勿忘の記憶 - 2/2

 茨の谷に着いて、シルバー先輩に先導されるまま、歩く。薔薇の王国にいたときには、なんだかどこか見覚えがあるようなないような、馴染みがある気もするような……って感じだった風景も、ひょっとしたら僕はこれを一度くらいは見たことがある、のか……? って印象の風景に変わった。つまり、普段暮らしてたようなレベルで馴染みのある風景ではなさそう、ってことだ。
 やがてお城の見える大きな街から、少しだけ外れた場所にある家に案内される。小さな木造りの家だ。これが、シルバー先輩の家らしい。
「俺も、学園を卒業し、職に就いてからは親元を離れてひとり暮らししていてな。……実家は近所で、高齢の父もいることだし、そちらから通いたかったのだが……」
「何か、できない事情があったんですか?」
「ああ。俺は城に勤めているのだが、朝は寝過ごしてしまうから、物理的な距離を縮めて挽回を図る必要があった」
「ははっ。シルバー先輩、すぐ寝ちゃうんだもんな。……って、そうなんですか?」
 つい口を出た言葉に、僕は疑問を持つ。すっと流れるように口から出てきてしまったが、ものすごく言い慣れてる言葉なんだろうか。
「……どうやら記憶をなくしたわりに、俺の眠り癖はしっかりと覚えてくれているらしい」
 まずい、気にしてたのかな。
「えっと、なんかすいません……」
「気にするな。これくらいの軽口は、よくあった」
 俺とお前の間には、と補足が入る。……うーん、僕、シルバー先輩とどういう関係だったんだろう? ただの学校の先輩、じゃないよな。だったら、ちょっと僕が怪我して目覚めたくらいで遠い国から飛んできて迎えに来ないと思うし、うーん。聞いてみていいのかな。
「あの。シルバー先輩。前、僕と先輩は恋人じゃないって言ってましたけど」
「ああ。それは間違いない。少なくとも、ロマンチックな雰囲気を作って、接吻や抱擁を与える仲ではなかった」
「……じゃあ一体、なんだったんですか?」
 そう言うと、シルバー先輩は困った顔をした。
「それは……。俺にも説明が難しいのだが。あえて近しい言葉を探すのなら、『友人』……いや、『親友』……? どちらもしっくりは来ないが、あえて言葉にするとするなら、それらの関係に当たるのだろうか」
「それって、一体どんな……?」
「……お前とやっていたことといえば……。お互い時間を取って、会えた日には日がな一日中、子どものするような遊びをよく一緒にしていた。成人してからは共に酒を飲んだりすることもあった」
 なるほど……? それにしても、僕も先輩も、遠い国から会いに行ってやることがそれだったのか。旅程を見る限り、結構遠かったけど。それにしてもそれだけなら、ただの仲いい友達とも言えそうだけどな。マブダチともなんか違うんだろうか。
「とりあえず、仲は良かった……ってことですね」
 まあ、良かった。直感に従ってついてきたけど、本当はめちゃくちゃ仲悪くて険悪だったんだぜ、とか言われたら目も当てられない。
「ひとまずは、この家で一年間、ゆっくり暮らすといい。記憶をなくしたお前からすると、俺がいて落ち着かないかもしれないし、不便もあるかもしれないが、便宜は図る」
「お世話になるのに、我儘言いませんよ。こちらこそ、世話かけますけど、よろしくお願いします」
 それから、僕たちの共同生活は始まった。

 シルバー先輩の家に来た初日は、家の中の様子を見たり、いろいろな小物を見たりして、何かを思い出さないかと試してみたけど、あまり良い成果は出なかった。先輩はすぐに結果が出るものでもないだろうから無理はするなと励ましてくれた。
 窓を開けるといつも小鳥が遊びに来ていたので、ごはんの皿にいくらか飼料を置いてやると、おいしそうに食べていて可愛かった。
 2、3日経つと、家に訪問者が来るようになった。ここでの暮らしに慣れるまでは昼間はひとりで外に出ず、家に訪ねる人がいたら様子を見て留守だと言ってくれと言われていたから、その通りにした。いちばん最初に来たのは、小柄な子どもみたいな男の人だった。
「えーっと……シルバー先輩に用事、ですか?」
「おお! ほんにデュースがおるわい。おぬし、記憶をなくしたって? 難儀じゃったのう」
「……あなたも僕の知り合いですか?」
「うむ。シルバーの父にして、おぬしと同窓で学んだ先輩じゃよ」
 その日はリリア先輩(そう呼べと言われた)といろいろ話していたら、シルバー先輩が帰ってきて、「親父殿、来られていたんですね」と驚いていた。リリア先輩は、何か思い出すきっかけになるかもしれんから、日記をつけると良いぞ、それから月に一度くらいは親に自分の様子を書いた手紙でも送ってやれと助言して、去っていった。そうしない理由もないし、言われた通り日記をつけつつ、月に一度はお母さんに近況の手紙を書くことにした。

 7日経った頃、誰かがドンドンと大きくドアを叩く音がした。慌てて開けると、怒った顔の大男がそこにいた。
「ふん、デュースか」
「えーっと……どちら様、ですか? シルバー先輩なら、今は留守で」
「僕はセベク・ジグボルトだ。シルバーではなく、貴様に用がある」
「え、僕? いったい何の……」
「いいから来い」
「せ、せめて家に鍵かけさせてくれ!」
 セベクと名乗る男に引っ張られるようにして連れていかれたのは、いつも家の窓から見えている城だった。そこの、明らかに謁見の間みたいな雰囲気の重々しい場所で、プレッシャーがすごい男の人に会わせられた。シルバー先輩は城で働いてると言っていたが、そこに姿は見えなかった。そういえば、今日は休日なんだって言ってたっけ。じゃあ仕事場にはいるわけないか。
「マレウス様、デュース・スペードを連れて参りました!」
 男の人はプレッシャーを放ちながらも、悪い感じはしない笑顔を僕に向ける。
「久しいな、スペード」
「……えっと。お久しぶり、なんですかね? すいません。僕、今、記憶なくしてて……。誰が誰だかもろくに分かっていないんです」
「ああ、聞き及んでいるぞ。だからこそセベクは同窓の友人としてお前を僕の前に連れてきたのだろう。……そら」
 パチンと指が鳴り、僕に何か魔法がかけられた感じがする。そのとき、ぶわりと何かの光景が目の前に広がる感じがあった。なんていうか、分厚い教科書のページをパラパラ、ザーッってめくるみたいに。
「……あ」
「何か思い出したか?」
「思い出した、っていうか……。思い出したって言うのかな、これ。誰をどう呼んでいたか、どんな関係だったか、みたいなのをうっすら思い出しました、ドラコニア先輩」
 そう言うと、少しは効果があったようで何よりだ、とドラコニア先輩は言った。
「でも、母さんとかシルバー先輩とか、肝心っぽい人たちとあったようなことは、まだハッキリしないみたいです」
「そうか。まあ、これ以上無理に干渉すれば、お前の精神に負担をかける可能性がある。あくまでも僕はさわりを撫でてやっただけだ。その辺りは無理をせず、おいおい思い出していくといい」
「はい。えっと、記憶戻す手伝いしてくれて、ありがとうございます。皆の呼び名分からないの、地味に不便だったんで、助かります!」
「良い。一年間だけとはいえ、この茨の谷の民となるのだ。引っ越し祝いだとでも思っておけ」
「ありがとうございます」
 改めて礼をすると、セベクにまた引っ張られた。マレウス様は忙しい御身なのだから、お前はもう下がれと。お前が引っ張ってきたんじゃないか、とは思うが、ちょっとだけでも記憶が戻ったのはありがたいので文句も言えない。お前に連れてこられたせいで帰り道分からないから連れてってくれと頼むと、セベクは渋々了承した。

 セベクに連れられて家に帰ると、シルバー先輩が真っ青な顔でドアを開けるのと鉢合わせした。
「ああ、デュース。無事だったか、良かった……」
 僕らを見て脱力しへたり込むシルバー先輩に、セベクに連れていかれていたんですと事情を説明する。すると、シルバー先輩はセベクを睨んだ。
「セベク! どうしてお前はそういきなりなんだ、事前に相談するとかあるだろう! 俺が、からっぽの家を見てどんな気持ちでいたか……!」
「ふん、成人した男相手に過保護なやつだな。それに、事前に相談なんてしたら、お前はマレウス様への助力を拒むだろう。自分の私事でお忙しいマレウス様の手を煩わせるわけにはいかないと」
「それは……」
「僕は違う。デュースはお前だけでなく、僕たちの学友でもあったのだから、僕たちとの記憶を戻す手伝いくらい、できるのならして当然だし、マレウス様もリリア様もそうお考えになると思っている。お前だけの友人ではないのだからな。だから連れ出した」
 セベクは『お前だけの友人ではない』とやけに強調して言う。……そんなにひとり占めしてる印象でもあったのか? それに続けて、マレウス様の助力を賜った甲斐もあり、少しは記憶も思い出したみたいだぞ、とセベクが言うと、シルバー先輩が顔を上げた。
「本当か?」
「は、はい。なんていうか、ドラコニア先輩の魔法にかけられて、軽い交友関係を思い出したっていうか。誰がダチで誰が先輩だったとか、どんな呼び方してた、とか。簡単な人間関係は思い出しました。でも、お母さんだとかシルバー先輩だとか、関係が深かった……んだと思う人たちとあったような、深い思い出とか……そういうことはまだ、ガッツリ思い出せないみたいです」
 そう言うと、シルバー先輩は少し落胆したように、そうか、と言った。

 それからしばらくは、茨の谷での暮らしに慣れるように日々を過ごした。記憶がなくなっていること以外、病気の身体というわけでもないのに、することがなくて世話されっぱなしだと落ち着かないと相談すると、なら家事を頼むと言われ、家にいる間は洗濯や料理、掃除なんかをした。もうちょっと色々できると思うと言ったら、お前はまだ病み上がりなのだから、身体に無理をさせてはダメだと固辞された。
 そういえば、僕は事件の詳細を聞いていない。そんなに過保護になるような大ごとだったんですかと聞くと、シルバー先輩は答えた。
「……お前は、警察としての仕事を行っている最中、殺傷力の強い攻撃魔法を使う犯人から、人質の老婆を庇って守り、その際に頭を強く撃ち、ひと月は眠っていたそうだ。本当に、命さえ危ないところだったんだ。意識を取り戻さないままだった可能性も、十分にあった。俺が預かっている間に、お前の身に何かあったら、母君に顔向けできない」
 記憶をなくす前の僕はずいぶんヒーローみたいで恰好良いですね、と言うと、シルバー先輩は、いいや、恰好良くない。ちっとも恰好良くない。お前は目を離すと自分の身も省みず無茶ばかりする、それで俺に心配をかける、いつもそうなんだ、お前の悪い癖だ、今も反省していないだろうと僕に向けて不満げに言った。シルバー先輩が口を尖らせるのを見たのは、目覚めてから初めてだった。
 街での買い物は、ひとりで行かせてもらえなかった。買い物くらいはひとりで出来ますと言ったんだが、まだ記憶が覚束ないうちは、人間族と妖精族の間で何か齟齬や摩擦が起きるかもしれないから、と、シルバー先輩のいる休日に一緒に買い溜めをするのが常だった。知らない土地で勝手やって迷惑かけるわけにもいかないから、仕方ないか。
 とはいえシルバー先輩は、休日はすべて僕のために使ってくれた。俺もお前を閉じ込めておきたいわけではないから、と、外に出たいといえばそれなりの場所へ連れ出してくれたし、何かあったときのためにと定期的に茨の谷でも腕のいいという医者に診せてみたり、学園時代の写真をまとめたアルバムを取り出して、この写真を撮ったときにはこんなことがあった、あんなことがあったと思い出話を語ってくれたり。その中には、いつか記憶で見た魔獣、グリムの姿もあった。……なんで僕、コイツのことまで忘れてたんだろう。とはいえ、全部忘れてたら魔獣がダチだって思うのは難しいか。オルトのことも、ドラコニア先輩に思い出させてもらうまでは、妙な恰好をした奴がいるな、って思ってたしな。

 そんな先輩のたゆまぬ努力の甲斐があってか、僕はある日、夢を見た。
 どこか、食堂みたいな場所で、僕は今よりも幼い見た目のシルバー先輩の隣の席に座った。僕はそのとき思ったことも、一緒に夢に見ていた。
『お前は、セベクの友人だったか』
『まあ、はい』
 この人、入学式の直後くらいにダイヤモンド先輩からディアソムニア寮の説明受けてたとき、セベクと一緒に睨んできた人だよな? 怖い人、なのか? ……だからってビビったりしねえぞ、俺は。
『俺はシルバー、ディアソムニア寮の2年生だ。1年生に相席を頼まれることは、少ない』
『そうだったんですか』
『ああ。ところでお前の名前は? そのスートを見る限り、リドルのところの……。ハーツラビュル寮の生徒だろう』
『はい、ハーツラビュルのデュース。デュース・スペードです』
『そうか、デュース。学園生活で困ったことなどはないか?』
『いえ、今のところは……』
『なら、いい。だが、何かあったら、すぐに聞け』
(ひょっとして、怖い人じゃ、ない?)

 そこで、目覚まし時計が鳴って、目が覚めた。目覚まし時計には、なぜか『とっとと起きやがれ!』という僕のものらしき怒鳴り声が入っている。何か思い出すきっかけになると思うから使うといい、と言って僕に渡されたものだ。ちなみに、この目覚ましで何かを思い出せたことはない。いや、あるのかもしれないが……。シルバー先輩の家にあるものや、目覚まし時計で思い出す光景が、どれもシルバー先輩の微妙にシチュエーションが違う寝顔シリーズで、どこで何をしていたときなのかさっぱり分からない、というのが現状だ。多種多様なシルバー先輩の寝顔を見たことがあるほど一緒にいたことだけは分かるんだが……。
 違うことを思い出せたこともあるが、そっちはそっちで、『寝坊して遅れた』と慌てるシルバー先輩の顔シリーズだった。これも、待ち合わせして出かけることがあったくらいしか分かることはない。
 とりあえず、僕は夢で見たことを報告した。たぶんですけど、シルバー先輩と初めて会ったときの夢を見ましたよ、と言って食堂で会話した夢のことを話すと、シルバー先輩は、確かにそんな会話をしたことがあると認めてくれた。
 シルバー先輩は、それを話しながら朝食を摂る僕の顔を真顔でじっと見る。何かついているのかな、と思ったけど、違う。これは、喜んでいる。これからもっと僕の記憶が戻るんじゃないかと期待しているんだと、なんとなく分かった。

 それから、先輩は同じ話でも、僕がもう一度聞かせてくださいと言えば何度となく聞かせてくれた。それも、毎回楽しそうに、それでいて懐かしそうに。確かあのとき、こうしませんでしたっけなんて些細なことを思い出すと、それだけでも嬉しそうにした気がした。……相変わらず顔に出ないんだな。まあ、僕は分かるから、いいけど。
 なんて思って、ん? と思った。『相変わらず』とか、『僕は分かるから』とか、なんだ、それ。僕はどうやら、本当にシルバー先輩と仲が良かったらしいな。そんなことを思った頃、僕は家の掃除をしているときに、うっかり転んでシルバー先輩にバケツごと水をぶちまけてしまった。
「うわあああすいませんシルバー先輩! 今拭きます!!」
 僕が慌てていると、びしょびしょになったシルバー先輩は、黙って手に魔力を集める。え、いくらなんでも、そんなに怒ったのか……!? 魔法で攻撃されるほど!?
 と思ったら、シルバー先輩は威力をかなり弱めた水魔法を使って、僕に水をかけ返した。
「ふっ、お返しだ!」
「……やりましたね、この!」
 そう言われちゃ僕も大人しくしてはいられない。手で水鉄砲を作ってシルバー先輩を狙おうとした、そのとき。ふと、何かの場面がフラッシュバックした。それは、恐らく何度か見た学園での中の、水場でのこと。獣人族の青年、これはジャック……だよな。ジャックやらエースやらと、あと、エペルにオルト、グリム、ユウ。真夏の日差しの中、僕は同級生だったやつらと、ホースやら魔法やら使って、水をかけあって遊んでいた。
『背後に気を付けろよ!』
 なんて言いながら、ジャックを狙ったら、避けられて、そしたら避けた先にシルバー先輩がいて、僕たちは先輩をびしょびしょにしてしまって。みんなでやべえ、まずい! なんて思ってたら、シルバー先輩は笑って、『不覚を取ったな』なんて言って、僕の顔を狙って水魔法を撃ってきて。
『やったな、この!』
 僕は反射的にやり返すけど、シルバー先輩にはさらっと避けられて。
『ああ、やった。さあ、他にも俺に挑むやつはいるか? もう油断はしないぞ』
『あ、そういうこと言っちゃう~?』
『望むところっすよ!!』
『よし皆、先輩を水も滴るいい男にしてやろう!』
 ジャックやエース、エペルがやる気になって、先輩巻き込んで遊んでいたら、そのうち水遊びなら俺も混ぜてくれってアジーム先輩がやってきて、皆でびしょびしょになった頃、ローズハート寮長が僕たちを見つけて何やってるんだい、2年生までいるじゃないかって先輩たち巻き込んで怒られて。
 僕は怒られているとき、シルバー先輩と目が合った。怒られちゃいましたね、って笑うと、そうだな、って先輩も笑ってて。で、僕たちは、反省していないようだね、って余計に怒られた。あのときから、僕は先輩と仲良くなり始めたんじゃないかって、そんな気がした。

「デュース、どうした?」
 急にぼーっとした様子になった僕を心配したのか、シルバー先輩が僕の顔を覗き込んでいた。僕は今見た話を伝えた。
「先輩と、初めて仲良くなったときのことを思い出しました。こうやって一緒に水遊びしてて、ローズハート寮長に大目玉食らったんです、みんなで」
「ああ。懐かしいな」
 僕が見た景色は、どうやら本当にあったことらしい。先輩は他に思い出したことはあるか、と聞いてきたので、答える。
「……そのことを、電話で母さんに話した気がする。『あら、シルバーくんって大人しい子だと思っていたけど、あの子も男の子なのね』って、笑って返事をしてて……」
 僕は自然に、母さん、とあの女の人のことを呼んだことに、自分でビックリした。あ、そうか。お母さんじゃなくて、母さん、って呼んでたんだ、僕。
「順調に、思い出せているみたいだな」
 さあ、風邪を引く前に家を片付けてしまおうとシルバー先輩が言って、僕もそれを手伝った。

 ……が。その甲斐もなく、僕は風邪を引いてしまった。心配そうにする先輩を、僕はちゃんとベッドで寝てますから、行ってらっしゃいと仕事に見送る。熱にうなされているとき、また何か夢を見た気がした。これは……ディアソムニア寮、か? でも、シルバー先輩はいないみたいだ。
『……僕がシルバー先輩を水遊びに巻き込んじゃったから、風邪引かせちゃったみたいで……』
『はっはっは、水遊びか! そうかそうか、あやつが学友と水遊びをして風邪を、のう! やんちゃで結構!』
 どうやら、あの水遊びのあと、シルバー先輩は風邪を引いてしまったらしい。ヴァンルージュ先輩(いやでも、リリア先輩って呼べって言われたっけ?)が、事情を聞いて笑い飛ばしている。
『これ、お見舞いの品です……』
 申し訳なさげに果物を差し出す僕から、それを受け取って、ヴァンルージュ先輩は真面目な顔で言う。
『なあ、デュースよ。今回のことは、そう気に病むな。むしろ、もっとあやつと戯れてやってくれんかのう?』
『えっ、でも……今回みたいに、迷惑かけちゃうんじゃ……』
『迷惑上等じゃ。あやつはもっと、同世代との遊びや戯れを学んだ方が良い。お前たちはそういうのが得意じゃろう。それに……』
『それに?』
『おぬしはきっと、あれの良き友になる。わしの勘がそう言っておる』
 そこで、夢は醒めた。たぶんこれは、シルバー先輩も知らない、僕の記憶、なんだろうな。リリア先輩(本人がそう呼べって言うなら、こっちに決めることにした)に言われて、それならまた気軽に遊びに誘ってみよう、って思ったのかも。

 次に目が覚めたときはもう夜で、シルバー先輩は帰ってきていた。おいしそうなきのこのリゾットを作っていて、食べれるか、って聞いてきた。ふーって冷まして食べさせようとしてくるから、僕は小さな子じゃないですよ、自分で食べられます、って言ったら、お前は記憶をなくしていてもそう言うんだな、って笑われた。……どうやら前にも同じことを言ったことがあるらしいな。あれ、じゃあ僕、前にもこの人の前で風邪引いたのか? 元気だけが取り柄だと思ってた気がしてたんだけどな。
 熱があろうと食欲は普通にあったので、完食してごちそうさまでした、と言う。世話になりっぱなしなのは落ち着かないから、皿洗いくらい手伝いますと言ったら、まだ熱があるからダメだとベッドに押し戻され、大人しく寝ていないと添い寝して身体をトントンと叩き寝かしつけるぞと脅かされてしまった。20も越えてそれをやられるのは、さすがに恥ずかしい。大人しくベッドに眠っておくことにした。

 それから、僕は、風邪も治して元気になった頃、またシルバー先輩が休日の日に尋ねられた。自分からは何かやってみたいことはないか、と。もう茨の谷に来てからけっこう経っているし、そろそろリハビリがてら大きめに身体を動かしたいです、と言うと、分かった、だが何かあったらくれぐれも無理はするなとシルバー先輩は念を押して、運動できる服に着替えてついてこいと言った。
 身体を動かせそうな広場が近くにあるから、そこまで走って行くぞと言われ、僕は茨の谷の街から離れた森の方へ、シルバー先輩について走った。なんだかとても走りやすいペースで、それなのに風を感じられて、心地いい。まるで僕がどれくらいの速さで走るのが好きか、どこまで走れるのかを知っているみたいに、シルバー先輩は僕に合わせてくれた。……いや、たぶん、知ってるんだろうな。と、僕は脳裏によぎる光景を見て、思った。
 今の服とは違うけど、ナイトレイブンカレッジに通っていた頃、同じ背中を見て走っていた思い出がある、みたいだ。休日の運動場で、身体を鍛えるため走り込みをするって先輩に、なら僕も一緒します、って、で、趣味でトレーニングに来てたジャックも一緒になって。三人でよく走った。二人が持ってるプロテインバーをおやつ代わりに分けてもらって食べることもあったな。でも、そんなことをしていたのに、なぜか僕だけ全然筋肉つかなかったんだっけ。
 ああ、それでシルバー先輩と一緒に『筋肉をより効率的につけるためには?』なんてテーマの本を図書室で探してみたりしたこともあったな。まあ、結局僕も先輩も寝落ちしたんだけど……。って、なんだ、この思い出。楽しそうで何よりだけどな。
「着いたぞ」
 やがて公園に着くと、先輩は背負っていたバッグから何かを取り出した。ボールとグローブだ。先輩が僕にぽんとボールを投げる。
「キャッチボールでもしよう、デュース」
「はい!」
 僕がボールを投げて、シルバー先輩が受け止める。受け止めたボールが投げ返され、今度は僕がキャッチする。
「そら、行くぞ!」
「オーライ、オーライ!」
 そんな応酬を繰り返して、楽しくなってきて、思い切り投げる手に力を込めてしまう。 
「あっ」
 ボールは先輩の手を掠めて、さらに向こうまで飛んで行った。先輩がボールを追いかけるので、僕も一緒にボールを追いかけた。なんかわちゃわちゃしてるな。
「あった」
 結構な先の草むらまで転がっていったらしいボールを拾って、先輩が元の場所に戻ろうと言う。
「はい!」
 ふと、先輩が一瞬何かを考えて、それからボールを投げた。
「そら、取ってこい」
 僕はそのボールを拾って、そして先輩に持って行きながら文句を言った。
「先輩、僕のこと犬か何かだと思ってます!?」
「すまない。何か思い出すかと思って」
 あまり悪びれていない先輩の様子に、そう言われると、確かに何か既視感がある感じはした。ボールを持ち、目を閉じてうーん、と唸ってみると、ああ、確かに。こんなこともあったな。あの日もキャッチボールして遊んでたんだ。なんでそうなったのかは思い出せないけど……まあ、普通に思い出せないことくらい、あるよな。
『あっ、ボールが向こうまで飛んでっちまった!』
『よし、取ってこい』
『もう先輩、僕のこと犬か何かだと思ってるだろ!』
 僕はそのときも、ボールを素直に取ってきながら先輩に文句を言ってたんだ。
『取ってこいと言って取ってくるとは思わなかった。軽口だったんだが』
『分かりにくいです!』
『すまない』
『……まあ、悪くはないですけど!』
 案外お前は変なところで素直じゃないな、とシルバー先輩が笑って、僕はほら次の投げますよ、と言って誤魔化す。日が暮れるまで僕たちは運動場の片隅でキャッチボールして遊んでて、途中で呼びに来たセベクに、何やってるんだお前たちは幼い子どもかと呆れられてしまったんだったっけな。……あれ、僕たちひょっとして学生時代からやってること、変わってない、か? ま、まあいいだろ。今回は記憶を思い出す目的もあるんだし。再現だ、再現。
「今日はセベクに怒られる前に帰らないとですね」
 と言ったら、シルバー先輩は、そうだな、と笑った。それからまた、僕はキャッチボールしながら思い出していた。このことも母さんに報告したんだっけな、と。その度に『そうなんだ、お友達と楽しく遊んでたんだね』と喜んでくれた母さんの言葉が、少しずつ思い出せてきて、あの人が僕の母さんなんだという実感もじわじわ思い出せてきていた。そうだな。僕は、母さんが喜んでくれるのが嬉しくて、シルバー先輩とのことをたくさん話そうって思ってたんだ。

 僕の記憶は、順調に戻っている。けど、シルバー先輩とのそれは、どれも他愛ないものばかりだ。なんかちょっと、エレメンタリースクール生どころか、5才くらいの子どもみたいな戯れが多いが。記憶の片鱗を見る限り、仲が良かったのは分かるし、学園生活の中でけっこう一緒にいたのも、分かるんだけど。
 こんな感じで一年かけて、じわじわ思い出していくのかなあ? なんて、そのときは思っていた。

 そのうち、シルバー先輩や僕の誕生日があったから、その日はささやかな酒とご馳走でお祝いをした。シルバー先輩の誕生日はお城で祝われてからたくさんのプレゼントを持って帰ってこようとして、持ちきれないからとセベクにも運ぶのを手伝わせていたから、三人でそのあとちょっとだけ飲んでお祝いした。シルバー先輩が、頭に影響があるのならまだ酒は良くないんじゃないかと言うのを、セベクが、何がきっかけになるかわからんのだから少しくらい飲ませてみてもいいだろう、安心しろコイツはザルだった、一杯や二杯で動じるものかと説得して、僕も飲めることになった。ちなみにそれで思い出せたのは、シルバー先輩は、僕が怪我をする前からいつもちょっと僕に過保護だったってことだった。
「何を思い出しても、なんか他の奴より子ども扱いされてる気がするんだよな」
 なんて、敬語も忘れた僕が口を尖らせると、シルバー先輩は反論した。
「お前は、自分が大切にされるべき存在だというのをすぐに忘れて無茶をする。今回のこともそうだ。大切なものを守りたいあまりに、自分の身をちっとも省みない。だから、やめる気はない」と。
 どうやら過保護なのを自覚していて、わざとやめる気はないらしい。僕はセベクと顔を見合わせて、肩をすくめた。
 僕の誕生日は家で些細なお祝いをするだけかなと思っていたら、お忍びでドラコニア先輩が遊びに来てくれた。本人が言うには、『せっかくいつも遠い国にいる知己が膝元にいるというのに、祝わないという手はないだろう?』とのことだった。そして、ドラコニア先輩も、やっぱり僕が来たばかりの頃のセベクと同じように、『お前が最も仲が良かったのは否定しないが……。スペードはお前だけの友人ではないのだからな』とシルバー先輩になんらかの念を押して帰っていった。

 ――そんな、ある日のことだった。ざあざあぶりの雨の日に、これじゃあ外にも出かけられないな、なんて思ってつまらなく窓から空を見上げていた。
 公園でキャッチボールして遊んだあの日から、近くの公園くらいなら、ちゃんとどこへ行っていつまでに帰ると書き置きを残すなら自由に遊びに行ってもいいと許可を出されたので、僕は自由に身体を動かせるようになった。お陰で、かなり気分は爽快だ。でも、6月も半ばに入ってから、雨はざあざあぶりになることが多くって、外に出られないことが増えてきた。ちなみに、今日もシルバー先輩は仕事に行っている。……僕もバイトとかしようかなと言い出しはしたけど、シルバー先輩の許可が出なかった。とはいえ先輩も意地悪で言ってるわけではなくて、茨の谷ではあまりそうしたバイトのような形の募集もしていないらしかった。なんていうか、短期でちょっとだけ、みたいなのが少なくて、住み込みだったり職人としての修行みたいなのが主らしいから、シルバー先輩の目が届く範囲で、気軽に入って抜けられるような短期で出来るものはないみたいだ。そんなわけで、僕は今暇していた。
「うーん、何してよう?」
 シルバー先輩の家には、あまり本とかはない。ダンベルとかトレーニング器具はいくつか置いてあるから、それを借りて筋トレするのが、雨の日の僕の主なヒマの潰し方だった。お陰で、前よりもちょっと身体が硬くなった気がする。
 とはいえ、ずっと筋トレだけっていうのも退屈してしまう。そうだ、母さんにまた手紙を書こうかな。そのためには、まず、思い出したことと照らし合わせでもしながら、アルバムでも見てみようかな、なんて思って、アルバムが置いてある戸棚の上に手を伸ばした。
 そこで僕はバランスを崩してしまい、頭の上にいろいろなものが落ちてきた。
「ってて……。ん? これって……」
 アルバムと一緒に置かれていて、僕の頭の上に降ってきたのは、黒い筒と、一枚の紙。どうやら、ナイトレイブンカレッジの卒業証書と、その入れ物みたいだな。
「大切なものだな。元に戻しておかないと……」
 そう言いながらも、僕はなんとなく、その紙から目が離せなかった。とても大切な思い出が、その紙切れに残っているような気がしたんだ。
 メインストリートの並木の中、石畳の上で、僕は、今よりも幼い姿の先輩と、向き合ってた。
『卒業しても……』
 ……なんだろう、頭が痛い。これを思い出したら、一気に全部、思い出せそうな気がする。それは、きっと、勘でしかないけど。
 でも、どうしたらその先を思い出せるのか分からなくて、ただ、じっとその紙を見ていた。

 薄ぼやけたワンシーンから、記憶を次々と思い起こそうとする。でも、思い出せるのは、図書館で一緒に勉強して寝落ちしただの、魔法薬学の合同授業で二人まとめて補習を受けることになってクルーウェル先生に手を焼かせただの、休日一緒にトレーニングする度、プロテインバーをおやつ代わりにしょっちゅう与えられて、ジャックに『そういう風に使うやつだったかこれ?』って呆れた顔をされていただの、と思ったら次は普通におやつっぽいお菓子を与えられて、『そうじゃねえよ』って突っ込まれてた、だの……。そんな今までにも思い出していたような他愛ない記憶ばかり。でも、その他愛ない記憶は、何度、いくつどれを思い出しても、どこかで途切れることがなかった。いつでも先輩は、僕のことを、後輩の中でも特別に、どこか気安く接することができる弟のように扱ってくれて。ていうか実際、言われたこともあるじゃないか。『手のかかる弟が増えたな』って。それで、二人で軽口たたき合いながら、じゃあ次はこうするか、なんて真剣にやって、なぜかそれで問題が起きて怒られて……の繰り返しなんか、しょっちゅうやってた。
 それほどまでに、一緒にいたんだ。他愛ないじゃれ合いと軽口の記憶を、いくつ思い出しても、尽きないほど、僕は先輩と仲良くしていた。僕は学園生活を過ごす中で、いつしか先輩の『内側』の一人になっていた。
 そんな先輩の卒業式。会っていない、わけがない。僕は、何を言ったんだろう。卒業する先輩に向けて、僕は――
 ズキリ、ズキリと頭が痛んだ。きっと、ここが『核』だ。僕が全部を思い出せるかどうかの、分岐点だ。
「デュース!? 頭を打ったのか!?」
 いつの間にか帰ってきていたらしいシルバー先輩が、慌てて僕に駆け寄ってくる。でも、僕は言った。
「止めないで、ください。頭が、すごく痛い。でも、もう少し、なんだ。もう少しで、思い出せるから、止めないで」
 シルバー先輩は、心配そうに、でも黙って僕の手をぎゅっと握っていた。……ああ。相変わらず、握手の力加減が下手だな、なんて思って。僕は、とうとうすべてを思い出した。

 ――シルバー先輩の卒業式。僕は先輩に対峙して、言った。
『先輩』
『ああ』
『卒業しても、僕を忘れないでください』
 僕とシルバー先輩の間に交わされる言葉は、それだけで良かった。それだけで十分言いたいことが伝わるほど、もう仲は深まっていたから。
『ああ。いつ、どんなときだって、お前が病に倒れたり、窮地に陥ったときには、きっと飛んで行って助けよう。その代わり……』
『なんですか?』
『これからは、言葉も、呼び名も、もっと気安く接してくれ。お前はもう、ただの後輩じゃない。俺の……そうだな、特別な友人、なのだから』
『なんか違くないですか、それ』
『ふっ、そうだな。無理に名前を決めることもないか。では、これから改めてよろしく、デュース』
『はい。卒業おめでとうございます、シルバー先輩。そして、改めてよろしく、シルバー』
『ああ』
 今更こんな喋り方するの、なんか照れくさいな、と笑うと、そのうち慣れる、なんなら戻した方がきっと照れくさくなるはずだ、これからは。そう言って、シルバー先輩……シルバーは、僕の手を固く握りしめた。
 ああ。そっか。そうだったな。僕、そうだったんだ。長い間、ずいぶん他人行儀にしちまった。全部、思い出した。大切なこと、全部。シルバー先輩が卒業して、僕の『先輩』をやめたときから、ダチというには特別で、親友というには何かが違って。でも、間違いなく家族と同じくらい大切で。過ごしてきた家族も相棒も友人も、それぞれいるけど、それとは別に、また僕とシルバーはお互い特別で。
 そりゃ、どんな関係だったなんて聞いても言えないよな。僕たちの間では、名前を決めなくてもやってこられた、大切な関係だったんだから。
 それにしても、なあ。本当に律儀な人だよ。『忘れるな』なんて言いながら忘れたのは僕の方なのに、それでも約束を守るんだから。
「……本当に、真面目だよな。ありがとう、シルバー兄さん」
 いつか、『手のかかる弟が増えたな』なんて軽口を叩かれたとき、ふざけて言い返したのと同じ口調で言ってみた。それだけで、シルバーは全部を分かったようだった。
「ふっ。本当に、手のかかるやつだ」
「ああ。でも、もう大丈夫だ。全部思い出した。母さんのことも、アンタのことも、全部だ」
「……ああ」
 返事はそっけない一言だけだったけど、喜んでるのが分かった。っていうか、僕の快復を喜んでくれないシルバーじゃない。僕は伸びをする。
「全部思い出したなら、あと少ししたら、帰らなきゃな」
「……そうだな」
「淋しいか?」
「ああ。淋しい」
 素直だよな、と僕が笑うと、またすぐ遊びに来い、と返された。そうだな。記憶をなくした僕がいる間、ずっと気を張ってたみたいだし、今度は息抜きさせてやりに来ないとな。
「次は普通に遊びに来るよ」
「待っている……。いや、それよりも先に俺が行こう」
「なんでだよ?」
「また目を離した隙に、怪我でもしていないかと見張りに行かなくてはいけないからだ」
 ったく、過保護なんだからなと膨れれば、シルバーは言った。
「この半年程度の間、お前とやたら戯れていた学生時代に戻ったかのような気分で、懐かしかった」
「そっか」
「だが、次はないからな」
「分かってるよ」
 じゃあ、とりあえず飯にするか、と言われて、僕はその場に散らかしたものを片付けた。ああ、セベクやドラコニア先輩、ヴァンルージュ先輩にも世話になりましたって挨拶していかなきゃな、なんて色々なことを思ったが、とりあえずは目の前のシルバーと快復祝いをすることに専念することにした。この半年間、形としてはそうだったとはいえ……改めて、たまには二人水入らずってのも、いいからな!
「そういえば、僕を引き取ったのはやっぱり自分のことを思い出して欲しかったからだったのか?」
「それもあるが、一番ではない。最も大きな理由は、お前にも言った通り、母君とお前の精神に負荷がかかるだろうと思ったこと。それと、もうひとつは」
「もうひとつは?」
「お前と俺が、一番、お前の母君の話をしていたから。離れていても、お前が俺を介して、母君のことから思い出していけると思った」
 僕は納得して、ありがとな、と乾杯をねだると、仕方ないなという風に眉をすくめて、シルバーは乾杯を返してくれた。やっぱり、シルバーはシルバーだ。ずっと真面目で、僕の大切なもののことをよく分かってくれていて、律儀で、些細な約束でさえ、必ず守る。だから僕はこれからも、ずっとこの名前も知らない絆を大切にしようって、そう思うんだ。
 大きな出来事や、ロマンスがあったわけでもない。ただ、何十回も何百回も一緒に笑うことで重ねた、この絆を。

*おしまい

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