プレゼントフォーユー

この小説には以下の特殊設定が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※付き合っている、恋人設定
※シルバーひとり部屋設定
※R18程度の性描写(高校卒業以下かつ18才未満の方は閲覧をご遠慮ください)。

大丈夫な方はスクロール↓

 

 今日はシルバー先輩の誕生日だ。一応、恋人である僕も先輩の誕生日を祝うために、ローズハート寮長にあらかじめ外泊届を出して、ディアソムニア寮に泊まることになっている。というのも、シルバー先輩はディアソムニア寮の中でささやかなパーティをして、夜遅くまで誕生日を祝ってもらうそうなので、僕もそれにちょろっとだけ顔を出して、その後は一緒に先輩の部屋へという手筈になっているんだ。
 それで、今はようやくその誕生日パーティが済んだあと。祝われ疲れたらしいシルバー先輩に渡された両手いっぱいのプレゼントを運ぶ手伝いをしながら、部屋へと戻っている。
「たくさんお祝いしてもらえて、良かったですね」
「ああ。……賑やかな誕生日は、あまり慣れないが……。寮の皆にも、俺という存在が歓迎されているのは嬉しいと思う」
 お前も、とシルバー先輩は言った。確かに、僕は一人別の寮だし、ひょっとして場違いで居心地が悪いかなとは思ったけれど、祝いの席だったからなのかなんなのか、顔見知り以外のディアソムニアの人たちも僕のことを暖かく迎えてくれた。
「僕も歓迎されたんだとしたら……シルバー先輩のお陰だろうな」
「俺の?」
「はい。先輩の大事な人だって思われたから、歓迎してもらえたんだと思います」
「そうか。それなら、良かった」
 そんな話をしながら、部屋の片隅に運んできた山ほどのプレゼントを積む。ぱっと見だと中身が見えないものも多いけど、中の見えるものはなんだか枕やベッドまわりのグッズが多いような気がした。相変わらず、寝具をプレゼントされることが多いんだな。
 さて、もう夜も遅いし、シルバー先輩もたくさんの人と喋って疲れただろう。元々、あまり口が上手じゃない人だ。話すのが嫌いってわけじゃないみたいなんだが……。それでも、たくさんの人といっぱい喋るのは慣れてないんだろう。ずっと、親父さんと二人暮らしだったみたいだし。
 部屋に入るなり、二人ともまずは気を抜いていつでも寝られるようなラフな格好に着替えをした。この流れは先輩もすぐに寝てしまうかな、と思った。それでも良かった。パーティの中で僕からのプレゼントは渡したし、今日は疲れているのなら、無理して僕にかまってもらう必要もない。そう思ってシルバー先輩に尋ねた。
「すぐベッド入って寝ますか?」
「……いや、その……」
 シルバー先輩から、なんだか歯切れの悪い返事が返ってくる。珍しいな、どうしたんだろう。まだ、何かやり残したことでもあるのか? 確かに、誕生日とか特別な日って、最後の一秒くらいまで、終わるのが勿体なく思うもんな。
「何かやり残したことでもあるんですか? いろいろ食べ足りないとか、もうちょっと喋ったり遊んでいたかったとか……。だったら言ってください。僕、とことん付き合いますよ!」
 僕にできることなら、ですけどと付け足すと、シルバー先輩はしばらく視線を泳がせ、何かためらった様子を見せたあと、ようやく僕をまっすぐ見据えて言った。
「お前が、欲しい」
「……へっ!?」
 反射的に、頬が熱くなるのが分かる。こんなストレートに僕を求められたことは……初めて、ではないが。毎回、先輩に雰囲気作ってもらって、それに流されてなんとなくそのまま了承してって感じで、まだ、こんな風に言葉で求められて始まることは少ないからだ。
 僕の様子を見て、シルバー先輩は少しだけ慌てたように補足する。
「もちろん、お前の体調が芳しくないのなら、無理を言うつもりはない。が、……わざわざ外泊届まで出して、そのつもりで来てくれたのではないかと、期待していたのは、俺だけ、なのかと……」
「い、いえ! シルバー先輩、祝われ疲れて寝ちまうかもなって思ってたから、びっくりしただけなので! 大丈夫です!! 体、元気ですし!!」
 だんだんと手で顔を覆って頬を赤くする先輩に、僕もつられて慌てることになる。いや、まあ、泊まる前には考えないわけじゃなかったんだがな!? 今日の様子を見てたら、休ませた方がいいかって思ったんだ! 僕は! ……でも、先輩が期待してたって言うのなら、断るのも、悪い……よな!?
「確かに、お前の言う通り、夜も遅く、俺の方が眠ってしまう可能性はあるが……それでも、我儘を言っていいだろうか、デュース」
「はっ、はい」
 シルバー先輩が、頬を赤く染めたまま、僕の手をぎゅっと握る。
「……今日、この日、この夜に、お前のことが欲しい。もし眠ったら、その都度叩き起こして、続けさせてくれ。俺が、それを望んでいる」
「シルバー、先輩……」
 シルバー先輩の瞳は、赤みがかった頬の上でじっと僕を見つめてきて、唇はきゅっと一文字に結ばれて黙っている。僕は、さっき着替えて放ったばかりの寮服のポケットから、ひと切れのリボンを召喚する。寮を出るときギリギリまでプレゼントを包んでいて、そのときに余った切れ端だ。
 ブルーのリボンを人差し指に軽く巻きつけて、シルバー先輩の頬に手を触れさせた。さ、さすがに僕がプレゼントだなんて口で言える気はしないが、そのつもりで。
「……僕で良ければ、喜んで。好きなだけ……シルバー先輩の、自由にしてください」
 遠慮なくめちゃくちゃにしたっていいですよ、今日は特別だからと耳元でささやけば、では遠慮なく、とシルバー先輩がさっそく僕の身体を抱きしめた。
 プレゼントの山の真ん中で、ぎゅうと強く抱きしめられる。まるで小さい子に贈られたぬいぐるみになった気分だな、と変なことを思った。
「好きだ、デュース」
「……はい、僕も。好きです、シルバー先輩」
 先輩は、名前を呼んでもらうのが好きらしい。前にそう言ってたから、僕はもう知ってる。だから僕も、こういう風にイチャついてるときは、できるだけ名前を呼ぶようにしてる。余裕がなくなってくると、つい先輩と呼んじゃって、そんなことも言ってられなくなるけど……。余裕が残ってるうちくらいはな。だって、やっぱり、僕ばっかりもらうんじゃなくって、シルバー先輩にだって好きだって伝えて、喜んでもらいたいしな。そうじゃないとフェアじゃない。

 シルバー先輩の背中に腕を回し、抱き返していると、シルバー先輩は魔法で扉に鍵をかけた。邪魔が入らないように、だ。とはいえ、そんなことをしなくてもドアの向こう側から人の気配は全然しない。僕が泊まりに来ているのはパーティに出た人なら皆知っているから、気を遣って近くを通らないようにしてくれているのかもしれない。
 しばらく抱きしめられてると、シルバー先輩が身体を離した。その顔には、普段からするととても珍しい照れが浮かんでいる。なんていうか、恥ずかしい、でも言わなきゃ、みたいな……。……なんだろう、ちょっと可愛い。
「……防音の魔法もかけた、から」
「あ、は、はい……」
 これは、えーっと……。声を聞かせてくれ、って意味、だよな? ちょっと恥ずかしいけど……。いや、かなり恥ずかしいが。誰より祝いたい先輩の誕生日に、恥だとかなんだとか、四の五の言ってはいらんねえと覚悟をキメる。
 僕が明かりを落とそうとすると、シルバー先輩はそれを止めた。
「……暗いと、眠くなってしまうから……。明かりはつけたままでも、かまわないか?」
「えっと……」
 明かりをつけたまま。全部明るい中で、シルバー先輩の前で露わにされてしまう、ってことだ。それは、いや、それも無茶苦茶恥ずかしい、けど……。
「……」
 やっぱりダメか? みたいな顔して顔赤くして待ってるシルバー先輩の顔見たら、僕に断れる道理はない。うう、先輩は意外におねだり上手だ……。
「い、いい、ですよ。明かりも何もかも、先輩の好きにして、かまわないです」
 ぎこちなくなったけど、なんとか返事はできた。ありがとう、とシルバー先輩は言ってくれて、眩しくないようにと少しだけ明かりを絞ってくれた。恥ずかしいのには変わりないけど、その気遣いが嬉しい。
 僕は自分からベッドに座って、先輩を呼んだ。
「シルバー先輩」
「……デュース」
 ベッド脇に座る僕に、覆いかぶさるようにシルバー先輩が迫る。シルバー先輩の指先が、指先をなぞりながら器用に僕の指に巻かれたリボンを外して、それで、唇にキスされるかな、と思って目を閉じていたら、落ちてきたキスは額に、だった。
「え?」
「なんだ?」
「口にするのかと思ってました」
「口にも、あとでする」
 シルバー先輩はそう答えながら、僕の髪や耳、頬に次々とくちづけていく。
「今日は俺の好きにしていいんだろう」
「は、はい。そうですけど……」
 なんとなく拍子抜けだ。好きにしてください、って言ったからには、もういきなり明日立てないくらいめちゃくちゃにされる覚悟も決めてたんだけど……。待てよ。まだ気を抜くのは早いかもしれない。このあと急にスイッチ入るかもしれないだろ。先輩はスイッチ入ると急に激しくなることあるからな……。
「好きにする」
 先輩は宣言しながら、僕をベッドへと押し倒す。あ、やっぱりどっかでスイッチ入るんだきっと! そんな僕の期待なのか警戒なのか分からないそれとは裏腹に、シルバー先輩はベッドへと押し倒した僕の頬や耳にキスをし続ける。
「夜空のような、群青色の髪が好きだ」
 僕の髪に、埋めるようなキス。
「すぐ赤くなる耳が、可愛い」
 耳元に吐息を吐きかけて、囁くようなキス。
「こちらもすぐ赤くなって、熟した林檎のようだな。食べてしまいたくなる」
 頬に、食むようなキス。
「せ、せんぱい?」
「安心しろ。……好きにしているだけだ」
 先輩は楽しそうにほほ笑みを浮かべ、愛の言葉を落としながらキスを続ける。
「ここに汗が流れているのを見かける度、つい痕を残してしまいたくなる」
 僕を半分転がしたうなじに、少し長めのキス。
「こちらにも痕をつけて、お前は俺のものだと他の奴に見せつけたい気持ちになることもある」
 と思ったらまた僕を転がして、首筋に、舐めるようなキス。
「ん……」
「……可愛い」
 思わず息の漏れた唇に、ゆっくりと触れるようなキス。
「好きだ、可愛いと思ったとき……ここにくちづけてやりたくなる」
 唇を指先で撫でられる。心から嬉しそうにほほ笑んでいるシルバー先輩の表情を見て、そろそろ僕は気付いてきた。こ、この人の「好きにする」って……。まさか、こういう……!? なんかすごく好きだって言ってもらえるし、丁寧に扱われるし、どっちが祝われてるのか分からないが!? 正直、息もつかないほど痛いくらい激しくめちゃくちゃにされるようなことを想像していた僕にとっては、予想外も予想外だ。宝物みたいに扱われて、ひたすら優しく、ゆっくり攻め立てられる。これは、ある意味、僕の一番苦手なパターンのやつかもしれない……! ど、どうしたらいいんだ!? 僕は!?
「せ、先輩。僕、どうしたら……」
「お前は、ただ素直でいてくれたらいい。そのまま受け止めてくれているだけで、とても可愛い」
 そう言われても、とまだ戸惑っていると、ひょっとして焦れてしまっているか、と先輩が尋ねた。そういうわけではないんですけど、と答えると、ならまだ続けてかまわないなと先輩は笑った。い、いつまで続くんだこれ。ある意味ものすごい羞恥プレイだ……!!
 それから、たっぷり時間をかけて全身にくまなくここが好きだ、ここも可愛いなんて言葉と一緒にキスを与えられた。それでもまだキスしかされていないのに、なぜか僕の身体はじんわりと全体に心地いい痺れと暖かい温度を帯びてきている。
「せんぱい……」
「可愛い、デュース」
 恥ずかしさで目が潤む僕とは裏腹に、シルバー先輩はキスを落としながら、ずっと楽しそうだ。……先輩、ひょっとしてずっと僕をこうしたいって思ってたのか……? でも、今日はどんなに恥ずかしくても、シルバー先輩の気が済むまでやりたいことをやりたいようにやらせてあげたい。その気持ちだけは変わらないから、今はただこの恥ずかしさに耐えることにした。
「デュース」
「ん……」
 楽し気なシルバー先輩の瞳と、潤んだ僕の瞳がかち合って、頭を撫でられる。頭を撫でられながら、口にキスをされた。そのまま、舌が口の中に入ってくる。あ、やっとか、なんて思ってると、僕の身体はシルバー先輩の舌でちょっと口内をいじられただけで、いつもよりびくびくと大きく反応した。
「んぅ……!?」
「………………」
 それに気を良くしたのか、シルバー先輩はますます僕の口の中をいじる。あ、ダメだ、そんな、くちのなか、きもちい、やめ、キスだけでこんな、ちょ、ちょっと待っ――
 ……そんな懇願も虚しく、僕は一瞬意識が遠のきそうになった。え、まさか、これでイったわけじゃない、よな……? と、自分のものの方をちらりと見る。まだキスされてるせいでよく見えなかったけど、感覚からするに、完全にイッたわけじゃなさそうだ。良かった、と内心安堵する。
 それでも、シルバー先輩のくちづけは止まらない。一瞬離れて息継ぎのようなことをすることはあるけど、そのあと糸を引いた唇同士をそのままもう一度重ね合わせる。ベッドとシルバー先輩の身体の間に押さえつけるようにキスをされて、肩や身体をびくびくと跳ねさせることもできないでそのまま気持ち良さの波に襲われていると、五回くらいそれを繰り返して目や口からいろんな液体が滲み始めたあとに、ようやく開放してもらえた。
「は、あ……」
「……可愛い」
 シルバー先輩は息を切れさせる僕を見て、柔らかくほほ笑み、また僕をぎゅっと抱きしめた。背中の後ろに手を回して、僕の背を擦っている。
「本当はここにもくちづけてやりたいが……俺がベッドに横になって、眠ってしまっては勿体ない」
「んぅ……」
 シルバー先輩はそう言ってるが、指先で背筋をくすぐられるだけでも、十分に気持ちいい。くすぐったさから逃げたくて身をよじっていると、シルバー先輩は嬉しそうにした。
「ふっ。自分から、俺の腕の中に転がってきたな」
「せんぱ……」
「可愛い、俺のデュース」
 先輩は服の上から、僕の肌を撫でる。さっき服めくって腹のあたりにキスしてたんだから、もう直接触ってくれてもいいのにとちょっと焦れる。
「気持ちいいか?」
「……じれったい、です」
「ふっ、そうか」
 正直に答えると、シルバー先輩は今度は直接肌に触れてくれた。ぞくり、ぞわぞわとした感覚がシルバー先輩の指先で撫でられたあたりからだんだんと上ってくる。
「ふぁ……」
 暖かくて少し硬い指先で優しくなぞられる感触が、マッサージを受けてるみたいに気持ち良くて、身体から力が抜けて、情けない声が上がってしまう。でも、シルバー先輩はそんな僕を見てもまだ楽しそうにしていた。
「こうしてお前の肌をなぞる時間は、好きだ」
「そう、なんですか……?」
「ああ。……肌と肌が触れているのが好きだと、言い換えてもいい」
 シルバー先輩、意外にスキンシップ好きなんだな、と僕はぼうっとした頭で思った。僕は逆に、ベタベタするのとか、親しくないやつに触られるのは好きじゃなかったけど……。先輩にされると照れくさいし恥ずかしいし、好きじゃなかったはずなのに、今は心のどっかで喜んでしまうから、恋って不思議だ。
「……」
 シルバー先輩に手を伸ばし、今度は僕からぎゅっと抱きしめる。
「好き、です」
「ああ」
 シルバー先輩は嬉しそうにうなずき、僕の伸ばした手を取って、その手のひらのまんなかにくちづけた。……くすぐったい。
「もっと撫でていいか?」
「……言ったじゃないですか。全部、好きにしていいです」
 好きにしていい、と言ったのに、それでもまだ僕の意向を大事にしようとしてくれる、そんな先輩に、今日は何されても全部許しますからと許しを与えた。シルバー先輩は、ありがとうと嬉しそうに額と頬にキスをすると、僕の身体の輪郭をひとつひとつ確かめるように、指先と手のひらで撫で始めた。
「ん……」
「脱がすぞ」
 シルバー先輩は僕の肌を撫でながら、ついでに服を脱がせていく。頭からつま先まで、全身をくまなく撫でられる心地良さを感じている間に、パジャマ代わりにと持って来たシャツとハーフパンツがいつの間にか全部下着ごと脱がされていて、僕は先輩の前で生まれたままの姿にされていた。
「あ……」
「恥ずかしいか?」
「……あ、明るいところでこんな、見られるのは、初めてなので……」
 さすがにまじまじ見られるのは恥ずかしいと膝を閉じながら言うと、シルバー先輩は言った。
「恥ずかしがらなくても……いや。恥ずかしくても、どうか。少しだけ我慢して、今日は俺に、すべてを見せてくれ。お前の全部が欲しい」
「……き、今日だけ、なら……」
 少し、いやかなり恥ずかしいと思ったけど、自分から膝を開く。さすがにシルバー先輩の顔を見ていられはしなかったので、顔はそっぽを向いてしまったが……。
 ……シルバー先輩と僕の間に、わずかな無言の時間が流れる。え、なんか間違えたか? 引かれた? 明るいところでよく見てみたら僕の身体何か変だったとか……!? そんな風にひとり不安になっていると、シルバー先輩がほうと溜め息をついて呟くように言った。
「……綺麗だ」
「え?」
 まるで美術館に飾られた絵に恋をしたときのような言い方に、僕は驚く。綺麗、って、僕なんかが? 見た目にものすごくこだわるシェーンハイト先輩とかと違って、あまりそう言われるような容姿はしてないが……。
「お前の身体はしなやかで、俺とは、何もかも違う。……だが、だからこそ愛おしい」
 シルバー先輩は手を伸ばし、ゆっくりと僕の肌に触れる。まるで、触れたら消えてしまうものみたいに。
「……僕は、ここにいますよ」
「ああ」
「消えたりしないです」
「……ふっ。どうしてお前は、今目の前にある光景が、触れれば消えてしまう夢じゃないかと俺が疑っているのを知っているんだ?」
 それからシルバー先輩は、素肌で触れ合いたいと言って自分も上着を脱いでしまった。すぐに身体に触られるかと思ったけど、そのままぎゅっと裸のままで抱きしめあう。……気持ちいいな……。とくとくって鳴る早い心臓の音と、暖かい体温が、すごく気持ちいい。ふと、身体に重みを感じる。
「……ぐう……」
 あ、これは……寝ちまったな。今日は起こしてくれって言われてたし、起こした方がいい、んだよな?
「先輩、起きてください」
「はっ……。す、すまない。あまり心地良くて、うっかり眠ってしまった」
「僕は大丈夫ですけど……」
 あ、いや、待てよ。この状態で放置されるのはあんまり大丈夫じゃなかったかもしれない。散々先輩にキスしてハグして撫でられたせいで、僕のものはそれなりに反応しはじめてる。それはゼロ距離で身体をくっつけてた先輩も気付いてることだったみたいで。
「すまない、待たせてしまったようだな。……ちゃんとここも可愛がってやる」
「あ……!」
 先輩の指先が、僕のものを優しく撫でる。それだけで、散々愛撫された僕の身体はびくりと全身に気持ち良さを伝えていく。
「よしよし、いい子だ」
「ぁ、う、せんぱ、い……っ」
 ……じんじんする。なんだか、いつもと違う。急に激しい快感の波が襲ってくるような感じじゃなくて、じわり、じわりと気持ち良さが少しずつ奥の方から昇ってくるような、そんな感じがする。
「なんか、いつもと、ちが……っ」
「……苦しいか?」
「ちが、くて。あったかくて、じわじわする……っ」
 身体の下に敷かれたシーツの衣擦れからさえも身体に与えられる感覚がくすぐったくてもどかしくて、もぞもぞと身体をじれったく動かしてしまう。シルバー先輩はそんな僕の様子を見て、不快でないのなら良かったとまた僕へと触れる作業に戻っていく。
「ん、んう、ん……っ」
 けして激しい刺激を与えられているわけじゃないのに、もどかしくて堪らなくて、僕の腰は激しく与えられたときのそれと同じようにシルバー先輩の手から逃げ出そうとしてしまう。
「怖くない、大丈夫だ」
「こわ、くはない、です……、は、ただ、これ、なんか、変、なんか……っ」
 シルバー先輩に腰を捕まえられ、僕のものはゆっくりとしごかれる。うう、早くされるのよりもずっと、頭が変になりそうだ……! でも、今日は先輩の、好きなように、先輩に……。
「せ、んぱ、い……」
「……すまない、焦れてしまったみたいだな」
 シルバー先輩をじっと見ると、もうお願いだからゆっくりしないでくれと懇願する気持ちが伝わってしまったみたいで、シルバー先輩はベッドサイドのチェストからローションを取り出した。
「もう少しじっくり可愛がってやりたかったが……お前がバテてしまう前に、後ろもほぐしておこう」
「ひゃ……!」
 冷たくぬるりとした感触に、また身体がびくりと震える。そのまま敏感になった後ろをなぞられて、僕の口からは変な声が漏れだす。
「ぁ、あ、や、せんぱい……っ、や、つめた、だめ、ゆび、なで、や、ぞくぞくする……っ!」
「可愛い、デュース」
 枕を掴んで首を振ったりじたばたしていると、シルバー先輩から身体を押さえられ、唇にキスをされた。先輩はキスをして、そのまままた口に舌を入れて、口の中にもある、僕の弱いところばかり刺激してくる。口の中の蓋のところだとか、舌の先っぽとか。
 気持ち良さに思わず涙をにじませていると、唇を離したあとすぐに下へと刺激を与えられる。あっ、や、だめ、先輩、今はちょっと……! そんな懇願も間に合わず、先輩の手は僕のものへ悪戯を始める。
「ゃ、あ、ああ……っ!」
 シルバー先輩が左手の指先で器用に僕のものの先っぽをくりくりといじっている。だめだ、も、きもちいい……! いじられる快感に耐えていると、後ろにも違和感が増えた。シルバー先輩の指が挿入ったんだ。
「あ、ぅ、ああ……っ!」
 ナカに何かが入った感覚のまま、前を触られて、ますます気持ち良くなっていく。指で後ろをほぐしている間も、先輩の左手は僕のものをいじり続けた。お陰で僕の口からはずっと、喘ぎ声が上がりっぱなしで……。……や、だめだ、も、やめ……っ! なんか、なんか今日、いつもよりからだ、感じるの早……っ!
「ゃ、あ、やだ、せんぱい、今日、なんかこれ、すごいきもちい、すき、せんぱい、すきぃ……っ!」
「……」
「ぁ、やぅ……っ!」
 先輩は何も言わず、僕のナカに入れる指を増やした。何回か身体を重ねて気付いたことだが、こういうときに集中すると、先輩は黙ってしまうことがある。初めのうちは気に入らないことでもあったのかと思っていたが、終わったあとに聞いてみると、実はその逆で、夢中になりすぎてしまっているときにそうなるらしかった。だから、先輩が黙ってしまっているのは、先輩が夢中になってくれてる証だから、いいんだ、けど……。
 ……これじゃ先輩より、僕の方が夢中になっちまってる……!
「せんぱ、い、も、いい、挿れて……っ」
「……しかし、まだ……」
「も、足りない、ずっと、お腹の方、むずむずして……っ、も、まだ……っ」
 先輩の好きなようにしてもらう、なんて言葉はどこに行ったのか、先輩が欲しい、ナカに欲しいという身体が求める感覚に耐えられなくて、ためらう先輩に縋ってしまう。先輩は迷ったあと、僕の額にキスをした。
「あと少しだけ、我慢だ。……いい子だから」
「ぅ、あ……っ」
 そして、また僕のナカに入ってくる指が増える。ゆっくりと、でも確実に僕のナカを広げていくその指が、先輩がここへ来る準備をしているんだと思うと、きゅうきゅうとその指さえ締め付けてしまう。
「や、せんぱい、好き、好き……っ」
「……困った。そんなに好きだと何回も言われてしまうと、もっとこのまま、愛してやりたくなる」
「せんぱいの、いじわる……っ」
「ふっ、すまない。……もう、すぐに与えてやる」
 そう言って先輩は僕のナカから指をゆっくりと引き抜いていく。ナカからモノがなくなっていく感覚に淋しさを覚えていると、すぐに入口へ別のものがあてがわれた。
「ほら……行くぞ」
「せん、ぱい……」
 シルバー先輩の手に太ももを抱えられ、ぐっと力が込められる。期待していたそれがナカを満たしていく感覚に、紅茶に溶かした蜂蜜みたいに頭が蕩けていくような心地がした。
「あ、ああ……っ、せん、ぱい……っ」
「……」
「や、これ、これぇ……っ、待ってた、ずっと欲しかった……っ」
「……そうか」
 先輩のモノが、ずぷ、と止まることなく奥に進んでいき、僕と先輩の距離がまたゼロになる。ひとつ満足してはあ、と息を吐くと、先輩が前髪をどけてキスをしてくれた。
「今日はずいぶん気持ち良さそうだな」
「なんか、わかんないんですけど、すごい、良くて……んっ……」
 先輩が頬や首筋にキスをする。それだけでも、僕の身体はびくびくと震えた。
「ゆっくりするのも、嫌いじゃなさそうだな」
「やう……っ、あ、せんぱい、だめ……っ」
 シルバー先輩は、繋がったまま、僕の身体に小さな刺激を与えてくる。肩を食んだり、乳首を指の腹で撫でたり、背筋をなぞったり、腰をゆっくり回すように動かしたり。
「あ、ああ、んぅ、あ……っ、やあ、も……っ!」
 その度に僕の身体は気持ち良く反応して、でも一番気持ちいいところには達しきれないもどかしさに包まれて。
「せんぱい、せんぱいぃ……っ!」
 先輩の首筋に顔を埋めていやいやと首を振ると、先輩はくすぐったいな、お返しだと僕の腰をくすぐった。それが、何かのスイッチだった。
「あ……っ」
「ん?」
「あ、あ、やだ……っ!」
 先輩の指先にくすぐられた腰元にゾクゾクとした感覚が集まり、逃げられない。先輩と繋がっているから、抜けたままの腰は動けもしない。あ、だめだ、こんな、ただちょっとくすぐられただけなのに、これで、こんな……っ!
「あ、ああ……っ! や、やあ……っ!!」
 もう出る、イッてしまう。そう思ったが、僕の予想とは裏腹に、勢い良く僕の欲が出て行ったりはしなかった。代わりに襲ってきたのは、わけのわからない気持ち良さの、治まらない波。
「や、っやあ、せんぱ、い、やだ、止まんな、止めて、きもちい、なに、これ……っ」
「デュース、大丈夫か?」
 シルバー先輩が心配して頬に手を触れさせてくれるけど、そのわずかな動きでさえ、今の僕には刺激になった。
「っや、やあっ、気持ちい、の、止まんな、あ、だめ、すき、すき、や、動い、たら、あ、だめ、さわ……っ!!」
 シルバー先輩にすがりつき、ぎゅうと背中を抱きしめる。いくら首を振っても気持ちいいのが離れていかなくて、腰と腹の奥はもどかしくて切なくて、先輩に助けを求める他なくなった。
「や、せんぱい、気持ちいいの止まんない、助けて……っ」
「……デュース」
「ずっと、きもちくて、いちばんのとこ、いけな……っ」
「分かった。今、どうにかしてやる」
 シルバー先輩は僕の首筋に甘噛みをする。
「ひゃ……っ!」
「次は、こっちだ」
 それから、僕の腰から尻にかけてを手でなぞり、僕の中のゾクゾクとしたものを集めてくる。
「あ、あ、あ……っ」
「ここもだな」
 集めたゾクゾクとしたものを、僕のものの先っちょにさらに集めるように下から上へとしごいていく。もう、もうダメだ、もう少しでイキそうなのに、イけなくて、痛みすら覚えそうになってる。
「や、はあっ、せん、ぱい……っ!」
「あと少しだ、デュース」
 前をいじりながら、先輩はナカに入れた先輩のモノを少しずつ動かしていく。気持ち良さがだんだん前から後ろの方にシフトしていって、先輩の手がとうとう僕のモノを離れた頃には、もう僕はすっかり後ろでとろかされていた。
「あっ、ああっ、ナカ、ナカ気持ちいい、せんぱ、シルバーせんぱい……っ」
「は……、デュース」
 先輩は僕の名前を何度も呼びながら、ナカを刺激してくる。ゾクゾク、ゾワゾワとした感覚がどんどん身体中を昇ってきて、激しい熱と、じんわりとした暖かさに包まれて。ぽた、ぽたと汗がシーツに落ちて。
「せんぱい、シルバーせんぱいっ、イく、も、僕、イ……っ、あ、ああ、あ……っ!!」
 びゅる、と何かが出て行く感覚と、中にもゴム越しに何かがぶつかるような感覚がして、頭が真っ白になった。必死で掴んでいたシーツや枕には皺が寄っていて、顔は涙と涎でぐちゃぐちゃだ。
「は……、?」
 あまりの気持ち良さに、何が起こったのか理解できないでいると、シルバー先輩がぎゅうと僕のことを抱きしめた。
「すまない、無理をさせてしまったみたいだな」
「は、ひゅ……」
 無理じゃない、と答えようとすると、僕の口からはかすれた声と、かひゅ、と言う息しか出なかった。あんなにゆっくり抱かれたのに、こんな風になっちまうこともあるのか……。
「……無理するな」
 そう言ってシルバー先輩は僕のナカから自分のモノを抜いてしまう。あ、と僕が残念だという声をあげてしまうと、そんなに淋しがるな、と頭を撫でられた。
「ほら、飲め」
 先輩はペットボトルに入った透明な水を僕に渡してくれる。身体を起こしてそれを飲むと、少しだけ呼吸が落ち着いた気がした。同じように身体を起こした先輩にもたれかかると、先輩は肩を抱き寄せてくれる。
「せんぱい」
「平気か?」
「なんか、いつもと違うイキ方しました……」
「……辛くなかったか?」
「今は大丈夫です、けど。……イってる間は、このまま一生気持ちいいまんまなのかって、ちょっと怖かったです……」
「そうか……。怖がらせてしまい、すまなかった」
「い、いえ。先輩の好きにしていいって言ったのは、僕なので……」
「だとしても、だ。やりすぎてしまったかもしれない。……すまなかった」
「いいですよ、だって、シルバー先輩がしたいようにしてくれたから、こうなったんですよね?」
「ああ、だが……お前に無理をさせるつもりはなくて……本当に、すまないと……」
 まだ申し訳なさそうな先輩の頬に手を添える。不服だから、だ。
「謝らないでください。僕は、あんな風になるの、確かに恥ずかしかったし、大変だったけど……。先輩になら、どうされてもいいって言ったのは、ホントなんですから。……それに、すごく、気持ち良かったし……」
 だからいいんです、と言った。それでもまだ先輩が申し訳なさそうにするから、僕は奥の手に出ることにした。先輩の膝に座り、腕を回す。
「……先輩」
「デュース?」
「悪いことばっかりじゃ、ないんですよ。本当に、今までにないくらい気持ち良くて、それで……。僕の後ろ、まだヒクヒクして、先輩が欲しいって言ってるんですけど……。これでもまだ、自分が悪いって思います、か?」
 先輩は僕の後ろに手を伸ばし、本当にそうなのかを確かめるようにそこをなぞる。
「んっ……」
「……敵わないな、お前には」
 そのままもう一度、先輩にベッドへと押し倒される。第二ラウンド開始かな、と思ったけど、そうではないみたいだ。
「もう一回、ですか?」
「いや……。もう無理はさせない。だけど、もう少し触れ合っていたい」
「……僕はもっかいくらい挿れても……」
「ダメだ」
 これも俺の好きにする内だろう、とシルバー先輩は言う。そう言われちゃ仕方ないなと僕が口を尖らせると、先輩はそう拗ねないでくれと口にキスを落とした。
「……あ、じゃあ、いちゃいちゃする前に、これだけ」
「なんだ?」
「改めて……誕生日おめでとうございます、シルバー先輩」
「ああ。ありがとう、デュース」
 すっかり夜も更けて、時計の針はとっくの昔に0時を超えているだろうけど。そんなの関係ないと言わないばかりに、僕たちは二人きりの甘い時間をもう少しだけ楽しんだ。

*おしまい

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