残り香

*10年後入れ替わりネタ「好きになっていただけますか?」の続きっていうか、ちょっとしたおまけです。
*CPが逆に見える瞬間がありますがシルデュです。

以上すべて大丈夫な方はスクロール↓

 

 
 あれから。10年後の未来でなく、無事、現在の時間に戻れた俺は、クルーウェル先生へ、無事元に戻りましたとの報告の後、デュースと別れ、寮に帰り、いつも通りの日常生活を送る。
 寮に帰り、シャワーを浴びて部屋に戻り、ルームメイトとおやすみの挨拶を交わし、ベッドに入る。
 そう、そこまでは、良かった。
 ベッドに入った、あと。部屋の照明が落とされて。俺は、すぐに眠りに落ちた。
 落ちたのは、いい、のだが。その、夢の内容が。
『シルバー? 聞いてるか?』
「えっ、あ……ええと……? 元に、戻ったの、では?」
 まわりには、机。そして、丸い眼鏡をかけた、大人のデュース。
『何言ってるんだよ、さてはまた寝てたな? また補習にならないよう、頑張って勉強するんだろ?』
 だから僕に教えてほしいって言ったのはお前じゃないか、とデュースは言う。
 そ、そうなのか。そして、俺はそろそろ気づく。ああ、これは夢か、そうだよな、と。
「ええと……、どこまで、俺は勉強していたか?」
『ったく、もう忘れたのか? ……あ、分かった。また、居眠りしてたな? 悪い子だ』
 そう言ってデュースは、俺の顎を指先で引き、上向かせる。
『そんな悪い子には、お仕置きをしてやらないといけない……よな?』
「あ……」
『ほら、僕をよく見て。……集中して。な、シルバー?』
 僕とお勉強、しような? 良いことも、悪いことも。
 近づいてくるデュースから、かかっていく吐息に。首元からちらりと覗く、白い素肌に。目の前に立つデュースの色気にやられ。
 思わず、唇が寄せられるのを受け入れそうになっている、と。
 ……そこで、ベッドから落ちて、目が覚めた。そして、俺は、自分の頭を一度、思いっきり殴った。
(俺はなんて夢を……!?)
 寝よう、今度こそ寝よう、泥のように眠ろう、もうあんな夢は見ないぞ、と。
 俺はシーツにくるまり、誤魔化すようにもう一度、ベッドに潜り込む。
 すると。すぐに、また夢の世界は訪れた。
『……何してるんだ、シルバー?』
 今度は、眼鏡をかけていない、大人のデュースが。俺の目の前に、押し倒されていた。
 あのときと同じように、Vネックから覗く素肌が、シーツに散らばる群青の髪が、俺を独特の色香で誘う。
『逃がすなと言ったのは、あなたの方だろう……!』
 俺の口から勝手に漏れる言葉が音になり、そのままデュースを睨みつけると。彼は、俺の首にするりと手を回した。
『ふうん? じゃあシルバーは、どんなふうに僕を逃がさないでくれるんだ? ……な、教えてくれないか? 僕に……』
 そうしてデュースは俺の手を取り、自分の服の裾に持っていかせて、俺は、その手を……。
 と、言うところで。また俺は、飛び起きた。
(何、なんなんだ、あれは!? なっ、未来の俺はあんなのに耐えているのか……!? それとも、毎日毎晩、余裕で楽しんで……!? ……毎日、毎晩!?)
 いやだから何を考えているんだ、と、妙な方向へ飛んでいき、止まらない思考回路に、落ち着きたくなって。
 水でも飲もうとベッドを抜け出し、キッチンへと向かった。
 ……それで。キッチンで、コップ1杯の水を飲む。ふう、とようやく落ち着けた、と溜め息をついたとき。
 それは、訪れた。
 するりと。デュースの手が、後ろから、俺に抱き着いて。俺の腹の筋を、下から上に、つ、とこそばゆくなぞり上げる。
『なあシルバー、まだか? 僕、待ってるんだぞ?』
 俺は、ごくりと生唾を呑み込み。そして、慌てて。
 慌てて。
 ……妄想を振り切り、シャワールームに駆け込み、すべての服を放り捨てると、シャワーのコックを捻る。
(な、情けない……!! 少し、大人になったデュースに惑わされたくらいで、あんな、あんな白昼夢まで見てしまうとは、これでは騎士の資格が……!! ……ええい、心頭滅却……!!)
 頭上から降り注ぐ冷たいシャワーの雨だけが、火照り続ける俺の体温を冷やしてくれていた。

 ――シルバーがディアソムニア寮の中、ひとり右往左往していた、その頃。一方のハーツラビュル寮では。
「んぅ……」
 ぐう、と健やかな寝息を立てるデュースが、そこにいた。が……。
「だめ、です……シルバー、せんぱい……、も、ぼく、だめ……、ん……」
 ……どうやら、こちらはこちらで。大変なことになっているようなのであった。

*おしまい

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