はんぶんこ

*シルデュ付き合っている、恋人設定です

以上大丈夫な方はスクロール↓

 

 

 僕には、恋人がいる。それはひとつ上の学年の、ちょっと真面目すぎるほど真面目なところがあるけど、でもほんとは穏やかで優しい先輩だ。とは言っても、別にまだ、キ、キス、とか。恋人らしいことをしたような関係じゃない。
 ただ、好きだって言って、俺もって言われて、じゃあお付き合いしましょうって言っただけの、そういう、清い関係だ。……なんだよ、別にいいだろ、優等生らしいだろ!
 そんなある日のこと。僕が部活帰りに購買部で買った肉まんを食べようとベンチに座っていたら、シルバー先輩が来て、「少し、隣にいてもいいか? わずかな時間だが、一緒に過ごせたら嬉しい」って言ってくれた。
 僕はそれがなんだか嬉しくって、何かを返したくなって、で、手に肉まん持ってたから、じゃあこれシルバー先輩も一緒に食べましょうってふたつに割って、肉まんをはんぶんこにした。
 シルバー先輩は、ありがとうって言って受け取って、僕と一緒にもむもむしながら肉まんを食べてくれた。
 あのときは一緒に過ごせて、嬉しかったな!
 でも、それから、なんだかシルバー先輩の様子がちょっとヘンになった。ヘンにっていうか、優しくなった。
 シルバー先輩はお昼、ディアソムニアの人たちと一緒に食べてることが多かったんだけど、よく、僕と食堂で相席をしてくれるようになって。それで、僕に言うんだ。
「こっちの料理もうまいぞ、ひとくち食べてみるか?」って。
 その他にも、頼んだ料理にデザートのプリンとかがついてたりすると、
「このプリン、食べてしまってもいいぞ。お前は卵のお菓子が好きだったろう。誕生日のお返しだ」って、譲ってくれたりした。
 食堂で一緒になるときだけなら、僕と一緒にご飯を食べたい口実とかなのかな、とか思えたんだけど、他のときにもこういうことがあった。
 中庭のベンチに座っていたら、アイスを持ったシルバー先輩が来て。
「実は、監督生に先ほど会って、このアイスをお勧めされた。ふたつ入っているから、一緒にひとつずつ食べないか」って言われた。
 そのアイスは、なんだかもちもちとした皮に、バニラアイスが包まれた、饅頭みたいなアイスで。
 僕はシルバー先輩と1個ずつ分けて、それを食べた。
「うまかったか、デュース」
「はい! すごくうまかったです、ありがとうございますっ!」
 って返事したら、そうか、って満足そうにシルバー先輩はしてた。
 でもなんでこんなにたくさん食べ物くれるんだろうなーってエースとかグリムにこぼしてたら、そしたらアイツら言うんだ。
「先輩に餌付けされてんのお前」とか「オレ様にも食い物寄越すんだゾ」とか!
 アイツら、ホント真面目に僕の相談聞く気ないよな。ったく。
 それにシルバー先輩は餌付けなんてしない、はずだ! 僕のことちゃんと犬とかじゃなくて人間だって分かってる、はずだし!!
 ……分かってる、よな? たぶん。
 そんなことを思いつつ、シルバー先輩の『これもあげる』攻撃を僕は受け入れているのだった。

 で、シルバー先輩からのシェアにも慣れてきた、ある日。
 放課後、運動場の片隅でペットボトルのフルーツティーを飲んでると、シルバー先輩に会った。
「何飲んでるんだ?」
「最近新しく発売された、フルーツティーです! 爽やかな味わいで、飲みやすいんですよ!」
「そうか、お前が旨く飲めているのなら、良かった」
 そこで僕はいいことを思いついた。そうだ、たまにはシルバー先輩にも僕から食べ物をシェアしてみたらいいんじゃないか、って。
 何かを貰ったまま、受け取りっぱなしなんてフェアじゃないもんな!
「そうだ。シルバー先輩もひとくち飲んでみますか? どうぞ!」
 そうしてペットボトルを差し出すと、シルバー先輩は、ありがとう、と言って、少し遠慮しながらひとくちだけ飲んで、僕に返した。
 少し黙っているから、もしかして口に合わなかったのかな、と心配になる。
「あれ、もしかしておいしくなかったですか?」
「あ、いや、そうじゃ、ない。うまかった、ありがとう。……だが、その……」
「……?」
 シルバー先輩は、顔を赤らめ、ちょっとだけ目を伏せて。照れくさそうに言った。
「……間接キス、というものに、なるのだろうか、と。馬鹿なことを、考えて、しまって」
 すまない、と赤い頬のままで告げるシルバー先輩の姿に、僕もつられて赤くなる。
「い、いえ! 僕の方、こそ、気がつかなくって、すい、ません……っ!!」
「……いや、その、大丈夫だ……」
 そうして僕たちは、その後なんだかギクシャクとする時間を過ごした。

 それから、少しして。雨が降った。案の定、朝からバタバタしていて、天気予報を見るのを忘れ、傘を忘れた僕は、校舎の玄関先で雨が止むのを待つ羽目になる。
 しばらく雨が止むのを待っていると、後ろから誰かの傘が差しかけられた。
「ずっとここにいるな。もしかして、傘がないのか?」
「シルバー先輩!」
 後ろに立っていたのは、不器用にほほ笑んだシルバー先輩で。
 僕はシルバー先輩の言葉に頷いた。
「はい、天気予報見るの忘れて、傘持って来るの、忘れちまって」
「そうか」
 そうすると、シルバー先輩は言った。
「なら、俺が行きたい場所まで送っていこう。……今日の傘もはんぶんこしようか、デュース」って。
 僕はそれで、気づいた。あ、そっか。今までシルバー先輩が、たくさん僕に食べ物をくれたりしていたのって。
 僕と、いろんなものをはんぶんこしたかったからなのか。
「ははっ、はい。じゃあ、ぜひお願いしますっ」
「ああ。……どうぞ、遠慮なく入っていってくれ」
 そうして僕たちは、雨の中を一緒に歩いた。差し掛ける傘も、濡れる肩も、はんぶんこにしながら。
 次はどんなものをはんぶんこにしようかって話をしながら、雨の降る道を歩いていった。
 
 その翌日。朝、ランニングに出ようとすると、晴れた青空に虹がかかっていた。
 僕はスマートフォンを取り出し、それを写真に撮る。そうして、まだ眠っているんだろうシルバー先輩に送った。
『虹ですよ!』
 って。
 だって、さ。ほら。なんていうか。……こんなきれいな景色も、はんぶんこにしたくなったからな!
 大好きなシルバー先輩と!

 そうしたら、あとで起きたシルバー先輩から、返事が来た。
 なんだろってスマートフォンを見ると、可愛いのが映っていた。
『うさぎだ。』
 って、シンプルなメッセージ付きで。
 僕はそれを見て、ふはっと笑う。そっか、うさぎか。可愛いな。可愛いのを僕とはんぶんこしたかったんだな、シルバー先輩。
 そうしたら僕は嬉しくなって、スマートフォンを閉じる。大好きな先輩と、次は何をはんぶんこにしようかな、なんて。
 そんなことを思いながら、また騒がしい日常の中へ帰っていく。

 食べ物も、雨の日の傘も、綺麗な景色も、可愛い動物も、みんなはんぶんこにして。僕たちのはんぶんこは終わらない。
 次は何をシルバー先輩とはんぶんこにしようかな、なんて楽しみに考えながら、今日も僕たちの日々は続いていくのだった。

*おしまい

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