*現パロ(微ホラー?)な雰囲気です。話進むにつれホラー弱まってる。
*神様シルバー×人間デュースのパロディのお話
*年齢操作(シルバー???歳、デュース20歳くらい)
*相変わらずやりたい放題です。
*『痴話喧嘩』の続きです
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神様であり、恋人(本人的には夫)であるシルバーとの日々もなんやかんや続いていき。
4月も半ばになった頃、鶴来神社の神主さんが僕を訪ねて、言った。
「こんばんは、デュース様。本日は折り入ってお願いがございまして、参りました」
「なんですか?」
そんなに畏まらずに、と僕が用件を尋ねると、神主さんは説明した。
「実は今度、五月の十五日のことになりますが。こちらにおわす神様であるシルバー様に捧げる、神事の催しがございまして……」
続けて神主さんの説明することには、こうだった。
「月の世界に住む神様のお嫁様である、『星の舞姫』の代理として、本来は巫女の誰かにこの舞を舞わせるものだったのですが、この代は実際に奥方様がいらっしゃるのに代役を立てるのも神様への失礼にあたり、宜しくないかということで、奥様がいらっしゃる間におきましては、今年度から毎年、その舞をお願いしたく……」
僕はその提案というか、お願いに頷いた。もちろん、興味本位なんかじゃない。それが僕の役割だって思ったからだ。
「分かりました。神様の嫁になるってことは、そういうのもやるのがルールってことだ。それが僕の役目なら、逃げちゃ駄目ですよね。神主さんたちにはお世話になってるし、やります」
神主さんは、ほっと安堵したように息を吐いた。お世話になってる人の頼みを僕が断るわけないんだし、そんなに不安にならなくても良かったのにな。
「宜しいのですね、ありがとうございます。もちろん舞の練習などには私共も総力を上げてお付き合い致しますので」
「はは。アイツの嫁って役目、わりと他の奴に渡したくないなーって気持ちもあるんで。心配しなくても大丈夫です。……これアイツには内緒にしててくださいね」
「ふふ、承知いたしました。夫婦仲睦まじいようで何よりです」
でも、と僕が少しだけ弱音を吐く。
「むしろ心配なのは、舞の出来の方ですね……。僕、体力には自信あるけど、神楽舞みたいな細かい動きには、自信が……」
「それは問題ありません、間に合うように仕上げますので」
「えっ?」
「では、試しにこの後、一度舞ってみていただきましょうか。今の状態を確認しておきたいので」
「は、はい……」
そうして。それからというもの、神主さん、というか宮司さんの。穏やかで柔和な笑みには似合わない、舞のスパルタ練習が始まったのだった。
(ヤバい、もう毎日、警察官の仕事の後に舞の練習が入ってきて、ホントにクタクタだ……!! でも、もっとヤバいのは、僕が全然優雅に舞えてないってことだ……!!)
そう思って、夜も自宅であるトレーラーハウスの影に鏡を立て、自主練をする。そうしていると、僕のことを見守っていたシルバーが、心配そうに僕へと声をかけた。
『あまり根を詰めすぎないようにな。お前が倒れてしまっては、元も子もないのだから』
お前は本来そこに在るだけでも俺の嫁たる資格はあるのだから、とシルバーは告げる。でも、僕は、どうしてもこの舞を成功させたかった。
「でも、やっぱり。シルバーが世話してたり、世話になったりしてる、氏子の人たちだってこの奉納祭には来るんだ。そういう人達にもさ、僕はシルバーの自慢のお嫁さんなんだって思ってもらいたいだろ!」
だから頑張るんだ、と照れくさくて笑うと、シルバーはそんな僕のことを、ぎゅっと抱きしめた。
「どうしたんだ? 急に」
『お前は、やはり眩しい。俺の宝だ』
お前からしてみれば唐突な約束だったろうに、大した文句も言わず、逃げ出しもせず。ここまで来てくれたことを嬉しく思っている、シルバーは感慨深そうにそう言った。
「なんだよ、もうこれで終わりみたいな顔してさ。……これからが始まり、だろ」
僕がそう告げると、シルバーは、ああ、そうだなと頷いた。それからシルバーが、俺にも何か、お前に協力できることはあるか、何か褒美や加護を取らせようか、と言うから。それなら、と僕は答えた。
「……あのさ、シルバー。神楽舞、頑張るよ。だからさ。もし、舞が上手くいったなら、その夜は……胸を張って、シルバーの隣で、眠らせて欲しい。……いい、だろ?」
「それは、つまり……。ああ。もちろん。成功を楽しみにしている」
へへっ、約束だからな、と僕は笑って。また、舞の練習に戻った。それから小一時間ほど練習したところで、これ以上は明日に障るぞ、とシルバーに止められたので、お風呂に入って、疲れた筋肉をよく揉んでもらい、ベッドへと横になった。
そんな日々を過ごすうちに、いつしか時は過ぎ。祭礼の日である、五月十五日が訪れた。
「天気悪いな……。曇ってるのか?」
「もし雨が降り始めましたら、すぐに中止に致しますので……」
神主さんはそう言うけど、僕はここまで来て、諦めたくはなかった。だから、このあとの儀式のとき、空が晴れますように、と、とりあえず祈っておいた。どこの神に祈ればいいか分からなかったから、とりあえず一番よく知ってるシルバーに祈っておいた。
それから宮司さん(いつも一番お世話になってる神主さんだ)が祝詞を唱えて、他の神主さんや巫女さんたちが榊や供物を持ち、次々とシルバーに祈りを捧げていく。
僕は神楽殿の舞台袖で出番を待ち、やがて案内が来る。
『続きましては、我らが神の奥方様と存じます、星の舞姫による天(あめ)の神楽舞の奉納となります』
その言葉に、僕は深呼吸する。大丈夫だ。あんなに練習したんだ。だから、僕は、やれる。
さあ、星に願いを。……必ず夢は叶うって、信じよう。
そんな決意をして壇上へと上がる僕の頭上には、鈍色の暗雲が広がっていた。
シャン、という鈴の音と。筝と琴、尺八の音が奏でるリズムに合わせ、僕は動く。
大丈夫だ、出来る。あんなにたくさん、神主さんたちと練習したんだから。
シルバーの瞳の色のような、青紫の番傘と白銀の扇子を持って、天の神楽舞を踊る。
星送りの衣、という、この儀式のための、大事な、大事な。伝統的な衣装も身に着けて。
だけど、ぽつり、ぽつりと。雨粒が、頬に落ちた。雨だ。だけど、僕はまだ、そのことに気づいていなかった。
シルバーに向けて、神楽舞を捧げることだけに集中していたから。シルバーのことだけを、考えていたから。
雨が降り出した瞬間、神主さんは祭礼を中止しようとしたらしい。でも、シルバーがそれは勿体ない、見てみろと止めた。
――後から聞いた話、僕の舞を見ていた人たちはこう表現したそうだ。
我らが神に舞を捧げる、星の舞姫の下へと、まばらに降った雨露(あまつゆ)が、星々の煌めきを反射して星灯かりを照り返し。彼が典雅にも一途に舞を捧げ続けるそのうちに、我らが神のご加護か祝福か、空の雲はみるみる晴れていき。夜の帷を空ゆく恒星の瞬きのすべてが、貴方を祝福していた、と。何処からか現れた蛍のように光る若草色の光の粒が、雨露に弾け、悉く煌めいていた、と。
それで、夢中で踊っていた舞が終わった瞬間、拍手の波に覆われ。僕はぺこりと一礼をして、舞台袖へと下がった。
無事終わった、と、はあ、と深い息をつくと。舞台袖には、舞を見たあとすぐに飛んできたらしいシルバー本人が待っていて、僕を抱きしめた。
『デュース。今夜はどんな言葉を尽くしても、足りない。なんて綺麗なんだ、お前は俺の、誰より自慢の嫁だ』
「はは、そんなに喜んで貰えたなら何よりだよ……」
さ、まだ奉納祭は続いてるんだ、神様本人が見てやらなくちゃ始まらないぜ、とシルバーに本殿へと戻り、最後まで祭礼を見るように促し。
シルバーの待機する本殿の脇の廊下で、僕も祭礼の終わりまでを眺めていた。
……こんなにたくさん、シルバーは地域の人や、遠くの参拝者にも愛されて。親しまれているんだな、と。
そんな神様の嫁に、僕はなっちまったんだなあ、なれたんだなあ、って。そんなことを、実感しながら。
それから、夜。星送りの衣を脱がせてもらい、返還して。(神社にとって大切な衣装だから、付き合いの長く信頼のある特別な業者さんにクリーニングを頼むらしい)。そのときに、こちらもどうぞ、と神主さんから渡された衣装を身に着けた。
それは、白い寝間着だ。神様と、閨(ねや)を共にするときのための。今の僕ならば、きっと相応しいだろうから、と。
それから、本堂の鍵も渡された。明日には返還するように言われているが、今宵は貴方に預けます、と。
ああ、そういうことなんだな、と分かった僕は、分かりました、と頷いて。本堂の鍵を握った。
それからいったん風呂に入り、汗を流して、しっかりと身を清めたあと。
白の寝間着を身に着けて、本堂の中へと向かう。初めて入る本堂の中、そこには恐らく御神体が祀ってあるんだろう神棚の前に、一組の布団だけがぽつんと敷かれていて。
滅多に開かない扉だけど、この日ばかりは僕は本殿に立ち入ることを許されて、そうして、一晩をそこで明かすことになった。
扉を閉めて、シルバーを待つ。少しばかりの時が経つと、やがて、神棚の前にシルバーが現れた。
『デュース』
そこに現れたシルバーが、部屋の四隅に結界をかけ。そうして、僕の頬を撫で、ほほ笑みかけた。
「シルバー……」
僕が少し緊張した声色で返事をすると、シルバーは、そう焦るな、とそっと僕の頬を撫でた。
『事を始める前に、まずは、いろいろと。お前に伝えておくことがある』
「あ、ああ」
僕が姿勢を正すと、シルバーはよしよしと僕の頭を撫でた。
『まず、こちらにあるのが、俺の神体だ』
そう言って、シルバーは神棚を開き、僕にその中のものを見せた。
「これって……剣、か?」
『そうだ。俺は元々、勝負の神。勝負運や、争いの中で勝利をもたらすことを司る神だ。鶴来神社の名前の由来も、本来は劔(つるぎ)から取ったものだ』
この神体は、俺の核のようなもの。だから、一度しまわせてもらうぞ、とシルバーは僕に一度御神体を持たせると、それをまた受け取り、頷いて神棚の中へと御神体をしまった。
そうして。シルバーは言う。
『今宵の舞、実に美事(みごと)だった。褒めて遣わす』
「……あ、ありがとう、ございます……?」
神様然としたその言い方に、ちょっと畏まって、僕が答えると、ふっとシルバーは優しく笑った。
『そんなに畏まるな。お前なら、いいんだ。どんな風に接してくれても』
「シルバー……」
そうして、シルバーはじっと僕の目を見つめて、僕の頬をそっと指先で、これはとても大切なものだと言うように撫ぜる。
『……舞を納めるとき、空が晴れることを俺に祈ったな? 無事、空を晴らせられて何よりだ。あれは、お前の強い祈りを、俺が聞き届けられたからこそ、起こった奇跡なのだぞ。お前と俺が、ふたりで起こしたものだ』
「そう、だったのか……ありがとう、シルバー」
『ふっ。かまわない』
それから、シルバーは僕の唇を指先で撫でた。
『最後に、ひとつ確認するぞ。俺とひとつに結ばれるということは、人の道を外れるということ。お前はこれより、人の身ながらも、神通力や特別な加護を僅かながらに持つことになるだろう。お前の中で流れる時間も、人とはわずかに外れるぞ』
かまわないのだな、と言うシルバーに。僕は、こくりと頷いた。
『……さて。では、夜は存外、短い。そろそろ、始めるとしようか』
そうして、シルバーの、春風のようなくちづけが、ふわりと僕の唇に降りてきて。
その夜は、始まった。
そうして、褥(しとね)を共にする中で、シルバーにひとつ、尋ねられた。
『ふっ。そのうち、やや子も欲しいな。お前は考えたことがあるか?』
「え、僕、明日からお腹膨らんだりするのか……?」
そういや神の子は一夜孕みとか言うよな、今日もしかして神の子を授かったりするのか、と思っていたら。シルバーは首を振った。
『そんなことはない。お前の身体は男のものであるしな。それに、俺にその気がなければ新たな神の子は生まれない。だが、まあもし、お前との間にやや子を授かることになれば、そのときはその魂を神力で包んだ珠に入れ、この本殿で生まれ来たる日まで大切に護ろう』
その子はきっとお前からも神力を貰うし、その珠を時折、腕に抱いてもらうことにはなるだろうがな、とシルバーは言う。
そっか。そういう日も、来るんだな。……それにはまだちょっと早いかもだけど、そういう日が来てもいいかもな、って僕は思った。
「まだ、もう少しふたりでいたいけど……。でも、そういうのも、悪くない、な」
『そうか、そうか。お前はまだ、蜜月を楽しんでいたいか。……俺もだ』
ならばまた数年経った頃に改めて尋ねよう、と。そうしてまたシルバーは僕の唇へとくちづけ、僕との睦み合いに戻っていく。
僕は、それが嬉しくて。暖かくて。とても大きな何かからの抱擁に包まれているような気がして。
それで、その一晩のうちに。身も心もすべて、シルバーに捧げてしまったのだった。
そして、翌日。いつも通り警察署に出勤した僕は、エースとローズハート署長に言われた。
「お前、なんか……ちょっと変わった? 肌に透明感みたいなの、増えた気がする。パールメイクみたいな?」
「確かに、ね。なんというか……なんとなく、神秘的な輝きのようなものを感じる気がするよ」
僕としては何も変わらないけど、みんなはそんな風に感じたんだな、と。僕は呑気に、そんなことを思ったのだった。
そうして警察の仕事を終え、神社へ帰り。シルバーの告げる『お帰り』の声を聞いて。
僕は、ただいまとシルバーに抱きついて。『会いたかった』と頬や唇にくちづけてもらい。
シルバーと過ごす、ちょっとだけ騒がしくて、でも穏やかで暖かな蜜月の日々を、今日も過ごしていくのだった。
――それから、幾星霜の時が経ち。
いつしか鶴来神社(つるぎじんじゃ)には、新たな言い伝えと、不思議な神主が在るようになった。
群青の髪に、極光の目をした、幾年(いくとせ)経っても年を取らぬ、不思議な神主が人差し指を口に当て、言うことには。
『ここにおわす神様は、縁結びと家庭を守る神様でもあるのだ』と。
元々こちらにおわしたのは、勝負事や争いごとに良い結果をもたらす、人好きな良い神様であったのだが、時代が平和になるにつれ、戦いごとへの需要が減り、人々の役に立てず淋しく思っていたところに、ある日、一目惚れした人間の嫁をひとり、取ったのだという。
それからは人間の嫁の言うことをちゃんとよく聞いて、浮気もせず、子宝に恵まれ。
己の人生を全うした人間の嫁を神々の世界に迎え入れたあと、また自分らのような家を持つ幸せを氏子たちにも分けてやろうと、家庭円満のために尽力する、より良き人の守り神になったのだとか。
まこと不思議な神主の語る、この話がどこまで本当かは分からない。
だが、何年と経った今でも、番の神様として、夫婦仲の円満なふたりのことは、いつまでも語り継がれた。
*おしまい
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