痴話喧嘩

*現パロ(微ホラー?)な雰囲気です。話進むにつれホラー弱まってる。
*神様シルバー×人間デュースのパロディのお話
*年齢操作(シルバー???歳、デュース20歳くらい)
*相変わらずやりたい放題です。
*『荷入れ嫁入り』の続きです
 
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 あれから、神様であるシルバーのいる鶴来神社(つるぎじんじゃ)の敷地内へと、神様のお嫁さんとして引っ越した僕は。
 無事4月になって、近所の交番で新米警察官として勤め始めることになった。
 朝から夕方まで、交番の中で仕事をし、そして、夜、仕事を終えると、僕は神社へと帰る。
 ひとつ想定外だったこととしては、若干帰り道が暗くて、石段登る辺りとか、そのまわりの人気がない茂みあたりとか、微妙に怖いな、ということくらいだった。
 なんか、物陰からなんか出てきそうじゃないか? 不審者とか。まあ、僕もそれなりに警察学校で鍛えたんだし、いなせるはずだけどな!
 なんて、颯爽と茂みや物陰から出てきた不審者や凶悪犯罪者を捕まえ、お手柄になる妄想をしつつ家(という名の、トレーラーハウス)に帰る。……なんだよ、いいだろ。立派な家だろトレーラーハウスも。
 すると家の中では既に今日の参拝客の相手を終えたらしいシルバーが僕を待っていて、お帰りと笑った。
「夜食、作っておいたぞ。もし材料を使いすぎていたり、味が薄かったりしていたら、言ってくれ。調整する」
「ありがとう。大丈夫だよ、僕たくさん食べるし。てか作ってくれて、悪いな。シルバーの分はいいのか?」
「俺は平気だ。神主たちが、毎朝、俺への食事を供物として捧げてくれているから、それを食せば問題ない」
 人の姿に顕現したシルバーは、そう言って笑う。家具や火を細かく使いたいときや、人の姿をとって食事をしたいときなんかはこうして人の姿になるみたいだ。
 ちなみに僕の実感としては、あまり神様と同居しているという気分はなかった。
 なんていうか……気の利く同居人兼恋人が、暮らしの中に急に一気に増えたな、みたいな感じで。
 そしてシルバーもそれでいい、と言っていた。夫婦なのだから、変に畏まるよりも、それくらいの温度でちょうどいい、と。
 僕は、そう思っていたんだ。でも、このあと。シルバーと暮らしていく上で、多少なり、トラブルがあった。

 神社の境内の中では、何も問題がない。神主さんたちに行ってきますとかただいまの挨拶をしたりして、お隣さんとして仲良くやれてる。ちゃんと手土産の菓子も月の初めに渡して、シルバーとのことや、シルバーが神として気にしているものの様子を経過報告することもしているし。基本的には、植物の手入れが丁寧で嬉しいと褒めていたとか、良いことを報告することになるし。気にしてることといえば、もうすぐ手水場に蝸牛が増える頃だから、気を付けておくように、とか。そういう注意くらいだし。
 そう、だから。問題がなかったんだ。……神社の中のことまでは、な。

 4月になって、新米警察官となった僕の仕事が始まり、僕が、泥棒やひったくりなどの犯人を追いかけていると。
「危ねえ! 避けろっ!!」
 犯人の目の前からドラム缶が転がってきたり、はたまたその辺の看板とかが落ちてきて道を塞いだり。
 ……危ないだろ! という事故が相次いで、僕が呪われてるんじゃないかと署内で噂になったりもした。
「キミ、お祓いとか行く気ない? あと、遠くの島とかに転勤とか言われたらどうする?」
 そんな風に尋ねる上司のローズハート署長に、僕は申し訳なくなりながら答える。
「その、正直、転勤とかお祓いなんてしたら、もっと危ないと思います……」
 そう告げると、ローズハート署長は言った。
「キミ何に憑かれてるんだい……」と。
 呆れた顔で。僕が答えに困っていると、事情を知るエースが助け船を出しに来てくれた。
「いやコイツ、マジでヤバイのに憑かれてるから、ホントにどっかやらない方がいいですよ。神様レベルの奴だから」
「……あまりボクはそういった神仏の類は信じていないのだけれど」
「いやいやマジで。こいつ、ガチのマジで神社に住んでるし! 激ヤバ案件ですよ! 下手に触れない方がいいって!」
 エースの言い方は気に障るが、一般人から見ればそういう風に見られるのも仕方ない。
「はは……どうしたら信じてもらえますかね……」
 僕としてもこういう形で困ることになるとは思ってなくて、と言うと。
「まあいい、でもそういう形での処分が下ることもあることを考えておくように――」
 そうローズハート署長が言葉を締めようとしたとき。……机の上にあった、花瓶にヒビが入り、突如として割れた。
 僕はそれを見て、頭を抱える。……シルバーだろ、間違いなく。
「……えっと。話は、わりと通じる方なんです。犯人たちに危害を加えないよう説得は試みてみるので、転勤とかの話は、やめておいた方がいいと思います、今のところ……」
「……意外と上に行くにつれ、オカルトを信じる人は多いし。それで上層部を説得できるといいけどね……」
 本当に呆れたことが起こるな、と溜め息を吐いて。ローズハート署長は割れた花瓶を片付けて簡易的なものに替えておくよう、僕らに言いつけた。僕は申し訳なかったので、ペットボトルを切り抜いた簡易花瓶をすぐに作って、その場を片付けた。

 そうして家に帰るなり、シルバーに僕は文句を言った。
「シルバー! 駄目だろ、犯人たちに危害を加えたら! 彼らだって今間違った道を行ってるだけで、更生の道は残ってるかもしれないんだぞ!? 万が一死んじゃったりしたらどうするんだ!」
 そう告げる僕の言葉に、シルバーはしれっとした顔で言う。
「死にはしない。お前が、命を狙うのはやりすぎだと言っていたから、もう狙っていない。現に死傷者は出ていないだろう」
「それはそう、なんだけど……!」
 そもそも脅かすようなこともしないでくれ、と僕が告げると、何故だ、とシルバーは悲しそうな顔をした。
「警察になるのは、お前の選んだ仕事だから、仕方ない。だがお前が危険な目に遭うと思うと、許せない。だから先回りして守ることの、何がいけない?」
 そう告げるシルバーに、僕は、頑張って、頭をひねって、言葉にした。
「何がいけないかって言ったら……、えっと、僕を、守ってくれるってか、守ろうとしてくれること自体は、嬉しいよ。でも、僕も、もう守られてばっかの子どもじゃないんだ! 自分の力で、誰かを守ったり、自分を守ったりすることもできるし、それに……!」
「それに、なんだ?」
「……それに、その。警察官としての仕事は、僕の領分だ! アンタにとって、神様の仕事が僕に口出しされると困ることであるように! 僕はアンタの仕事について、口出ししたことも邪魔したこともないだろう。でも、アンタは口出しも邪魔もするんだ。そりゃ本当に転勤になったりしたら僕も困るけど、それはちゃんと上司に話してお願いすればいいのであって、何も脅かす必要まではないし……!」
 何より、人に危害を加えようとするアンタを見たくない、と、だんだん悲しくなってきて、泣きそうになりながら僕が告げると、シルバーは、僕の手を取り、すまない、と言った。
「……そうか。俺は危害を加えているつもりはなかったのだが、人の子にとっては、それでも十分な脅威、なのだな」
「シルバー……うん、そうなんだ。僕、人のことが好きで、それで、優しくておおらかで、穏やかなアンタが好きだから、いつも、そうでいてほしいんだ……」
「……今、なんと?」
「え? だから、優しくておおらかで、穏やかなアンタが好きだよって……」
 そう告げると、シルバーは僕のことをぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい。俺のことを好いていてくれたのか、デュース。いつからだ?」
「えっ、わ、分かんねえっ! なんか、一緒にいたら、いつの間にかって感じで……っていうか、今はその話じゃないだろっ!」
 ちょっと照れてシルバーに怒ると、分かった、とシルバーは頷いた。
「……お前の仕事は、お前の領分だと言いたいのだろう。俺も、俺の領分である仕事にあれこれ口を出されたら、いくらお前でも不愉快だ。配慮が足りず、すまなかった」
 だがそれでも、お前の仕事は身の危険が及びやすいことであるのは、本当だ、とシルバーは言う。
 だから、本当の本当にお前が困り、打開策もないような危機であれば、いつでも俺はお前を助ける、どんな手を使ってでも、と続けた。
 僕は、それにようやく頷ける。
「最後の手段、ってやつだな。……それがあるのとないのでも、だいぶ心構えが違ってくるよ。ありがとう、シルバー」
 やっぱりアンタは、話せば分かってくれる奴だな、と僕が言うと。シルバーは、なるほど、話して分かればいいのだな、と頷いた。
 ……なんか嫌な予感がしたので、僕は一応言っておく。
「あ、そうそう。花瓶割ったりするのも、良くないからな! 花瓶に罪はないんだし、そもそも花が可哀想だろ」
「ああ。要は話し合って了承を取ればいいのだろう? お前の言いたいことはよく分かった、心配するな」
 さ、気を取り直して今日の夕餉を食べ、共に風呂に入り、睦みあおうじゃないか、と笑うシルバーに。僕は、本当に大丈夫かな、と思うのだった。

 ……翌日。案の定、ローズハート署長から言われた。
「キミの憑かれてる神様って、銀髪の、紙の仮面をつけた男神かい?」
「アイツが何かしましたか……?」
 僕が恐る恐る尋ねると、ローズハート署長は言った。
「……昨日の夜、夢に出てきて言うんだよ。『俺も人の事情をよく理解している。だから一日二日くらいは、勘弁してやろう。だが、もしデュースをこの土地からむやみやたらに長く、そうだな、半年や一年以上も離すことがあれば、デュースを無事五体満足で俺の元に帰す日まで、お前たち警察にとって、眠れる日々はないと思え』って。まったく……。アレが夢の中で、そしてキミの憑りつかれた神様でなければ、脅迫罪で逮捕しているところだ!」
「はは……」
 話し合うって言っただろ、シルバーのやつ! 署長を脅かすんじゃねえ! 神様を訴えようとしてる署長も署長だけど!!
「というわけで、君の転勤を命じようかと考えていた上層部も揃って同じ夢を見たそうなので。このことは不問になったよ。……その代わり、キミ、曰くつきの子としてちょっと署内で有名になったけど」
 まあ構わないよね?とローズハート署長は僕に事後確認を取る。僕は、これもシルバーという神様の傍にいるってことを、自分で選んだ道なら仕方ないか、仕方ないんだよな、うん、と。……なんとかギリギリ、理不尽を飲み込むのだった。
「とりあえず、僕、神様に好かれてるだけで。オカルト系に傾倒してるわけではないってことだけは、誤解解いといてください……。僕個人としては普通に、同僚とか上司とかとも仲良くしたいんで……」
「……君を呑みに誘った上司や同僚が、おかしなことに巻き込まれないならね」
 ローズハート署長の言葉で心配になって、あとでシルバーにそれとなく『僕が呑みに誘われても何もするなよ』と伝えておいたところ。
『俺も他の神々と呑みに行くことくらいはあるから、飲み会にくらいはいちいち目くじらは立てない』と言っていて。
 僕はなんとか、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。のも、束の間。
『だがお前を持ち帰ろうとするような不遜な輩がいれば、容赦はしないがな』
「僕酒は強いし、わざわざ僕なんか持ち帰るような奇特な奴もいないっての! ちょっとは僕や人間を信用しろっ!!」
『お前の魅力を信用しすぎているだけだ』
 やっぱり僕、この神様と上手くやってけるかなあ? と、ちょっと首を傾げる羽目にもなったのだった。
『心配するな。できるだけ、お前が好きでいてくれるような俺でいようとは思っている』
「……なら、まあいいんだけど! ほんとに危ない神様になったりしたら、僕、アンタのこと嫌いになっちまうからな!」
『それは恐ろしいな……気を付ける』
 そうしてシルバーは、機嫌を直しておくれと僕の頭をよしよしと撫でる。
 そんなちょっと我侭で、でもやっぱり優しい(ような気がする)神様との日常を、なんだかんだ今日も僕は過ごしているのだった。

*おしまい

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