FOG後日談単発らくがき

「はー……シルバー吸ってわしゃわしゃしてると癒される……」
 俺を吸う、とはどういうことだろうか。氷水で出来たような身体だ、匂いなどしないと思うのだが。ともかく、弱ったデュースが俺を頼り甘えてくれるのは嬉しい。くっついてくるデュースを抱き返し、頭を撫でる。
 デュースはどうやらまた死刑囚の魂の回収に行ってきたようだ。その日は疲れた様子になって、こうして様子が変になるのですぐに分かる。
 心が弱ったときに頭を撫でるのは、デュースがいつも俺にしてくれたことだ。俺は、そうしてもらって嬉しかった。だから、デュースにも同じことをする。
「魂の回収、お疲れ様」
「んーありがと。こんな夜は暖かいスープとか飲みたいよな……」
 デュースが望む暖かなスープを、熱いお湯や火を苦手とする俺では用意してやれないことが少し不満だ。だが、それと同時に気になることがあった。
「……なあ。前から思っていたんだが、なぜデュースは冬の神なのに、暖かいものも食べられるんだ?」
「ああ、それは……冬は暗くて冷たくて、寒いばっかりじゃない。コンビニで売られるおでんや肉まん、コタツ、クリスマスの暖炉の火。寒いねって言いながら、握り合う手と手。冷えた身体が暖まるようにって大切な人に用意する、ブランケットやホットミルク、ホットショコラ。そういう、冬だけの暖かさも、冬の一部だからだ」
「なるほど、そうだったのか。では、サマージュースやトロピカルドリンクなどは……」
「生前は好きだったけど、口には合わなくなったな」
 そうか。そうだったのか。デュースに触れると、たまに暖かな心地を感じた。本来、俺の肌にとっては冷たいことが心地いいはずなのに、と思っていた。
 なるほど、冬の持つ本来の暖かさだから、俺が触れても問題が無かったのだな。それも、冬の力なのだから。
「いちばん好きな冬の飲み物はなんだ?」
「エッグノッグか、ミルクセーキ」
「それは……暖かい飲み物か? いや、冬に飲むのなら、そうなのだろうな。……俺が作ってやれたら良かったのだが」
「気にしなくていいって」
「……大人しく吸われている以外にも、君を励ませることがしたい」
「ふはっ、吸われてる自覚あったのか」
 じゃあ、とデュースが笑った。
「今度、一緒にカップウォーマー買いに行くか」
「カップウォーマー?」
「マグカップに中身入れて置いとけば、機械が勝手に加熱して暖かいまま放っといてくれる道具。常温の缶ジュースをマグカップに開けてスイッチ押すだけなら、シルバーでも使えるだろ?」
 ま、シルバーは暖かいの飲めないし、僕に淹れてもらうためだけって感じがして申し訳ないけどな、とデュースは苦笑いをする。それでも、それは今きっと俺がとても欲しいものに違いない。
「欲しい。買いたい」
「人間界のいろんなもの使ってみるのは悪くないと思うけど……たまには自分のためのもの買ってもいいんだぞ?」
 デュースは俺の膝の上に寝転んで、猫の子を撫でるように喉を撫でる。くすぐったい。が、心地いい。
「俺が君に暖かい飲み物を用意したくて買うのだから、俺のためのものだ」
「ったく、敵わないな」
 じゃあ僕もお返しに何かシルバーのためになるもの買おうかな、とデュースは言う。
「なんかおねだりしてみ?」
「……ええと……」
「ほら、遠慮するなって」
「……せ、製氷皿が……欲しい」
「製氷皿? って、あの、四角い氷を作る……?」
「以前、君がジュースで作ってみせてくれた、いろいろな色の氷を、俺も作ってみたくて……ユキにも、いろんな形の氷を見せたい」
 なんだそれくらいお安い御用だ、とデュースは笑った。
「それじゃせっかくだし冷蔵庫も今のより大っきいのにして、シルバー専用のとこ作るか」
「いいのか?」
「他にもいろいろ凍らせてみたら楽しいぞ? フルーツとか、チョコとかさ。暑い中帰ったとき、いざというときに食べれるものは多い方がいいし、そうなると冷凍食品とかもいくつか買っときたいし、ついでだついで」
「……やっぱり俺ばかり貰いすぎている。デュースに、もうひとつくらい何か贈る」
「それじゃ贈りあって終わんないだろ」
「……終わらなくてもいいんじゃないか?」
 それもそうだな、と笑いあって、そんなことをしているうちに、眠りに落ちる。今日も俺は、デュースの隣にいられて、とても幸せだ。
 
*おしまい

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