酔いどれダーリン lovin’ you !

・年齢操作(シルバー24歳、デュース23歳)です。
・シルデュがナチュラルに同棲しています。
・いろいろ細かい将来捏造などがあります。
・付き合っている、恋人設定です。
・性的描写があるのでR指定していますが、ぬるい(短い?)です。

 

以上すべて大丈夫な方はスクロール↓

 

 

「シルバー先輩、遅いなあ」
 二人で暮らす部屋のバルコニーに置いたテーブルセットで、紺碧色に輝く星空を眺める。ここは僕たちが二人で暮らす新居だ。僕が警察学校で訓練をしていた頃、遠距離恋愛になってしまったのが淋しくて、そのことでひと悶着あったとき、シルバー先輩は卒業したら一緒に住もうと言ってくれた。
 だから、今、僕とシルバー先輩は同じ家に住んでいる。薔薇の王国と茨の谷、本来は遠い国に住む僕たちだけど、特定の場所にだけ繋がる空間移動の魔法を閉じ込めた魔法の鍵を使って、二つの国を行き来している。これだけは失くしちゃいけないから、僕はこの鍵を、細心の注意を払っていつも管理している。……作るのにさえたくさんの許可が必要だった、すごく貴重なものだしな。
 で、そんな苦労をして構えた新居で、僕は待ちぼうけをしている。とは言っても、別にシルバー先輩が何も言わずに遅くなっているわけじゃないから、あまり心配はしていない。シルバー先輩は今日、親父さんと飲みに行ってるんだ。ヴァンルージュ先輩がシルバー先輩のお父さんだって聞いたときはビックリしたけど、でも、仲の良さそうな二人を見ていたら、ああ、ホントなんだなってストンと落ちるような感じがした。
 シルバー先輩はそんなお父さんのところにしょっちゅう顔を出す。僕と住むと決めたときも、親父さんを連れてこようとしたくらいだ。最も、それはヴァンルージュ先輩の方が断固として遠慮したんだけど。なんだかんだ茨の谷で働き続けるなら頻繁に会えるだろうと説得されて、シルバー先輩は、何かあったら隠さずすぐに連絡するという条件で渋々それを飲み込んだ。本当に親父さんが大切なんだな、と、僕はそんな二人の様子を見て、僕も母さんに何かあったらすぐに連絡してって言っとかなきゃな、と思ったもんだ。
 まあ、シルバー先輩がヴァンルージュ先輩と飲みに行くのはこれが初めてのことじゃない。大抵は遅くなりそうなら連絡を入れてくれるし、ヴァンルージュ先輩の家に泊まっていくときも同じだ。だからあまり心配はしてなかった。今日の夕食はいらないってことだったし、僕もひとり分を適当に作って気楽に食べられる。ただ、帰ってくるって言ってた時間より少し遅くなってるから、ちょっとだけ心配なんだ。ヴァンルージュ先輩のところでは何もなくても、その帰り道に何かあったんじゃないか、とかって。
 そんなはずはないと分かってても心配になるから、こうやって、バルコニーに出て、夜風に当たりながら適当に気を紛らわしている。そんな僕の目の前に、ふと、先輩は現れた。
「シルバー先輩?」
 腰かけるように箒に乗って、バルコニーの傍に浮かぶシルバー先輩は、そのままバルコニーへと着地した。
「ただいま、デュース」
 シルバー先輩は、着地するなり僕を抱きしめる。って、酒くさいな。……飲んできたから当たり前なんだけど、酒の匂いがすごい。この人、今日はどれだけ飲んだんだ?
「お帰りなさい……酔ってますね?」
「土産だ」
 僕の話を聞いているのか聞いていないのか、シルバー先輩は手に持っていた白い箱を僕に渡した。
「これは……」
「プリンと、ケーキと、シュークリームと……。お前が好きだと思ったもの、全部買ってきた」
 箱の中身を覗いてみると、なるほど確かにプリンにシュークリーム、色とりどりのケーキやタルトが7つほど入っていた。確かに甘いものは好きだが、いつもの食事に加えて、デザート7つはちょっと多いな。気持ちは嬉しいから、できるだけ悪くなる前に食べきりたいとは思うが。
「お土産ありがとうございます。とりあえず、部屋入りましょう、先輩」
「ん」
 靴を脱いで窓からのそのそと部屋へ入るシルバー先輩の靴を、玄関に持っていき、それからシルバー先輩の着ていたジャケットを脱がせたり手や顔を洗わせたりと世話を焼く。そこまでしてようやく、二人でリビングのソファへと落ち着いた。
「顔真っ赤。どれだけ飲んできたんですか」
「親父殿が、俺を酔い潰そうとしたんだ。だが、俺はそれくらいで潰れる男ではない。こうしてちゃんと無事でお前の元に帰ってきた」
「はいはい、偉いですね」
 据わった目で謎の自慢をするシルバー先輩は、僕の目から見てもだいぶ酔っているな。ひょっとしてヴァンルージュ先輩と飲み比べでもしてきたんだろうか。仲がいいことで何よりだけど、身体は大丈夫なのか、二人とも。
「デュース、さっきのデザートは」
「冷蔵庫に入れましたよ。悪くなるといけないので」
「……」
 シルバー先輩は冷蔵庫に向かい、プリンをひとつ取り出して戻ってくる。
「お腹空いたんですか?」
「違う」
 プリンのフィルムを剥いで、スプーンでひとさじすくう。それから先輩は僕にそのスプーンを差し出した。
「食べろ」
「……はい」
 あー、もう酔ってる。これは完全に酔ってるな。この人酔うと僕の世話を焼こうとする傾向あるからな……。仕方ない、気が済むまで付き合ってやるか。そんなことを思いながらプリンを口に含むと、甘い味が広がった。ん、うまい。
「うまい」
「そうか」
「はい、うまいです。クローバー先輩のところのですね?」
「ああ。一回玄関から帰ったが、お前がシャワーを浴びていたので、そうだケーキを買ってこようと思った。ほら、もうひとくち」
 先輩の説明は支離滅裂だが、まあ、酔っ払いの言うことだしいいだろう。それにしてもバルコニーから帰ってきたのはそういうことだったのか。
「俺といるときに、他の男の名前を呼ぶな」
「んっ」
 シルバー先輩は僕にキスして、舌を入れてくる。ちょっと待て、僕まださっきのプリン口に残ってるんだが。
「……確かにうまいな」
「そうでしょうね」
 シルバー先輩にいくらか取られたが、残ったぶんをさっさと飲み下して、先輩からプリンを取り上げてしまう。
「あとは自分で食べれますから、置いといてください」
「………………」
「そんな顔してもダメ」
 明らかに不満げなシルバー先輩の顔がちょっと面白い。そんなに僕にプリン食べさせたいか? だけど、適当なところで止めとかないと、無限に口の中にデザートを突っ込まれそうだからな。
「デュース」
 今度はなんだ、と思えば、シルバー先輩は僕の首元に顔を埋めて、すう、と何やら匂いを嗅いでいるようだった。……ちょっと恥ずかしいんだが。さっきシャワー浴びといて良かったかもしれない。
「デュースの匂いがする……」
「……」
 可愛い……。甘えてるのかなんなのか分からないけど、可愛い。頭撫でてもいいかな。せっかくだし。こんな機会しかシルバー先輩甘やかさせてくれないし。いいよな!?
「僕の匂いですか?」
「ん……」
 ドキドキしながら恐る恐るシルバー先輩の頭を撫でると、シルバー先輩は大人しくそれを受け入れた。
「……何か、してたか?」
「な、何か、って、なんですか?」
 シルバー先輩の言葉に僕はドキリとする。何かだなんて、そんな。僕が何をしてたって言うんだ、シルバー先輩のいない間に。
「しらばっくれるな」
 シルバー先輩は、ソファに僕を押し倒す。え、いや、しらばっくれるなって、どういう意味だ?
「俺以外の男と、何かしていたか?」
 先輩は不機嫌に据わった目で、僕を睨みつけている。って、なんで浮気を疑われてるんだ!? 僕は誓ってそんなことしてないぞ!!
「してないですよ!」
「嘘をつけ。だったら、なんでお前から、甘い匂いがするんだ」
 先輩は、僕の首筋に吸いつきながら尋問を続ける。
「それは……、シャワー浴びたばっかりだからで……」
「違う。お前としたとき、いつもする匂いがする」
 ギクリと身体が硬直する。それは、その。心当たりはないこともない、んだが。……今のシルバー先輩に言って、聞く耳を持ってくれるかどうか。
「誰と何をしていた?」
 シルバー先輩の手首をつかむ腕がちょっと痛い。別に浮気とかはしてないから、そんなに怒らないでくれ。
「……素直に言ったら信じてくれます……?」
「お前次第だ」
 ギリ、と手首をつかむ腕に力が入って、さすがにキツい。恥ずかしいけど、この場ではこれしか打開策がない。だから、素直に、正直に、もはやキレ気味に、開き直って言うんだ。
「……ひとりでしてました」
「何?」
「だから、ひとりでしてました! 先輩のことを思い出して!! 文句あんのか!!」
 シルバー先輩は目をぱちくりと瞬かせて、それから機嫌良さげに笑った。……あんたそんな表情できたのか。
「ふっ、そうか。俺のことを考えて、ひとりで」
「繰り返さないでくれます……?」
 一気に機嫌を直した、ように見えたシルバー先輩だったが、なぜかまた急に機嫌は急降下した。
「……何故、今ここにいる俺とじゃないんだ?」
「あんたが出かけてたからだろ!」
 理不尽な疑問をぶつけられ、思わずツッコミを入れてしまう。酔っ払いの戯言とはいえ、真面目に付き合ってやる僕も僕かもしれない。
「お前と先に楽しんでいる俺がずるい」
 何を小さい子みたいなこと言ってるんだ。
「別に、今してもいいんですよ。ここにいるあんたは」
 どうどう、と宥めると、シルバー先輩は何かを考えたあと、僕の身体を抱え上げた。
「してもいいなら、そうする」
「ああ、はい。好きにしてください」
 もう今日は最後までしようが途中で眠ろうが先輩の好きにさせとこう、と半ば投げやりに承諾の返事をすると、シルバー先輩は僕をベッドまで運んでしまった。
「デュース」
(酒くさ……)
 何度もキスをされるが、酒の匂いが気になる。いっそ僕も何か飲んどきゃ良かったかな、と思うが、まあ、嫌ってほどじゃないので黙って受け入れておく。
「脱げますか?」
「脱げる……」
 ボーッとした様子でシャツのボタンに手をかけていたから、手伝ってぷちぷちと外してやる。あ、やべ。ポンコツになってる先輩の世話焼くのちょっと楽しい。僕も自分で脱いだ方がいいだろうなとシャツのボタンを外してしまうと、シルバー先輩はじっと僕を見つめてきた。なんだ?
「なあ、デュース」
「なんですか。触っていいですよ?」
「……ひとりでしてみてくれないか?」
「は?」
 今なんつった? この人。
「なんて言いました……?」
「ひとりでしてみてほしい」
「………………」
 頭を抱える。どうやら、聞き間違いじゃなかった。シルバー先輩、僕にひとりでしてみろっつったか? そんなもん見て楽しいか? ていうか、普段からそういうことに興味あったのか?
「なんでですか」
「見たい」
「……嫌です」
「見たい」
 駄目だ。堂々巡りだ。平行線だ。こうなったら色仕掛けでもして触ってもらうか。どうせ何しても明日は覚えてないだろ。万一覚えてたとしても……、先輩の方が「すまない醜態を晒した」って気にするはずだし、なんとかなるだろ。
「先輩、僕、先輩に早く触ってほしいです」
 先輩の身体をつう、と指先でなぞって、耳元でささやく。こんなんでやる気になるかは知らないが、なってくれたらこの状況から逃げられる。
 この色仕掛けが功を奏したのか、シルバー先輩は僕をぐいと引き寄せ、そして腕の中に閉じ込めた。
「誤魔化すな、デュース」
「へあ……っ」
 シルバー先輩は耳元で吐息がかかるようにささやく。あ、このっ、僕が耳弱いの知っててやってやがるな……っ!!
「安心しろ。ちゃんと俺も触ってやる。お前が、存分に楽しんだあとにな」
「……明日、絶対謝ってもらいますからね……」
 ギチギチに腕の中に閉じ込められ、耳元を舐り、吐息と甘くささやく言葉をかけ続けられ、これはもう逃げられないと悟った僕は、明日、正気に戻ったらキツいの一発お見舞いしてやる覚悟をキメて、諦め半ばに自分のものへと手を伸ばした。
「あ、ん……っ」
「デュース」
「……シルバー、先輩……っ」
「いつも、こうやってしてるのか? 今日も? ……可愛い」
「あ、も、胸触っちゃ……っ」
 ゆるゆると自分のものを刺激していると、シルバー先輩が僕の体に悪戯をしてくる。乳首をつまんだり転がしたり、首元にキスをしてきたり。ただでさえシルバー先輩の匂いと体温に包まれながら、自分のペースでやれて気持ちいいのに、余計に煽られて気持ちよくなって、いつもより早く達しそうになる。
「あ、だめ、ダメ、も、出る……っ」
「……それは、まだダメだ」
 シルバー先輩が僕のものから僕の手を外させる。な、なんで。もうイキたいんだから、イかせてくれたっていいのに。
「なんで、先輩、意地悪しないで……っ」
「俺も触ってやると言っただろ」
 そして先輩は僕の履いていた下着もジーンズも何もかも脱がせてしまい、前をイかないようにせき止めながら、後ろに指を入れていじり始めた。
「ふっ、柔らかいな。後ろも自分でしていたのか?」
「あ、ああっ、やあ、先輩、やだ、イかせて……っ!」
「我慢だ、デュース」
「やだ、これ頭おかしくなる、先輩、せんぱいぃ……っ!!」
 それから、先輩にいじられまくって。殴る。もう明日絶対殴る。そんなことを心に決めていたのも束の間、僕はいつの間にやら、しっかりと後ろを指でほぐしまくられ、先輩のモノを挿れられていて、好き放題されていた。
「やっ、も、先輩、しるば、せんぱい、あ、そこ……っ!!」
「デュース、可愛い」
 可愛いとデュースの二つの単語しか発さなくなったシルバー先輩に好き勝手され、僕はもう絶頂寸前で……なんていうか、理性がもう飛んでいた。だから。だから、こんなことになったんだ。
「やっ、先輩の、今、イイとこ当たって……、当たってるうちにイきたいっ、せんぱい、シルバーせんぱい、あ、あああ……っ!!」
「……デュース」
 僕は思わず自分のものに手を伸ばし、シルバー先輩に挿れられたまま、イイところに当ててもらったまま、達してしまう。絶頂に達して、息を切らして、気が付いたときにはシルバー先輩が驚いた顔でこっちを見つめていた。
「すっ、すいません、僕だけ気持ち良くなっちまって……っ」
「……」
「せん、ぱい?」
 シルバー先輩はそんな僕の頬に手を伸ばして、それからにこ、と何も言わずほほ笑んだ。
「デュース」
「ふぇ? あ、だめっ、や、やだせんぱい、僕今イったばっか……、あ、ああ……っ!!」
 僕の止める声も聞かず、いや、聞いていて無視しているのか、先輩はそのまま第二ラウンドへと突入する。……いや、僕が勝手に先にイっちゃっただけだから、先輩にとってはまだ物足りてない第一ラウンドなのかもだけど……!!
 それでもいつもなら休憩くらいはさせてくれるし、すまないって遠慮がちにおねだりくらいしてくれて可愛げあるのにと普段の優しくて完璧な恋人っぷりを思い出しながら、僕はその後も先輩の全部を使ってめちゃくちゃにされていった。

「あ、あっ、だめ、やだ、こんなときに、あ、イく、やだ、あのイき方する……っ!!」

「も、ごめんなさ、せんぱい、ゆるして、も、ゆるして、ひとりでしたの、あやまるから、あ、あ~~~~~……っ!」

「~~~っ、は、あっ、も、せん、ぱい、も、はあっ、これ以上、ダメ、ホントダメ、マジで、トぶからぁ……っ!」
 
 僕が記憶を保ってられたのは、その辺りの言葉が最後だった、気がする。……もはや途切れ途切れの記憶だから、どれが最後だか、よく分からないが。

 ――チュン、チュン、チチチ、と、ベランダの手すりに止まる小鳥の鳴く声がする。
 妙に重たく気だるい身体と、暖かな手触り、そしてわずかな身体の違和感に、ゆっくりと目蓋を開いた。
「お目覚めですか、シルバー先輩」
「デュース……?」
 目の前には、笑顔で俺の起床を迎える愛しい恋人。どうやら、昨日は無事に我が家へと帰ってくることができたらしい。あまり、昨夜の記憶はないが……。
 ……そこまで考えたところで、ふと、違和感の正体に気づき始めた。何故、デュースは服を着ていなくて、たった今ベッドからわずかに身体を起こしたばかりの俺の目の前にいるんだ?
 恐る恐る視線を下にやると、なるほどそれが違和感の正体だと言わんばかりに、自分のものがデュースの身体と繋がっていた。
 目の前で、恐ろしいほど綺麗な笑みを浮かべたデュースが青ざめた俺に言う。
「いろいろ言いたいことはあるが……まずはもちろん、抜いてくれるよな?」
「……はい……」
 記憶はないが、俺が昨晩何かしらの狼藉を働いたのは間違いない。そう直感して、俺は今日一日デュースに逆らわないことを決めた。

 デュースの身体からゆっくりと俺のものを抜く。すべてが抜け切るとデュースはベッドから降りて自分の着替えを集めようとした。が、それは叶わなかった。
 ベッドから下りようとしたデュースが、ふらりと足をもつれさせ、転びかけてしまったからだ。咄嗟にデュースを抱き止めたから、大事には至らなかったが。
「大丈夫か?」
「……あー……大丈夫じゃない、みたいです。すいません、着替え拾うのと、シャワー浴びるの。手伝ってくれますか?」
「あ、ああ」
「誰かさんのお陰で、腰と足がどうにも無事じゃないみたいなんで」
「………………」
 たぶん、いや十中八九俺のせいでしかない気がするので、大人しく従った。シャツのボタンを止めるところまで手伝おうとしたら、手は無事なんだからさすがにそこまではいりませんと断られたが。
 その後、うまく歩けないデュースを運んでソファに落ち着く。頼まれるまま足腰に湿布を貼ってやると、ようやくデュースはソファの背もたれへともたれかかった。
「先輩、隣座って」
「……正面じゃなくてか……?」
「そこだと僕も話しづらいんで」
 今日の俺はデュースと並んでソファに座る資格もないのではないかとカーペットに正座していたら、デュースから隣に座るよう言われた。これにも大人しく従う。昨日の俺が何をしでかしたか分からない以上、慎重にならなければ。デュースはいつの間にか、どこからか取り出したプリンを食べている。
「それは……」
「覚えてません? 昨日先輩がお土産に買ってきてくれたプリンですよ。……ケーキみたいなの7つは買いすぎだと思いますけど」
「……」
 俺、何してるんだ? 息子と酒が飲めるようになったとはと感激している親父殿となぜか飲み比べになったところまでは覚えているんだが。だが、甘いものを買いすぎたくらいでデュースがこんなに怒ることはない、はずだ。というか、それだけなら今朝のあれ、ああはならない。デュースの中に入ったまま寝落ちしてしまうなど……。……そんな失態、さすがにやらかさないように務めていたというか、眠気が来た瞬間は出来るだけその場で頬を殴ってでも目を覚ますか、あるいは身体から抜きはするようにしていたはずだ。
「できれば、昨晩俺が何の狼藉を働いたのか教えていただきたく……」
「……本当に聞くんですか?」
 くっ。そんな覚悟が揺らぎそうなことを言わないでほしい。俺だって自分がどんな醜態を晒していたのか、知りたくもあり怖くもあるんだ。それでも。
「……聞きたい。お前に、嫌な思いや、今以上の怪我などさせていないか……ちゃんと、知っていたい。もし俺が何かしていたらと思うと、酔って忘れました、では済まされない」
「じゃあ、全部言いますけど……」
「ああ。……遠慮せず、来い」
 覚悟を決めて、腕を組む。何と言われても、きっと受け止めてみせるつもりだ。
「ものすごく酔っぱらって赤い顔でバルコニーから箒で帰ってきて、僕が好きだからって甘いもの大量に買ってきてて、プリンを僕に食べさせて」
「……」
 既におかしなことを働いている気がする。が、まだ致命傷じゃない。まだ耐えられる。笑い話にできる範疇だ。
「そのプリンを食べさせた傍からキスして持ってって、かと思えば頭スリスリして甘えてきて」
「く……っ」
 ……まだだ、まだ大丈夫だ。俺が恥ずかしいだけで済む話だ。
「……えっちしたときの匂いが僕からするって言って妬いてたから、仕方なく……ひとりでしてたって言ったら、なんで俺としてないんだってちっちゃい子みたいなワガママ言い始めて」
「……それで、ああなったのか……?」
「ここからが本番ですけど」
「ぐっ……」
 デュースはスプーンをガジガジと噛んでいる。俺は、項垂れて申し訳なさげに聞いていることしかできない。
「ベッドに連れてかれて、ひとりでしてみろって言ったり、で、イきそうなのに何度も何度もせき止められたり、そのあと、挿れっぱなしで第二ラウンド突入したり」
「………………」
 冷や汗を背中が伝う感覚がする。デュースの身体をなんだと思っているんだ。もっと丁重に扱え、俺。
「何度もうやめてっつっても、限界っつっても、意識トぶっつっても、やめてくれないままで……僕の記憶も、ちょっとどこで途切れたか分かりません」
 そう言ってデュースはにっこりと笑う。……しかし、その様子だと、話を聞くに、俺は恐らく、デュースの意識が飛んでしまったあとも……。
 ……何故なら、少しだけ覚えているからだ。時間が経って、酔いが覚め始めた頃なのだろう。目の前でデュースが寝転んでいるのを見て、俺も眠くなって、そのままデュースの上で眠った記憶だけが、間をぽっかりと抜け落としたまま残っている。あれはひょっとして、寝転んでいたのではなくて。意識が……。
 自分のやらかした事と次第の顛末を聞いた以上、俺のやることはひとつだ。ソファの上で三つ指をつき、デュースに頭を下げる。
「大変な狼藉を働いてしまい、申し訳ありませんでした……」
「おお、そこまで」
 デュースは冗談めかして顔上げてください、と言っているが、俺の謝意というか、罪悪感はこんなものではちっともどうにもならない。
「今日はお前の言うことをなんでも聞く……」
 へなへなとデュースを抱きしめると、さっきからもうやってるじゃないですか、とデュースは笑った。
「そうだ、ゴムは……! 俺はちゃんとしていたか!?」
 急に思い当たって尋ねると、デュースは俺から気まずそうに目を逸らした。ま、まさか俺は酔いに任せて、何もしないまま……?
「……ゴムは、してくれましたよ。……『うまくできない、つけてくれ』っておねだりつきでしたけど……」
 ……もしも一度だけ時間が戻せるのなら、昨夜の俺を殺しに行きたい。どれほどの愚行を働き醜態を晒してくれていたんだ、昨夜の俺。
 デュースはそんな俺の肩に、ぽふりと頭を乗せる。
「先輩、今日がお休みでラッキーでしたね。僕出勤だったら、こんなもんじゃ済ませてませんよ」
「……本当にすまない」
「別にいいですよ。昨日の夜はそりゃ、朝起きたら絶対一発殴ってやるって思ってましたけど……」
 ぎくり。いや、だが、己の行動を省みると、殴れるものなら殴ってほしい。もうこの際そうされたい。いっそこちらから殴ってくれと頼んでもいい。
「僕も先輩も今日はお休みだし、たまには激しい先輩もいっかなあ、って思ったんで」
「……デュース」
 デュースの手が、膝の上で握られていた俺の手に重なる。
「今日は一日、僕のお世話焼いてくれるんですよね?」
「……ああ。俺の不始末だ、俺がなんとかする」
「もう、飲みすぎちゃダメですよ。特に、僕がいないところでは」
「……気を付ける」
 デュースはニッと笑って、じゃあはい、と俺に何かを差し出した。
「これは……」
「二日酔いによく効く薬。あれだけ酔ってたら、今頃気分悪くて、頭も痛いんじゃないですか」
 そう、言われたら。己の愚行を探ることにばかり夢中になっていて気づいていなかったが、言われてみれば頭にガンガンと鈍い痛みが走っているし、どこか喉元にスッキリしない感覚がある。
「水まで注いであげられたら良かったんですけど」
「いや……そこまで面倒はかけていられない。俺の不始末だ、薬を用意してくれただけでも、ありがたい」
 キッチンへ行き、コップ一杯の水と薬を飲んで戻る。
 自力で動き回れないから当然なのだが、それでもデュースはソファに座ったまま俺を待ってくれていて。
「先輩」
「……ああ」
 ぽんぽんとソファの席を叩いて促されるまま、隣に座る。するとデュースは俺の身体をぐいと引っ張り、俺の頭を膝に乗せた。
「デュース?」
「あのさ、先輩。僕だってあんまり好き勝手されて、怒ってないわけじゃなかったんだ。さっき一発殴るって言ったのもそうだしな」
 デュースは口元に手を当てて笑う。ああ、俺の好きな、学生時代から変わらない、あの笑い方だ。眉を下げて、口元に手を当てる、あの。
「でも、今日、朝起きて、あんたの下で、あんたのやったこと改めて考えてたらさ。まっすぐ家帰ってきて、僕の好きなものたくさん買ってきて、僕と他のやつがって焼きもち焼いて、挙句の果てには僕を好き勝手して、って……。あんた、酒に酔ってるクセにどれだけ僕のこと好きなんだよって、おかしくなっちゃって」
「……」
「だから、今回は許すことにしたんです」
「……デュース」
「はい、なんですか」
 デュースの、俺の髪を撫でる手つきが、とても優しい。……目の前にいるのはお前に無体を働いてしまった男だというのに、なんと心が広いのか。
「俺は、どんなときだって、お前を、一生……」
 うと、と眠気が来る。ああ、こんなときに。ぼやけた視界と薄れゆく世界の中、聞こえてきた最後の声は、とても優しく、穏やかだった。
『眠ってていいですよ、薬効くまでは。ゆっくりおやすみなさい――』
 俺は、その声を聞いて、まだこの頭にアルコールは回っているのか、こんなことを思った。
 どんな美酒でも、神酒(みき)だとしても、適わない。きっと俺の人生をこんなにも酔い狂わせてくれるのは、後にも先にもデュース一人だけなのだろう、と。

*おしまい

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