※キャラ崩壊注意!
※いろんなキャラがポンコツです。なんでも許せる人向け。
以上大丈夫な方のみスクロール↓
迫りくる2月14日。世間は泣く子も黙るバレンタインデーにソワソワし始めている今日この頃。
オレたち1-Aの教室に、突如としてそれは現れた。
「すまないが、デュース・スペードを呼んでもらえるだろうか」
冷静に考えれば、ただ、2年生の先輩が用事のある下級生を呼びに来ただけ。……なんだけど。
何、その手に持ってるやけに豪華な花束は。
どこから見つけてきたのか青っぽい花だけで構成されてて、いやにムカつくアイツを思い出すんですけど。
「デュース、お前に用事だって」
「僕か? 分かった、行ってくる」
仕方なくデュースに声をかけると、すぐにシルバー先輩の元に駆け寄っていった。
皆、突然の先輩の妙な登場に驚きはしたものの、大して気にはしてなかった。先輩の、次の言葉を聞くまでは。
「デュース。いきなりですまないが、まずはこれを受け取ってほしい」
「これって、花束……ですか?」
「ああ。俺の想いを込めたものだ。それで、だな」
先輩はやけに気合を入れた様子で、ふー、と深呼吸をすると、デュースに言った。
「……俺と、結婚してほしい」
「え!?」
デュースにも、そしてオレたち同級生にもさすがに動揺が走る。そもそもお前らそんな関係だったっけ!?
「すまない、緊張して間違えてしまった。今の言葉には誤りがあったので訂正しよう」
なんだ、そうだよね。いくらなんでも結婚とかさ、驚かせんなよ。
「デュース。俺と、結婚を前提に交際してほしい」
……変わってねえよ!
ほとんど意味変わってねえから!!
ツッコミを入れるのにも疲れてきて、デュースの次の言葉を待つ。アイツまさか受け入れるわけじゃないよね? このいきなりのワケ分かんねえ告白を。
「シルバー先輩、気持ちは嬉しいんですけど……」
だよね、良かった。
「その……本当に僕なんですか? 何かの間違いとかじゃなくって?」
「間違いなく、デュース。お前のことだ」
あの人この短時間で何回デュースの名前呼ぶの? 趣味なの?
「間違いなく、僕……」
「ああ、そうだ」
シルバー先輩はやたらと力強く頷く。……なんか嫌な予感してきた。
「……分かりました! その約束、受けて果たします!!」
「お前マジで言ってる!?」
ヤベ、ついにツッコんじまった。もう関わらないでおこうと思ったのに!
「なんだよ、エース」
「お前先輩と付き合ったり好きだとか言ったりしてなかったろ!? いいの!? そんなノリで決めて!!」
「でも、こんな真剣に来てくれたのに、真面目に答えないのも失礼だろ」
オレが聞いてるのはそういうことじゃねえから!
「待て。デュース。もしかするとエースは……」
「エースは、なんですか?」
今度は何を言い出す気だ、この先輩は。
「俺にお前を取られると、ヤキモチを妬いているのかもしれない。お前たちは仲がいいからな」
「そうだったんすか……!? エース、お前も案外可愛いとこあるんだな……」
絶句。
絶句からの、絶叫。
オレのそれは1-A教室に響き渡った。
「なんっでそうなんだよ、このポンコツ共ーーーーー!!」
*
無事、デュースにプロポーズを果たした俺は、ディアソムニア寮にて家族一同に報告をしていた。
「そういうわけで、色よい返事がもらえました」
「そうか、それは良かった」
「うむうむ、何よりじゃ!」
親父殿もマレウス様も、笑顔で聞いてくれている。だが、なぜかセベクだけは頭を抱えていた。
「……何故、お前がアイツにプロポーズなんぞすることになったんだか、思い出せないのだが。聞いてもいいか……」
絞り出すような声で尋ねるセベクに、俺は、分かったと答えて、これまでのあらすじを話した。
~これまでのあらすじ~
・俺がデュースのことを好きだと思った
・好きすぎてこれは結婚するしかないと思い、花束と指輪を作った
・親父殿の指摘により、まだ俺たちは付き合ってないことに気づいたので、結婚を前提にした交際を申し込みに行こうと思った
・1-A教室を尋ね、OKの返事をもらった。エースにヤキモチを妬かれてしまった。
以上がこれまでのあらすじだ。
「ええい、何も分からん!!」
セベクは怒りっぽいな。カルシウムを取るべきだ。コーヒーのミルクを足しておいてやろう。
「僕を馬鹿にしてるのか貴様!!」
より怒られてしまった。
「どうしたセベク、何が気に入らない?」
「若様……」
マレウス様の言葉に、セベクは少しばかりの落ち着きを取り戻す。
「気に入らない、というか! よく分からないのです! 恋愛というのはもっと、なんというか、気持ちのすり合わせに、手順や段階を踏むべきものであり……コイツはそれをすべてすっ飛ばしている!!」
「別にいいじゃろ。最終的に結末が同じなら、多少順番が入れ替わったところで些事じゃ!」
「良くありません!」
「ふふ、セベクは純愛小説が好きだからな。きっと、お前にもそのような恋愛をしてほしかったのだろう、シルバー」
「なんだ、そうだったのか。俺たちに手本となってほしかったのなら、早く言え」
「断じて違うっ!!」
そんなセベクの様子に、俺は思い至った。なるほど、そういうことか。
「ふっ、分かったぞ。さてはお前もエースと同じで、俺が取られると拗ねているんだろう。安心しろ、デュースと結ばれたからと言って、お前と疎遠になることはない」
「案ずるな。そのことについてはまったく心配していない。むしろできる限りデュースに引き取ってもらいたい」
「そう憎まれ口を叩かなくても、分かっているからな」
「絶対に分かっていないだろう!!」
「では、俺が遠慮なくデュースとの時間を過ごせるように、そんなことを言ってくれているのか……? セベク、立派になって……」
「ええい、話の通じん奴め!!」
親父殿とマレウス様は、もはや恒例と化した俺たちのやり取りを気に留める様子もない。
「して、式典の日取りはどうするのだ?」
「早ければ3週間後、2月の14日にでも、と思います。やはり、愛の記念日ですから」
「おお、良いのう。しかしそれではタキシードの仕立てや会場の予約も間に合わんのではないか?」
「式まで挙げるのですか!?」
「何を言ってるんだ、セベク。挙げるに決まってるだろう。結婚を前提とした交際だぞ?」
「それにしたって、まずは一年くらい交際期間を設けてからではないのか!?」
なるほど。セベクの言うことも最もだ。早ければ早いほど良いと思ったが、これより3週間では準備期間が足りないのも確かだ。
「では、一年後の2月14日を本挙式としましょう」
「1年か。まあ、瞬きの間だな。タキシードの仕立てには十分な時間であろうが」
「シルバーは良いんか?」
親父殿に尋ねられ、俺は答える。
「はい。本挙式は一年後でかまいません。代わりに、披露宴代わりの仮挙式、いわば予行演習のようなものを3週間後に執り行います。これならセベクも文句はないでしょう」
「うむ、めでたいことは何度あっても良いからな! いいと思うぞ」
「それではしばらく、手続きに忙しくなりそうだな」
「……僕の言いたいことが何一つ伝わっていない……!!」
祝福してくれる親父殿とマレウス様とは裏腹に、何故かセベクは最後まで不服そうだった。
*
「そういうわけで、仮にはなるが式典の日取りが決まった。お前にも協力してもらいたい」
「えっ!? もう結婚式するんですかっ!?」
あまりに急な話に、僕はびっくりする。
「確かに、お前を交えて話すべきことではあったかもしれない。……嫌、だろうか?」
そう言って目を伏せる先輩に、僕は――
「……いえ! こういうのも、スピードが命なんですよね、きっと!! 早ければ早いほどいいと思います!!」
「デュース……! ありがとう!!」
「いやそうはならねえだろ!!」
どこから湧いてきたのか、僕とシルバー先輩の会話にエースが割り込んでくる。
「言っとくけど、オレが先にお前の隣にいたからね!? シルバー先輩の方が突如として現れたんだからね!?」
何か言ってるが、聞こえないふりをしておこう。
「それで、式についていくつか聞いておきたいことがあるのだが」
「オレのことガン無視? いいよ、勝手にツッコミ続けるから。続けて?」
「タキシードは何色がいいだろうか。基本的には、茨の谷では黒色にするのだが……」
「黒地でも僕は大丈夫です! でも、ひとつワガママ聞いてもらえるなら、その……銀糸が使いたいかな、って」
「銀糸? 何故だ?」
「……ほら、やっぱりシルバー先輩との結婚式、ですし! それっぽいかな、って……」
エースが呆れたため息を吐く。わ、悪かったな! 僕だって、らしくないと思ってるよ! でも、別にいいだろ。結婚するんだから!
「デュース。それはとてもいいアイディアだ。必ずそうしよう」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。約束する」
他にも、予行演習のお菓子はクローバー先輩に頼んでみようだとか、デザインの相談はシェーンハイト先輩にもしてみようとか、日時や招待客のリストの管理、料理や会場の手配なんかをアーシェングロット先輩やローズハート寮長にも手伝ってもらおうということで話はまとまっていった。
「ではな、デュース。当日まで……いや、当日からも、よろしく頼む」
「はいっ! よろしくお願いします!!」
シルバー先輩と別れた後、エースがガックリと落ち込む。
「お前らマジで結婚するの……? てか、結婚ってマジで言ってる……!? あと、先輩たちが手放しに協力するとでも思ってんの!? こんなふざけたことに!?」
「いつまでぶつくさ言ってんだエース、なっちまったもんは仕方ないだろ」
「仕方なくねえけど!? ていうかお前、シルバー先輩と結婚してどうするわけ!? 好きなの!? 赤ちゃんでも生むの!?」
そう言われて、僕はつい真っ赤になる。
「あ、赤ちゃんなんて、そんな、まだ先の話だろ……っ」
「言っといてなんだけど、生めねえからな!? 男だよお前!! あー、もうオレ知らね。式にはお菓子目当てで参加してあげるから、あとは勝手にやってて!」
好き勝手言って、エースは去ってしまう。僕は、エースに言われた言葉が、心に刺さっていた。
次の日も、シルバー先輩はやってきた。
「デュース、今日も相談が……どうした? 暗い顔をしているが」
「シルバー先輩……」
僕は、先輩に向けて素直に自分の心のうちを打ち明けた。
「実は昨日、エースから、お前じゃ先輩の子どもは生めないよ、って言われて、その通りだなって……」
「何故そんなことを……」
「……先輩の子どもも生めないのに、僕、先輩と結婚していいのかな、って思っちゃって」
シルバー先輩は一呼吸おいて、僕の肩をそっと抱き寄せた。
「マリッジブルー、というやつだな。結婚とは大事な選択だ。大きな決断を前に、未来を案じて心が落ち込むこともある。だが……大丈夫だ。傍にいる」
「先輩……」
「まだ、これは渡していなかったな。傍にいられないときは、これを俺だと思ってくれ」
そう言って、シルバー先輩は僕の左手の薬指にひとつの指輪を通す。僕の目の色と同じ宝石のついたそれは、きらきらして、シルバー先輩の瞳のようだ。
「ふっ。……くちづけの練習も、先にしておくか?」
「……た、確かに、本番いきなりだと、上がっちまうかもしれないですし、ね……」
そんな言い訳をして、僕はシルバー先輩の唇を受け入れた。
受け入れ……。
「んっ!?」
ちょっとしたキスだけで済む、と思ったのに。
すごい、ぢゅって、吸いついてくる……!
(ちょ、ちょっと待って、シルバー先輩……っ!!)
「は、ん、んん……っ、ん、むっ」
ちょっと唇が離れたかと思うと、わずかに息を吸い込んでまたすぐさま口をふさがれる。口の中になんかぬるってしたものが入ってきて、舐めまわされてる感じに、息が苦しくて、頭の中ワケわかんなくなって、それで涙目になっていると、やっと解放してもらえた。
「は……っ、すまない。つい、逸ってしまった。お前とくちづけられると思うと……」
「ほ、本番でもこんな風にするんですか……?」
「いや……しない。本番では気をつける」
だから今のうちに、とまたキスの雨を降らせてくる、どころか、抱きしめて首にまでキスをしてこようとする先輩を、まだダメですよこんなところで、と慌ててどうにか止めていれば、不思議と、漠然と感じていた不安はなくなっていくような気がした。
(僕のこと、ほんとに好きでいてくれるんだな……)
(うん、大丈夫だ。僕は……この人となら)
そして、仮挙式当日。シェーンハイト先輩とオルト所属する映画研究会協力の元、タキシード衣装をデザインし、
「2人ともおめでとう! 人間の結婚式に出るのはこれが初めてだから、僕も嬉しいよ!」
「結婚式っていうのは、一般人にとって自分が主役になれる唯一の式典よ。演習といえど、衣装に負けないよう堂々としていることね」
会場と料理の手配をしてくれたのは、アーシェングロット先輩率いるモストロ・ラウンジの面々。
「この度はおめでとうございます! 始めにお話を伺ったときは、何かがどうかしていると……いえ、大変良いお話を頂いたと思っておりまして、今もその気持ちは変わっておりません!」
「本音が出てますね、アズール」
「隠せてないよ、タコちゃん」
お菓子やウェディングケーキ、招待状や招待客リストなんかの作成を手伝ってくれたのはローズハート寮長とクローバー先輩、ダイヤモンド先輩だ。エースはローズハート寮長から「準備に参加しない者は、式典の料理を食べる資格はないよ」と怒られるまで、あんまり手伝ってくれなかった。
「綺麗だよ。黒いタキシードがよく似合っている。お幸せにね、デュース」
「デュースももう結婚する年か……。いや、先を越されるとは思ってなかったよ。感慨深いな」
「そのタキシード、銀の装飾がマジ映えてる! 今日一番凛々しいよデュースちゃん!」
「……やっぱまだ納得いかないのオレだけ!? てかなんで揃いも揃って先輩たちは疑問なくノリノリなの!?」
他にもいろいろな人が協力してくれて、僕たちの仮挙式は無事、粛々と執り行われた。
「それでは2人とも、誓いの愛のキスを」
神父役のドラコニア先輩の言葉で、僕はシルバー先輩の瞳をじっと見つめる。
「大丈夫だ。緊張しなくていい。さあ、目を閉じてくれ。俺の想いを、受け入れてくれるのなら」
恥ずかしまぎれに目を閉じると、シルバー先輩は僕にひとつキスをくれ、会場は拍手の輪に包まれる。
披露宴の会場に出ると、みんな思い思いの料理を手に取りながら、祝いの言葉をかけてくれた。
「……ふん、お幸せにな!」
シルバー先輩の話では相当へそを曲げていたというセベクも、いつからか協力的になってくれたらしい。たくさんの料理を頬張りながら、憎まれ口を叩きつつもお祝いを述べてくれた。
会場を見渡していると、やがて先輩がにこりと笑って僕の肩に手を置く。
「ブーケトスだ。友人の方に向かって、思い切り投げるといい」
僕はにっと笑って、一年生が溜まっている方に狙いをつけ、思いっきりブーケを投げた。
「受け取れよ、お前ら!!」
その結果、ブーケが手に入ったのは……
「ここ貰うの絶対オレじゃねえだろ!!」
……エースだった。
偶然にも、奇跡的に綺麗な軌道を描いて、エースの手にすっぽりとブーケは収まった。
いらねえからお前にあげる! と言って隣にいるエペルにブーケを押し付けるエースは、『なんで僕に……っ、あっ、エースクン、ひょっとして僕のことを……!?』なんて冗談でからかわれ、違うだろ! まさかオレもこのノリで結婚させるつもり!? とツッコミを入れている。
そんな同級生を眺めていると、シルバー先輩に声をかけられた。
「デュースも混ざってこなくていいか?」
「へへっ。あとで混ざります。でも今はもうちょっと、ここにいようかなって」
「そうか」
シルバー先輩は僕の手を取り、くちづける。
「大切にする。一年後の式も、楽しみにしていてくれ」
「ははっ。はい! 仮でこんなに楽しいんだったら、一年後もきっと、楽しいですよね!!」
笑って、シルバー先輩の手をぎゅっと握る。
ここだけの話――本当は最初、戸惑ってた。いきなり結婚とか言われて、どうすべきか分からなくて。とりあえず直感でいいことだって思ったから、OKした。でも。僕の直感は、あながち外れない。
それは今、目の前にある光景と、僕の中に湧き上がってくるなんだか熱い気持ちが証明してくれていると思うんだ。
だから……
「みんな、今日はありがとな!」
僕は、今日からのことを、めいっぱい楽しもうと思う!
……隣で笑ってくれる、シルバー先輩と一緒にな。
*おしまい
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