「シルバー先輩、僕……先輩と、エッチなことがしたいです」
それは普通の昼休みのはずだった。愛しい恋人でもある後輩、デュースに呼び出され、人気のない場所へ連れてこられたと思ったらこれだ。確かに俺たちは以前に一度だけ、そういったことも経験を済ませてはいるが……。
俺は正直なところ、デュースとそういうことをする気はなかった。俺がデュースのことを大事にしすぎていてなかなか手を出せないでいるということもあるのだが、何よりまだ学生の身であるし、付き合っているとはいえあまりそういったことはしたくなかった。しかし、デュースはどうやらそうした行為を求めているらしい。
「……今からか?」
「あ、違っ、今からとかじゃなくて! その、なんていうか……っ」
顔を真っ赤にして言い訳をするデュースは可愛いが、このまま放っておくわけにも行かない。今は昼休みだし、いつ誰が来るかも分からない状況だ。それに、俺は別に嫌だとは思っていない。むしろデュースが求めてくれるなら嬉しい限りだが、やはりもう少し時間を置いてからの方がいいと思う。
「落ち着け。まずはこうなるに至った事情を聞かせてくれ」
「はい……」
事の始まりは、数日前の出来事だったという。デュースと同室のものたちがいわゆる成人向けの本を読んでいた。デュースはそのとき級友たちにからかわれて、改めて性的な行為に興味を持ったということらしい。
「その、だな。気持ちは嬉しいが、こうしたことは他人の影響ですることではないと思う」
デュースを説得しようとした俺の言葉は遮られる。先程まで恥ずかしそうにしていたはずの彼は一変して真剣な眼差しでこちらを見つめていた。そして、意を決したように口を開く。
「確かに、最初はあいつらの影響だったかもしれません。でも、その……今はもう、一度、想像してしまってからは、また、シルバー先輩に、さわっ……て、ほし、く、て……」
言い終わるが早いか、デュースは踵を返そうとする。俺はその場から逃げ去ろうとする後輩の腕をすぐさま掴んだ。
「どこへ行く。言い逃げするな、デュース」
俺が真剣な目でそう告げると、途端にデュースは泣きそうなほど真っ赤になって潤んだ目のまま居心地悪そうにその場へ佇む。……こんな状況でなかったら抱きしめて慰めたいくらいに可愛いのだが……。いや、そうだ。いっそ抱きしめてしまえばいいんじゃないか。そうしたらデュースを逃がさずに済むし、あいつも少しは落ち着くだろう。よし、決めた。抱きしめよう。
「デュース」
名前を呼んでデュースを抱き寄せた。そうすると、驚いた顔のデュースが俺の腕の中に納まる。
「え、あの、シルバー先輩?」
混乱するデュースの耳元にささやく。優しく、あやすように。
「落ち着け。別に、俺はお前を抱きたくないわけじゃない。だから、そう恥ずかしがらなくていい」
そう言って安心できるように頭を撫でてやる。それからしばらくの間デュースは口を開かないでいたが、やがて、小さくぽつりとその言葉は呟かれた。
「……一人でして、我慢しようとも思ったんです。先輩は、忙しい人だから……。僕なんかにかまってる余裕なんかない、って。分かってて。でも、その……一人じゃ、足りなくって。そのうち、だんだんいろんなこと考えるようになって、こんなこと考えてるの僕だけなんじゃないかって、淋しくなったりもして、だから、その、もし、もしも、先輩もしたいなら、って思って、こんなこと、他の誰にも相談できなくて……」
ずるいな、こいつは。俺は俺なりにデュースのことを大切に扱っていこうと思っているのに、そんな理性なんてこんな一言で簡単に打ち砕いてしまう。まあ、いいか。ここまで言われて引き下がるのも男の恥だ。何よりも、可愛い恋人が不安を感じているのなら、それを俺にできることで取り除いてやれるのなら、なんでもしてやりたい。大事にしたいのも本当のことだが、最近忙しくてかまってやれなかったのも確かなことなんだ。そのせいで辛い思いをしているというのなら、俺は、できうる限りの態度で応えたいと思う。大切にしすぎて淋しがらせてしまうくらいなら、時にはきちんと好きだと示してやる時間を作らなければならない。
「本当にいいのか? ……どうなるか分からないぞ?」
「い、いいです! 自分で言ったことなんだから、覚悟キメときます!」
自分の腕の中にいるときでさえ元気な後輩に少しのほほ笑ましさを覚え、もう一度ささやく。今度はハロウィンの悪戯を仕掛ける無邪気な子どものように楽し気に。
「なら、今夜。俺の部屋を訪ねてこい。……待っている、デュース」
最後に強く抱きしめて腕を離してやると、耳まで真っ赤に染めたデュースはふらふらになりながら小さな声で「はい……」と返した。それから俺たちはしばしの別れを惜しみ、それぞれの教室へ戻る。そして、デュースが幾日も待ちわびたのであろう、夜だ。
取り急ぎ準備した品々を鞄に入れたのを確認しながら部屋でくつろいで待っていると、やがてトントンとドアをノックする音がした。机の上のものをすぐに片付けて答える。
「入っていいぞ」
「……お邪魔してます……」
現れたのは約束通り俺の自室へと来たらしいデュースだった。最小限の手荷物を持ち、所在なさげに佇んでいる。
「ああ、よく来たな。リドルに外泊届はちゃんと出してきたか?」
「は、はい。なんとか許可取れました」
「そうか、分かった。とりあえず中に入れ」
「はい、失礼、します」
デュースはどうにも緊張で固まっている様子だ。俺だって今すぐに取って食うというわけじゃないのだから、少しは後輩の緊張をほぐしてやりたい。なのでまずはリラックスさせようと、俺は椅子から立ち上がりデュースの頭を撫でた。
「来たばかりで悪いが、場所を移動する。ついて来い」
「はい」
俺はデュースと少しの荷物を伴い、ディアソムニア寮を後にする。事前に今日の夜は野暮用があると親父殿には伝えておいたし、止められなかったということは向こうは大丈夫なのだろう。……親父殿は「ほほお〜」と言って笑っていたから、事情を何か察された気はするが。とにかく普段かまってやれない時間も多い分、今日のこういった機会は改めて存分に恋人をかまってやる時間にするつもりだ。だから、まずは。
「デュース。これからとっておきの場所に向かう。他の人には見つからない、邪魔の入らない場所だ。ただ、そこまでは少し歩く。だから、ほら」
と言ってデュースに手を差し出す。するとデュースは一瞬戸惑ったような顔をしたものの、恐る恐るといった様子で手を重ねてくれた。温かな体温を感じる手を握り返し、ゆっくりと歩き出す。
「大丈夫だ。誰かがいても、きっと夜が隠してくれる。さあ、行こう」
「……はい」
繋いだ手は離さずに、森の中を進んでいく。静寂と少しの緊張の中、森の小屋へとたどり着いた。丸太で作られた小屋の中は簡素なもので、わずかなベッドやシーツ、それから古くなった保存食などが置かれている。
「ここは……?」
「昔、学園内の森を管理していた人が使っていた小屋だ。今はもう使われていないから、人は寄り付かない。だから、たまに仮眠をとるために使わせてもらっている」
小屋の扉を開け、デュースを部屋に入れる。それから自分も中に入り、扉の鍵を閉じた。閉じられた鍵の音に、デュースはびくりと肩を跳ねさせた。どうやら、これからされることへの実感が湧いてきたらしいな。不安を取り除けるように、なるべく穏やかに声をかける。
「何も怖いことはない。今日はここで二人、ゆっくり時間を過ごそう。ほら、お前も」
「は、はい……」
ベッドへ腰かけ、とデュースを招く。するとデュースは遠慮がちに隣へと座る。俺はそんな姿をほほ笑ましく思いながら、彼の腕を引いて自分の腕の中へと座らせた。
「隣だなんて遠慮するな」
「ちょ、ちょっと、シルバー先輩……っ」
腕に力を入れ、背中からしっかりと捕まえて、デュースの耳元にささやく。
「……俺とそういうことがしたいんだろう?」
耳元でそんなことを言えば、面白いくらいにその頬が赤く染まる。これは言わずもがな、肯定の返事だと俺は受け取った。
「なら、こんなところで照れているのは良くない、そう思わないか?」
そう言ってから一度解放してやると、振り返ったデュースは真っ赤な顔でこちらを睨みつけてみせた。参ったな、全然怖くないどころか、むしろ可愛らしいじゃないか。
「……先輩の意地悪!」
「すまない。つい、お前が可愛くて」
素直に謝れば、デュースの顔がさらに赤くなる。それがまた可愛くて、思わず笑みを深めながら、今度は正面から抱きしめるようにしてデュースを捕まえる。
「困ったな。何度可愛いと言っても足りない」
「も、もう……、先輩! 今日どうしたんですか! 僕が言えたことじゃないかもしれないですけど、その、なんか……ヘンですよ!」
いつももっとクールな感じじゃないですか、とデュースはとても弱い力で俺を押し返す。これは本気で押し返す気がないな、と俺はさらにデュースを抱き寄せた。
「確かに口には出していないかもしれないが、いつもお前のことを思ってる。可愛らしい、好きだ、愛らしい、好ましい、と。こういった機会があれば、いつでも伝えようと思っていた。機会をくれて感謝している」
この思いが伝わればいいのだが。そう思いながら耳たぶに触れるようにしてささやけば、デュースはようやく大人しくなった。そのまましばらく無言で抱き合っていると、やがてデュースの方からぎゅっと抱きしめ返された。
「……そんな風に言われちゃ、僕も、言うしかないじゃないですか。……好きです、シルバー先輩。いつも、先輩のことを考えてる。格好良くて、強くて、優しくて、厳しくて……。先輩のことを考えるほど、苦しくなったり、嬉しくなったり、それから、その……変な、気分になったりしてる。でも、それも全部……僕が、先輩のことを、好き、だから」
そこまで言ったあと、デュースは俺の肩を掴み、そっとキスをした。目を閉じて、それを受け入れる。柔らかな感触が暖かく、とても穏やかで幸せな気持ちに包まれた。それからどちらともなく唇を離し、顔を見合わせてほほ笑む。
「もっと、こうしていたいな」
「ははっ、はい。僕もです」
互いに顔を見て笑い合う。それから再び抱きしめ合いキスをして、俺はもう一度だけささやいた。
「好きだ、デュース。今宵は、何度でも言わせてくれ。たとえお前が聞き飽きても、可愛らしい、好きだと」
「はい、先輩。僕にも、たくさん……伝えさせてください」
YESの返事代わりにもう一度キスをして、二人で座っていたベッドへとデュースを押し倒す。俺の恋人は、世界一可愛く愛おしい後輩だ。今夜は一晩中、この愛おしい後輩と離れずに時間を過ごそう。
「……デュース」
「はい……」
デュースの唇をなぞり、またキスをしようとする。ふとそのとき、目を細めたデュースが何かに気づいた。
「……あ、窓……」
「窓?」
窓の方を見ると、黒みがかった紺碧の夜空にキラリと光る星がひとつ流れていた。
「流れ星か」
「はい。……こういうの柄じゃないんですけど、ちょっと、いいなって思っちゃって」
「そうだな。俺も、そう思う。だが……」
俺は片手を伸ばし、星空の映る窓のカーテンを閉める。
「今日、この時間は俺とお前だけのものだ。たとえどんなに美しい流星でも、遠慮してもらう」
そう言って、覆い被さるように顔を近づけると、再びキスを受け入れようとデュースは目を細める。今度は誰にも阻まれなかった。ちゅ、と小さく音を立てて唇は離れる。俺はそのまま、唇の端に、赤く染まった頬に、前髪をかきあげた額に、やはり赤く染まっている耳に、潤んだ目の端に、愛おしいと思った場所すべてに片っ端から口づけていく。そうして長い口づけを終えて顔を上げれば、幸せそうにほほ笑んだデュースがいた。
「先輩、今度はこっちの番ですよ」
そう言うとデュースは俺が今してみせたように、俺の頬や唇にキスを返してみせた。デュースも同じように俺のことを愛おしいと思ってくれているんだろうか。もしもそうなら、こんなに嬉しいことはない。きっとそうだ。だって、こんなにもこの時間は愛おしくて優しく、穏やかだ。
「好きです、シルバー先輩」
ちゅ、というリップ音の鳴る頬の横で、ささやくように甘いデュースの声が響く。困ったな。俺はきっと、嬉しさに顔が緩んで、情けないことになっているんじゃないだろうか。
それでもいいか。格好つけていたいのは山々だが、可愛い後輩の前でくらい、そんな姿を晒してもいいだろう。何より、大切な相手の心を晒してもらうためには、こちらから先に心を曝け出していかなくては。そうでなくては、こちらには傷つけるつもりなんてさらさらにないということを分かってはもらえないと思う。だから。
「デュース、好きだ」
押し倒したまま、デュースのことをぎゅっと抱きしめる。デュースは驚いたのか少し目を見開いたあと、ふにゃりと嬉しそうに笑った。
「もう、ほんとに……言い過ぎですよ」
「本当のことだから仕方ないだろう」
「ははっ、もう……でも、嬉しいです。ありがとうございます」
笑いあって、もう一度キスをした。そのままデュースの鎖骨へと唇を寄せていく。
「んっ」
デュースは小さく肩を揺らした。くすぐったいんだな。それならもっと感じさせてやろう。少しだけ位置をずらしながら、デュースの首元へいくつか小さな痕をつけ、空いた手で制服のジャケットからボタンを外していく。いつもは少ししか覘のぞかない赤いベストも、白いシャツのものも、よく締まったネクタイも、すべて外してしまう。それから、まだあまり目立たない胸元のそれを口に含んで舌先で転がすと、デュースの口から艶めいた声が漏れた。
「ふっ……」
デュースは手で口元を押さえている。ああ、手袋がまだ手に填まったままだな。自分のものを脱ぎ捨て、口元を押さえている手を外すついでにデュースの手袋も脱がせてしまう。
「ほら、お前のも」
「あ、はい……」
脱ぎ捨てた手袋は、ぽん、と邪魔にならない枕元に揃えて置いておく。ついでに自分のジャケットやベストも脱いで放ってしまうことにした。俺が上着を脱いでいると、デュースもおずおずと上着を脱いでいく。
「なんだ、お前も脱ぐのか? 恥ずかしがってまだ着ているかと思った」
「……大事な制服だから、汚したくないので」
こんなときでも、デュースは学校へ入学できたことへの尊敬を忘れない。そういうところが俺にとって好ましいのだが。
「そうか。いっそ俺が脱がせても良かったんだが、そういうことなら我慢しよう」
「何言ってるんですか、もう!」
「冗談だ」
枕で攻撃されそうになり、それを防ぎながら笑っていると、デュースはやがてその枕を握りしめて言う。
「……続き、しないんですか」
「ふっ」
素直な後輩が可愛くて笑ってしまう。ああそうだとも! 俺だってキスだけで満足できるほどの気持ちでここに来たわけではない。今日はこの愛しい後輩を前にして、おかしな姿を見せてばかりだ。
「笑わないでくださいよ!」
「すまない、お前が可愛かった。続きをしよう、デュース。拗ねないで、機嫌を直してくれ」
「……ったく……」
デュースの頬を包み、もう一度キスをすると少し渋々だがデュースは受け入れてくれる。舌を絡ませると、ぴちゃぴちゃという水音とともに唾液が混じりあった。そうしてしばらくキスをしてから口を離し、先ほど含んだ胸の突起を再び口にした。今度は舌で優しく撫でるように刺激する。
「ぁ……っ、あぁっ、ん……っ」
俺の舌の動きに合わせ、デュースの口から甘い声があがる。それだけで背筋にぞくぞくとしたものを感じる。なんだ、デュースばかりじゃなくて俺も相当求めていたらしいな。
デュースの胸で薄桃色の光を照り返すそれを、今度は指で弄っていく。
「んん……っ」
硬くなっている先端を刺激すると、デュースは小さく息を乱した。可愛い。もっと声が聞きたい。
「あっ!」
片方の手は弄らせたまま、もうひとつの桃色の突起を柔く噛んでみせると、デュースはびくりと身体を震わせた。突起はそのままはむはむと味わうように食んでしまう。
「あ、あ……っ、先輩、それ……っ」
少し歯を立てる度にびくっと身体が揺れる。気持ちいいのだろうか。それとも。
「痛いか?」
「い、痛くは……ない、けど、その……」
「なら、気持ちいいか?」
また突起を食みながら問いかける。するとデュースは身体から何かを逃がすように首を振った。否定したいわけではなく、ただ恥ずかしさに耐えるためにそうしたのだろう。あるいは、恥ずかしさ以上の何かに耐えるために。
「ん、ぅあ、ん……っ」
デュースの口からは嬌声混じりの小さな吐息が漏れる。俺はそれをさらにもっと聞きたくて、どんどん自らの手や口に悪さをさせていく。
「デュース」
弄んでいた胸元から、臍のある腹筋へと唇を寄せていく。
「好きだ」
はあ、と吐息を含ませてその肌に語りかけ、びくりと跳ねた太ももを撫であげると、ズボンのベルトを外してしまう。
「んあっ……!」
下履きを脱がせる際、既に持ち上がった状態のそれにわずかに触れてしまい、デュースは反応する。
「ここが気持ちいいのか?」
顕になったデュースのそれを手の中に包み込む。握ったり擦ったりと手指を動かしてやると、デュースは声を押し殺した。
「あ、や、やだぁっ、先輩、だめ……っ」
デュースはいやいやと首を振りながら、俺の手を離そうと手を重ねてくる。
「駄目じゃないだろう? 俺とこういうことがしたいと言ったのは誰か、覚えているな?」
デュースの手を押さえ返し、首元に口づけながら尋ねればデュースは心底恥ずかしそうに答える。
「僕、です……」
「なら、いい子にしていないとな」
そう告げて首筋を舐めあげる。そうするとすぐに甘い声があがった。
「あっ……」
そのまま、再びデュースの突起を口に含む。舌先で転がしたり、吸ってみたりしながら刺激を与え続け、同時に下の方にも触れていく。
「ん、あ、あ、ああ……っ」
指を滑らせていくと、徐々に抵抗する力が弱まっていくのが分かる。そろそろ頃合いだ。一旦口を離し、耳元にささやいた。
「指、入れるぞ?」
用意していた手荷物からローションを取り出し、たっぷりと指先になじませる。それからまずは指一本をゆっくりと中へ差し入れると、デュースはその先端を気持ちよさそうに受け入れた。それがたまらなく愛おしくて、もっと奥へと進める。それに合わせてデュースの吐息が漏れていく。
「ん、んんっ、はン……」
指先をきゅうきゅうと窮屈に締め付けてくる感覚さえ、背筋をぞくりと震わせた。俺の指先はやがてデュースの感部を見つけ、すぐさまそれに悪戯を働く。指の腹で擦ったり、とんとん、と叩いてみたり。
「あ、あ、あ、先輩、せんぱい、も、そこ、い……っ」
快感に満ちた声が返ってくる度、こちらも昂ってくる。とろんとした様子で俺に懇願してくる姿は、何度見てもとても可愛らしい。だがここでやめてやる気はなかった。俺は、もっと恋人の可愛らしく甘く蕩けた姿を見たくなっている。もう少しこの反応を楽しみたい。
「もうそんなに感じていていいのか? ……ほら、指を増やすぞ?」
二本目の指をゆっくり差し込んでいく。そうしてまた増えた指でくちゅくちゅと音を立てながら感部を刺激すると、デュースの口からは声にならない声があがった。
「あ、あああ……っ! ゃ、いや、そこ、だめ、だめぇ……っ」
デュースの手は枕やシーツなどそこにあるものを掴み、首はぶんぶんと振って、とにかく快感をどこかへ逃がそうとしている様子だ。だけど俺はそれを許す気はない。俺の与えた快感を逃がすつもりなのなら、それ以上にまた与えてやらなければ。
「……この調子なら、三本目も入りそうだな?」
丁寧に入口を広げつつ、三本目の指で縁取りをなぞる。するとデュースはまた、んん、と気持ちよさそうな声を漏らした。とうとう三つの指を差し入れ、三本の指で交互に動かしたり、一気に攻め立てたりと存分にデュースの身体をいじめる。
「や、むり、みっつはむり……っ、あ、あああああ……っ! ひゃ、あ、はあ、んぅ……っ、あ……っ! せんぱい、せんぱいぃ……っ」
そして、三本の指がすべて呑み込まれる頃にはもうすっかりデュースは蕩けきってしまっていた。恐らく何回かはもう達するに近い状態になってしまったんじゃないだろうか? まったくもって俺のせいで涙が滲むデュースの目元に口づけ、前髪を撫でる。
「ふふ、頑張ったな。もうバテてしまったか?」
「……だい、じょうぶ、です……」
「挿れてもいいか?」
「は、い。きて、ください」
息も絶え絶えに、デュースは了承の返事をくれる。ありがとう、と礼のキスをして、ゴムをつけた自分のものをデュースの秘部にあてがった。
「挿れるぞ」
そう告げてから少しずつ進めていくうちに、デュースの顔は恍惚に蕩けていく。
「ん……っ、く、ぅうん……っ」
俺にぎゅっと抱きつきながら、与えられる快感にじっと耐えている様はもはや芸術のようにさえ思えた。可愛い。可愛くて仕方がない。だから俺もどんどん夢中になっていくんだ。やがて先端まで呑み込まれたあと、ゆっくりと腰を動かしていく。そうするとすぐに、快感に震えるようにびくんとデュースの腰が揺れるのが分かった。
「ひぁ、あ、あ、はぁっ、んぅ、も、もう、せんぱい……っ」
「どうした? まだ終わりじゃないぞ。ここからが本番、だろう?」
俺の動きに合わせてびくびくと反応する身体からは力が抜けてしまい、なんの抵抗もできなくなっている。とても良い眺めだ。このまま最後まで楽しんでしまいたいくらいだが――
「さあ、デュース。一緒にもっと気持ちよくなろう」
「はぇ、あ、ま、まって、むり、ぼくもう、すごい、いっ……あ、ひぁああっ!」
腰の動きを早めると、デュースからは悲鳴にも似た嬌声があがる。本当になんて愛らしい後輩なんだ。そう思いながら、もっとこの熱をデュースに打ち付けたいと、かき回して、引いて、押して、奥に叩きつけてと思う存分にデュースを求めた。デュースの足はもうがくがくと震えっぱなしで、デュースのものはひくひくとそのときを待ち続けている。俺は遠慮なく、存分にデュースの中を攻めさせてもらうことにした。もう限界に達していそうなデュースには悪いが、俺も理性なんてとうに飛んでいるんだ。
「本当に、はあ……っ、お前は、何もかも可愛いな……っ」
「ひゃ、あ、むり、もむり、だめ、せんぱい、これ、これしんじゃう、たすけて……っ、あ、ひゃあ、あああああんっ!」
「く……っ!」
デュースから一際甲高い声があがり、中に入れた俺のものは一層強く締め付けられる。どくんと脈打つ感覚がして、びゅるりと何かが俺の中から出ていく感覚がした。
「……はあ……」
「は、あ、はっ……」
さっきまでしていた行為の激しさの余韻を残す呼吸を何とか整える。そうして落ち着いてきたところで、未だ繋がったままの状態のそれをずるりと抜いた。
「ん……」
「デュース、大丈夫か?」
デュースの汗ばんだ前髪を払ってやる。するとデュースはぼうっとした目でこちらを見上げてきた。
「あ、せんぱい……」
「よしよし、頑張ったな」
頭を撫でてやると、デュースは嬉しそうに俺の手へ頬ずりをした。目を細め、愛おしそうに俺や俺の指先を眺める姿が美しいなと思った。やがてデュースははにかむように笑う。
「へへ……。今日の、前したときより、気持ちよかったです。する度に気持ちよくなったりするのかな……」
「そうなったら大丈夫なのか? 今日も相当、限界近く気持ちよさそうに見えたが」
それに対してデュースは俺の手を握り、大丈夫だとうなずく。あの様子でまだ余力があったとは、末恐ろしいな。
「大丈夫、です。してるときは、もう無理、これ以上無理って思うんだけど……。でも、こうやってると、またしたいな、って思うから」
それから、少し休憩したらもう一回だけしませんか? とデュースはねだる。そんな姿さえ可愛くて、俺のものは再びまた熱を持ち始める。
「まったく、お前ときたら……」
「……えへへ」
心配しているんだぞ、とデュースの額を小突く。それから、ずっと心配していたことを尋ねた。
「もう、淋しくないか?」
「あ……」
どうやらデュースは何かに思い当たったようで、またぎゅっと俺の手を握った。どうやら俺の気持ちは充分に伝わったらしい。
「はい。もう大丈夫です。……そのために、相手してくれたんですね。ありがとうございます」
「気にするな。恋人の役目だ。他に譲る気もない」
また、デュースの髪を撫でる。それから顎を引いてもう一度口づけた。するとデュースは目を見開いて驚いてみせる。
「どうした、もう一度するんだろう?」
「いいんですか?」
「いいも何も……、何度も言っただろう、可愛い恋人だと。そんなお前のおねだりを、俺が断れるわけがない。お前が、好きだからな」
「ふふ、なんですかそれ。でも……嬉しい。ありがとうございます。……僕も好きです、大好きです、シルバー先輩」
今度はデュースの方から口づける。再びデュースを波打つシーツの隙間に泳がせ、俺たちは二人きりで更けゆく夜を楽しむのだった。
*おしまい
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