あの日まで、俺とデュースの関係は、他の人より少しだけ距離の近い先輩と後輩のままだった。
それは、ある昼下がりのこと。俺は、情けないことにまた中庭で眠りに落ちていた。そのときのことだった。
「あ、先輩、また寝てる……。ははっ。シルバー先輩って、なんか、こういうところが親しみやすいんだよな」
誰かに、頬をつつかれたんだ。俺は、誰かが傍に近付いてきた感覚を覚え、反射的にその身体を地面に倒してしまった。
すると、そこにはぱちくりと目を丸くして驚いた顔の後輩――デュースが倒れていて。
「シルバー、先輩……?」
薄く開いた唇が、俺の名を呼んだ。それを見たら、何故だろうか。吸い込まれるように、唇へとくちづけてしまった。
「……えっ?」
デュースの口から疑問の声が上がり、ようやく我に返る。
「ああ、突然倒してしまい、すまなかったな。刺客かと思い、つい、反射的にやってしまった」
「い、いえ。それは全然、大丈夫です、けど……」
「けど……なんだ?」
「……や、なんでも、ないです……」
「そうか。起こしてくれて助かった、ありがとう。それでは、またな」
そう、初めてデュースにくちづけたあの日から、俺たちの関係は変わったのだと思う。とは言っても、恋人同士だとか、付き合っているだとか、それにハッキリとした名がついたわけではない。ただ、時折……デュースに会ったとき、くちづけたり、身体を抱き寄せたり、些細な睦みごとを与えた。俺がそんなことを求めて、デュースがそれを受け入れてくれる。そんな関係を続けているばかりだった。
あの日から、俺は考えた。なぜ、あの日、あのとき、デュースにくちづけてしまったのだろうか、と。考えてみてもハッキリとした結論は出なかったが、それでいいと思った。なぜなら、デュースが俺を受け入れてくれていたから。その関係が心地いいのであれば、現状、無理に急いて考えることではないと思ったんだ。
だが、デュースはそうではなかったらしい。学園裏の森の小さな池のほとりでデュースにくちづけた後、聞かれたんだ。
「あの、僕たち……。どういう関係、なんですか」
「どういう関係、とは?」
俺は、デュースの真意を図ろうと思った。何故なら、デュースの声がわずかに震えているような……何かを怖がっているような気がしたからだ。
「そのっ、キス、とか……ハグとかしたり、先輩はしてくれますけど! それって、恋人同士……みたいな人がやることであって、僕と先輩は、そうなのか、そうじゃないのか、って……」
「お前は、どちらがいいんだ?」
「それは、その……っ」
俯いてしまったデュースの頬に触れる。俺は、デュースを暗い顔にさせたいわけではない。不安があるのなら、取り除いてやりたい。
「お前の、今思っている、本当のことが知りたい。俺の言動が不安や恐れを与えているのなら、取り除くべきだ」
「……僕、僕は……」
「ああ」
「正直、先輩が何考えてるのか、全然わかりません。なんで、恋人でもないのに、キスとかしてくれるんだろ、って……。もし、僕のことが好きとかなら、恋人……みたいな感じにならなきゃいけないのか、って。でも、そうしたら……」
デュースは言い淀む。デュースのことが好き、か。他ならぬデュースの口から言葉にされたそれは、己の胸にすとんと落ちる気がした。だが、それとは裏腹に、デュースの様子は落ち着いてはいない。
「そうしたら?」
「……そう、したら、キスより先の、いろんなこととかも、しなきゃならなくなるのかな、って……。もっと、身体に触ったり、え、エッチなことしたりとか、みたいな……っ」
注意深くデュースの表情を見る。その表情はわずかに赤く染まってはいるものの、照れているというよりは……不安でいっぱいのように見える。だから、俺はこう答えた。
「この関係に名前が欲しいのなら、お前が決めていい」
「え……?」
「恋人だと呼びたいのなら、お前がそう呼んでも俺はかまわないと感じている。だが、それを困るのはお前の方なんじゃないか」
デュースは、ぎくりと身体をこわばらせた。ああ、やはり。……恐れを感じているのか。俺という男との関係が、深く進んでいくことに。
「お前がこれ以上踏み込んだ関係へと進むのが怖いと感じているのなら、俺たちの関係について無理に名前を決めることはない。それで困ることはないだろう」
「でも、そういうハッキリしてないのって、良くないんじゃ……?」
「関係をハッキリさせて、距離が離れる方がいいか?」
ただの先輩と後輩に戻るように、と付け足せば、デュースは言葉尻を濁した。
「それは、……」
「……良かった」
「え?」
「お前が言い淀んでくれて。もし、離れる方がいいと言われたら、俺はきっと悲しい気持ちになったと思うから」
デュースを安心させようと、どうにか笑いかけると、デュースは先輩、と言って俺の胸元に寄り添った。
*
あの日まで、僕とシルバー先輩の関係は、……僕の欲目じゃないのならば、他の人より少しだけ距離の近いだけの、先輩と後輩のままだった。
ある昼下がりのこと。シルバー先輩が、中庭で寝落ちしていた。僕はシルバー先輩に、無防備に近付いた。
「あ、先輩、また寝てる……。ははっ。シルバー先輩って、なんか、こういうところが親しみやすいんだよな」
少しだけなら手を伸ばして、頬をつついたりするような悪戯なんかしても、この人なら許してくれるんじゃないだろうかという甘えと期待で、その頬に触れた。すると、その刺激によってシルバー先輩は目を覚ましたみたいで、僕の腕を掴み地面に押し倒したんだ。
寝ぼけまなことはいえ、鋭さを帯びた目が僕を映したのを見て、僕は、ようやく事態を飲み込んだ。
「シルバー、先輩……?」
先輩、寝ぼけてるのかな、なんて思ってたら、なぜかシルバー先輩はそのまま、ゆっくりと僕に顔を近づけてきて。
「……えっ?」
唇に柔らかな感触がして、それが離れたあと、思わず驚きと疑問の声をあげた。でも、シルバー先輩は、そんなこと気にもしていないようだった。
「ああ、突然倒してしまい、すまなかったな。刺客かと思い、つい、反射的にやってしまった」
「い、いえ。それは全然、大丈夫です、けど……」
「けど……なんだ?」
なんだ、じゃないだろ。この人、今自分が何したか分かっていないのか? それとも、今のはぜんぶ僕の見た夢だったんだろうか。そんなことをいろいろと寝起きのシルバー先輩に問い詰めるわけにもいかず、僕は言葉をひっこめた。
「……や、なんでも、ないです……」
「そうか、起こしてくれて助かった。ありがとう。それでは、またな」
あまりにも平然と去っていくシルバー先輩の姿に、僕はしばらく呆然としていた。それから、こう考えた。……きっとシルバー先輩は、寝ぼけていたんだな。だから、他の誰かと間違えて、僕にあんなことをしたんだ。……だからきっと、なかったことにしたいんだ。それなら、忘れよう。僕の方だって、忘れてあげよう。先輩の邪魔になることなんか、したくはないから。そう、思っていたのに。
シルバー先輩は次に二人きりになったときに、また僕にキスをした。キスをしないときにも、身体を抱き寄せたり、優しく頬や耳を撫でて、ふと笑いかけたり、だんだんと、まるで恋人みたいに扱ってくれるようになった。僕は、それを、どうしてそんなことをするのか分からないまま、拒めもせずにただ受け入れていた。拒んで失うのは、嫌だったから。
……あの日からずっと、シルバー先輩がどうしてそんな風に僕を扱うのかばかりを考えてしまう。もしかして、僕のことが好き、なんだろうか。ひょっとすると、恋人になってほしいんだろうか。それは、はじめ嬉しいような気がした。シルバー先輩は僕にとって憧れの、男らしくて恰好いい先輩だ。そんな先輩が、僕を求めてくれている。それはとても嬉しいことだ。僕だって、シルバー先輩のことを、嫌だと思っているわけじゃない、むしろ……。だけど、そのあとすぐに、もし本当に恋人になるってなったら、ということに思い至った。
……もしかして、ハッキリ恋人になるとなったら、今以上のことを、求められるのか? もっと深いキスをしたり、身体に触ったり。……ひょっとすると、セックス、なんてことまで。僕は、それを想像して、正直、照れるというよりは……なんだか、怖いような気がした。
だって、僕とシルバー先輩は、男の人同士で、女の人相手でさえ分からないのに、それ以上にやり方もよく分からないし、母さんやまわりの友達にだって、どう思われるか……。恋愛だって、僕はたくさんしてきたわけじゃないから、っていうかむしろキスも何かも初めてだから、誰かとこんな関係になったことなんてないから、どうしていいか全然分からない。
そう考えると、今の曖昧な関係は、僕にとってとても都合がいい。シルバー先輩が時折ささやかに僕を求めてくれて、僕はそれをただ受け入れているだけでいい。……悪く言えば、ラクな関係だ。でも、モヤモヤする気持ちも僕にはある。元々、こういうハッキリしないことは苦手なタチだし、それに、シルバー先輩が他の人と仲が良さそうにしてるのを見たって、僕は、それについて何かを言える立場じゃない。そう思うと悲しくて、僕たちはもっと、ハッキリした関係になるべきだと思った。
だから、尋ねた。学園裏の森の、小さな池のほとりで。シルバー先輩に、いつも通り、優しく、慈しむようにキスされたあと。
「あの、僕たち……。どういう関係、なんですか」
「どういう関係、とは?」
シルバー先輩はいつも通りのクールな表情で、実際のところの感情は分からない。けど、まっすぐに僕を見てくれているのは確かだ。きっと僕の気持ちや疑問を無碍にするような人じゃないはずだからと、僕は勇気を出した。
「そのっ、キス、とか……ハグとかしたり、先輩はしてくれますけど! それって、恋人同士……みたいな人がやることであって、僕と先輩は、そうなのか、そうじゃないのか、って……」
「お前は、どちらがいいんだ?」
「それは、その……っ」
ずるい人だ、と思った。僕に、すべての決定権を委ねてしまう。僕ばかりが全部を決めてしまって、シルバー先輩は何もかも合わせてくれて、そんな風でいいわけがないと思うのに。
そう思って俯いていると、シルバー先輩の指先が、優しく僕の頬に触れた。……僕は単純なのかもしれない。僕をこんなに悩ませているのも目の前の人なのに、その手の温度に、とても安心してしまう。
「お前の、今思っている、本当のことが知りたい。俺の言動が不安や恐れを与えているのなら、取り除くべきだ」
どこか優しく響く声に、つい、甘えたくなってしまう。震える声で、当たるように言ってしまった。
「……僕、僕は……」
「ああ」
「正直、先輩が何考えているのか、全然わかりません。なんで、恋人でもないのに、キスとかしてくれるんだろ、って……。もし、僕のことが好きとかなら、恋人……みたいな感じにならなきゃいけないのか、って。でも、そうしたら……」
「そうしたら?」
先輩は、僕の言葉をただ受け入れて、続きを促してくれる。僕は、胸の内の不安を、すべて先輩にぶちまけた。
「……そう、したら、キスより先の、いろんなこととかも、しなきゃならなくなるのかな、って……。もっと、身体に触ったり、え、エッチなことしたりとか、みたいな……っ」
シルバー先輩の瞳が、じっと僕のことを見つめていた。何かを、探るように。どうしよう、不安でいっぱいになった。……僕がこんなことを考えていたなんて、もう言ってしまったから後の祭りだけれど、シルバー先輩の方にその気がなかったなら、先輩、もしかしてそんな風に考えた僕のこと、気持ち悪いって思ったんじゃないか。
そんな僕の思考を遮るように、シルバー先輩が言った。
「この関係に名前が欲しいのなら、お前が決めていい」
「え……?」
「恋人だと呼びたいのなら、お前がそう呼んでも俺はかまわないと感じている。だが、それを困るのはお前の方なんじゃないか」
僕は、ぎくりと身体が硬くなるのを感じた。……恋人、というか、先輩の傍にいる存在に、嫉妬してしまっても許されるような立場には、なりたいかもしれない。だけど、今以上に身体の関係を進めるようなことや、先輩の恋人になって、僕がシルバー先輩にふさわしいかどうかとか、そういう恋人としての評価みたいなことをたくさん求められるのは、まだ、正直言って怖い。そんな風に感じている僕はまだ、シルバー先輩の隣に立ってふさわしい奴になれているとは、到底自分でも思えなくて。こんな、矛盾した我儘なことを、どう伝えればいいんだろうか。
そう思っていると、シルバー先輩は僕の考えや感情なんてものを見通したかのように言った。
「お前がこれ以上踏み込んだ関係へと進むのが怖いと感じているのなら、俺たちの関係について無理に名前を決めることはない。それで困ることはないだろう」
これは、僕にとっては願ってもないことだ。……けど、本当に、都合が良すぎる。僕にとって、これは誰かの見せた夢なんじゃないかって思うくらい。
「でも、そういうハッキリしてないのって、良くないんじゃ……?」
「関係をハッキリさせて、距離が離れる方がいいか?」
ただの先輩と後輩に戻るように、とシルバー先輩は付け足した。……それは、嫌だと思った。せっかく、先輩がここまで近付いてきてくれたのに、それをみすみす手放すのは……。
「それは、……」
そんな僕を見て、シルバー先輩は柔らかくほほ笑んだ。
「……良かった」
「え?」
「お前が言い淀んでくれて。もし、離れる方がいいと言われたら、俺はきっと悲しい気持ちになったと思うから」
そこまで言われて、ようやく僕は気付いた。この人はただ、僕のことを愛してくれているんだと。キスをするのも、身体を寄せるのも、……好きだとハッキリ言ってくれないのも、全部、それを求めながらも怖がり、怖がりながらも求めている、僕のためだったんだと。
「先輩」
そう思うと、安堵と甘えが出てきて、シルバー先輩の胸元に身体を寄せる。シルバー先輩は、僕を腕の中に閉じ込めて、ぎゅっと抱きしめてくれた。シルバー先輩は、あやすように僕の髪を優しく撫でてくれる。
「疑問に思うことがあるのなら、もっと早く尋ねることもできたはずだ。どうして、今日、尋ねてくれたんだ?」
「……えっと、その……」
「……すまない、言葉が下手だったな。何か、怖いことがあったのか、と聞きたかったんだ」
お前を怖がらせるようなことや、不安にさせるようなきっかけがあったのだろうかと心配している、とシルバー先輩は付け足した。……どこまでも、どこまでも優しい人だ。僕はそんな風に、シルバー先輩から大切な宝物みたいに扱われていいような奴じゃないっていうのに。
「先輩の、言う通り……。僕は、怖いんです。ハッキリ恋人みたいになって、もっと、いろいろ恋人らしい、深い付き合いみたいなことをしなくちゃならなくなるのが、まだ、想像も、覚悟もつかなくて……」
「そうか」
「でも、先輩の隣に、別の誰かが立って、楽しそうにしてると、モヤモヤして、そんな気持ちになるのに、僕は何かを言えるような関係じゃないって、そういうの、それがすげえ嫌で……っ」
「嫉妬してしまった、ということか?」
「……っ、はい……。恋人でもないのに、勝手なこと言ってる、って、それで幻滅されたりとか、なんていうか……っ」
「そうか、そうだったんだな」
シルバー先輩は、ぽんぽんと僕の背中を撫で下ろす。そういうことをしてくれるから、つい、その胸にすがりついてしまう。
「僕っ、我儘なんです。先輩は、こうやって優しくして、僕を求めてくれるのに、僕の方は、いつまでも踏み込むのが怖くって、二の足踏んでて、それなのに、先輩には他の人を見ないで欲しいって思ってる……っ」
「デュース」
シルバー先輩は僕の手を取り、その甲にキスをした。
「お前が欲しいというのなら、言葉やくちづけくらい、いくらでも与えてやれる。お前が恐れを抱くというのなら、それ以上を求めないこともできる」
それならば、この気持ちを言葉にしてもいいだろうか、とシルバー先輩が言った。
「そんな、僕にばっかり都合がいい……、いいんですか」
「関係というのは、常々関わりの中で変わりゆくものだ。お前の気持ちが今はそういう状態であるということを、俺は受け入れたい」
それでも難しいか? と、シルバー先輩が耳元でささやいた。僕は、首を横に振る。
「なら、言葉に、してほしい、です……。一言でいいから、モヤモヤした気持ちを、振り払ってほしい……」
「……ああ。お前のことが、大切だ。……好きだ、デュース」
噛み締めるように言われた一言は、僕の心に溜まっていた黒いモヤモヤの波を払ってくれたような気がした。
*
「……取り乱しちゃって、すいませんでした」
「かまわない」
デュースは、内に秘めていた思いの丈をすっかり吐いてしまったらしい。淀んで濁った心のざわめきを落ち着かせてくれたようだ。その証拠に、少し恥ずかしそうな様子で俺に尋ねてくる、その表情は健全なものだ。
「その、これは、先輩が教えて良かったらでいいんですけど……。いつから僕のこと、好きだったんですか?」
ふむ、と考える。いつから、と言われると、正確に分かる時期はないような気がした。
「分からない」
「え!?」
「初めてお前にくちづけた日から、なぜそんなことをしてしまったのだろうかと考える機会はあった。それを確かめるために、お前に改めてくちづけたりもした。そういう俺の行いを、お前が受け入れてくれたことが嬉しかった。そう思うと、お前に好きだと言ってやることも出来る気がした」
「そう、だったんですか……」
照れと呆れが混じったような顔でデュースは納得する。
「お前の方は、どうなんだ?」
「どう、って?」
「俺は、お前が望むような限りのことを与えてやりたいと思い、そう行動したが、それはお前にとって、不快なものではなかったろうか」
「正直、最初はワケわかんなくなって、いっそ腹立つこともありましたけど……。……先輩にその、キスとかされること自体が、嫌ってわけじゃなかったので……」
「そうか。嫌われていないのなら、良かった」
デュースは、そう告げる俺の服の裾を少しだけ引いて、言った。
「……まだ、僕の方からハッキリ言葉にするのは、勇気が出ないんですけど……。ヤキモチとか妬くくらいには、先輩とのこと……嫌じゃない、ので」
これは、今のデュースからの、精一杯の好意を示す言葉なのだろうな。
「ああ、ありがとう」
隣に座るデュースの身体を抱き寄せ、その頭を撫でる。傍から見ればじれったいような関係かもしれないが、俺たちは俺たちなりのペースで、今の形はこれでいいんだと、ただそのぬくもりに思うばかりであった。
それから、数日後。昼休みの中庭で、腕の中にデュースを抱き寄せながら眠っていると、トントンと肩を叩かれた。どうやら、クラスメイトに起こされたようだ。
「おいシルバー、起きろよ。もうすぐ授業始まるぞ。俺声かけたからな」
「ああ、ありがとう……、今、起きる」
「……ところでソイツ、1年の問題児コンビの片割れだよな? すごいぐっすり眠ってるけど……お前の恋人かなんかだったの?」
俺は身体を起こしながら、クラスメイトに答える。
「いや、まだ違う。……けれど、俺にとって、大切な子だ」
隣に眠るデュースの前髪を指先で撫でると、木々を揺らす風がざわりと優しく俺たちの間に吹いていった。
*おしまい
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