荷入れ嫁入り

*現パロ(微ホラー)な雰囲気です
*神様シルバー×人間デュースのパロディのお話
*年齢操作(シルバー???歳、デュース20歳くらい)
*相変わらずやりたい放題です。
*『惹かれ縮まれ』の続きです
*1回執筆途中にコピペミスか操作ミスか何かで同じ文章が重なってしまったことがあったので、もしかしたらその部分が残っているかもしれません。適宜修正はかけますが、ミスが残ってしまっていたらすいません。
 
以上すべて大丈夫な方はスクロール↓

 

 

 

 それから、また翌日。僕はシルバーのところに通おうとしていた。
「デュースじゃん。どこ行くの?」
「エース」
 元々高校の同級生で、警察学校でも結果的に同期になり、この春から同僚になる腐れ縁のエースに会った。
「神社だ」
「神社ぁ? お前、そんなに信心深かったっけ?」
「別に。なんでもいいだろ、行く用事があるから行くんだ。放っといてくれ」
 じゃあな、と僕はその場で、エースにまたなと告げ、シルバーの待つ鶴来神社へと向かう。
 エースが怪訝な顔で僕の背中を見送っていたことを、今の僕はまだ知る由もなかった。

『デュース。来てくれたか』
「シルバー……本殿で待つのはやめないか? ここってめちゃくちゃ大事なとこなんだろ? 僕、気軽に扉の前まで来てたけど、本来あんまり立ち入らない方がいいと思う」
『ん、そうか? しかし、拝殿はありがたいことに参拝客が途絶えない。それなりに人の目があるからな……それならばどこか別の場所で待ち合わせをした方がいいだろうか……』
 シルバーは考え込む。僕は境内に入ったらすぐ分かったりしないのかと尋ねると、分からないことはないと返事が返ってきた。
『お前が来たとき、玄関口まで俺が迎えに行けばいいのならそうするが。怪しまれはしないか? お前の連れてきた人の子に』
「え? 連れてきた……?」
『あれだ。お前の友だちではないのか?』
 シルバーが指さす先には、こっそり着いてきていたのか、エースが立っていた。
「エース! お前こんなところで何してるんだよ!」
「こんなところで何してんの、はこっちのセリフなんですけど! ……お前、さっきから誰と、ってか何と喋ってるワケ!? 見えない何かと喋ってて、見ててガチでヤバいんだけど!!」
 少し青ざめた顔で、エースは告げる。あ、なるほど。エースには神様姿のシルバーが見えてないから、怖いんだな。
 ……うーん。どうしようかな?
「神主さん、これヤバくないんですか!? アンタのとこの神様は何やってんの!?」
 僕が迷っていると、エースが神主さんに食ってかかる。こら、失礼だろ。
「いえいえ。何もまずいことはありませんよ。デュースさんはうちの神様が奥方に選ばれた、特別で大切な方なのですから」
 にこやかに話す神主さんに、エースの勢いは多少削がれる。
「それ、大丈夫なやつなの……?」
「今のところ、ご夫婦で穏やかに過ごされていらっしゃいます。こちらにおわすのは穏やかで心優しい神様なので、そう危ないことはないかと」
「……そうすか、分かりました……」
 とりあえず神主さんに食ってかかるのはやめたようで、エースは僕らの方にツカツカと近寄ってきた。
「神様と結婚って何!? それお前、大丈夫なの!? 」
 一応、コイツなりに本当に心配してくれてはいるみたいだな。そう思った僕は、シルバーに目配せをする。
「エースには、直接見せた方が早いかな……? シルバー、行けるか?」
 僕がそう相談すると、シルバーは頷いた。
『ふむ。本来、そう軽々しく姿を見せるものではないのだが……。まあ、良い』
 この赤毛が俺を祓おうとしたり、余計なことをする前に牽制しておくか、お前の友人ならそれくらいは取り計らってやる。
 そう言って、シルバーは目の前で、人の姿へと顕現した。
「エース、と言ったか? ……俺がお前の警戒している、デュースを貰った神だが。何か、言いたいことでも?」
 突然現れたシルバーを見て、エースは少し驚いたようだった。
「……ええっと……まずアンタ、自分のことを神様だと思ってる変な人、ではないんだよね?」
「ふっ。その身で試してみたいか? 俺は構わないぞ」
「や、やめときまーす……」
 なんかハラハラするな。このふたりの会話……。聞いてる僕が止めに入りたくなる。
「えっと。デュースはほんとに大丈夫なの? 命とか取られたりしない? あとついでに何かまわりの、オレにも影響あることあったりしない?」
「安心しろ。俺が積極的にデュースの命を奪うことはない」
 お前たちの基準では老爺になったとしても、俺は変わらずデュースを愛せるしな、とシルバーは当たり前のように言う。
 ……愛が重いだろ、と僕はちょっと恥ずかしくなって頬を赤らめた。
「その言い方、場合によってはオレのは奪うかもしれないのね……」
「お前の立ち回り次第では奪われない。例えば、俺をデュースから祓おう、引き離そうなどと愚鈍な考えを持たず、俺たちの善き隣人として関係を祝福するのであれば、むしろ加護すら与えられるだろう」
「もはや脅しじゃね? って、神様なんてそんなもんか……」
「あんまりエースを怖がらせるなよ、シルバー。こいつ、ビビリなんだから」
「おや、そうだったか」
「ビビってねえし! ……っていうか、嫁入りってマジで何? デュース、神社に住むの? その準備でもしてたの?」
 その言葉に、僕より先にシルバーが答える。
「確かに、じきに越してきてもらいたいとは考えているが。その辺りの話はしていなかったな。どうする、デュース?」
「えーっと。住めるのかな、そもそも僕、ここに」
「住めなくね? だってここ、神社だろ? トイレも古そうだし、電気もろくに通ってなさそうじゃん」
 そのエースの言葉に、シルバーは自慢げに言った。
「厠ならば、つい先日新しくなったところだぞ。神主たちが職人を呼んで、工事をしたばかりだ」
 あとは電気か? と言い出すシルバーに、僕は先に牽制する。
「あっ、また神主さんたちに無茶言うなよ! 相談するとこまではまだいいけど!」
「なら今から相談するか」
 そんな軽口を叩き合う僕らを見て、エースは、お前仮にも神様相手にいつも通りすぎね? 遠慮ないね、と呆れた顔をしているのだった。

 そして神主さん(とついでにエース)を交えて相談してみたところ。
 途中、僕が持ってきたお金を賽銭や寄付の形にしてもらえれば工事費用としては解決するだとか、でもやっぱり本殿に住むのは難しいだろう(僕も良くないと思った)とか、シルバーもさすがに元々計上されていた己の供物代以上の賽銭に手をつけるわけにはいかないと困った顔をした(あのお団子代、元々シルバーに捧げられる供物代の部分だったのか……)だとか、光熱費の支払いはどうするとか、コンテナハウスが現実的か、だとか。いろいろな議論が交わされた結果。最終的に、神社の余っている部分の敷地内に、風呂・トイレ付きのトレーラーハウスを建ててそこに住む方向になった。
「いいんですか? 神聖な土地だろうに」
 僕が尋ねると、神主さんは申し訳なさそうに言った。
「いえいえ、むしろこちらからお願いしたいくらいで。費用をあまり協力できず心苦しいのですが、我らの祀る神様が迎え入れたいと仰る以上は……」
 そう言って畏まる神主さんに、僕はシルバーを睨む。
「シルバー、また神主さんたちに圧かなんかかけたろ。だめだぞ!」
「かけてない。だが、畏れがあるのだろう。お前が嫁入りしなかった時に降りかかる災いを恐れてのことだ、恐らくはな」
 そしてその憂慮は正しいと言える、とシルバーはなんでもない顔で言う。まったく、本当に僕が嫁入りしないって言いだしたら何をするか分からない奴なんだからな。
「分かった、とりあえず神社の人がそれでいいなら、敷地内にトレーラーハウスとか建てる方面で準備してってみる。シルバーもそれでいいんだろ」
「ああ。敷地内にいてくれると、会いやすいし守りやすい。それで構わない。よくやったぞ、宮司」
「有り難きお言葉、感謝いたします」
「オレなんでこんな機会に立ち会ってんだろ……」
「乗りかかった船だろう。お前も俺のデュースに、協力してやると良い」
 それから僕はすぐに、引っ越しの準備に取りかかった。エースと一緒に専門店に行き、詳細な事情を誤魔化してもらいつつ、中古で状態の良いトレーラーハウスを探して、安く買い。
 神主さんたちと相談して、工事の日程と土地の範囲を決め。案外工事がうまく行って、早ければ2~3日で住めるってことだったから、僕はその間に元々入居予定だったアパートからの引っ越し手続きなんかを進めた。
 その辺のことで少し費用はかかったけど、まあでも、最初に考えていたよりはずっと安く済んだ。
 ワンチャン神社のすぐ横あたりの土地を買って、一軒家まで建てる必要があるかとか、そこまで考えたからな……。
 それに比べれば、ずっと安く済んでくれた。僕がちゃんとローンを返済しながら4~5年ちゃんと働いていけば、十分返せるくらいの金額だ。シルバーは金勘定に頭を悩ませる僕の横で、申し訳なさそうにしていた。
『本来は妻を迎え入れるための住居を整えるのは、夫の仕事だ。それなのに、俺はこうしたことでは力がないばかりに、不甲斐ない』と。僕はそれが気になって、シルバーに曇った顔のままでいさせたくなくて。
『僕、車とかバイクが好きでさ。実は昔からこういうトレーラーハウスに住んでみたかったんだよ。夢が早く叶っただけだ、気にするな』って強がりを言うのだった。
 神主さんたちは、工事費用をお手伝いできない代わりに、と。駐車場をひとつ貸してくれ、そして、土地の貸代を免除してくれると言った。僕はそんなの良くないですよ、と言ったが、神主さんたちの方が、奥方様のここで暮らしていく当然の権利を奪えば、私どもにどんな罰が当たるか分かりませんから、と譲ってはくれなかった。なので、じゃあせめて、時々良いお菓子とかいろいろ差し入れしますね、それくらいしないと僕の気が落ち着かないので、ということで神主さんたちとの話は落ち着いた。
 これからお世話になる人たちに、挨拶しておくのは大事だ。どんな社会にだってルールはあるんだから。
 ついでに僕が4月から警察官になるということを伝えると、それはありがたい、とも言っていた。近年、意外と神社での盗難やマナーを知らない参拝客との衝突など、犯罪やトラブルも増えているのだとか。その話を聞いて、罰当たりな奴らだな、と思いつつも、分かりました、それならここにいる間は、見張り頑張ります、何かあったらいつでも呼んでください、と僕は答えた。
 そんなこんなで完成した、僕のマイホーム(という名のトレーラーハウス)。いつかは買ってみたいと考えてた憧れのマイホーム、こんな形で買うことになるとはな。まあでも、意外と見た目よりも中が広くていいな。と僕は内装を見て感じる。
 今日からここで暮らすのか、とベッドに転がったり椅子に座ったりしてみる。部屋を覗きに来たシルバーも、ウッド調の内装をなんだか気に入っている。
『洒落ているのに、木の香りがして落ち着く。夜はここでお前と眠ることにする』
「はは、ベッドが狭くないといいけど」
 まあでもシルバーはそう言うと思ってたから、ひとり暮らしでなく、ふたり暮らしの設計にしておいて良かったかもしれないな。ブランケットもひとりぶんよりも多めに買っておいたし……。
 あとは元の部屋を引き払って、入りきらない家具とか売って、ローンの足しにするだけだ。……元のアパートは入居後すぐに引っ越すことにはなって、余計な費用はかかったけど。まあでも、家具とかたくさん買って本格的に住み始める前で、むしろ良かったのかもな。
 そんなことを思いながら、神社から始まる警察としての新生活に思いを馳せていると。
 シルバーが、ベッドに寝転ぶ僕に添い寝して頭を撫でてきた。
『引っ越しお疲れ様だ、デュース。……もう眠るのか?』
「ん……、確かに疲れたし眠いけど、シャワーくらい浴びてから寝なきゃな……」
 あ、でもシャワーとかの音、うるさいかな? ひょっとして。と、シルバーに言うと。
『それなら、この家の中に、音が漏れなくなる結界を張っておいてやろう』
「いいのか? そんなにたくさん力を使って、平気なのか?」
『問題ないし、かまわない。お前が夜伽をしてくれるときにも、そのうち役に立つだろうからな』
「それが目当てかよ!」
 僕がツッコミを入れると、シルバーは冗談だと笑った。ったく、本当に冗談だろうな?
『さあ、湯浴みをしてくるといい。俺も入りたくはあるが』
「神様は神様の温泉みたいなのがあるんじゃないのか?」
『あるにはあるが、神無月でもないのにあまり社を留守にはできない』
 それなら一緒に入るか、ちょっと狭いけど、と言ったら、シルバーは珍しく、少し照れくさそうにした。
『褥(しとね)も共にしていないというのに、裸の付き合い、か? お前は時折、少し大胆だ。……だが、そう言ってくれるのならば、断ることもないだろう』
 そうして僕は、シルバーと一緒にちょっと狭いお風呂に入った。シルバーは神様姿のとき、少し透けているから、僕としては邪魔にまではならなかったけど。やっぱ少し、自分から言い出しといてなんだが、照れくさかった。
「はは、神様とお風呂ってなんか緊張するな。いや、シルバーと一緒だからか?」
『ふっ。もっと意識してくれ。俺のことを、夫である前に恋人だと思ってくれてもかまわない』
 そう告げるシルバーに、そういえばなんで僕には二十歳(はたち)まで何もしなかったんだ、会いに来たり夢枕に立ったりできたろうに、と尋ねると。シルバーは言った。
『先ほども言ったが、あまり社を留守にしてはいけない。会いたくても、俺から会いに行けなかった。お前は小さい頃、この神社のまわりでよく遊んでくれていたから、よく会えた。いつしかお前が、俺に会いに来てくれなくなったのだ』
 そう淋しそうに告げるシルバーに、僕は、ごめん、と言って。
「……これからは一緒にいられるんだろ」
 と、透けるシルバーの身体をそっと抱きしめるように形作った。シルバーは、ああ、と頷いて。
 僕を抱き返し、頭をぽんぽんと撫でた。

 それから、僕たちは。木の板の上にマットを敷いた簡易的なベッドの上で、ふたりで横になった。
 ブランケットを被り、シルバーにも一応被せると、暖かいと嬉しそうにその中にシルバーは潜っていた。
 なんていうか、人間くさい神様だよな、と思った。でも、神様なんてわりとそんなもんか。温泉が好きで、酒が好きで、よく喧嘩して、お嫁さんが大好きで、みたいな。そんな漠然としたイメージくらいは、僕にもある。
 シルバーもなんやかんや、その例には漏れないタイプってことみたいだ。
「おやすみ、シルバー。明日からもよろしく」
『ああ。デュース。……俺からも、よろしく頼む。お前がだんだん、俺の傍へと来てくれていること、本当に嬉しい』
「まあ、……シルバーのお嫁さん、らしいからな!」
 そうして僕は目を閉じ、シルバーの手に髪を撫でられる感触のままに、意識を手離す。
 もう、僕は誤魔化せていなかった。いつの間にか、日常の日々を過ごす度、だんだんと。
 ちょっと独占欲が強いけど、でもやっぱり穏やかで優しい神様であるシルバーのことを、好きになっていっていて。
 自分の今の状態を、立ち位置を。どれも嫌だとは思ってなくて、むしろそれがいいとすら思っているってことが。
 ……だけどまだ、シルバーの言う『褥を共にする』とか。そういう勇気は、まだ出ないので。
 あと少しだけ、ほんのちょっとだけ。シルバーにはその夜を待ってもらおうかな、なんて思っているのだった。

*おしまい

送信中です

×

※コメントは最大1500文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!