※『SEXしないと出られない部屋』ネタです。細かいことは気にしたら負け。
※ふんわり7章バレあります。
※途中、逆みたいな流れありますが、安心してください、ちゃんとシルデュです。
↓以上大丈夫な方はスクロール
目が覚めたら、そこは、知らない部屋だった。 ……寝る前のことを思い出す。あれ、僕昨日は確か、ハーツラビュル寮の四人部屋で、自分のベッドで寝てたよな……?
うん、確か、トレイン先生に出されてた課題とか、授業に追いつかなかった予習や復習とかをしてから寝たはずだ。
少なくとも、こんな壁も床も真っ白な、ひとつも窓のなくて四角いよく分からない部屋で寝た覚えは無い。とりあえずベッドから降りようとすると、隣に人がいることに気付いた。
「……ぐう」
「えっ、し、シルバー先輩!?」
堂々としたいびきをかきながらいっこうに目を覚まさず隣で寝ていたのは、何を隠そう僕の憧れの先輩であり、その、なんていうか、いわゆる好きな人でもある……シルバー先輩だ。いつから好きになったのか、なんて、正確にはよく分からない。エースや監督生に、『お前シルバー先輩見すぎじゃね? 話しすぎじゃね? 好きなの?』ってからかわれてからようやく自分でも気付いたくらいなんだ。
お陰で、最近ではその、シルバー先輩とデートして、好きだって言ってもらえたり、ぎゅっと手を繋いだりとか、恋人みたいなことをする夢をよく見る始末で……。さすがにまだ、夢の中でもキスとかその先はしたことないんだけど……って、そんなことはどうでもいいんだ。
それで、その好きな人が、朝起きたら隣でベッドに寝てました、なんて、こんなわけの分からない場所じゃなきゃ嬉しすぎるシチュエーションなんだけど……。
何となく、やましいことは別にないが恐る恐る服を確認すれば、僕も先輩も最低限のシャツとズボンくらいは身につけていた。良かったような、残念なような……。持ち物は何も持っていなかったけれど、そもそも寝ているところを連れてこられたなら、何も持っていなくて当然だ。
とりあえず、目の前に見えるドアを開けてここがどこなのかを確認しよう。
ガチャリとドアノブを回す。……開かない。引き戸やからくり仕掛け、建付けの悪さを疑ってみる。開かない。なんなら魔法をぶつけてみる。……傷一つつかない。
「すいませーん! 誰かいませんかー!! 閉じ込められてます、開けてくださーい!!」
大声で外に呼びかけてみる。……けれど、しんとした静けさが部屋に広がるばっかりだ。
「とっとと開きやがれ、オラァ!!」
ドアを蹴破ろうと回し蹴りをキメるが、やっぱりそっちもビクともしない。
「ん……」
代わりに部屋に響いたのは、シルバー先輩の吐息だ。どうやら僕が騒いでいたので、その騒ぎで目を覚ましたらしい。
「……ここは……?」
「シルバー先輩! おはようございます、実は……」
「……デュース?」
シルバー先輩はのそのそと僕の方へ歩いてきて、ぐっと顔を近づける。……ち、近い!
「………………」
ぺたぺたとシルバー先輩は僕の頬に触れる。な、なんだ? 先輩、何がしたいんだ?
「今日のデュースは、まるで本物みたいだな」
「本物ですよ!?」
どこかに僕の偽物でもいるのか!? なんだか頓珍漢なことを言い出すシルバー先輩に思わずツッコんでしまう。
「本物? そうか、本物……」
「はい、正真正銘本物のデュース・スペードです……」
「……本物だと?」
シルバー先輩の声から呑気さが消え、鋭さを帯びる。良かった、目が覚めたみたいだな。
「すまない、夢かと思っていた」
「あはは……、寝ぼけてたみたいですね!」
あ、目が覚めても別に距離取るわけじゃないんだな。なんとなく恥ずかしい気持ちになりながら、僕の方から距離をそれとなく離す。
「ここはどこだ? お前の部屋か? また俺は眠ってしまったみたいだな。お前が俺を運んでくれたのか?」
「いえ、そういうわけじゃなくって……」
「じゃあ、一体誰が俺を運んだんだ?」
「ええーっと、ですね。まだ僕も状況を把握しきれてないんですけど……」
僕たちどこかから誰かにここに連れてこられて、部屋に閉じ込められてるみたいです、と簡単に説明した。シルバー先輩が寝ている間に、ドアを開ける方法をいろいろ試してみたことも。
「……はあっ!!」
シルバー先輩はドアを思い切り殴る。けれどやっぱり、僕が蹴ったときと同じようにドアには傷ひとつついていなかった。
「どうやら、物理無効の魔法がかかっているようだ」
「でも、魔法も効きませんでしたよ?」
「確かに、そのようだな」
シルバー先輩は自分の手でも魔法をぶつけ、それでもドアが開かないことを確かめる。
声を上げても暴れても誰も返事をしなかったことも伝えると、まわりに人がいない場所か、あるいは部屋全体に防音魔法がかかっているのだろうとシルバー先輩は推測してみせた。
「密室ということなら、この部屋のどこかにカギや抜け道があるかもしれない。手分けして探してみよう」
「はい!」
そしてシルバー先輩と手分けしてカギを探し始めた、数分後。ベッドまわりを捜索していたシルバー先輩が、何やら声を上げた。
「これは……!」
「カギ、ありましたか?」
部屋の壁や床を隅々まで調べていた僕が声をかけると、シルバー先輩はなぜか僕にこんな質問をぶつけた。
「……ときに聞くが、お前にはこのあとどうしても外せない重大な用事などはあったりするか? それに出るためなら、多少の犠牲は厭わないくらいの……」
「なんですかその用事!? ……特にないはずです。今週はなんでもない日のパーティもないし、寝る前に考えてたのは、明日は休みだし、校庭走って陸上の自主練しようかなってことぐらいで……」
「そうか。……この部屋は簡素だが、ベッドやシャワー、キッチンなど最低限の生活設備は整っている。お前に急ぎの用がないのなら、じっくり部屋の中を探せるだろう」
「確かに。長く出られないかもって考えると、設備が整ってるのはありがたいですね」
「……ああ」
シルバー先輩は気まずそうに目を逸らす。上手く誤魔化された気もするけど、先輩はいったい何を見つけてしまったんだろうか。気になるけど、あのシルバー先輩が隠すようなことだ。あえて聞く方が怖い気もする。
気を取り直して部屋に備え付けられた冷蔵庫を見てみる。そこに入っていたのは、いくつかの食材の他に、ペットボトル入りの水だ。何本か入っている。よく冷えていておいしそうだ。それ以外にも、謎の瓶がいくつか置いてある。どれもピンクや赤の小瓶で、ハートのフタやラベルがついている。ハートの女王をものすごく好きな人が作った魔法薬なのかな。
「シルバー先輩、なんか冷蔵庫によく分かんない魔法薬ありましたけど、これ使って脱出できないですかね?」
「……魔法薬で脱出、か?」
「薬を飲んで体を大きくしたり、小さくしたりとか……?」
「……その、恐らくだが……その魔法薬では、お前の思ったような展開にはならないと思う」
「あはは……やっぱりダメですかね。とりあえずこれは置いておいて、どうしてもダメだったときには、ダメ元で試してみましょうか!」
「試すかどうかはともかく、そうだな。今は置いておけ」
シルバー先輩に言われた通り、ピンクの魔法薬を冷蔵庫に戻す。
他に使えるものがないかと部屋を探していると、クローゼットにいろいろな服があるのを見つけた。……いやでもこれ、ナースとかメイドとかバニーとか、ほとんど女の人用の、それもコスプレ系の服ばっかりだな……。なんでこんなものがあるんだ? 部屋の持ち主の趣味か?
これは役に立ちそうにないなとため息をついてクローゼットのドアを閉めた。
シルバー先輩の方はといえば、なぜかベッドまわりを熱心に調べては首を振り、ため息をついている。
「親父殿……? いや、まさか。いくらあの人でも、これは……だとしたら、一体……?」
「シルバー先輩? どうかしたんですか?」
「……俺たちをここに閉じ込めた犯人のことを考えていた。いったい、誰がどのような動機で、こんなことをするのかと」
確かに。シルバー先輩を好きな僕としては、好きな人と二人きりになれて万々歳ともいえる状況だけど、そう楽観的なことばかり言ってもられない。
現にシルバー先輩は、仲が悪いわけではないとはいえ、接する機会もそう多くない後輩とこんな密室に閉じ込められて、不安なんだろうし……。
そう思うと、シルバー先輩を早く外に出してあげたいと思った。シルバー先輩自身の身に大変なことが起きているのなら、シルバー先輩はきっと、先輩のカシラであるドラコニア先輩の無事を確認したいはずだ。
「シルバー先輩! 僕、この部屋を出るためならなんでもしますから、何かあったら遠慮なく言ってくださいね!」
「なんでも……?」
どん、と胸を張る。するとシルバー先輩は、ものすごく迷った様子で何度も目を泳がせて、僕にとあるメモを見せた。
「一応聞いておくが、これはお前が用意したものでは無い……よな?」
メモに書いてあったのは、こんな言葉だ。
『この部屋は、部屋にいる相手とSEXしないと外に出られません。必要なものはすべて部屋にあります。なお、あなたたち以外の人はみな無事なので、気にする必要はありません』
「せっ……!?」
真っ赤になった僕の様子を見て僕がそんな文章を書けないことを察したのか、シルバー先輩はため息をついてそのメモをベッドサイドに置いた。
「この部屋の主は……本当に、趣味が悪いことだ」
「そ、そうですよね! 好きでもない人と、せ、セックス……なんて……」
言っていて恥ずかしくなり、しおしおと小さくなる。シルバー先輩はそんな僕に背を向けて、呟くように言った。
「俺はかまわないが……、お前は、そう思うだろうな」
え? 今、なんて? シルバー先輩、『俺はかまわない』って言ったのか!? いいのかシルバー先輩は僕とセックスしても!?
「そ、それ、どういう意味ですか!?」
そう聞くとシルバー先輩は僕に振り向き、なぜか両手を上げて、手のひらの方を僕に向けるような仕草をした。……何かを僕に降参してるのか?
「……こんなわけの分からない密室で、こんなことを言われてもきっと戸惑う、いや、恐ろしいと思うが……俺はお前に無理強いをしたり、危害を加える気は無い。その前提で聞いてくれ」
「は、はい」
「……俺はお前のことが好きだ。お前の姿を、肉欲を持って見たこともある。だから、そういったことをするのもやぶさかではない。だが、お前の方は、好きでもない相手と無理に身体を繋げるようなことをするのはきっと嫌だろう」
……今、なんて? シルバー先輩、僕のことを好きって言ったのか?
「え、シルバー先輩が僕を好き? 僕がシルバー先輩を好き、じゃなくてですか?」
「お前が俺を……。そうだったら、どんなにいいかと思うが、俺がお前を好きなんだ」
「僕、シルバー先輩のこと好き、なんですけど……」
「………………は?」
つい、ポロッと言ってしまった。え、だって、驚くじゃないか!? シルバー先輩の方が僕のことを好きだなんて、おかしいだろ!
「だ、だから、シルバー先輩が僕を好きなんじゃなくて、僕がシルバー先輩を好きなんですよね!?」
「いや、だから、俺がお前を好きなんだ!」
何言ってるんだ僕たちは? なんかお互いに好き好き言ってないか? シルバー先輩は小さく呼吸を整えると、僕にこう言った。
「……つまり、整理すると、俺はお前を好きで、お前は俺を好きということか?」
「……そうなんですか!?」
「さっきからそう言ってるだろう……」
シルバー先輩が整頓した事実にものすごく驚くと、シルバー先輩に呆れたような溜め息をつかれてしまった。うう、仕方ないだろ! だって、両想いだなんて思わなかったんだ!
「えっと……」
「………………」
やけに恥ずかしくて気まずい沈黙が僕たちの間に訪れる。そ、そうだ! 話題を変えよう!
「そ、そのことは後で話し合いましょう! 今はともかく、この部屋から出る方法を考えないと!」
「……この部屋から出る方法を考えていて、この話題に辿り着いたんだが」
そういやそうだった……! 今の騒ぎですっかり忘れていたあのメモのことを思い出す。
『この部屋は、部屋にいる相手とSEXしないと外に出られません。』
あのメモのお陰で、僕とシルバー先輩が両想いだってことは分かったけど……。いや、分かったところで、どうしろって言うんだ!? ダメだろ、なんて言うか、こう……、好きだって分かったばかりでそういうことしたら! なんかそれじゃまるで、身体が目当てみたいじゃないか!
「どう、しましょう……」
両手で顔を覆い、しゃがみ込む。シルバー先輩もどうしたものかと考え込んでいるみたいで、僕は困ってしまった。
「ずっとここにいるわけにもいかないが……、この方法は、試すにしても、あまりにも……」
「そ、そうですよね。早すぎますよね!」
「………………」
僕が喋る度、シルバー先輩が微妙な顔でこっちを見るのはどうしてなんだろう。もしかして僕、何かおかしなことを口走ってるのか?
シルバー先輩は腕を組んで、その指をトントンと叩きながら考え込む。考え込んで……。
「……ぐう」
「シルバー先輩! 起きてくださいっ!!」
「はっ……。す、すまない。この事態の解決策を考えようとしたら、眠ってしまった」
こんなときにまで健在なシルバー先輩の眠り癖に、なんというか、豪胆な人だな、と思う。肝が据わっているっていうか、なんていうか……。そんなところも、好きなんだけどな。って、はは。これじゃなんだか、惚気みたいだ。
「それで、何か思いつきましたか?」
「……ああ。思いついた、というか……やはり、このメモに書いてある通り、性行為を試してみるしかないのではないかと思う」
「やっぱり……」
そうなるか。となると、僕も覚悟をキメないと。男デュース、シルバー先輩に純潔を捧げます! ……なんて決意をしていると、シルバー先輩がとんでもない言葉を口にした。
「だから、お前が俺に挿入すればいい」
「……はっ!?」
思わず僕が驚きの声をあげると、シルバー先輩は悲しそうに目を伏せた。
「……確かに、俺は日々の鍛錬で鍛えている。身体も硬くて、お前が抱きたくなるような姿形はしていないかもしれないが……。緊急事態だと思って、そこは堪えてもらいたい」
「ち、違いますよ! 抱きたくないんじゃなくって、えっと、その……っ! 僕が!? 先輩に、ですか!?」
「そうだ。ここが密室で、外に何があるか分からない緊急事態である以上、慣れないことでお前に負担をかけるのは良くないと思った。俺ならば、仮にこのあと実際に行為を試したとして、多少の痛みがあっても動けはする。お前も俺のことを想ってくれているというのなら、最善とは言えないまでも、次善の策だと思う」
「そ、そう言われたら、そうなのかもしれないですけど……っ!」
「……時間が惜しい。そうと決まったのなら、始めてしまおう」
シルバー先輩は僕の手を引き、お互いの靴をぽいぽいと脱がせて自分の身体と一緒に僕をベッドへと引っ張り込む。な、なんて強引な……!
「さあ、一思いにやってくれ」
シルバー先輩が、ベッドの上で武士のように腕を組み、あぐらをかいて僕を待つ。……ちょっと待ち方男前すぎないか? でも、シルバー先輩がここまで覚悟キメてるんだ、僕も男としてやるっきゃねえ……! と、シルバー先輩の肩を掴む。
「シルバー先輩……っ!」
「……ああ」
シルバー先輩が、僕を待つように目を閉じる。それから、僕は、シルバー先輩の唇に――
――唇に――
――くち、びるに……――
「……デュース、まだか?」
「い、今……頑張ろうとしてるとこで……っ! もうちょっとで勇気出せると思うんで……っ!」
好きな人が、目の前で僕のキスを待ってくれている。それも、ものすごく綺麗な顔のシルバー先輩が、目を閉じて、僕を。そう思うと、その顔を見ると、すっかり固まってしまい僕はそれ以上近づけなかった。いや、だって、あれ、なんていうか……僕みたいなのが近づいていいやつじゃないだろ!?
「……遅い」
そんなことを考えていると、シルバー先輩は痺れを切らしてしまったようで、僕の口に思いっきり勢い良く口づけた。
「ん……っ!?」
シルバー先輩はそのまま僕をベッドへと押し倒し、ぷち、と白いYシャツのボタンを外し、髪をかき上げた。
「作戦変更だ。お前が無防備な姿を晒していても、俺が必ず守ろう。……俺がお前を抱く、いいな?」
「ひゃ、い……」
シルバー先輩の鋭い目で睨みつけられれば、それ以外の言葉を僕が口にする術はなかった。だって、その頬が確かに赤く染まっていたから。
シルバー先輩の唇が、もう一度僕に近づいてくる。今度は普通のキスじゃなくて、ぬるりとしたものが口の中へ入ってきた。
(え、なんだ、なんだこれ!? キスってこんなこともするのか!? あ、あれか!? 舌入れるってやつ!? ディープキスって言うんだったか!? これがそうなのか……!? 僕、えっちなことしてるのか!?)
よく考えたら、僕は性的なことについて、何も詳しいことを知らない。これでよくさっきはシルバー先輩を抱こうと考えられたもんだと、自分でも思う。
「……ん、ん、んむ……っ」
(どうしよう、なんか、頭がクラクラして、ぼーっとしてきて、気持ちいい……! あれ、これ先輩に任せてていいのか? 僕、何もしなくていいのか? っていうか、息、苦し……っ)
「ふ、ぐ……っ」
息苦しくなって逃げようとすると、シルバー先輩は唇を離して息継ぎをさせてくれる。
「ぷはっ、はあ……っ」
「大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫、です……」
「……鼻で息をすると、呼吸がしやすいらしいぞ」
「そう、なんですか? 先輩は、他の人とも、したことあるんですか……?」
「いや……うわさ話の、また聞きだ。後出しになって悪いが、俺も、こういったことを誰かとするのは初めてだ」
「そっか、良かった……」
なんとなく、シルバー先輩が他の人とこういうことをしたことがあると思うと、それがとても嫌に思えた。
「悋気を起こしている暇はないぞ。ほら、もう一回。……今度は上手く呼吸しろ」
「ん……っ、ん、んむ、んう……っ」
シルバー先輩に、また深く舌を入れてくちづけられる。ああ、やっぱり頭がクラクラする。クラクラして、嫌な気持ちも全部、甘い夏のソーダアイスみたいに溶けていく。
「シルバー、せんぱい……」
どろりと溶けたアイスみたいになって、シルバー先輩を見上げる。そうしたら、シルバー先輩は優しく笑って、僕の頬を撫でてくれた。
「……そんな物欲し気な顔をするな。大丈夫だ、できるだけお前が心地いいと感じられるように、俺の持てる限りの力を尽くそう」
そう言ってシルバー先輩は僕の背中に腕を差し込んで僕を抱き起こし、自分の腕の中に抱き込んだ。ベッドに座るシルバー先輩の膝に座らせられる形になって、なんだかちょっと恥ずかしい。これ、まるで、愛し合ってる恋人みたい……じゃないか?
「デュース、触るぞ」
「あ……っ」
シルバー先輩の手が、僕のシャツの上から、そっと肌をなぞっていく。脇腹や胸の横を何度も撫でられて、くすぐったい感じがしてしまう。
「ふっ、あ、ははっ、くすぐったい、シルバー先輩……っ」
「こら、大人しくしていろ」
「だって、くすぐった、あっ……」
くすぐられるままに身をよじらせていると、シルバー先輩はそれを追いかけるように僕の身体を捕まえてくる。やがてその指が僕の胸の突起に掠めたとき、僕の口はなんだか変な声を僕にあげさせた。
「……デュース?」
「な、なんでもないですっ」
「……ここか?」
シルバー先輩は僕の胸にある突起を、シャツの上からくるくると指先でなぞる。や、やめてくれ……! ゾワゾワして、なんだか変な感じがする……!
「あ、シルバー先輩、そこやめっ、あ、あ……っ」
「ふっ、心地いいみたいだな?」
やめてとお願いしても、シルバー先輩はやめてくれないで、ずっとシャツの上から僕の乳首をいじり続ける。それどころか、僕のうなじにキスをしたり、耳に息を吹きかけたりして、余計に僕のゾクゾクしたものを募らせようとする。
「あ、あ、ああ……」
シルバー先輩に散々胸をいじられ、僕の身体は抗えない気持ち良さに負けて、どんどん力が抜けていくのを感じる。力が抜けすぎていつの間にかシルバー先輩にもたれかかっていたようで、シルバー先輩と僕の身体が密着する感じが増えているのに気付いて、また近さに恥ずかしくなった。
「デュース」
「や、耳、ゾクゾクするから……っ」
「ゾクゾクするのか? ……この辺り、か?」
シルバー先輩の指が、つう、と僕の背筋を下から上になぞる。い、いやだ、ダメだ、よくある悪戯だけど、今はもう、身体全体にゾクゾクが伝わって……っ!
「いやだ、シルバー先輩……っ」
「ふっ。それとも、こっちか?」
「やあ……っ!」
今度はシルバー先輩の指が僕の太ももの内側をつう、となぞる。あと少しで僕のものに触れそうなところで、シルバー先輩の指は離れていった。た、助かった……! ……はず、なのに。僕の身体は、少しずつ何かを期待するように、熱くなり始めている。いやだ、ダメだ、頼む、落ち着いてくれ……!
「反応が素直で、可愛らしいな」
「あっ、シルバー先輩、そこは……っ」
シルバー先輩の手が僕のシャツのボタンをぷちぷちと外し、その手を服の中に滑り込ませていく。直接肌に触れられれば、シルバー先輩の体温を直に感じて、ゾクゾクするなんてもんじゃない。柔らかい指先が僕の肌や乳首に触ってきて、その温度も感触も気持ち良くて……気持ち良い、以外にこの感覚を表現できない。
シルバー先輩に、胸も背中も、お腹も腰も全部、上半身を撫で回されて、僕の身体の真ん中は次第に熱くなっていく。ま、待ってくれ! ダメだ、シルバー先輩の前で、そんな姿見せないでくれ!
そんな僕の願いも虚しく、僕のものは次第にズボンを持ち上げて三角の丘を作り始める。僕がそれを早く治まってくれと懇願するように見ていることに気付いたのか、シルバー先輩が僕のそれに布の上から触れてきた。
「うあ……っ!」
「ああ、いきなりすまなかったな。痛かったか?」
「いた、くはない、ですけど……」
シルバー先輩は僕のものがある場所を優しく握り直す。いや、握り直すんじゃなくて、触らないでほしいんだが……! なんせ恥ずかしいし、これ以上そんなところまでシルバー先輩に触られたら、僕、どうなってしまうか自分でも分からないんだ……!!
「や、そんな、シルバー先輩、そこ、さわったら……」
「触ったら、どうなるんだ?」
「や……、恥ずかしい、です……!」
シルバー先輩はやわやわ、ゆるゆると僕のものを握ったり揉んだりする手を止めてくれない。ずっと好きだった人にこんなことされてるなんて、なんだか現実とは思えない。頭がボーッとして、おかしくなってしまいそうだ。
「デュース」
「んっ」
顎を掴んで振り向かされ、シルバー先輩にキスをされる。なんとなくそのことに安心して肩の力が抜けると、シルバー先輩は僕のズボンのベルトをカチャカチャと手早く外し、僕が制止するのも間に合わず、僕の下着をずり下ろしてあらわになった僕のものに直接触れた。
「あっ、先輩、やだ、直接やだ、見ないで、恥ずかしい……っ!」
「大丈夫、とても綺麗だ」
シルバー先輩は僕の耳元でキスをしながらそんなことを言うばかりで、手は全然止めてくれない。シルバー先輩の手を止めようと伸ばした手にも全然力が入らず、ただシルバー先輩の手に添えるだけになってしまっている。
「あ、あっ、や、ああ、このまま、じゃ……っ」
「ふっ、気持ちいいか?」
「あ、せんぱ、シルバーせんぱい……っ」
「素直になれ、デュース」
シルバー先輩の声が、クラクラしてしょうがない頭の中をぐるぐると響く。
『素直になれ、デュース』
すなお? すなおってなんだ、素直になるって? この気持ちいいのを、そのまま受け止めてしまってもいいのか? シルバー先輩にこんなえっちなことされて気持ち良いって、さらけ出しても? そんなのいやだ、恥ずかしいに決まってるだろ! まだ残ってる僕の理性が、そんなことを叫ぶ。でも、もうひとりの、僕の知らない僕が言うんだ。先輩と同じように、『素直になれ』って。素直になれよ、大好きなシルバー先輩に何もかもさらけ出してみろよ。きっと、それはすっごく、今よりもーっと気持ちいいぜ? って。
「う、うう……っ」
そんなもうひとりの自分の誘惑と、絶え間ない気持ち良さに歯を食いしばって耐えていると、シルバー先輩の手つきが優しく切り替わった。
「……苦しいか?」
「ちがっ、も、すごい、きもちよくて……」
「……そうか」
僕の言葉を聞いた瞬間、シルバー先輩が僕をベッドに横たえる。そのままシルバー先輩の手は、ずり下ろしていた下着をズボンごと僕の足から引き抜いてしまう。ボタンの外れたYシャツ以外何も身に着けなくなってしまった自分の姿がシルバー先輩のオーロラ色の瞳に映ることに、羞恥心が募った。
「シルバーせんぱい、これ、はずかし……っ」
「……安心しろ。俺もすぐに曝け出す。お互い様だ」
シルバー先輩は外していなかった残りのシャツのボタンをぷちぷちと外し、シャツを放り脱いで半裸になり、僕に覆いかぶさる。鍛え抜かれた筋肉で満ちた硬い身体が目の前にあって、僕は、自分の身体と見比べて少し、別の意味で恥ずかしくなった。……僕もあんな風に筋肉ついたらいいのに……。
そんなことを考えて油断している間に、シルバー先輩の手が僕の後ろに伸びていることに、僕は気づいていなかった。だから、そこに触れられたとき、ものすごく驚いた。
「ひゃ……っ!?」
「すまない、驚かせてしまったか?」
「え、う、後ろも、触るんですか……?」
こわごわと僕が尋ねると、シルバー先輩は申し訳なさげに言った。
「……確かに、自分の中に他人のものを受け入れるというのは、恐ろしいことだろう。だから俺がそちらをやろうと思っていたのだが……。あの調子では、うまくいきそうになかったからな。……それでも、お前がどうしても恐ろしいと思うのなら、無理強いはしない」
シルバー先輩はそう言ってくれる。でも、ここまで来て最後はナシなんて、それこそナシだよな。少し恥ずかしいけど……今さらなんだから、いい加減理性なんて捨てちまおう。今こそ力を貸してくれ、もうひとりの僕。
シルバー先輩に手を伸ばして、その頬を引き寄せて、目を見つめた。クラクラする頭が、これは夢だと思えって言ってる。何度も見た、あの恋人のような夢だと思えば、現実では恥ずかしいことだってシルバー先輩に言えるだろ、って。
「シルバー、せんぱい。僕、ほんとうは、さっきからすごく、気持ち良くて……、頭がボーっとして、クラクラして、おかしくなりそう、です。先輩にぜんぶ任せたら、もっと、気持ち良く……して、くれるんですか……?」
シルバー先輩の喉仏が大きく動いて、ゴクリと生唾を飲む音が聞こえた。
「……ああ、きっと。約束しよう」
「へへ……ぜったい、ですよ」
シルバー先輩と小指を絡め、指切りの約束をして、その首に腕を回す。シルバー先輩はそのまま僕の後ろへ手を伸ばし、そこを揉んだりなぞったり伸ばしたりして、なんだかマッサージするような動きを指先で与え、僕のうしろをゆっくりとほぐし始めた。
*
「あっ、ああっ、あっ、シルバーせんぱい……っ!」
あれから、シルバー先輩に後ろをすっかりほぐされ、シルバー先輩の指が僕の中に入ってきた。そこまでは良かった。まだ、変なものが僕の中にあるぞ、なんて違和感のような感覚で耐えることができた。けれど、シルバー先輩の手が、ある一点を見つけた途端、僕の口は喘ぎ声を止めなくなった。
「デュース、可愛い」
「あっ、ああ、そこ、そこ気持ちいい、シルバーせんぱい……っ」
シルバー先輩の指先が、その気持ちいい一点をずっといじって、やめてくれない。ずっと気持ち良くされたままに快感を感じていると、くっと後ろを大きく伸ばされたような感覚がして、さっき入ってきた指にくわえて、さらに別のものが入ってくるような感じがした。
「あ、なんか、増え……っ」
「……分かるか? 指が増えたんだ。今、二本入っているぞ」
「ふた、つ……っ、あ、ああ、やあ、ふたつやあ、あ、そこやだ、もっと……っ」
「ふっ、そう焦るな……。ちゃんと、最後までしてやる」
シルバー先輩は、この調子なら、とベッドサイドから取り出したローションの液を足して、僕の後ろをさらに広げた。
「あっ……! や、シルバーせんぱい、それ、それ……っ」
「……三つだ、デュース」
「や、もうむり、もう広がんない……っ」
気持ちいい一点を集中して攻められながら、くぱくぱと僕の後ろを開けたり閉めたりを繰り返して広げられ、すっかり僕の腰からは力が抜けきっている。今、シルバー先輩の指が三つも僕の中に入ってる、のか? なんだか信じられない。僕の身体なのに、僕よりもシルバー先輩の方が自由にしている。まるで僕の身体じゃないみたいだ。
「大丈夫だ、これ以上は広げない」
「ほん、とに……?」
「ああ。……だが、これくらいは広げておかないと、俺のものも入らないからな」
シルバー先輩は指を抜き、汗で張り付いた僕の前髪をかきあげながらキスをしてくれる。俺のもの、か。僕は、そのときが来るのを予感して、自分から閉じていた膝を広げた。
「シルバーせんぱい、きて……くだ、さい」
「……デュース」
シルバー先輩は、少しだけ逡巡したのか、僕の後ろと自分の指を見比べていたけれど、結局挿れることにしたようで、いよいよ下着を下ろして見せてくれた先輩のものを僕の後ろに宛てがった。
「痛かったら、すぐに言ってくれ。……いくぞ」
「はい……」
ずぷ、と音がして、塗り足されたローションと一緒に、律儀にゴムをつけたらしいシルバー先輩のものが中に滑りこんでくる。それは確かに三本の指よりもキツくって、僕は今までの快感を思い出してどうにか耐える。
「ん、んん、んん……っ!」
「……デュース」
「あ……!」
とん、とシルバー先輩のものが、奥の壁みたいなところにぶつかった感じがして、今度はまた、後ろをほぐされているときと違った、知らない気持ち良さが襲ってくるのを感じる。
「全部、入ったぞ」
「ぜん、ぶ……」
シルバー先輩が、得意げな顔で僕に笑いかける。それがなんだか恰好良くて、僕はまるで先輩に女の子にされたみたいな気持ちになってしまう。どうしてだろう、乳首や後ろなんか触られて、まるで女の子みたいにアンアン声を上げて、気持ち良くされちゃってるからなんだろうか。
ちら、とシルバー先輩が扉を気にする。そういえば、セックスしたら開くはずだったっけ。カギの音とかしたり、開いたって感じはしないけど……。でも、今はそんなことより、僕に集中していてほしい。シルバー先輩の顔を僕の方に向けた。
「……いまは、僕……」
「ああ、すまない」
シルバー先輩はお詫びのように口にキスをして、それから言った。
「動くぞ、デュース」
「は、はい……」
シルバー先輩の腰が動くにつれて、シルバー先輩のものがゆるゆると前に後ろに僕の中で動き始める。その度にトントンと気持ちの良い壁のところを優しく叩かれ、僕の口からは喘ぎ声が止まらず、その気持ち良さのままに涎が垂れてしまう。
「あ、ああっ、ああ、あっあっ、あぁ、あ、シルバーせんぱい……っ」
「デュース……」
「あ、うあ、ああっ、ふあ、あん、あ、ああっ、シルバーせんぱ……っ」
「……く……っ」
シルバー先輩も、耐えたような顔をしてる。先輩も僕の中で、気持ち良くなってくれてるんだろうか。そう思うと嬉しくて、シルバー先輩の背中に回した腕に力を込めてぎゅっと抱きしめた。
「シルバーせんぱい、も、なんか、からだのおくから、なんか、くる……」
「……ああ、分かった」
先輩の腰の動きが、だんだんと早まっていく。気持ち良さの壁が叩かれる感覚が短くなっていって、僕はその快感の波に飲まれていく。
「あ、ああ、せんぱっ、あ、これ、だめ、だめだめ、くる、だめ、あ、だめ、ぼく、もう、あ、あア……っ!」
「デュース……っ、……くっ……!」
意識が真っ白になる。散々溜められて増やされた気持ち良さが、もう無理だ、死んじゃうってところまで来て、僕のナカで身体中に弾けた。自分でも、ぎゅっと後ろに力が入ったのが分かったから、その衝撃で先輩も達してしまったのだろうか。そうだったらいいな。僕の中で、シルバー先輩が気持ち良くなってくれたのなら、それが嬉しい。
する前とか、途中まではすごく恥ずかしかったけれど、先輩とひとつになりたい、もっと気持ち良くなりたいって思ってからは、もう、そんなことは気にしていられなかった。もうひとりの僕がささやく通り、本当に気持ち良くて、嬉しくて、幸せだった。
ぼーっと惚けていると、いつの間にか僕の中から自分のものを抜いてしまっていたらしいシルバー先輩の手が梳くように僕の前髪を撫でてくれた。
「頑張ったな、ありがとう」
「……へへ」
撫でてくれるシルバー先輩の手にすり寄ると、シルバー先輩はぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
*
それから後始末をしたあと、僕の体力が戻り、身体が落ち着くまで少しばかり休憩して、それぞれ服を着てベッドを降りた。僕たちを閉じ込めた奴が用意した部屋とはいえなんとなく申し訳なかったので、汚れたシーツとかはバスルームにあった洗濯機に放り込んでおいた。
「これで、部屋から出られるといいんですけど」
「そうだな。もし開かなかったら……いや、悪い予想はやめておこう。きっと開いているはずだ」
シルバー先輩と頷きあって、どんなに攻撃してもうんともすんとも言わなかったドアノブを回す。すると、カチャリと音がして、開いたドアからは風が舞い込んできた。外に出ると、空には夜の星が瞬いている。
「あれ、ここ……オンボロ寮の裏?」
「……そのようだな」
シルバー先輩が僕に続いて、部屋を出てくる。こんなところに部屋なんてあったっけ、と後ろを振り返ると、今僕たちの出てきた部屋はきれいさっぱり、跡形もなく消え去っていた。
「……これ、夢……じゃ、ないですよね?」
「……ああ。俺もあの四角い建物を見ていたが、瞬きの間に消えてしまった……どういった仕掛けの魔法だろうか?」
「魔法、そうですよね。……誰かが作った、なんかの魔法……だったのかな」
「分からない。……一応、心当たりを尋ねてはみるつもりだが……恐らくは、此度の仕掛け人ではないだろう」
「となると、誰が犯人なのかは迷宮入りかあ。……いろんな人に手当たり次第尋ねるわけにもいかないですもんね……その、特殊な部屋、でしたから」
「そう、だな……」
シルバー先輩は少し気恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうに僕に向き直った。
「……今回は、意図しない形での行為になってしまい、すまなかった。こうして無事、部屋を出られたとはいえ、お前に負担をかけた」
「い、いいですよ! そんな、気にしなくて……」
シルバー先輩は、そっと僕の手を握る。
「本当は、お前ともっとちゃんと関係を重ねてするべき行為だったと思う。……こうして手を繋ぐことも、キスや、それ以上のことをすることも」
「シルバー先輩……」
「……言うのが最後になってしまったが、改めて願おう。デュース、お前が好きだ。俺の、恋人になってほしい」
シルバー先輩の真剣な瞳が僕を真っ直ぐ見据えている。でも、僕の答えなんて、もう決まっている。
「……はい、僕で良ければ、喜んで!」
勢いのままシルバー先輩に抱き着くと、シルバー先輩はがしりと僕を抱き止めてくれた。
それから僕たちは寮に戻り、それぞれの日常生活へと帰っていった。変わったことは、僕たちの恋人同士という肩書きだけだ。あの部屋の外と中では時間の流れが違ったのか、どうやら外の時間では丸一日あの部屋に閉じ込められていたようで、休日で助かったと思う。
後日聞いた話だと、結局あの部屋がなんだったのか、シルバー先輩が心当たりのある人たちに尋ねてもさっぱり分からないままだったらしい。それでも、僕はあの部屋であった出来事に、今は感謝しているところもある。お陰で、シルバー先輩に自分の気持ちを伝えて恋人になれたから。
……でも、閉じ込められるのはもうごめんだな。だって今は、もうおかしな部屋に閉じ込められたりしなくても、シルバー先輩と、えっちなことだって、そうじゃないことだって……なんだって、いろんなことができるようになったんだからな!
*おしまい
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