・雪の精霊シルバー×死神デュースの人外パロです。
・年齢逆転要素アリ。
・なんでも許せる人向け。
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カレンダーを見ていて、ふと気が付いた。そういえば、ホワイトデーが近いんだな。バレンタインには愛の言葉と一緒にとびっきりの贈り物をもらっちまったし、これはお返しをしてやらないと、だよな。
ホワイトデーの贈り物といえば、何か白いものとか、それか本人の欲しいものがやっぱり定番だけど、シルバーは何を欲しがるかなあ。
服……に関してはあんまり興味がないみたいだし(せっかく格好いいのに、勿体ないよな)、食べ物……は、作ってもいいけど、それだけじゃ淋しいよな。
とりあえずウェハースとコーンフレークでも買ってきて、簡単なバニラアイスのパフェくらいは作ってやることに決める。でもそれだけじゃ何か味気ないから、何かプレゼントを見繕いに行こうと出かける準備をした。
「デュース、出かけるのか?」
「ああ。ちょっと買い物に出てくるよ」
「俺も行っていいか?」
「なんだ、淋しいのか?」
「……もうすぐ春になる。今はまだ肌寒いが、暖かい季節になったら、君と人間界を歩く機会は減ってしまうだろうから……」
分かったよ、とシルバーの頭をぽんぽんと撫でて、連れていく準備をする。別に、サプライズにこだわりがあるわけでもない。本人への贈り物探しとはいえ、シルバー自身を連れて行ってもかまわないだろ。
「じゃ、準備ができたら出発するぜ」
「すぐに準備してくる」
「車出してるからなー」
そうして僕たちは、店を出て、街中の大きなデパートへと赴くことになった。……近隣の商店でも良かったんだが、やっぱり、多少値が張ってもちょっといいものをやりたいからな。
デパートに着くなり、シルバーが尋ねる。
「買い物、というからスーパーなどの買い出しを想定していたが、良い店に用があるのだな」
「へへっ。今日は特別だからな」
そう言って、シルバーにここへ来た理由を明かす。
「シルバーに、ホワイトデーの贈り物を買いに来たんだ。バレンタインにはチョコと花束くれただろ? そのお返しだよ」
「そうだったのか」
シルバーは驚いた顔をして、気にしなくても良かったというのに、と言った。相変わらず無欲だな。
「僕が贈りたいんだ。大切な人に贈り物をするのは嬉しいことだって、シルバーも知ってるだろ」
「……ああ。では、遠慮なく、受け取らせてもらおう」
だが何を探せばいいのかよく分からない、とシルバーは言う。僕は片っ端から店を見ていくことにした。
一通り店を見てみたあとで、休憩がてらコーヒーショップに入り、めぼしいものはないかと尋ねる。
「そうだな……。これといって気になるものは、まだ、ない。……すまない」
「なんでシルバーが謝るんだよ、気にしなくていいよ。ゆっくり選んでくれ」
「あれもいらない、これも必要ない、では、贈り物のし甲斐がないかと……」
シルバーは無欲な自分に少し落ち込みを感じているみたいだ。困ったな。喜んでほしくて連れてきたのに、暗い顔をさせてたんじゃ意味がないぜ。
「そんな顔するなって。格好いい顔が台無しだぜ?」
むにむにとシルバーの顔をほぐすように揉むと、シルバーは照れたように目を伏せた。
「……愛情を受け取るのは、難しいものだな。注ぐのならば、得意なのだが」
「大丈夫だよ。シルバーはたくさん愛されて育ってきたんだってこと、いつもよく伝わってる。愛情を受け取るのが、下手なんかじゃないよ、お前は」
シルバーは嬉しそうにほほ笑んだ。そしてふと気が付いたように、呟いた。
「……ああ、思いついた。ひとつだけ、欲しいものがある、かもしれない」
「お、なんだ?」
「大切なものを入れておくための、入れ物が欲しいんだ」
それから僕らは、シルバーの希望を聞いて、男性向け小物の置いてある雑貨店へと足を進めた。
「キーケース、なあ。どんなのがシルバーに似合ってて恰好いいかな~」
「デザインはなんでもいいのだが……。今使っている鍵が、すべて入れられると嬉しい」
「今使ってる鍵っていくつあったっけか?」
「ええと。今の家のものと、死神屋敷の合鍵、それと、実家の方の鍵の3つだな」
「じゃあもうちょい余裕持たせて、5つくらいはつけられるケースの方がいいか。んー、どれにしよ」
シルバーの願いは、キーケースが欲しい、ということだった。そして、デザインは僕に選んでもらいたい、と。正直僕はあまりセンスには自信がないが、シルバーに似合うものを選べって言われるならちょっとは自信も持てる!! ……気がする。
世界一シルバーに似合うものを選べるのは僕なんだ、くらいの根拠がない自信を無駄に持ってキーケースを選んでいく。
そうじゃないと、選んでくれって頼んでくれたシルバーに失礼な気がするからな!
少し迷ったが、結局機能性も良さそうで、シンプルに格好いい革製のキーケースを選んだ。せっかくなので、留め金は銀のやつを。
「これなんてどうだ?」
「いいと思う。では、それにしよう」
「分かった、これだな」
そう言って僕はブラックのキーケースを手に取ろうとする。するとシルバーが、待ってくれ、と言った。
「隣の、ネイビーブルーの方にしてもいいだろうか」
「いいぜ。こっちの色が気に入ったのか?」
「……なんとなく、君を思い出すから」
だからこちらがいいんだ、とシルバーは言う。僕は、むずがゆくなって、会計行ってくるとその場を逃げ出すように後にした。
一応レジでラッピングしてもらって、キーケースを持ち帰る。
「すぐに渡してもいいんだけど、あとででもいいか? バレンタインの時、シルバーがいろいろ言ってくれたみたいに、ちゃんとお礼言って渡したいからな」
「そこまでしてくれるのか? ……困った。嬉しすぎて、頬が緩んでしまいそうだ」
「緩め緩め。いいことだ」
地下の食材売り場でいくつかの食材を買って(もちろん、バニラパフェの材料もだ!)、家へと帰宅する。
玄関前に勝手に居座っていた野良猫に退いてくれと頼み、部屋の中へと入った。
「じゃ、食事作ったら始めるぞ。シルバーはゆっくりしててくれ」
「落ち着かない。配膳の手伝いくらいはする」
「ったく、いい子だなあ」
シルバーに皿を出してもらい、僕は2人の食事を準備する。そうだ、今日はちらし寿司にするかな。米を冷やしてる間に、シルバーに贈り物も送れるだろ。作るのも簡単だしな。
「よし、決めた」
そうして僕は酢飯を作り始める。今日は何を作っているのかと、シルバーがキッチンを覗き込んでいるのが見えてなんだか可愛らしく思った。小さい子みたいだな、ほんとに。
具材を混ぜた酢飯を冷蔵庫で冷やす。大人しく待っていたシルバーに、もう少し冷やす時間があるから先に、と告げて、改めて贈り物をすることにした。
「はい、シルバー。まずはバレンタインの贈り物ありがとう。嬉しかったから、お返しだ」
「ああ、ありがとう。……ふっ、不思議だな。中身も、貰うことも知っているのに、それでもこんなに嬉しい」
「へへっ。喜んでくれたみたいで良かった。で、僕から言いたいこと、なんだけど……」
「ああ。なんでも言ってくれ」
んん、とひとつ咳ばらいをして、改めてシルバーに向き合う。ここは勝負所だ、しっかり伝えねえと。
「なんていうか……いつも、ありがとう。シルバーが、ふさぎ込んでた僕の世界に来てくれて、毎日、すごく助かってる。僕はちょっと、そりゃ良くねえところとか、面倒なところもあると思うけど……。それでも、シルバーが一緒にいてくれるから、今、なんとかやれてるところもあって……」
だからその、なんていうか。ああ、うまくまとまらないな。もっとちゃんと、きっちり、格好良く伝えてやりたかったのに。
「……ごめん、うまく言えねえけど、本当にありがとう、シルバー。出会えて良かったって、思ってる」
最後の仕上げだと、シルバーの唇にちゅ、とキスをする。シルバーは嬉しそうにほほ笑んで、僕の身体をぎゅっと抱き寄せた。
「困った。君を抱きしめて、ずっと離していたくない」
「へへ。……いいよ、好きなだけこうしてていい」
「ああ、そうする」
冷たい雪のぬくもりが、ずっと僕の身体を包み込んでいた。
どれくらいかそうしていただろう。なんだかむずがゆくなってきて、シルバーに言った。
「……そろそろご飯食べるか?」
「そうだな。名残惜しいが」
最後にぽんぽんと頭を撫でられ、額にキスをして僕は解放される。……シルバーの頭はしょっちゅう撫でてるけど、いざ自分の方がやられてみると恥ずかしいもんだな。
「じゃあ、準備してくる」
シルバーを置いて、食事とデザートを準備しに行った。
シルバーが置いてくれた食器に、ちらし寿司の下地である米を配膳し、上からいろいろと彩りの具を飾り付ける。
桜でんぶに錦糸卵、青さのり。見た目が綺麗になっていくな。
そして、デザートグラスにはコーンフレークを散らして、その上にバニラアイス。ウエハースとクレープクッキーを刺して、簡単なバニラパフェの完成だ。
「今日はずいぶん豪華なんだな」
シルバーが言う。
「特別だ、特別。ホワイトデーだし、白いものも作っとくか、って。まあ、豪華な見た目のわりにはどっちも作るの簡単なんだけどな」
そうか、とシルバーは笑った。
「じゃあ、せーので……いただきます!」
「いただきます」
いただきますの合図で、2人一緒に食事を取る。いつまでもこんな日常が、続けばいいと思った。
食事の後で皿を片付けていると、おもむろにシルバーが話し出す。
「……なあ、デュース」
「ん、どうした?」
「その、……今日のような毎日が、とても幸せで。ずっとこんな日が、続けばいいと思う」
そう思ったから、言った。
照れくさそうなシルバーに、僕は笑って答えた。
「今、同じこと考えてた!」
「ふっ。そうだったのか。……嬉しい」
そうして僕たちは、2人で皿洗いを終えて、隣同士でソファに座る。
どっちから言うでもなく、その手はぎゅっと握り合われていた。
心の底から込み上げてくる気持ちに、幸せって名前がついたような気がした。
(やれやれ。シルバーにお返しをするつもりだったのに、また僕の方がもらっちまったな)
シルバーの肩にぽふりと頭を乗せると、ぐいと肩を引き寄せられた。
*おしまい
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