Love Magic

・作劇の都合上、シルバーの寮の部屋は一人部屋という設定にさせていただいています。

 

「デュース」
「あっ、せんぱ……」
「じっとしていてくれ。……いい子だから」
「あっ、あ、ん……っ」
 涙と吐息をこらえて耐えるデュースのものに触れ、慰め続ける。背中越しである以上わずかにしか見えないが、上気した頬と染まった耳が可愛らしい。腕の中に包み込んだ身体は俺のものよりも細身で、白い襟の隙間から赤くなったうなじが見える度にいっそこのままそこへ口付けて押し倒して、めちゃくちゃにしてしまいたい気持ちになる。

(いや、ダメだ。そんなことをしてはいけない。思い出せ、今自分が何のためにこんなことをしているのかを……)

 なぜこんなことになったのか。それはまず、俺とデュースが恋愛を目的として付き合っている……いわば恋人同士、だからだろう。
 始まりのとき、告白したのは俺からだ。いつも元気で、少しそそっかしくて、危なかっしくて、どうにも目が離せない。学園の大切な仲間の一人として、また仲の良い後輩として、しっかり守ってやらなければという気持ちが、俺が、俺だからあの子を守りたいとなったのはいつからだったろうか。自身の気持ちに自覚を持ったのち、デュースには目的のためよそ見をするなと言ってしまった手前、そのことと矛盾する謝罪を含め俺から告白した。
『あのときはああ言ったが、今、気持ちを告げずにはいられなかった。お前の邪魔になるようなことを言ってすまない』
 デュースは驚いた顔で、目を見開いてぱちくりとさせて、それからとても嬉しそうに笑ってこう言った。
『どうしよう、先輩。僕、今、すっげー嬉しい……です!』
 それから俺たちはささやかな交際を始めた。けれど、けして俺の欲や願望がデュースの邪魔にはならないように、だ。もちろん、触れたいと思ったこともある。だが、お互い目指すところのある身として、想いあう時間を過ごせるだけで満足するように務めていた。
 ではなぜそんな俺が、今、俺の部屋で、デュースを腕の中に閉じ込めて、あまつさえ彼のものを慰めているのかというと、だ。こうなる前に聞き出したデュースの話によると、こんなことがあったらしい。彼らの今日最後の授業は錬金術。一年生と三年生の合同授業で、奇しくも俺の主君であるマレウス様とデュースがともに実験へと励んでいたそうなのだ。マレウス様がついていただけあって、実験は無事成功したらしい。しかしそのとき、別の生徒が薬品棚に身体をぶつけてしまい、近くにいたマレウス様や他生徒を庇ったデュースが複数の薬品材料を被ってしまい、偶然にも薬の効果が発動してしまったのだとか。
 デュースはすぐにクルーウェル先生から処置を受けたが、材料を直接たくさん被ってしまったこともあり、薬の効果は完全に切れたとは言えず、効果が切れるまで安静にするよう言い渡されたそうだ。……表向きは、だが。
 実はこの薬の効果というものが、いわゆる『催淫剤』ありていに言えば『媚薬』の組み合わせで……。実際はその場(といっても科学準備室だが)にいたマレウス様とクルーウェル先生によって、こんな会話がなされていた。
『中和剤を飲ませたが、効果が消える気配がないな。いっそこの子犬に恋人でもいれば早かったんだが……』
『そうか、恋人がいればいいんだな? なら、話が早い』
 ……あとはお察しの通り、マレウス様が俺の部屋にデュースを飛ばして向こうは一件落着となった……ということだ。
 放課後、何も知らず帰寮した俺を出迎えたのは、薬の作用で興奮状態のデュースだった。
『あ、せんぱ、ごめんなさ、すぐでてきますから……っ』
『……とりあえず、何があったのか話してくれ』
 俺はもちろん驚いたが、向こうの方が慌てている様子だったので、できるだけ冷静になれるよう務めて、明らかに様子のおかしいデュースに何があったか話すよう促した。そして、事の顛末を聞き出したというわけだ。それからの話は早かった。俺は自室の扉にカギをかけて、デュースにこう告げた。
『ならば、応急処置を行う。楽な体勢をとって、じっとしていろ』
 身体の自由さえままならないデュースを抱き寄せ、己の身にもたれかからせた。そして今に至る、というわけだ。

「……デュース、苦しくないか?」
「んん……っ、さっきから、せんぱいに、いっぱいしてもらってる、のに……っ、ぜんぜん、おさまん、な……っ、ごめん、なさ……っ」
 悔しさからか快感からか、耐えきれずぽろぽろと涙をこぼすデュースの頭をあやすように撫でて耳元で囁く。
「大丈夫だ、デュース。俺のことなら、気を遣わなくていい。お前の身体の方が大切だ」
 とはいえ、俺の手元は既にデュースの出したものでかなりぐちゃぐちゃになっている。それを気にしているわけではないのだが、始めてからもう何度も達している以上こうまでなっていてはデュース自身の体力の消耗も激しいだろう。次に達したら、一度休憩を挟んだ方が良い。
「……デュース」
「せんぱ……」
 振り向かせたデュースの唇へキスをする。思わず舌を入れてしまいそうになったがすぐに引っ込めた。が、それでも今のデュースには十分な刺激だったらしい。
「せんぱ、いまの、……あ、あっ、は、やだ、また、くる……っ……あ、うあっ……!」
 俺にしがみつくように、すがりつくようにして、デュースは達した。俺はデュースの髪を撫でる。
「……少しくらいは落ちついたか? 疲れただろう、休憩を入れよう。水が欲しければ、そこにあるものを飲んでいい」
 部屋の隅にあるペットボトルを差し、一本をデュースに渡した。息が相当上がっているし、汗もかいている。水分補給は大事だ。
「俺はいったん必要なものの買い出しとリドルへの説明に行くが、お前はここにいていい。楽な恰好になって、ベッドで休んでいてくれ」
 抱きあげたデュースをベッドに置き、すぐに戻る、と額にキスをする。デュースはまだ呆けた様子で、なんとかはいと返事をした。

【Side:デュース】――シルバーの部屋にて
 シルバー先輩にもらったペットボトルの水をいくらか飲んで、飲みかけたそれをベッドサイドに置いた。火照った身体に、冷たいペットボトルの温度が気持ち良かった。先輩に言われた通り楽な恰好になろうとして、制服のジャケットとズボンを脱いだ。どうにかこうにか折りたたんで、なんとなくベッドの脇に置いた。ふと、鏡が目に映って、自分の姿を見て、恥ずかしくなった。大好きな先輩の部屋で、シャツとパンツだけになってしまっている……。それがなんだか妙に気恥ずかしくて、休んでいてくれと言われたベッドに寝転がり、布団をかぶって見えなくした。
 それが間違いだった。包まれたベッドからは、コーヒーと太陽の香りがする。いつも先輩に抱きしめられたとき、ふわりと香るあの匂いだ。
(まるで、またシルバー先輩に抱きしめられてるみたいだ……)
 さっきまで現実だったその光景が蘇る。シルバーの触れる手の熱を、温かく包み込む体温を、吹きかかる吐息を思い出す。
『デュース』
(……! ダメだ、先輩のベッド、汚したくないのに……さっきの、思い出して……!)
 落ち着きを取り戻していたかのように見えた身体は再び火照り始める。先輩が戻ってくるまで耐えるんだ、と、身をちぢこめた。

【Side:シルバー】――購買部にて
 なんとかリドルに薬の介抱だという説明はできた。詳細はわずかに省いたが、安静にした方がいいと先生も言うのならとデュースの外泊許可をもらうことはできた。これで少なくとも今日のうちはアイツに無理させなくて済むだろう。
 それから俺は軽食や飲料を買いに購買部に来ていた。今日は泊まらせるつもりなら、アイツの食事なども考えておかなくてはならないからだ。適当な食事を選び、会計を済ませようとする。そのとき、ふと、目に入ったものがあった。なんで高校の購買部にこんなものが堂々と……。けれど、なぜかその誘惑を断ち切ることができない。手を伸ばしかけたとき、サムさんから声をかけられて我に返った。
「悪い子だね、小鬼ちゃん! それが欲しいのかい?」
「……いや。そうだな、必要ない。止めてくれて感謝する、サムさん。こちらの必要物資だけを頼む」
 顔から火が出る思いだが、できるだけ冷静に返す。動揺を悟られたくはない。
「アッハッハ、ごめんね~男子高校生には刺激が強かったかな? でも結構需要があってね!」
 サムさんはてきぱきと袋に商品を詰め込んでいく。その中に、先ほど俺が手を伸ばしかけたものも含めて。
「いや、あの、サムさん。それは……」
「意地悪してごめんごめん! クルーウェルから事情は聞いてるよ! これは俺からのお節介ってことで、受け取っておいてくれ小鬼チャン!」
 何かあったらまたおいで、と半ば追い出されるように商品袋を押し付けられる。……俺の理性が切れたときの保険として、大切に使わせてもらおう。そう言い訳して、購買部を後にした。

 

「デュース、入るぞ」
 自室にたどり着き、扉を開ける。するとそこに広がっていたのは、俺のベッドに横たわるデュースの姿だった。
(……それだけでも、中々にくるものがあるな……)
 自分のベッドに愛しい恋人が横になっている。その事実を自覚するだけでも、何か身体の中に熱を帯びる感覚があった。良くないことだ。デュースは今必死に薬の作用と戦っているというのに。
「……眠っているのか?」
 扉と、一応カギを閉め、俺のベッドに寝そべるデュースに近づいた。すると、ひゅう、ひゅうと呼気が荒いことがわかった。起きている。
「デュース、大丈夫か? ……めくるぞ」
 布団をめくると、デュースは枕のひとつを抱きしめて、耐えるように目を瞑っていた。
「あ、せんぱ……んんっ!」
 デュースはようやく俺に気付いたようだが、どうにも快感を耐えるのに忙しいようだ。誰かの代わりだとでも言うように枕にすがりつきながら、足をそわそわとすり合わせている。俺が買い物をしている間、ずっとこうやって我慢していたのだろうか? シャツの隙間から見える下着はもう濡れて色が変わってしまっている。
「……デュース」
 俺は買い物袋を脇に置いて、制服のジャケットと緩めたネクタイを放り投げた。ベッドに横たわるデュースの上に、覆いかぶさるような体勢になる。
「せん、ぱい……?」
「デュース。よく、我慢したな。今、楽にしてやる」
 デュースの顎を引いて、口づける。右手は自然、デュースのものへと伸びていった。

「あ……っ、ん、せんぱい、シルバー先輩……っ、それ、気持ちい……っ」
「……は、あまり、名を呼んで……煽らないでくれ……」
 俺は再び、デュースのものを慰めることに一貫していた。なぜなら、恋人関係を申し込んだとはいえ、結ばれるのは、こんな事故のような、今、このような形でではないはずだと、信じているからだ。最初よりもずっと、つい手が出てしまいかけて、舌を入れたり、肌や乳首を舐めたりとつい愛撫してしまうが、本当に最後まではしないようにギリギリのところで理性を保ち続けている。それでも今のデュースには十分な刺激になってしまっているらしく、反応される度に欲望と申し訳なさが背筋を同時に襲ってくる。
「や、やだ、そこ、さわられたら、また出る……っ」
「……ああ、出していい。何も考えるな。楽になってくれ、デュース」
 薬の効果が切れるのが先か、体力が尽きるのが先か。それとも、俺の我慢が限界を迎えるのが先か……。
(いや、良くないだろう。デュースは薬の効果で辛いのだから、好きでこうしているわけではないのだから……! 俺の独りよがりに愚かな欲で、どうこうしていいわけはない……!)
 理性が飛びそうになる度に同じ呪文を脳内で唱え続け、辛そうなデュースにひたすら愛撫を続け、どうにか翌朝には帰せるようになった。

 あれからのことだ。デュースと目を合わせるのがなんとなく気恥ずかしいというか、ばつが悪い。それはやはり、俺がデュースにやましい気持ちを持つようになってしまったからなのだろう。
(卒業まで待とうと思っていたが、あんな事故のような形で半ば手を出すことになってしまい……。あまつさえ今の俺は、その先を望んでいる。デュースは薬の効果で苦しんでいたというのに、その姿に対して……。なんてことだ)
 自分が情けない。ため息をついていると、当のデュースから呼び出しを食らった。
「あ、あの! ……先輩、話があるんです……大事な話が」
 二人きりになれるように場所を変え、学園裏の森へと移動した。そこでデュースから言われた言葉はこうだ。
「先輩、最近僕と目を合わせてくれないっていうか、それ、あのとき……から、ですよね。僕が、変な薬かぶった……」
 どうやら、俺の気まずさはデュースにも伝わってしまっていたらしい。事情が事情だけにうまく言葉を紡げず、言葉を濁す。
「それは……」
 デュースは俺に対し、俯いて、震える声で小さく呟く。だが、俺は自分が思うよりも先に、彼の言葉を勢いよく否定した。
「……やっぱり、そうですよね。僕なんかのあんな姿見ちゃ、気持ち悪い、ですよね……」
「それは違う!」
「……え?」
 顔を上げたデュースに、やはりばつが悪くて目を逸らしてしまう。……が、これだけは説明しないといけない。デュースが、己自身が忌避されていると思っているのなら。不安にさせているのなら……俺の恥くらい、安いものだ。俺の方こそ、デュースには幻滅されるかもしれないが……。
「むしろ逆なんだ、気持ち悪いのは俺の方で……」
「……逆?」
 覚悟を決める。こんなことを言えば、嫌われてしまうかもしれない。俺は、自分が最低な男だとデュースに白状する。
「お前の、その、薬の効果で苦しんでいる姿を見て、非常に情けないことに……欲情してしまった。お前は苦しかっただろうに、本当に、申し訳ないと思う。快感に悶えるお前の、あの姿をもう一度見たい、だなんて……。その上さらにどうしようもないことに、俺はその先すら望んでしまっている。事故のような形で行われるくらいなら、いっそ……と。だから、こんな気持ちがやましくて、情けなくて……お前と目を合わせるのが気まずかった。けして、お前が気持ち悪いからとかじゃない。その、逆なんだ」
 言葉を切る。デュースは告白したときと同じ顔で驚いて、それから、一歩進んで、俺の胸にとんと飛び込んできた。
「デュース?」
「シルバー先輩……僕も、同じ気持ちです。あのとき、先輩に触れてもらったとき、僕、思ってたんです。どうせ先輩とするなら、こんな事故みたいな形じゃなくて……本当に、二人で想いあってしたかった、って。だから、あの、先輩。ダメ、ですか。僕……いつか、じゃなくて。今、ここで、先輩に……。こんなの、優等生の言うことじゃないってわかってるんですけど、でも……」
 でも。その先を言えず、俺に縋りついてくるデュースの顔は真っ赤だ。恥ずかしさからなのか、目にも涙が滲んでいる。あの日、あのときの姿が、フラッシュバックする。
「……今、ここで、はダメだな。……来い」
 デュースの手を引き、寮の自室へと歩みを早めた。

 寮の自室に着くなり、緩めたネクタイを放り投げてデュースをベッドへと押し倒す。
「先輩……?」
 右手をデュースの頬に触れさせる。
「……正直なところ。俺はこのことで、精神を乱しっぱなしでいる。お前も同じだというのなら、いっそ……。結ばれてしまえば、満たされるのではないだろうか。御託を述べているが、すべて言い訳かもしれない。本当はただ、俺という男の愚かな欲で、お前に触れたいだけなのかもしれない。それでも、いいか。デュース。お前に触れたい」
 デュースの手が俺の手の上に添えられ、デュースは嬉しそうにほほ笑む。
「……はい。先輩、そんなの、全然いいです。僕もずっと、先輩に……また、触ってもらいたかった……」
「ありがとう、デュース」
 何日かぶりに口づけた。それが、俺たちの始まりの合図だった。いったん触れてしまえば、もう止まりはしない。勢いのままにデュースの唇を貪っていく。初めは軽いキスを何度も繰り返して、口が開いたのを見つけた瞬間に舌を入れて。
「ぁっ、ぅ、んむ……っ」
「……デュース」
 ざらりと擦れ合う舌の感触、離れないようにとしがみついてくるデュースの手、逸る気持ちを抑えられず、キスと共に脱がしていくジャケット。この場にあるもののすべてが、早く触れ合いたい、もっと近づきたいと表しているかのようだ。それは俺の欲なのか、デュースの気持ちなのか、はたまた互いのものなのか。わからない。わからないが、今はもっと目の前の愛しい身体に触れたい。俺にはそれが許されている。
「……は……」
 ジャケットを完全に脱がしてしまったら、デュースはとろけた目でこちらを見上げる。見つめ返すと、デュースは己のネクタイに手をかけ、それをほどき、シャツの第一ボタンを外して、俺の首に手を回してきた。
「制服、汚したくないので……その、するなら、脱がせて、ください……」
「……ああ、わかった」
 こいつは俺にどうされたいのか。俺は望み通りデュースを脱がせていくため、シャツのボタンを外していく。白いシャツの隙間から身体の輪郭が現れる度に、身震いするような気持ちがした。胸元から腹筋にかけてキスを落としながら、下腹部のベルトへ手を伸ばす。カチャリという音に一瞬動揺が走るが、自分が脱がせてくれと頼んだ手前なのかデュースは黙って耐えているようだ。
「下、もう全部脱がせるぞ」
「は、はい……」
 ベルトの外れたズボンをパンツごと脱がせてやると、デュースは恥ずかしそうに足を閉じた。隠されると余計に見たくなるというものなのだが、そんなことは露知らない様子だ。もう待っていられないなとデュースに触れようとすると、その手を止められた。
「先輩も脱いでください……僕だけだと、恥ずかしいじゃないですか」
 なんだ、そんなことを気にしていたのか。俺は早くお前に触れたくて仕様がなくて、自分のことなど忘れていたというのに。
「なら、お前が脱がせてみるか?」
 冗談交じりにからかっただけのつもりだったのだが、デュースは逡巡のあと、身体を起こして俺の首筋に口付けてきた。可愛らしい口付けを落としながら、たどたどしい手つきでシャツのボタンを外していく。すべてのボタンを外し終えたあと、せんぱい、とデュースは甘えるように見上げてきた。まるで、上手にできたから褒めてと言っている子犬のようだと思った。
「よくできたな」
 それこそ子犬をあやすように頭を撫でる。怒るかとも思ったが、えへへと素直に嬉しそうな笑いをこぼすので、褒美をやらなければと思った。
「よくできた子には、ご褒美だ」
 脱がされたシャツをジャケットごと脱いでしまい、起こした身体を再び押し倒す。デュースは半裸になったお互いに緊張を覚えたようだ。
「せ、せんぱい、あの、僕、やっぱり……」
「やっぱり、なんだ?」
「その、恥ずかし、くて……」
「もっと恥ずかしい姿を見ている。そして、それよりも恥ずかしいことをこれからする。それは俺がお前にしたいから、だ。……いいよな?」
 耳元で囁くと、デュースは真っ赤になって、あの、とか、その、とか、うー、と唸っていたが、最終的には「……好きにしてください……」と諦めるに至る返事をくれた。ありがとうとこめかみにキスをして、それからとうとうデュースの身体を味わえると言わんばかりにその乳首を口に含み、ぺろりと舐めた。
「ひぅ……!」
 驚いたのか、未知の感覚が怖いのか、デュースはまだ喘ぎ声と呼ぶには少し遠い声をあげる。
「大丈夫だ、怖くない」
 デュースの頭を撫でながら、もう一度深いキスを落とす。今度はデュースの乳首を手でいじりながら。
「ん、んんっ、んう、ん……っ!」
 初めは柔らかかった乳首が、どんどん硬くなっていくのがわかる。感じてくれているのだろうか。だったら、嬉しい。硬くなってきた乳首を親指の腹と人差し指でつまみ、コロコロと転がす。デュースの声を聞きたくて、今度は同時に耳元を舐めていく。
「デュース」
「は、やだ、みみ、むね……っ、せんぱい、やめて、なんか、やだ、これ……っ」
「……本当にやめてほしいか?」
 本当に嫌だったら、いつでも止まらなければ。ピタリと動きを止めると、デュースは身をよじった。
「や、ちがくて……すごく、やだけど、やめないで、もっと、してほしい……です……」
「わかった。……もっと、でいいんだな?」
「え、……あっ、ん、や、やぁっ、そこやだ……っ」
 ひとしきり耳と乳首をいじったあと、デュースのつま先を持ち上げ、キスをする。
「あ、あ、やだ、先輩、それ、この恰好、恥ずかしい……っ」
 足首、ふくらはぎ、内ももと順に上がっていき、最後は下腹部の周りをギリギリ触れないように舐めた。持ち上がっているデュースのものが視界の端に映る。触れたくなるが、まだだ。まだ、あれを戴くには早い。
「恥ずかしがるな。さあ、全部俺に見せてくれ」
 身体の下にいるデュースをひっくり返し、今度は首筋から背中にかけてをキスと舌で愛撫していく。腰周りを撫でると、デュースの身体はびくびくと反応した。
「ぁ、あ、ん……っ」
 声を我慢しようとするデュースを再びひっくり返し、口を開けさせるようにキスをする。
「声もだ、デュース。お前の声も、身体も、今宵はすべて俺のものだ」
「せんぱ……、あっ!」
 デュースの口が開いたのを確かめて、彼のものを軽く口に含む。先端を舌で愛撫しながら、口に含まない部分を手でしごいていくと、デュースは声にならない声をあげた。
「あっ、あっ、やだ、せんぱい、それやだぁ……っ!」
 やだと言いながら首を振るデュースの手は枕を握りしめていて、しっかり感じているのが見てとれる。可愛いな、と思った。俺に触れられて、されるがままになっている姿が。どうしようもなくなっているデュースが、無力になってしまっているのが、可愛いと思った。他の男ではなく、誰でもない俺がこれをやったんだと思うと、優越感さえ生まれるような気がした。
「俺のものにしたいな」
 誰に言うわけでもなく呟き、サムさんのお節介とやらで渡されていたローションとゴムを取り出す。
「デュース」
 デュースの額に口付けて、彼の了承を取る。理性がほとんど崩壊している自覚はあるが、それでもデュースを下手に傷つけたくないという最後の一線だけは保ち続けていた。
「……後ろ、触っていいか? 挿れたいんだ」
 嫌なら断っていい、とデュースの額やこめかみにキスをしながら答えを待つ。デュースは少し考えて、ぎゅってして……抱きしめてください、と言った。言われた通りデュースを抱きしめてやる。そうすると、耳元に答えが囁かれた。
「まだ、ちょっと怖いけど……、でも、まだ、やめたくない、です。先輩……」
 怖くないと告げるようにデュースの頭を撫でる。まだ不安を感じているのなら、ゆっくり、優しくしてやらなくては。
「わかった。できるだけ怖くないように、気をつける。……名前を、呼んでくれるか?」
「はい、……したい、です。シルバー先輩……」
 思わず、デュースの口にキスをする。二度、三度。舌を入れて再びデュースをとろかしたあたりでローションを取り出し、手と指に馴染ませた。
「少し撫でるぞ」
「んっ……」
 デュースの秘部に指を添わせ、輪郭をなぞっていく。
「次は、少しずつ指を挿れていく。もし痛かったらすぐに言ってくれ」
 とうとう人差し指をデュースの中へと滑り込ませる。
「ふ、ぁ、んん……っ」
 デュースはまだ快楽というよりは違和感に耐えるような動き、反応だ。痛くはないかと少々の不安が残るが、デュースの中を少しずつ探っていく。気持ち良いと思ってもらえるように、手前に立つデュースのものへの愛撫も忘れずに。
「ぁ、あ、ん……っ、ふぁ、あん!?」
 すると、人差し指も半ばに差し掛かったところで突然デュースが大きな反応を返した。これは、痛みか快楽か、どちらなのだろうか。手を止めてデュースの様子を観察する。
「どうした、痛かったか?」
「ちが、その……ちがく、て。いまのとこ……」
「ここか?」
「あっ、や……っ」
「……気持ちいい、のか?」
「や、そこ、へん、せんぱい……っ」
 デュースが反応を返した箇所を、擦ったり、優しく叩いたりと愛撫してみる。その度にデュースは乱れて身体をよじった。どうやら、心地良い場所を見つけたらしい。
「ふふ、可愛いな」
「やぁ、もうっ、せんぱい、せんぱい……っ」
 俺が悪さをしているというのに、助けを求めるように俺にすがりついてくる。その矛盾さえ可愛らしい。
「気持ち良さそうだな。……広げていくぞ?」
「ひろ、げ……? あっ、やぁ!」
 中に入れる指をひとつ増やし、少しずつ入り口を広げていきながらデュースの感部を再び刺激する。もちろん、どんどん乱れていくデュースのものへの愛撫も忘れず挟んでいく。
「や、やだぁ、せんぱい、前もうしろも、気持ちい……っ、せんぱい、きもちいい……っ」
「そう煽るな……。まだ、慣らしてる途中だろう?」
「あっ、あっ、や、あっ、ひゃ、ん、そこやだ、ぁっ、だめ、どんどんきもちくなってく……っ!」
 可愛い。俺が指先を動かす度にデュースの身体と声が連動して俺を奮い立たせる。叶うならずっと聞いていたい。デュースはいやいやと首を振っているが、それさえもこちらを向かせて、キスをして、俺という快感をデュースの中に閉じ込めてしまいたい。
(……駄目だ。まだ耐えろ俺。あと少しだ。デュースが十分にほぐれれば、とうとう……)
 その先は、想像するだけで身震いするかのような気持ちになった。それだけを頼りに、残ったわずかな理性でデュースをほぐし続けた。

 どれくらい時間が経ったろうか。長い時間が経ったようにも思えるし、ほんのわずかな時間だった気もする。ただわかることは、デュースの前髪は汗で張り付くほどになっているということ、それから俺の指はデュースの中へもはやすんなりと出入りできるようになっているということだけだ。
「デュース」
「せんぱ、い……」
 一度指を抜き、デュースの前髪をどけて額にキスをする。顔が真っ赤だ。頑張っているんだろうな。猛る欲の中、またさらに新たな愛おしいという気持ちも生まれてきた。前々から愛おしいと思っていたが、今はもっと。
「お前を、俺のものにしたい」
 デュースはとろけきった意識の中、嬉しそうにほほ笑んだ。
「ん、おれ……ぼくも、せんぱいのものになりたい、です……」
「……ああ、デュース」
 デュースの口へキスをして、それから、ゴムをつけた自分のものをデュースの秘部にあてがう。
「挿れるぞ。……力を、抜いていてくれ」
「はい……」
 少しの緊張と不安、それから期待の中、ずぷり、とそれが入っていく音がした。
「あ……!」
「……デュース」
「あ、あっ、せんぱい、きてる、ぼくのなか、きてる……っ!」
 自分のものが呑み込まれていく幸福。えもいわれぬ快感。デュースが溺れる享楽の声。すべてが俺を刺激する。もう、俺を止めるものはどこにもない。お前が欲しい、デュース。
「や、おっきく、なってく……!」
「デュース……、デュース」
「ひや、ぁ、ん……っ!」
「……ぜん、ぶ、入った……な……」
 クラクラする。正直、我慢の限界だ。もう、早くデュースを貪り尽くして、果ててしまいたい。けれど、無体を強いるわけにはいかない。どうにか格好をつけて、デュースの額にキスをする。
「……は……、どうだ、デュース。痛くは、ないか?」
「……僕は、平気です……」
「そうか……なら、良かった……」
 デュースは枕をつかんでいた手を伸ばし、俺の頬に両手を触れさせた。かと思うと、俺を引き寄せてキスをした。
「……デュース?」
「えへへ……僕からも、しちゃいました」
「嬉しいが……」
 今こんなことをされては、お前をめちゃくちゃにしてしまいかねない。言いあぐねていると、またデュースに抱き寄せられた。
「いいんです、先輩。……好きにしてください。さっきからずっと、足りない、もっと欲しい、って顔してます。きっとたくさんしたいのに、我慢してるんだろうなって……僕、それがすっごく嬉しい。だから、先輩がしたいように、してください」
 どうやら俺の限界は、デュースにもわかるほど顔に出てしまっていたらしい。多少の気恥ずかしさを覚えるが、こんなことを言われてしまっては、それこそ我慢の限界だ。
「……デュース」
 デュースの口にキスをする。何度も、何度も。貪るように、深く。
「ん……んむ、んぅ……っ、ん、ぁ、ん、んん、ぅ、ん……っ!」
 ゆっくりと腰を回すようにして、デュースの中をかき回す。
「デュース……好きだ、デュース。その声も、身体も」
「あ、……んっ、やぅ、せんぱい、それ、そこ、い……っ」
 かき回していた腰を、だんだん早めるように前後させていく。
「お前が欲しい、俺のものにしたい、もっと……乱したい、俺の手で、身体で、このすべてで……」
「い、ぃっ、せんぱ、ぅあっ、も、だめ、そこ、そんな、だめ……っ! ……ひぁ、ぅう……っ!」
 もう、自分が何をしているのかわからない。ただ、目の前にあるそれを貪ることしか考えられない。獣になった気分だ。
「デュース……、デュース、デュース……っ」
「せんぱ、シルバーせんぱい……っ、すき、だめ、そこ、すき、シルバーせんぱい……っ、ぅ、あ……っ」
 デュースの中で熱く温度を持った己が、一際強く締め付けられる。そのままつられるようにデュースの中で絶頂へと達した。
 我に返ったときには、身体の下にいるデュースを強く抱きしめていた。
「すまない、大丈夫か?」
 身体を起こし、デュースの様子を確認する。理性を飛ばしてしまったが故に無理をさせていなかったかと、今さら心配と後悔が襲ってくる。
「だいじょうぶ、です……。へへ、先輩って、激しいんだな……」
 改めて認知され、少々恥ずかしさが募る。だが、同時にそんなことを言って俺をからかう余裕があるようで良かったとも思った。
「俺をからかう余裕があるのなら、大丈夫だな」
 口は拗ねながらも、手は汗で張り付いたデュースの前髪をどけてやる。デュースはまた嬉しそうにへへ、と笑った。
「先輩の知らない顔、見れて良かったです。……怖かったけど、勇気出して良かった。先輩さえ良かったら、また、してください……」
「……ああ」
 俺も同じ気持ちだ。そう告げて、デュースにキスをした。途中、俺のものを抜こうかとも思ったが、まだ出ていくなとデュースがねだるので、しばらくはずっとそのままキスをしていた。

 あれからのことだ。結論から言うと、俺とデュースの欲は満たされた。何で満たされたかというと、多幸感と言えばいいだろうか。とても幸せで、穏やかな気持ちで満たされた……と思う。向こうもきっと同じだ。だが、それでもやはり、あの艶姿が脳裏にちらつくこともある。今はまだいいが、また、我慢ができなくなりそうなときは……。そのときは、素直にデュースに告げてみよう。きっと、恥ずかしがりながらもまたうなずいてくれることだろう。このことはひとりで耐え続けなくても大丈夫だ。頼りになる恋人がいるのだから、お互いに。俺はいつか来るその日を少しだけ楽しみに、また、今日という日が良い日になればいいと思った。

*おしまい

送信中です

×

※コメントは最大1500文字、10回まで送信できます

送信中です送信しました!