その目に映るのは※オマケ

 デュースと付き合うことになった翌日。俺に話があるとのことで呼び出された。
「先輩、俺、先輩と付き合うなら筋通しとかなくちゃいけないことがあるんです」
「なんだ?」
「……以前、星送りの時に先輩にはちょっと話しましたよね。昔は喧嘩ばかりだった、って。その頃、喧嘩だけじゃない。僕は悪いこともしていたんです。それこそ、先輩の前ではとても言えないような。……だけど、黙ってるのはフェアじゃない。それに、昔つるんでたヤツらが、今でも僕に絡もうとしてやってくることもあります。そのときに、先輩をわけもわからず巻き込んだりしたくないんで。……嫌な話になるかもしれないけど、聞いてくれますか」
「分かった」
 それから場所を移動して聞いた話は、デュースがしてきた昔の所業だった。近所迷惑なほど大きな音でマジカルホイールを運転したり、魔法が使えない人間を馬鹿にしたり、ハロウィンに飾り付けてあるカボチャを壊して回ったり。……もしその場に俺がいたら和解は不可能であろうと思うほど、ひどいものだった。
「……すいません、幻滅しましたよね。カッコつけたこと言っといてこんなんじゃ……。でも、言っとくべきだって思ったんです。たとえそれで嫌われても、それは俺がしてきたことの責任が巡ってきたんだ、自業自得だって思うから。何も知らない先輩に、騙すような真似して付き合うより、本当のこと話してフラれた方がよっぽどいい、って、そう思ったんです」
「デュース」
 呆れたことだ。昨日は俺にあれだけ迫ってきたくせに、今日はフラれたいとは。人が吹っ切れた途端、困った後輩もいたものだ。
「は、はいっ! なんでしょう! お叱りならいくらでも……」
「……いや、叱りたいわけじゃない。確かに、喧嘩も、してきたことも良くない。だがそういったことは結局、お前とされた相手の問題だから、俺がどうこう言いすぎるものでもない。とはいえ俺はこういう性格である以上、今話してもらったことについて、相手に理があると分かっていてお前が非難されることがあっても庇ってはやれないだろう」
「それは当然です! むしろ庇われたりしたら、それこそ情けないっすよ!」
「それならば、過去の所業については……俺とお前の間については、問題ない。もし過去の仲間とやらに絡まれたとしても、ある程度は自分でどうにかできるだろう。むしろ、どうにかできない程度の鍛錬などしていないからな。つまり、今問題になっているのは、そういうことをしてきたお前を、俺が受け入れられるのかどうか、という話だが……」
「……っす。一思いに言っちまってください」
 デュースは頭を下げる。
「デュース、頭を上げろ。お前が頭を下げるべきは俺じゃないだろう」
「……っ、はい」
 デュースは顔をあげる。真剣な目だ。何を言われる覚悟も決まっている、ということだろう。過去にやってきた所業について、確かな反省の色が見える。
「では、お前の過去についてきちんと知った。それなりに衝撃もあった。その上で言わせてもらうが――俺は、今さらお前を手放せない」
「えっ?」
「確かに、少し前の俺だったらお前の所業を知って、幻滅もしただろう。だが、今の俺はお前が努力してきたことを知っているし、何より……情が湧いてしまった、と言えばいいのか」
「先輩……」
「過去にしてきたことは、水に流せない。しかし、今、お前が反省し、心を入れ替え、努力していることも、また簡単に水に流せることじゃない。……俺がそういう、ひたむきなお前に惹かれたこともだ。だから俺は、お前がしてきたことを知った上で、受け入れようと思う。しかし、それは許すということではない。先ほど聞いたハロウィンの話のように、これからもお前には過去にしてきた行いが巡ってくることがあるだろう。そのときに、お前が逃げずに己の罪に向き合うというのなら、俺は隣で見守りたいと思う」
「……いいんですか。そんな、都合がいい……。僕は、僕なんか、誰かに愛されていい、そんな風に受け入れてもらえるような人間じゃないって、ずっと思ってたのに」
「何を言ってる。確かに善行を積むに越したことはないが……。どんな悪行を重ねようと、愛されるべき資格のない人間はどこにもいない。その人間に、愛してくれる親や、そのような大切な存在が一人でもある限り。少なくとも俺はそう言われて育った。だから、デュース。もう一人で泣くな。これはある意味残酷かもしれないが、お前がやったことはなくならない。良いことも、悪いことも。だからこそこれからはやってきたこと以上の良いことを積み重ねていかなくてはならないし、お前が間違いそうになったら、今度は俺が正してやる」
「……先輩、すいません、ありがとうございます」
「ああ、デュース。……これからもよろしく、それでいいだろう?」
「はい、これからもよろしくお願いします!! 僕、もっと、今よりもっと頑張って……優等生になって、警察官になって! これから先、僕みたいな後悔をする人間を、減らしてみせます!」
「立派な夢だ。精進しろ。お前がその気持ちを忘れない限り、俺も応援することを約束しよう」
「……はい!!」
 デュースは涙を拭い、力強くうなずいた。突然のことで俺もそれなりに衝撃ではあったのだが、感じたことはそのままに伝えた。だからもう、俺たちは大丈夫だろう。親父殿はこのことに対してなんと言うかわからないが、今ここで口を出さなかった以上俺の決定を尊重してくれるはずだ。青空を見上げ、以前の俺なら受け入れられなかっただろうデュースの過去を受け入れることができたことを噛みしめる。やはりデュースと共にいることは、俺にとっても足りないものを見つけさせてくれるのだろうと、まだ少し苦い想いを飲み込んだ。
*終わり

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