Fragments of a graffiti【第5話】

*雪の精霊シルバー×死神デュースの人外パロです。
*設定から何からやりたい放題です。なんでも許せる人向け。
*呼び名とかちょっと変わってます。
*第5話はポイピクで既に投稿しているものを数か所だけ微修正したものです。
大筋は変わっていないので、続きから読みたい! という方は第6話へどうぞ。

 

大丈夫な方はスクロール↓

 

 泣き疲れて、眠ってしまったシルバーさんを寝かしつけて、自分の代わりになるように冷たくした抱き枕と場所を入れ替わる。……本当、赤ちゃんみたいだな。っていうか……、まだある意味、赤ちゃんと変わらないんだよな。ずっとはざまの世界で大切に育てられた箱入り息子で、人間界0年目なんだし。
「ん……デュース……」
 ……この人は、初めて頼りにした新しい大人が物珍しかっただけだ。……すぐに他の子を好きになって、僕のことなんか綺麗さっぱり、忘れるさ。そうだよな、きっと。なんて自分に言い聞かせながら、夏の蒸し暑い日中に僕は出かけていった。

 今日の予定は、墓掃除のバイトが1件。その後は着替えて、刑務所へ行く。ちょっとキツめのスケジュールだな。まあとりあえず頼まれた墓掃除の代行を済ませてしまおうかと、顔見知りの墓地管理人さんに挨拶して、いつも大変だね、なんて言われながら、慣れてますよと墓掃除を始めた。

 ――僕は生前、警察官だった。24だか25だかで、殉職した。誕生日が近かったから、どっちの年だったかはもう忘れた。ま、死に方としては若い方だな。その後、魂の資質が認められて、死神になることになった。そのときの僕には選択権があった。死神になるか、ならないか。だけど、やらないという選択肢はなかった。
『キミは生前、警察官だったみたいだね。特に、素行不良の少年たちの更生に力を注いでいた。……どうだい、その仕事。死後も続けてみる気はない?』
 僕は、あることを条件にそれを了承した。その条件は、一人残してしまった母が天寿を全うしたときに、一目会わせてもらうこと。そのときに、僕は立派に死神の仕事をやっているからと、その姿を見せられること。今はもう、約束は無事果たされた。
 母さんは、先に天国に行ったり、転生したりしても良かったのに、『アンタが頑張ってるのに一人先に行けないよ』と今でも霊界に留まって、火車のような魂の運搬の仕事を手伝っている。
 僕がそんな母さんを悲しませてしまったのは、三度目のことになる。一度目は、生前どうしようもない不良になって母さんを泣かせてしまったとき。二度目は、警察官としての仕事中、無茶をして母さんより先に僕が死んでしまったとき。そして三度目は、死後。僕が消えない罪を犯して、最期の死神に選ばれてしまったとき。
 ……大切な人を、死んだあとまで悲しませるなんて、なんて親不孝な息子なんだろうな。だけど、僕がやらなきゃ、他の人がやらなきゃならなくなる役目でもある。貧乏クジでも、いつかは誰かがそのクジを引かなきゃならないんだ。どうせ、僕は要領が悪い。貧乏クジを引き続けた人生だ。それなら飽きるまで何度でも、引き続けてやろうじゃねえか。
 そう思っているけど。覚悟はしているけど。自分でそうすると決めて、歩んだ道だけど。あのときあの選択をしなかったら、なんて夢に見る日が、後悔して落ち込む夜が、ないとは言えない。僕はそんな夜に、シルバーさんに傍にいてほしくない。小さな子の初恋のように、純粋で真っ白な愛情を注いでくる彼を、僕の歩む、孤独な茨の道に連れていくわけにはいかないから。

 死んで真っ黒になった僕とは正反対の、真っ白な生き物。そんな彼が、僕に向けて子どものように愛情を伝え、求めてくるのが、ただこそばゆかった。
 ――愛おしい。僕はシルバーさんが、愛おしいんだ。

 でも、だからこそ、言われたくないんだ。
 もし、もしさ、恋人になったとして、だよ。まだ、あの人はひとり立ちも初めての、巣立ちしたばかりの雛鳥みたいなものなのに、さ。
 これからたくさんの広い世界を見て、もっと、本当にタイプの好きな子や、運命の相手をどこからか見つけてきてさ。やっぱり僕なんかいらない、とかさ。
 いや、そう言って僕を捨てて別れてくれるなら、まだいいよな。優しい人だ。ベランダの日陰に避難して、暑がっている小鳥たちを涼しくしてあげているのを見たよ。優しい人なんだ。だからさ。僕に一度告白してしまった手前、僕の運命を聞いてしまった手前、引っ込みがつかなくなって、僕なんかもういらない、なんて言えなくなって。本当に好きな人と結ばれるチャンスを逃がすだとかさ。
 そうやってシルバーさんが僕のことが嫌になってしまったときに、シルバーさんが僕のことを拒めなくなるのが、何よりも怖いんだ。
 一度掴んだ手を、簡単に離せるような人じゃないのだから。

 それに、ああ、それに。僕はきっと後悔する。自分に与えられた罰の恐ろしさに、待ち受ける運命の過酷さに、取り乱して恐れる日が来る。今までにだって、何回かそうして、頭を振って、とにかく走って、消えない不安をやり過ごした夜があった。自分の犯した罪を、自分がそうすると決めたはずの過去の行動を、後悔する日があった。僕は、そのことを。自分が決めたことなのに、苦しくなってしまう夜があることを、シルバーさんにだけは絶対に知られたくないんだ。

 だから。彼の想いは、受け入れられない。愛しているから、僕を選ばないでほしい。
 初めて会ったときからずっと、僕は、シルバーさんに――あの子に、幸せになってほしいんだから。

 ――墓掃除が終わった。見知らぬ人のお墓だけど、とりあえず綺麗になった墓石に挨拶するように手を合わせて、お仕事完了だ。こんなところに故人がいないのは、死神である僕には分かっているけど、それでも、自分の墓石を目にする機会が誰にでもないわけじゃない。たとえ日々が忙しくて代理を頼んでいたって、自分の墓石が綺麗に管理されていたら、嬉しいだろう。
 さて……次は、刑務所だな。死刑囚の魂の回収だなんて、本当に嫌な仕事だ。だけど、舎弟……じゃないや。部下たちにやらせるワケにもいかないからな。極悪人が相手だからって、カシラがビビって舎弟に回収任せてます、だなんて、ダセェから。だから。……いいんだ。さあ、行こう。
『出でよ、大鎌』
 ごく小さな追随式の結界を張り、自分の姿を見えないようにくらまして、刑場へと向かった。

 バイトの時間に間に合うようにかけたアラームの音で目を覚ます。スマホのメッセージを確かめると、嵐が近づいているので、今日から幾日かは時短営業で夜勤のシフトは休みになったと店長から連絡が来ていた。
 そんな折、ガタン、と玄関の方から音がした。隣にいたはずのデュースは、また抱き枕になっている。それなら出かけていったデュースが帰ってきたのだろうと、俺は玄関までパタパタと駆けていく。
「デュース、お帰り……どう、したんだ?」
 デュースはアパートの玄関に座り、しゃがみこんでいる。明らかに、様子がおかしい。
「……放っといてくれ」
「デュース……」
 うつむきながらデュースはベッドルームへ向かい、身体をそこへ放り出す。俺は、どうしたらいいか分からなくて、デュースの隣にしゃがみこんだ。
「何か、あったのか?」
「……あったら、どうだって言うんだよ」
「その……、俺は何もできないかもしれないが、傍にいたり、話を聞くことくらいはできる。……それくらいのことしかできないが、それでも良ければ、頼ってほしい。君に応える気はなくとも、俺が君のことを想う気持ちは、変わらないから」
 そう告げた瞬間、デュースは、クッションを俺の顔に投げつけた。
「デュー、ス?」
「なんなんだよ……っ、もう、いい加減にしてくれよ! 好きだ、好きだって……、俺がそれに、ここではい分かりましたって頷いてさあ、アンタがいつか心変わりしないって保証はどこにあんだよ!?」
「デュース、心変わりなんてしない、俺は……」
「うるさい! 欲がないからって、心が無いわけじゃないんだ! いつも平気そうな顔してたって、何をされたって、傷つかないわけじゃないんだぞ!?」
「……すまない……」
 俺は、言葉に詰まった。未来永劫愛することを誓う、なんて、言葉にするのは簡単だが、本当に未来永劫を最期の日まで生きていかなくてはならないデュースには、毒になるだけだ。それくらいのことは、いくら未熟な俺にでも分かる。
 デュースは、やがて、うっ、ふ……っ、と嗚咽のような声を漏らした。
「デュース……? 泣いて、いるのか?」
「……ごめん、八つ当たりだ……情けない……」
 ぐし、と手首で目元を拭うデュースの傍に、そっと寄り添う。今日は仕事が休みで良かった。今、デュースを一人にしたくない。これまでのデュースは一人で耐えてきたのだろうが、それでも、これからは。
「情けなくなんか、ない。それだけ大変なことをしているんだろう」
 デュースの頭を抱き寄せる。泣きじゃくる俺を、デュースがそうしてくれたように。すると、デュースはポツリと話し始めた。
「刑場に、行ってきたんだ」
「刑場? 何故……」
 言いながら、気づいた。ああ。魂の回収だ。死神であるデュースは、死刑になるような極悪人の魂でも、義務として回収しなければならない、のだろう。
「死刑囚か」
 俺の言葉を肯定するかのように、デュースは続けた。
「……僕、死ねないんだ。最期の死神になるために、本当に最期の一人になるまで、死んでも生き残らされ続ける。だから、人間界では死刑になるような、残忍で凶悪な魂の回収も、任されてるんだ」
 何をされても、簡単に消滅したりはしないから、とデュースは言った。
「そんな……」
 いくらなんでも酷い、と言うと、僕がこの身体になったとき、自分から志願したんだ、舎弟を守るために、だから上の人は悪くない、とデュースは首を振った。
「この身体を、不便だと思ったことはない。むしろ、ダメージ無視でどんな奴相手にも何度でも特攻できて、すごく便利だよ。そう思ってた。だけど、だけどさ……」
「だけど……なんだ?」
「……本当に、僕をおぞましいとか、思わないか……?」
 やってることは、ゾンビと同じだろ、ハッキリ意識があって腐ってないだけでさ、とデュースは言う。それでも、俺は。
「俺は、赤子のときに一度、命を落として、今の体に生き返った身だ。父から、そう聞かされている。……だから。君がおぞましいのなら、俺は俺をおぞましいと思わなくてはならない。俺は、君も俺も、おぞましい生き物だとは思わない」
「シルバー……」
 デュースは、初めて俺の名を呼んだ。シルバーさん、とどこか線を引くような呼び方ではなく、シルバー、と。そして、俺に縋りつくように抱き着いた。
「……今日、回収した魂がさ。酷い奴だって思ってたんだ。子どもを何人も殺したやつだった。死刑になりたかったって言って。でも、ソイツは死刑にはならないで、独房の中で寿命が来たんだ」
「……ああ」
「ソイツがさ、言うんだ。黒いローブを着た僕の姿を見て、ああ、死神か、って言うんだ。そしてその死神に、懺悔なんかするんだ。どいつもこいつも、悪人は、自分に来る神なんか、死神くらいしかいないからって勝手な言い訳して、勝手に自分のことを話していくんだ」
 背中をさすりながら、ただ頷き、話を聞く。
「今日のやつは、なんで小さな子を狙ったりした、って聞いたら、自分は、どうしようもなかった、頭も要領も悪くて、馬鹿だった、だから悪い道に落ちてった、って言うんだ。まるで、生きていた頃の、僕みたいなこと言うんだ……」
 僕は人を殺すまではいかなかった、そんなとこまで落ちる前に、優しい人に会えて、そのお陰で更生できた、でも、あのままだと、アイツらと同じになる未来はあったんだって、そう思うんだ、とデュースは言う。何かを恐れるように、涙で震える声で。
「頭も要領も悪かったから、皆から後ろ指を差されて、馬鹿にされるようになったから、ナメられたくなくて、悪いことをしたり、人を脅かすようになってったんだって。そのうちに、後戻りが出来なくなって、そんな自分がどんどん嫌いになって、死にたくなって、そんなことしたけど、やっぱり馬鹿だったから、やり方間違えたって言って……」
「デュース」
「なんなんだよ! どいつもこいつも、さあ! なんで、なんで僕に言うんだ!! なんで自分の人生の後悔を、みんな、僕に言うんだ!? どうして、どうして、何もできない、してやれない、僕なんかに言うんだ!! もっとうまくやれば良かった、なんて、どんな意味でも、聞きたくない、聞きたくないんだよ!!」
「……デュース。落ち着け。落ち着いて、息を深く吸って、吐くんだ。その男と、君とは違う人だ。違う魂だ。……君は、優しいから。何かをしてやれたかもしれないと、そう思ってしまうのかもしれないが。彼らの後悔は、彼らの選択の結果だ。……君が、何もかも背負わなくていいんだ」
「でも、でも僕は……」
「何が、恐ろしいんだ? 何が、君の心に、無理をさせている?」
 デュースの身体を、ただ抱きしめ、背中をさする。デュースの息は、ひゅう、と荒くなる一方だから。
「僕は、……僕は。アイツらみたいに、最期の日、たった一人になった瞬間に、その日、その瞬間に、僕は、後悔するかもしれないのが、何より、怖い。自分がしたことを、やめときゃ良かった、とか、もっとうまくやれば良かった、なんて思う瞬間が来るかもしれないのが、怖くて、怖くて堪らなくて……嫌、なんだ……」
 シルバー、もしアンタを恋人にしたら、アンタを失った瞬間にも、そう思うのが、嫌なんだ、嫌でたまらないんだ、とデュースは言った。
「……なら。それなら、俺が、最期の日、その最期の瞬間まで、君と共に生きられる方法を探す。そうしたら、俺の想いに応えてくれるか?」
「そんなの……ダメだ。だって、それって……」
 僕と同じになる、ってことだ、大切な人も何もかも、先に消えてしまうのを見送らなきゃいけなくなるんだぞ、とデュースは言った。
「……そうだ。辛い役目だ。それを、初めて恋した君にだけ、押し付けて、のうのうと消えゆくことは、俺にはできない。君の心は、既に軋んでいると分かった今、なおさら、一人にはしておけない」
 これから先の、長い永い時を。そう告げると、デュースは、体育座りをした膝に、顔を埋めてしまった。
「……見つかりっこない。そんな方法」
「必ず、探してくる。見つからなくても、見つける」
「ダメだよ、シルバー。……幸せになってくれ。僕のことなんか、もういいから……」
「嫌だ。君とでなければ、幸せにならない」
「……馬鹿。大馬鹿だ……」
 そのまま、涙を流しながらデュースは眠りに落ちた。眠りにつくまで傍にいた俺は、昨日とは逆だな、と思った。
 そして――俺は、イデア様に導入してもらったスマホアプリを使い、はざまの世界へ行き、親父殿のところへ赴いた。

「来たか。シルバー」

 親父殿は、社の前にいた。まるで俺がここへ来ることを分かっていたかのように、一人、待っていた。

「……親父殿。すべての記録をつけているという貴方ならば、俺の嘘も、もうご存知なのでしょう」
「ああ。……まったく、親心からの忠告を聞かんとは、親不孝な息子じゃの」
「申し訳ありません。ですが……俺は、デュースを愛しています。彼を、一人にしておきたくない。お尋ねしたい。俺が、彼と。デュースと永劫を添い遂げられる方法は、ご存知でしょうか」
「……知っておったとして。わしが、可愛い愛息子に、そのような修羅の道を歩ませることを、良しとすると思うか?」
「俺の選んで歩む道を、止め立てする父ではないと思っております」
「……」
 親父殿は、少し、考えるような様子を見せた。それから、パチリと指を鳴らし、二振りの木剣を俺と親父殿の前に召喚した。
「久々に打ち合おうぞ、シルバー。話したいこともある」
「……ええ」
 そうして、俺たちは打ち合いを始めた。俺が撃ち込みを始めると、親父殿はそれをいなした。
「懐かしきことよ。お前には、こうして剣の稽古をつけた。お前が剣をようやっと持てるようになった、幼い頃から」
「はい……覚えています、親父殿」
「お前を初めて抱いた日の重み、まだ覚えている。……降り積もる雪のように、どんどんと冷えていったお前の体温も、弱っていく吐息も……」
「……ええ。感謝しています。貴方たちに、この命を授けられたことを……一日たりとて、感謝を忘れない日は、ありませんでした」
「では、何故!」
 親父殿が、強く俺の木剣を打ち払う。そして、俺に歩み寄り、顔先に剣を向ける。その顔は、歪んでいた。
「……お前に、あれと同じ道を歩んでもらいたくないという親心が、分からない? 息子に孤独の道を、歩ませたくはない。あれの母親も、その罰が決まったと聞いたとき、気を失ったそうじゃ。わしが同じように思わぬはずがないと、何故、お前には分からぬ……」
「……親父殿」
 親父殿の目元に、滲む涙。それは、俺の決心を鈍らせる。だけど。だけど、それでも、俺は……。
「……孤独ではありません、親父殿。俺は、彼を一人にしたくないから、二人になりたいのです」
「二人に?」
「一人では、孤独なままです。だけど、二人ならば。最期の瞬間まで、二人で手だけでも繋いでいられるならば。互いを手綱に、耐えることができましょう。それは、俺も彼も同じです。……それに、何よりも、親父殿」
 俺は、差し出せる手を差し伸べなかったまま、悔やみながら消えゆくことを良しとしたくないのです、それは貴方が、俺に初めて教えてくれたことです。そう告げると、親父殿は、ギリ、と唇を噛んで、口元から血を流し、濡れた目元をゴシゴシと袖で拭い、これもわしの罰か、とごく小さな声で呟いた。
「ついて来い。……お前の知りたいことの他に、教えるべきことがある。お前が本当にあれと添い遂げたいと思うのなら、いつかは出会う問題じゃ」
「ありがとうございます、親父殿……!」
「何が……礼を言われることか。分かっていて息子を茨の道へ送り出すのに……」
 親父殿の後へついていく。やがて着いたそこは、幼少のみぎりよりも入ってはいけないと言われていた、地下の記録室だった。
「ここは……入ってはいけない、場所では?」
「その理由を考えたことがあるか?」
「いえ……」
「ここには、けして表沙汰にしてはいけない記録たちがある。たとえば――」
 親父殿が奥の扉を開くと、そこにはある人の影があった。黒い椅子に座る、マレウス様だ。
「お前の出生に関わる話、だとかな? シルバー」
「マレウス様……」
「あのことを話すのだな、リリア」
「……ああ。この聞かん坊には、伝えなくてはならない。すべてを。だが……」
「自分では、やはりシルバーを止めてしまうかもしれない。だから僕に伝えてほしい。そうだろう、リリア」
 マレウス様は椅子から立ち上がり、ツカツカと俺の元へ歩み寄ってくる。そして、笑みを浮かべながら俺の額にその指を突きつけた。
「お前は知らねばならない。お前の生まれてきた理由を」
 ――目の前が真っ白になって、次の瞬間、俺は――意識を失っていた。

*第5話 おしまい

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