Are you ok?

 聞いてくれ!!! 僕は昨日……なんと、だな!? シルバー先輩と、恋人になっちまった!!!!!!
 言ったんだよ「好きです!!!」って!!! 言われたんだよ「俺もだ!!!」って!!!
 嬉しいよな!? 嬉しいだろ!!! 嬉しい!!!! えっと、例えるなら……すっげえ嬉しい!! で、嬉しいのはいいんだが!!!
 こんな嬉しくて、どうしようもないまま、どうやってシルバー先輩と話したらいいんだ!?
 って、思ってる間に!! 廊下の向こうからシルバー先輩が歩いてくる!! ど、どうしよう!? どうすればいい!?
 ええっと、えっと、そうだ!! とりあえず挨拶だよな!! 考えてるヒマはねえ、行くぞっ!!!
「シ、シルバー先輩っ!! お、おはようございまあっすっ!!!!!!」
 やべえ!!! やたら挨拶がデカくなっちまった!!! ほら見ろシルバー先輩も驚いて、
「……おはよう、デュース!!!!!」
 なんか挨拶返してくれた!!! 同じくらいの声量で返してくれた!!! ありがとうございます!!!!
「朝っぱらからうるさいぞ貴様ら!!!! 挨拶ぐらい静かにできんのか!!!!!」
 ヤベ、セベク怒ってる!!! てかいたのかセベク!!!! 悪い、シルバー先輩しか見えてなかった!!!!
「その……恋人には、対等な愛情を返す必要があるだろう!」
「だからと言って声量を対等にしてどうするんだ!!!」
 シルバー先輩の反論に、セベクはツッコミを入れる。僕は恋人って言われた!! 夢じゃねえんだ!! ってニヤける。
 そんな感じで、恋人初日の僕たちの朝は始まったのだった!

「始まったのだった、じゃねーよ!! マジでうるせえからそれ、よそでやれよな!?」
 朝の出来事を世間話混じりにエースに報告したら、そんなことを言われた。なんだよ、ダチの幸せ報告くらい祝えよな!
 でもうるさいってセベクにもエースにも怒られたから、仕方なく、もう少し大人しくすることにした。
 それで、昼休み。大人しく勉強しようと思って、テキストを睨みつけつつ中庭にいたら、シルバー先輩がやってきた。
「デュース!」
「シ、シルバー先輩! 僕に何か用事ですかっ!?」
「あ、いや、その。……姿が、見えた、から」
「ほえあっ!」
 少し照れくさそうに告げるシルバー先輩の破壊力に、僕は口から変な声が出る。
「す、すいません、僕あれで!! ずっと落ち着いてなくって!!」
 僕がワタワタしていると、シルバー先輩は堂々とした態度で言い切った。
「……その。大丈夫、だ。俺も、落ち着いてはいない、から。気にするな!」
 すごい! 言い切った!! カッケェ!!
「だが、まあ、お前の言う通り、用事という用事があって、来たわけではなくて……。その。ただ、会いたかった、というか」
「ほああ……っ!!」
 シルバー先輩の破壊力に、2度目の直撃を受ける。僕はこのままじゃだめだ、と決意し、提案をする。
「じゃ、じゃあその。ちょっとゲームでもしませんか!?」
「ゲーム、か? どんなものだ?」
「えっと、『愛してるゲーム』って言って。お互いに「愛してる」って言って、言われた方が、照れたり笑ったり、何も言えなくなったりしたら負けなんです!!」
「なるほど、にらめっこの亜種のようなものだな。把握した、やってみよう! ……どちらが先攻だ?」
「じゃ、じゃあまずは僕から……っ、行きますよ、シルバー先輩!!!」
「ああ、どこからでもかかって来い!!」
「あ……っ、……く、え、ええっと……、だめだ言えねえ……!!!」
「い、言えない、のか。そうか。……ええと。この場合は、勝敗はどうなるんだ……?」
「たぶん、いろんな意味で僕の負けです……」
 そうか、とシルバー先輩は納得して頷いた。そして、僕の目をじっと見つめて言う。
「なら、次は俺の番だな。次は負けないよう、頑張れ。行くぞ。……デュース、『愛してる』」
「ふぇああ……っ!!!」
 駄目だ、ものすごい綺麗に即落ちした!!! 真っ逆さまになってウサギの穴に落っこちるみたいに即落ちした!!! 何が来るか分かってたのに、それでもシルバー先輩の顔と声で言われると、威力がすごいな!!!? こんなにあれだとは思ってなかった!!!
「ふっ。俺の勝ち、みたい……だな……」
 と、言いつつも。シルバー先輩も、手で口元を隠している。動揺してるの僕だけじゃないぞこれ!!
「先輩も照れてるじゃないですかっ!! 引き分けです、これ! 引き分け!!!」
「……どうやら、そのようらしい……っ」
 そんな風に騒いでいる僕らを、通りすがりのローズハート寮長が呆れた目で見ていた。
「ねえ。キミたちのそれって、勝負として成立しているの?」

 翌日。僕は、昼休みにシルバー先輩のとこへ会いに行って、リベンジ勝負を申し込んだ。
 勝負事で負けっぱなしではいられねえからな!! 今日は、とっておきの作戦も用意したんだ!
 その名も「名前呼び勝負」!!!
 お互いを普段呼ばないような呼び方で呼んで、照れさせられた方が勝ち、って勝負だ!!!!
 これなら僕も照れずにやれるし、勝ち目はある!!! ……はずだ!!! たぶんっ!!! いやきっと!!!
「なるほど、ルールは分かった。それじゃあ始めよう。お前からでいいぞ」
「はい!! ……行きますよ!!」
 そうして僕は息を吸い込み、その名前を呼ぶ。
「ヴぁ、ヴァンルージュ、先輩っ……!!」
 するとシルバー先輩は、ふっと笑った。すごく嬉しそうに、きれいに、穏やかに、笑った。
「……ああ! デュース。もっと呼んでくれ、デュース」
「わ、ちょ、シルバー先輩……っ!?」
 シルバー先輩は、嬉しさが余ったのか、僕を抱きしめ、抱き上げ、くるくると回し、抱き着きながら、問題の言葉を繰り返した。
「好きだ、デュース。嬉しい、もっとそう呼んでくれ、デュース。俺も呼ぶ、デュース。好きだ、デュース、ほらお前も呼んでくれ、デュース!」
「わ、分かった、分かりましたからっ、いったん落ち着かせてください~~~!!!」
 ……そしてその日の勝負も、僕の完敗で終わった、ってワケだ……。

 翌日。僕は再度リベンジを誓っていた。今日こそは負けねえぞ!!!
 僕にだって得意分野ってものがあるんだ!!! 今日の勝負は、その名も「にらめっこ」だ!!!
 待て、最後までよく聞けよ!! これはただのにらめっこじゃねえんだ!! だから次こそ勝てる、はずなんだ!!!
 「先に目を逸らした方が負け」ってルールだから、今度こそ僕にも勝ち目はあるだろ!? 睨み合いなら得意だし!!!
 で、今日も昼休み、僕を見つけて会いに来てくれたっぽいシルバー先輩に、目と目が合ったので勝負を挑んだのはいいんだが!!!
「……!」
「……!!」
 やべえぜ……、シルバー先輩の睨み、なかなかの気迫じゃねえか!!!
 普段きれいな人が怒った顔すると迫力あるって、マジなんだな!!!
 そうして僕は、シルバー先輩としばらく睨み合う。負けねえぞ、メンチの切り合いなら得意なんだ!!!!
 でも。じっと見てる間、そのうちに。いつの間にか、シルバー先輩の目ってこんな色してたんだなー、改めて見ると本当にきれいだなー、なんて思ってきて。
 向こうも同じように、じっと僕のことを覗き込むように見つめ返していて。
「「……」」
 ただ、お互いに黙って相手の目を見つめるだけの時間が発生していた。
「アイツら何遊んでんの?」
「僕は知らん。関わりたくない」
 通りすがりのセベクとエースが、そんな会話をしていた。

 それで、そのまま。なんていうか決着がつかず、放課後になった。
 部活を終えて、帰り道。なんとなく、僕の部活終わりを待っていたらしいシルバー先輩と一緒になって。
 それで。黙って歩きながら、不意に空を見上げたら、月が綺麗で。
 きれいな景色だ! と思って、僕はそれをシルバー先輩に伝えたくなった、けど。
 緊張でいっぱいで、テンパり続けてる僕の口からは、全然、うまく、言葉が出てこなくって。
「せ、先輩っ!! きょ、今日、超月が綺麗じゃないですか!!?」
「あ、ああ! そう、だな! とても綺麗だな!! 月が!!! ええと、どうだろう、その!! ……手でも、繋ぐか!? 月が綺麗だからな!!」
「い、いいですよ、受けて立ちます!!! 負けません、望むところです!!!!」
 って、何故か流れで、手を繋ぐことになっちまって。なんか、なんていうか、なんか。
 ぎゅっと握られた手に、反対側の手で小さくガッツポーズをしながら、少し照れくさそうなシルバー先輩の横顔に、なんていうか、僕はやっと、その、……落ち着いてきて。
「この頃ずっと、何、やってるんですかね、僕ら……?」
「……分から、ない。でも、その。嫌では、なかった……」
 って、お互いの目も見られず、でも手だけはしっかり繋いだまま、黙ってゆっくりと鏡舎までの短い道を何分もかけて帰り。もうそれぞれ自分の寮に帰らなきゃって、名残惜しいけどさよならをした。

 それで、夜、ベッドの中で。今までのことを思い返して、気づいたんだ。
 そういえばシルバー先輩、僕に応えようとしてくれてたし、落ち着かないって言ってたし。
 同じように慌ててくれてたんだよな、きっと、って。
 そう思うと、なあんだ、僕だけじゃなかったんだ、初めての恋人に慌ててるの、って。
 何かがすとんと、胸の中に落ちていく気がした。

 それで、翌日。また、朝から廊下でシルバー先輩に会う。
「あ……」
「……デュース」
 でも、僕はもう慌てなかった。ちょっと照れくさいけど、やっと落ち着いて、普通に挨拶ができる気がしたから。
「へへっ。おはようございますっ、シルバー先輩っ」
 そしたらシルバー先輩も、なんだかちょっと、ホッとした感じで。柔らかいほほ笑みを浮かべて、僕に言った。
「ああ、おはよう、デュース」って!

 そういうわけで、まあ。最初はちょっと、いろいろとつまずいて、迷走したりもしたけど。
 結局僕らふたりとも、おんなじ温度で空回りして、一緒に騒いで、一緒に落ち着いてるんだよなって思って。
 そんな感じで、僕たちのこれからの恋人暮らしは始まっていったのだった!

*おしまい

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