう思っている、現金な僕だった。
*おしまい
※コメントは最大1500文字、10回まで送信できます