※現代学パロです。男子そのまま・女体化キャラ入り交じっています。
※独自設定が多く含まれます。
※今回はシルデュ要素のみです。
※今回はデュース♀視点です。女子になっているので、ところどころ口調に違和感があってもお許しください。
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今日は、楽しみにしてたホワイトデー、なんだけど。なんだかタイミングが悪くって、というか。先輩は、大量にもらったチョコのお返しが忙しいみたいで、なかなか顔を合わせられていない。
律儀な人だから、義理って分かるものには義理って分かるお返しをしていて、それ以外にもバレンタイン渡したのでお返しください、みたいな催促を受けてるみたいで……。
それで結局、昼休みもゆっくりは話せなかった。……僕の……じゃなかった! 私の彼氏、なんだけどなあ。
で、放課後。せめて一緒に帰りたいなって校門前で待っていたら、シルバー先輩から言われた。
「すまない、デュース。今日はどうしても、マレウス様の付き添いで会合に出なければならなくて……、これからすぐ、共に行かなければならない。ひとりで帰してしまうことになって、本当にすまない」
「大丈夫ですよ、私、平気です。護衛のお仕事、頑張ってきてくださいね!」
「……ありがとう、恩に切る」
くるりと振り返って、帰路を歩き始める。残念な気持ちが、ないわけじゃない。他の子にはちゃんとお返しするのに、ちゃんとした彼女なはずの私は後回しなんだ、なんて、拗ねる気持ちも、ないわけじゃない。だけど、シルバー先輩は、忙しい中、校門前で待つ私を見て、息を切らして走ってきてくれたから。だから、いいんだ。私のことは明日でもいいんだから。今日しかチャンスがない他の子たちに、今日のところは譲ってあげよう。
そう思って、家に帰った。家に帰って、母さんに今日のことをちょっとだけ話したら、残念だったね、って言ってもらえた。それで慰められた。だから、私はいいんだ。
自分の部屋のベッドに座って、部屋を見渡す。女の子らしいのは片隅に置いたチェストだけだ。そこには、透明なリップの中にきらきらした花びらや金箔の入った、とても綺麗な口紅がある。シルバー先輩が、誕生日にサプライズでプレゼントしてくれたものだ。だけど、本当の私は、シルバー先輩から綺麗な口紅を贈ってもらえるような、全然可愛らしい女の子なんかじゃない。
シルバー先輩に、初めて「可愛い女の子じゃないか」って言ってもらえた日の、次の日の夜。金色に染めていた髪を、元の色に戻した。母さんに今までのことを謝って、髪を伸ばして、女の子らしくなりたいって、伝えた。母さんはすっごく喜んでくれて、服も買おう、お化粧も練習しよう、って言ってくれた。こんな顔が見られるなら、もっと早くこうしておけば良かった、って思った。で、髪を伸ばすのと同時に、一人称を俺から私に変える特訓もした。髪が伸び切らなくて、服を揃えられない間は、まだ男みたいだったから、とりあえず元のワルだった自分から、私は変わろうとしてるんだって意思表示をするために、「僕」を使ってたこともあって、なかなかそのクセが抜けないけど……。それでも、だんだん、髪が伸びるのと一緒に、ワルで男みたいだった自分が、先輩の言葉通り、どんどん女の子らしくなれていくのが、楽しくて、嬉しかった。
だから、シルバー先輩には、必ずお礼を言おうと思ってた。また会えたら、必ずお礼を言おう、って。そこにいるだけで目立つ人だったから、噂を集めるのは簡単だった。先輩の通う学校は名門で、入るのはとても簡単じゃなかったけど、でも、やっぱり、一言お礼を言いたいから頑張れた。
……なんていうのは、カッコつけすぎかもな。ただ、また会いたかったんだ。会って、気持ちを伝えたかったんだと思う。変わった私を見てもらって、気持ちを伝えて。あわよくば、なんて期待も何度夢に見ただろう。でも、その度に、もうきっと恋人がいるだろうな、だとしても先輩が幸せなら恨まないでおこう、なんていっちょまえに恋する乙女みたいなことも考えた。だから、一度だけだからと思って、とびっきり気合い入れた恰好で、シルバー先輩を呼び出して、告白した。
そんな夢を、シルバー先輩は本当にしてくれた。まさかダメ元の告白に、頷いてくれるなんて思わなかったから……。だから、それはもう頑張った。母さんに、OKされたって報告して、これからデートもしたりするのかなって思ったから、ファッション雑誌研究して、新しく服増やして、可愛いお化粧の仕方エースに聞いて覚えたりなんかして、いつもはぶっきらぼうで、『ほらほら、またデュースくん出ちゃってるよ?』なんてエースにからかわれるような口調も、先輩の前では可愛い女の子の言葉に聞こえるようにして……。
だから、いいんだ! 一日くらい、私は我慢できる。だって本当は、シルバー先輩が私じゃない人を目に入れてるこの一日が、ずっと続くかもしれなかったんだから。そんなにたくさんの人に好かれてしまうシルバー先輩を、ひとりじめできる時間が他の子より多くなった私は、たとえホワイトデーを一緒に過ごせなくたって、他の子のお返しが優先だって、それでもラッキーなんだから。
そんな風に自分を慰めていて、だんだん、ムシャクシャしてきたから、ちょっと前にエースとセベクと出かけたときに買った、可愛い洋服を試しに着てみることにした。あれからサイズ、増えてないかな。もう先輩に身体見られたりもするから、前よりも太るのが気になるようになった。世の中の女の子って、こんな大変な気持ちなんだな……、って、私ももう、女の子だったんだった。
とりあえず、服は着られた。全身鏡で見てみても、うん、悪くないんじゃないか? いいかも。実際こういうキュートでフェミニンって感じの服は趣味じゃなくて、もっとカジュアルでロックな服の方が好きなんだけど、シルバー先輩が可愛いって言ってくれるから、私はこうやって、可愛い女の子のフリができるんだ。それに、趣味じゃない恰好でも、可愛い服を着てシルバー先輩の隣を歩くのは、ふと、街で窓ガラスに映る自分たちを見たとき、ひょっとしてお似合いに見えるかなって思えて、嫌いじゃない。ふふ、次のシルバー先輩とのデートは、これで行こうかな。なんだか、ちょっと気が済んだかも。
でもやっぱり、素顔のままでいる時間も大事だよな。そう思って、メイクも落として、服は薄いニットセーターと柔らかなストレッチ素材のスラックスを合わせたような、シンプルなルームウェアに着替えてしまう。シルバー先輩の前では、気合いの入ったところしか見せてないけど、これが本当の私。いつでも可愛い服ばっかり着てなくて、メイクはしてない方が落ち着いて、部屋の家具だって、きらきらふわふわしてない方が好きで。
……ま、まあ、可愛い動物は本当に好きだけど……。それでも! シルバー先輩が思ってるよりは、本当は私は可愛くないんだ。ホント、騙してるみたいでごめんなさい! シルバー先輩!
うう、こんなんだからホワイトデーも放っておかれるのかな。そんなことを思ってまたしょげそうになったとき、キンコン、と玄関のチャイムが鳴った。誰だろう、配達かなんか頼んでたかな? と、部屋を出て母さんに声をかけた。
「誰? 誰か来たの? 宅配? お客さん?」
「誰だろ。デュース、母さん今手離せないから、代わりに出てくれる?」
「はーい。お待たせしま、した……」
玄関のドアを開けると、そこには、黒いスーツを着て、グレーのベストとネクタイをして、同じ黒のリボンで髪を縛った、スーツ姿の……まるで王子様みたいに恰好良いシルバー先輩が立っていて。
「きゃー!!」
「な、なんで閉めるんだ!?」
「だ、だってぇ……!! 私今メイクもしてないし、変な格好してる……! それに先輩だって、なんでそんな恰好してるんですか……!!」
「俺は、その、会合からそのままここへ来たから……っ」
ドア越しに会話していると、シルバー先輩がコホンと咳ばらいをした。
「デュース、もう夜も遅い。少しでいい、ドアを開けて顔を見せてくれないか?」
「……はい……」
ドアの隙間から顔をのぞかせる。そうしたら、シルバー先輩は、青いリボンがかけられている、綺麗な真っ白の箱を私に差し出した。
「これを、お前に。……今日のうちに、渡してしまいたくて」
「これ、って……」
「……遅くなってすまなかった。ホワイトデーのお返しだ」
ドアを開けて、シルバー先輩から箱を受け取る。寝る前だから気抜いた変な恰好だけど、それでもちゃんと顔を見てお礼を伝えたかった。
「ありがとうございますっ、シルバー先輩! もう遅いし、寒い夜なのに、こんな、家まで来てくれて……、本当に嬉しいです!」
「ああ。……今日はほとんど、お前と会って、時間を取って話をしてやることができなかったから……。すまなかったな」
シルバー先輩の手が、頭を優しく撫でてくれる。なんだかむしゃくしゃしたような気持ちが、それだけで消えていってしまうみたいだ。
「その、お返しには、日頃の感謝を含めるのも、そうなのだが……。お前はいつも、何か良くないことがあったとしても、なかなか口に出してはくれない。我慢強いのはお前の美点だが、……もっと、我儘を言ったり、頼ったり、弱音を吐いてくれてもいい。それができなくとも、俺が、そういうお前の気持ちを癒す手伝いができたら、と思い、そういう気持ちも込めたから、ぜひ使ってくれると……」
「シルバー先輩……」
ぎゅっとシルバー先輩に抱き着く。スッピンだし部屋着だし、完全に気を抜いた恰好だけど、それでももう良かった。
「ありがとうございます。本当は今日、淋しかったから、すごく、……すっごく! 嬉しいです!」
「……良かった」
シルバー先輩は、そっと抱きしめ返してくれる。それから、すぐに身体を離した。
「夜風で冷えてしまう前に、部屋へ帰してやらなくてはな。……では、俺はそろそろこれで失礼する」
「はい、本当にありがとうございました」
「では、また明日、だな」
「はい、また明日」
別れの挨拶をして、それでも何か考えてる風のシルバー先輩に首をかしげる。
「どうかしました?」
「……いや。その……。お前は怒るかもしれないが……」
「な、なんですかっ?」
「……素顔でも可愛いぞ。それだけだ」
「も、もうっ!」
「ふっ、ではな」
後ろ手に手を振りながら帰っていくシルバー先輩を、頬を膨らませながら見送る。それから、もらった小箱をぎゅっと抱きしめた。
……やっぱり、好きだなあ。単純かもしれないけど、そう思った。
家へ帰っていくシルバー先輩の姿を窓から見送ったあと、破っちゃわないよう丁寧に、そーっと少しずつプレゼントの箱を開けた。
中には、バラの形をした入浴剤が入っていた。入浴剤として使ったあと、乾かすとポプリにもできるみたいだ。……箱を開けただけで、いい香りがする。入浴剤かあ。シルバー先輩の言葉を思い出す。
『俺が、お前の気持ちを癒す手伝いができたら』
そんなの、シルバー先輩がいつも隣にいてくれて、こうやって会いに来てくれるだけで、十分なんだけどなあ。それでも、いつもそれ以上をくれるから、本当に、もっともっとたくさん私からもお返ししてかなきゃ、フェアじゃないなって思う。
さて、どうしようかな? 今日のお風呂はもう入ってしまったんだけど、いっそもう一回、ゆっくり入り直しちゃおうか。先輩に、早く感想を言いたいし。そうと決まれば、母さんに今のことを報告しなくっちゃ。
「母さん、あのさ……!」
「なーにー?」
「あ、食器洗いしてるの? 手伝うよ。それでね、あとでもう一回お風呂入りたいんだけど」
「あら、何があったのかな? 母さん知りたいな~」
それから、母さんにシルバー先輩が会いに来てくれたことを伝えて、良かったじゃないって言ってくれて、その日の夜は更けた。
――翌日。学校で会ったシルバー先輩に、すぐ使ってみたくなっちゃって、お風呂2回入りましたって伝えたら、そうか、気に入ってくれてよかったって言ってはくれたけど、顔を覆って、肩を震わせてたから、どうしたのかなって思ってたら……。ドラコニア先輩とセベクが『シルバーがこんなに笑うなんて……』と珍しがるくらい、なんだかそこそこ笑われてしまってたらしい。……もう、そんなに笑わなくてもいいじゃないか!
何がツボだったんですか、って聞いたら、お前が可愛くて、って先輩は言う。それで、なんだかんだ許してしまう。……結局、私はシルバー先輩の『可愛い』に、とことん弱いんだなと実感したホワイトデーなのでした。
*おしまい
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