ラビット・ランド

【権利表示】
本小説は「どらこにあん」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『アンサング・デュエット』の二次創作です。
(C)Fuyu Takizato / Draconian
(C)KADOKAWA

【注意書き】
※こちらは『アンサング・デュエット』というTRPGの公式シナリオ『ラビット・ランド』のシルデュ仮想卓をプレイしながら作成したリプレイ風小説となっています。
※アンサング・デュエットルールブック01収録公式シナリオ『ラビット・ランド』のネタバレを含みます。
※本来は複数人でプレイするものですが、相手がいないので1人で2人分を演じる仮想卓としてプレイしたものが元ネタです。許せない方はブラウザバック。
※展開のネタバレを避けるため、実際にダイスを振って判定した内容は最後にまとめて記述しています。判定があった瞬間は、(判定★1)という記述になっています。
※元がTRPGであるため、ホラー、現パロ要素などが含まれます。なんでも許せる人向け。

以上大丈夫な方はスクロール。

 

 

 

 

【チャプター0:高鳴ハピネス】

 ――初めに説明しておこう。俺はシルバー。私立夜鴉高等学園に通う、2年生の男だ。今日は、同じ学校に通うひとつ年下の後輩、デュース・スペードに誘われて、『ラビット・ランド』という遊園地へと遊びに来ている。入口のゲートをくぐれば、『ラビットくん』というマスコットキャラクターに愛想良く出迎えられ、楽し気な音楽が鳴る遊園地へと足を踏み入れることができた。

「遊園地、楽しみですね! どこも空いてるし、乗り放題ですよ。何から乗りましょうか?」

 デュースの言葉通り、周囲にはほとんど人の気配がなく、好きなようにアトラクションに乗れそうだ。
「そうだな……お前はどんなのが好きなんだ?」
「僕ですか? 僕はやっぱり、ジェットコースターとか、風を感じられるやつが好きですね! コーヒーカップとかも嫌いじゃないです」
「なら、そうしたものから順に回ってみるとしよう。俺はあまり、遊園地には詳しくないからな。お前のお勧めが知りたい」
「分かりました! それなら、今日は案内任せてくださいっ!」
 そして俺たちは、宣言通りジェットコースターに始まり、コーヒーカップ、アスレチックにミラーハウス、射撃場など、遊園地にあるアトラクションを一通り楽しんだ。
「そろそろ小腹が空きませんか? ホットドッグとかフライドポテトとか……。唐揚げなんかも売ってある売店がありますよ!」
「そうだな。何か軽く食べよう」
 ひとしきり遊んだところで、グルメショップで腹を満たす。ふと、アメリカンドッグを食べたデュースの頬にケチャップがついているのに気づいて、ついているぞ、と拭ってやると、デュースは頬を赤くして、ありがとうございます、と言った。
 ……愛らしいな。俺はまだ、この淡い気持ちをデュースに告げることをしてはいないが、二人で遊園地に遊びに行こう、と誘われて断らない程度には、この遠慮なく触れ合える関係や、特別な気持ちを、嫌ではないと思っている。そしてそれは、あわよくばデュースも同じ気持ちでいてくれるのではないか、と。
 もし、許されるのならば、今日の日の最後にでも、この気持ちを改めて告げてみるのも悪くないかもしれない。そんなことを考えながら、また暖かくこそばゆいひとときをデュースと過ごしていく。
 昼までと違い、午後はたっぷりと時間を使う、ゆったりとしたアトラクションが多めになった。ボートを漕いだり、魔法の絨毯や観覧車に乗ったり。観覧車は最後の締めとして乗ることになったが、夕闇の中に落ちていく遊園地を眺めて、二人、落ち着いた時間を過ごした。
「もう、この楽しい時間も終わっちゃうんですね……」
「そうだな。あっという間だった」
「あの。観覧車降りてからも、もう少しだけ……ここにいてもいいですか? なんだか、名残惜しくって」
「ああ。かまわない」
 観覧車を降りてからも、俺たちは近くのベンチに座り、夜の帳が下りていく空をじっと眺めていた。人もまばらになっていき、そろそろ遊園地にも閉園を告げる音楽が鳴り始めようかという時間帯に差し掛かる。今が何時なのかを確認しようとポケットからスマートフォンを取り出した、ちょうどそのときのことだった。

『バンッ』

 突然大きな音が鳴り、辺り一面が暗闇と化す。遊園地全体を眩く照らしていた街灯やスポットライトの光は、今や見る影もない。各所に取り付けられたスピーカーから流れていた賑やかな音楽も、今の一瞬で止まってしまったようだ。

【チャプター1:逃亡ホープレス】

「停電か……?」
「……だと、いいんですけど……」
 デュースは、何故か不安そうに青ざめている。いや、何故か、じゃないな。明るかった遊園地が突然真っ暗になってしまえば、誰だって不安になるだろう。俺はデュースに近づき、そっと肩を引き寄せようとした。そのときのことだった。

『ズッ……ズズッ……』

 遊園地を包み込む暗闇と静寂の中、何かを引きずるような音が聞こえてくる。俺が音を警戒していると、突然眩い光が放たれ、目が眩んだ。二、三度まばたきをすると、分かった。遊園地の街灯が、再び着くようになったのだ。音楽もスピーカーから再度鳴り出した、が……。音楽に関しては、ノイズ混じりで歪んだ音色を響かせるようになってしまっている。
 辺りの様子を伺えば、閉園間際とはいえ、いくらかいた他の客が、さっぱりいなくなっている。……いったい、この場所に何があったのだろうか?
 そんなことを思えたかどうか、分かるよりも早く。俺たちの目に飛び込んできたのは……。

 この遊園地のマスコット・キャラクター、『ラビットくん』の姿だ。

 だが、ラビットくんは、明るく愛嬌を振り撒いていた昼間の姿とは違い、その姿はボロボロだ。それに何より、異質なのは……バットを持っていること。それも、何か、赤黒い汚れにまみれている、それはまるで、血のような……。
 俺が、目の前の状況を理解しようと頭を働かせていると、デュースは言った。
「シルバー先輩、逃げましょう」
「デュース?」
「あれは、ラビットくんじゃありません。アイツは……バケモノ、怪物です」
「怪物? 何を……」
「……僕は昔、似たような場所へ来たことがあるんです。それは現実世界じゃない、『異界』って呼ばれる場所で……。とにかく、ああいう怪物みたいなのがいる、危ない場所なんです。もしここが異界で、アイツがその主なら、僕たちを異界へ連れてきたのは、たぶん、何か目的、それもあまり良くないのがあってのことなので……。アイツも、僕たちの知ってる、安全なラビットくんじゃない可能性が高いです。ひとまず逃げて、それから出口を探して、脱出しないと」
 僕の言ってること、信じてくれますか、とデュースは言う。だが、今は迷っている暇でもないだろう。
「分かった……ひとまず、逃げればいいんだな?」
「はい! ……ありがとうございます!!」
 俺は、その場から逃げ出そうとデュースの手を掴む。すると、一瞬のうちに視界がいくらか切り替わるのが分かった。
(……ラビットくんに、黒いモヤがかかっている……? それに、普通に見えたアトラクションも、錆びている……)
 デュースを振り向き、同じものが見えているかを確認すると、デュースはうなずいた。
(どうやら、俺とデュースでは見えているものが違うようだ。だが……触れていれば、俺には見えないものも見えるらしいな)
 俺はできるだけデュースと接触を図ることを心に決め、改めて迫りくるラビットくんからの逃走を試みた。 ※判定(★1)

『やぁ、ラビットくんだよ。やぁ、ラビットくんだよ。やぁ、ラビットくんだよ』

 ラビットくんは、何かをぶつぶつと呟きながら、逃げる俺たちのことをどこまでも執拗に追いかけてくる。バットを引きずる音を響かせながら、どこまでも、どこまでも。
 このままでは埒が明かないと、俺は走りながらゴミ箱を蹴り倒し、ラビットくんの前に転がす。
 結果は……うまく行った。ラビットくんは突然の障害物に驚き、時間を取られている。
 この隙に、一気に距離を稼いでしまおうと、デュースの手を引きながら、改めてもう一度走りだした。だが、それでもやがて、俺たちの耳には、ズ、ズ、とバットを引きずりながら俺たちを追いかけてくるラビットくんの足音がいつまでも聞こえていた。
 一応、ラビットくんの姿は見えなくはなったが、まだ追ってくる足音は聞こえている。

「一度、逃げ仰せはしたが……。どこかに身を隠し、やり過ごす必要があるかもしれないな」
「そうは言っても、身を隠せる場所、なんて……。アトラクションくらいしか……」
「……行くしかない、な」

 俺たちの目に見えるアトラクションは、相変わらず錆びているが……。それでも俺たちに、手段を選んでいる時間や余裕は残されていない。取り急ぎ、アトラクションへと向かうことになった。

【チャプター2:困惑ハイド】

 俺たちが逃げ込むことになったのは『サバイバルアイランド』という、無人島での冒険をイメージしたアトラクションの中だ。俺たちを追ってくるラビットくんに居場所がバレないよう、このアトラクションの中へとうまく身を隠さなければならない。
 繋いだ手をけして離さないようにとデュースの手を引き、アトラクションの中へと逃げ込む。俺たちは早速、アトラクションの中のどこかへと隠れてやり過ごすことにした。 ※判定(★2)

 俺は、デュースの手を引いたまま、一際大きな木の影に隠れ、デュースを半ば抱きしめるかのようにして、デュースの口を手で抑え、息を潜めた。
 ラビットくんはアトラクションの中に入ってきたようで、ズッ、ズッとバットを引きずる音がアトラクションの中に響く。
 歩みを進めるラビットくんは、俺たちの隠れる木の方へと、だんだんと近づいてくる。

『……やぁ、ラビットくんだよ……やぁ、ラビットくんだよ……やぁ、ラビットくんだよ……』

 ラビットくんは壊れた機械のように同じセリフを繰り返しながら、俺たちの目前へと迫ってくる。近づいてきたラビットくんの様子はといえば、バットがひしゃげて、赤黒く染まっているのが分かる。また、ラビットくん自身も血まみれで、よく見ればアトラクション自体もあちこちが赤と黒に染まっている。
 近づいてくるラビットくんに向けて、バクバクと鳴る心臓を必死に抑え、デュースを守るように抱きしめながら、頼むからこちらへ来ないでくれ、見つけないでくれと息を殺し祈る。
 ……その祈りが通じたのか、ラビットくんは、俺たちには気づくことなく、どこかへ遠ざかっていった。

「……奴は行ったようだな。俺たちも行こう。出口を、探さなくては」
「は、はい……」

 絶対にもう離さないようにと、デュースの手を握りつつ、俺たちは出口を探して遊園地の中をさ迷い始めた。

【チャプター3:不思議ラビットホール】

 しばらく歩いていると、ホラーハウスか何かだったか、大きな屋敷型のアトラクションを発見した。
「ちょうどいい、ここに身を隠そう」
「分かり、ました」
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫です! ……むしろ、先輩にばっか負担かけて、すいません……僕が、こんなとこに誘わなければ……っ」
「デュース、これはお前のせいじゃない……。事故のようなものなのだろう。俺なら、大丈夫だ。お前は、自分の身を守ることだけ考えていろ」
「……はい……」
 俺を巻き込んでしまったとでも思っているのか、元気のないデュースを励ましながら、屋敷の中へと入る。ここなら安心か、と思ったのも束の間。
「せ、先輩……窓……」
「……窓?」
 デュースの指さす窓を見た俺は、ひゅっと息が喉を詰まるのが分かった。窓の外に、ラビットくんが立っていたのだ。ラビットくんは俺たちの姿をしっかりと目に入れたようで、怒りに満ちた表情のままに、屋敷の中へと入ってくるのが分かった。……逃げなければ!
 俺は再びデュースの手を取り、屋敷の中を逃げ出した。※判定(★3)

 逃げ出し始めたのも束の間、ちょうど狭い廊下でバタリとラビットくんに出会ってしまう。
 俺たちは走って逃げようとするが、ラビットくんがその場にあった花瓶を投げつけてきて、デュースが花瓶に入っていた水に足を取られて転んでしまった。
 ラビットくんがデュースのすぐ傍まで迫り、デュースの足を掴んで、その血まみれのバットを振り下ろそうとする。
「デュース!!」
 俺は急いでデュースを無理やり引っ張り上げ、抱きかかえて走った。……ラビットくんは、先ほどよりもボロボロの姿になって、人間の手足が着ぐるみの中から見えるようになっていた。どうやら中身は、人間の男性らしき何かのようだ……。

 デュースを連れていったん隠れた部屋の先で、デュースの様子を改めて確かめる。
「デュース、大丈夫か?」
「あ……先輩、僕、ぼく……っ」
 デュースの顔は、青ざめて震えている。……無理もない。
「大丈夫だ、デュース。俺がついている……大丈夫だ。ちゃんと出られる、ちゃんと帰してやるから……」
「う、うう、ごめんなさい、先輩、僕、なんでか、怖くて、震えが止まらなくって……っ」
「……大丈夫だ、心配するな」
 震えるデュースの身体を慰め、頭を撫でてやったが、それでもデュースの震えは止まらなかった。
(……無理もない。アイツに足を掴まれてあのバットで殴られそうになるのは、相当な恐怖だったろう……)
 だが、こうしてばかりもいられない。遠くから、あちこちの部屋のドアや家具をひとつひとつ叩き壊して回っているラビットくんの足音が、もうすぐそこまで迫ってきているのが聞こえてくる。
「デュース。あまり休ませてやれなくて、すまないが……ここからも、逃げなくては」
「……うう、はい……分かりました……。せめて、先輩の足引っ張らないようには、気を付けます……」
「大丈夫だ。お前はお前のことだけ考えていろ」
 再びデュースの手を引き、辺りの様子を見て部屋を出る。ラビットくんがまた迫り来ていたので、ひとつひとつの部屋を血まみれのバットで叩き潰していく彼の視界に映らないようにと注意しながら、階段裏へと身を隠した。
 ラビットくんが、俺たちの隠れる階段の方をちらりと見る。しかし、すぐに興味をなくしたようで、ラビットくんは廊下を逆向きに、別の方向へと歩いて行く。
 これなら窓や裏口あたりから逃げられるかもしれない、と思ったそのとき、デュースが俺の袖を引いた。
「どうした?」
 声を潜めて尋ねる。デュースも同じように、息を潜めて答えた。
「これ……隠し扉、じゃないですか?」
「……本当だ」
 俺には背になって気づかなかったが、デュースには隠し扉の存在が見えていたようだ。扉を開けると、その先には長い階段が続いていて、さらに階段を降りた先には、石畳の通路が続いている。
「……風を感じるな……。どこか、出口に通じているかもしれない。行ってみよう」
「はい!」
 俺たちは、隠し扉の階段を降りて、地下通路へと進んでいくことにした。……希望は見えてきた。それでもまだ、繋いだデュースの手は、震えたままだった。

【ファイナルチャプター:絶体絶命エスケープ】

 地下通路をしばらく進んでいくと、突然、バランスを崩した。
「なんだ!?」
 慌てて地面に手をついてバランスを取ると、気づいた。周囲がぐにゃりと歪んでいることに。……いや、周囲じゃない。これは……。
 硬い地面だと思っていた石畳が、いつの間にやら黒い汚泥に変化している。そして、俺たちの目の前では、そこから伸びる無数の泥の手が、行く手を阻んでいる。どうやら、この泥の手たちは、俺たちの邪魔をしたいようだ。
「くっ……」
 いったん引き返すか? そう思ったのも束の間。

『バゴン!!』

 ――非常に大きな破裂音と共に、俺たちの背後に現れたのは。血まみれでボロボロの、憎悪に満ちた表情を湛えた、ラビットくん……ではなく。ラビットくんと同じ血まみれのバットを持った、でっぷりとした様子の中年男性だった。丸眼鏡をかけていて、ずいぶん古くなったスタッフの服を着ている。そして、ネームプレートには『園長』と書かれていた。……少しだけ見えていたラビットくんの中身は、どうやら、園長だったらしい。
 前にも進めず、後にも引けない。二人、手を繋いでいることしかできない俺たちは、どうにかしてこの状況を打開しなくてはならない。※判定(★4)

 ひとまず一目散に逃げ出して、出口を探そうとする。すると、デュースが泥の手に捕まり、倒れてしまった。デュースのことを助け起こそうとした瞬間、鈍い痛みが後頭部に走る。
「ぐっ……」
 そのまま汚泥の中に倒れ伏すと、ラビットくんがデュースに向けてバットを振り下ろしているのが見えた。
「ダメだ、デュース!!」

 俺は、デュースに向けて手を伸ばす。そこで、俺の意識は途切れた。

 ……ふと気が付くと、そこは先ほどと同じ地下通路だった。恐怖のあまり、俺は幻覚を見てしまったのだろうか?
 だが……。自分の体に付きまとう、漠然とした不安。そして、違和感のある視界。
「デュース。俺は、何か様子が変わったか?」
「先輩、目、ガラスに……」
「ガラス? ……ああ」
 なるほど、違和感の正体はこれか。どうやら先ほどの失敗によって、俺の左目はガラス玉になってしまったらしい。
 ……やはり、先ほど起きたことは、幻覚ではない。この世界で何かを失敗すればするほど、俺たちの大切な何かが奪われていくようだ。
「もう一度、逃げよう。デュース」
 漠然とした不安が、自分の中の何かを失くした焦燥が、わけのわからない動揺が、俺の身を襲っている。それでも。デュースと共に元の世界へ帰るのだという気持ちだけが、俺を奮い立たせる。デュースと手をしっかりと繋ぎ、もう一度逃げだす決意をした。※判定(★5)

 俺たちは、汚泥から伸びてくる手を必死に振り払い、背後から迫りくるラビットくん……園長からも、ただただ、走って逃げ続ける。
 途中、不安でどうしようもなくなって、デュースの手が震えていることからも余計に不安が増幅して、いっそこの手を離してしまおうか、諦めてしまおうかと、何度も心が折れそうになった。それでも。
 俺たちには、夢がある。叶えたい夢がある。俺は大切な人たちのために、立派な騎士のような男になるんだ。デュースは、母親のために、立派な警察官になるんだ。こんなところで、わけのわからないまま、終わるわけにはいかない。デュースも俺も、こんなところで終わるべき男ではないんだ。
 そんな気持ちだけが、俺を奮い立たせて、震える足に鞭打って走らせた。
「あれって……!」
「光、だ……!」
 デュースが指さす先には、地下通路の終わりと思しき光が見えた。
「あれ、出口です、先輩! ……行きましょう!!」
「間違いないんだな!?」
「はい、間違いないです!!」
「よし……!!」
「うわ!?」
 俺は、もう迷ってはいられなかった。デュースを抱え上げ、迫りくる汚泥の手を潜り抜け、背後のラビットくんには目すらくれてやらず、その光の中へと一直線に飛び込んだ。

【アフタートーク】

 ――光に満ちた出口に飛び込むと、俺たちは、気が付いたら……元通りの。賑やかな音楽の鳴る、明るい遊園地へと戻ってきていた。どうやら、あの世界……。『異界』からの脱出は、成功したようだ。※判定(★6)
「あ、先輩。目が……」
「……ん……」
 ガラス玉になっていた左目から、ポロリとコンタクトレンズのような何かが落ちる。瞬きをすると、視界が元に戻っていくのが分かった。そして、今やあの漠然とした不安もなくなっている。
「デュース。平気か?」
「はい……。僕の方も、あの変な震え、止まったみたいです」
 どうやら、デュースの止まらない震えも、ただの恐怖ではなく、異界の仕業だったようだ。俺は、ほっと安堵の溜め息をついた。デュースを無事、元の世界に戻せたこと。そして、俺自身も無事に元の世界に戻って来られたことを、ほんの少し誇らしく思った。

 遊園地には、閉園の音楽が流れている。退園を促すその音楽に、これ以上ここにいることもないなとデュースと共に笑い合って、遊園地を退場することにした。
「げっ、アレって……」
「……ああ」
 遊園地の入退場ゲートには、退園者を見送るラビットくんの着ぐるみの姿があった。だが、特におかしな気配は見られない。
「大丈夫だろう……あの着ぐるみに、もう敵意はなさそうだ」
 ――それよりも、俺が気になるのは……。その着ぐるみの隣で、にこやかに来場者に手を振ってはいるが……。先ほどからにやりと俺たちに向けて、気味の悪い笑みを浮かべる、園長の方だ。……異界で見たあの園長の姿は、一体なんだったのか……。
 だが、無駄にそんなことを伝えて、デュースを今以上に怖がらせることもないだろう。

 俺は、今日はもう帰ろう、送っていくと伝えて、デュースと共に、普段通りの日常に無事に帰ってこられたことを祝い合う帰り道へと着いた。

 ――それにしても、あの遊園地は――いったいなんだったのだろうか?

 最後は散々なデートになってしまったが……。まあ、いい。告白もデートも、また今度の機会にすればいいだけのことだからな。今回のデートが散々だったのなら、また今度、普通のデートをし直せばいい。何せ、そういったことは今回のような事件とは違って、何度体験してもかまわないものだろう。
 今はただ、デュースも俺も、お互いが無事、元通りの暮らしに戻れたことを願うばかりだ。

*おしまい

【判定内容】
★1
[ラビットくんから逃げる:難易度5]
デュース:2d6=7 成功!
シルバー:2d6=7 成功!
★2
[アトラクションに身を隠し、ふたりを探すラビットくんをやり過ごす:難易度6]
デュース:2d6=10 成功!
シルバー:2d6=8 成功!
★3
[ラビットくんの執拗な追跡から逃げ続ける:難易度7]
デュース:9 成功!
シルバー:5 失敗!
★4 両成功まで終わりません。
[ラビットくんから逃げつつ、出口を探せ!:難易度8]
デュース:7 失敗!
シルバー:7 失敗!
★5 両成功まで終わりません。
[ラビットくんから逃げつつ、出口を探せ!:難易度8]
デュース:8 成功!
シルバー:7 失敗!
シルバー:フラグメント効果宣言[将来の夢]判定値+2 → シルバー成功!
★6 変異への抵抗
1d6=3
変異修復:シルバー、ガラス化、不安 デュース、身体の震え
忘却解消:デュース、憧れの人 シルバー、鍛え抜かれた筋肉、オーロラ色の瞳

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