スペードのタトゥー

・デュースのモブレ(モブからのレ〇プ的な性行為)描写があります。
・ネタバレ(シルバーのユニーク魔法描写)が含まれます。

大丈夫な方のみスクロールでどうぞ↓

 

 

 

 それは、事に及ぼうとしたときのことだった。
 デュースを押し倒して、顔を見ると、それは尋常ではなかった。明らかに、俺を見る目が、怯えていた。
「デュース」
 怖いのかと手を伸ばして頭を撫でてやろうとすると、その手をぱしりとはたき落とされた。
「デュ、デュース?  どうし、たんだ?」
「ごめんなさい……っ、ごめんなさい、僕……っ、なんてことを……っ」
「俺なら大丈夫だ。デュース、落ち着け」
 声をかけるが、デュースは落ち着かない。もしやこの体勢が良くないのかと思い、俺は一度デュースから体を離し、互いの身体を起こしてやることにした。
「大丈夫だ。何もしない、怖くない。落ち着いてくれ、デュース」
 身体を起こさせたデュースを抱きしめ、背中をぽんぽんと叩くようにさする。ぜえ、ひゅう、と過呼吸気味になっていた呼吸はだんだんと落ち着きを取り戻しつつあった。
「……大丈夫か?」
「は、い、なんとか……」
 デュースはひとまず返事を返せるくらいには落ち着いたようだ。
「そうか……驚かせて、すまなかった」
「そんな、僕の方こそ、先輩にひどいことしちゃって……ごめんなさい、手、痛くないですか」
「平気だ。それよりも……俺は、お前を怖がらせてしまったか?」
 違います、とデュースは言った。
「先輩が悪いんじゃなくって、これはただの、僕の自業自得で……」
「……何か、事情があるのか?」
 デュースはびくりと肩を震わせ、顔をわずかに青ざめさせた。
「言いたくないことなら、無理にとは言わない」
「い、いえ……、先輩を傷つけたままなのは、嫌なので。何があったか、ちゃんと話します」
 デュースの口から語られたことは、こうだった。過去、素行が悪く喧嘩ばかりしていた頃に、とあるグループと揉め事になった。そのときに下手を打って捕まり、無理やり性的な行為……半ば暴力的ともいえる行為に及ばれたのだと。
 幸か不幸かそこにいた者たち以外には誰にもバレなかったため、家族にも友人にも、誰にも相談せず今日の日まで来たのだという。
「……その、先輩の前に恋人とかいなかったので、こんな風になるって自分でも分かってなくて……だから、先輩とのことが嫌だったってわけじゃないんです。それだけは、分かってほしくて」
 俺は話し終えたデュースを再び腕の中に抱きしめた。けしてデュースが恐ろしくないように、いつもよりもずっと、弱くした力加減で。
「そうか……誰にも言えないのは、辛く恐ろしいことだったろう。お前の行動に落ち度があったとしても、その男たちの行為はやりすぎだと言える」
「シルバー、先輩……」
「……腸が煮えくり返る思いだ。先ほどの俺は、何も知らず、お前を怯えさせてしまった」
 恥じている。デュースの過去の素行不良については知っていたが、していたこと、されたこと、そのどちらもについて、俺は全貌を知っていたわけでは無い。
 しかしデュースは俺を軽く押し返した。だが、その力は強いものではない。
「シルバー先輩が気に病むことじゃないですよ。さっきも言った通り、僕がそういう目に遭ったのは、そういうルールの世界に自分で落ちてった僕の、自業自得なんだ。だから、同情とかはいりません」
 でも、とうつむき加減のままデュースは続けた。
「……あの頃のこと、馬鹿だったって思って。ちゃんとした人になろう、って思って、毎日がむしゃらにやって。それでようやく、好きな人とひとつになれるかもって思ったのに、こんな風になるのは……」
 デュースの拳が、俺の制服の胸元をぎゅっと強く握った。
「悔しい、です。僕、シルバー先輩のこと、拒みたいわけじゃないのに……!」
「デュース……」
 少しだけ躊躇ってしまったが、迷いを振り切り手を伸ばしてデュースの頭に触れる。今度は、拒まれなかった。
「……正直なところ。そうした過去の繊細な事情でお前が事を恐れているというのなら、無理にどうこうするものではないと、先ほどまでは考えていた」
 だが、と続ける。
「お前が、そうした過去を乗り越えてでも俺と触れたいと思ってくれているのなら……俺に出来ることは、力を尽くそう」
「シルバー先輩……」
「少しずつだ、デュース。ほんの少しずつ、慣れていこう。……時間はどれだけかけてもいい」
「いいんですか。僕……、僕、そんな風にされたような奴なのに。先輩が初めてにもならないのに、そこまでしてもらって……」
 デュースの手を握り、額をコツンと当てる。
「むしろ、逆だ。そんな風にしかされたことが無いのなら、とびきりの優しさを俺が教えてやりたい。初めてではないと言うのなら、最後の男になれればいい」
「先輩……」
 デュースは感動した勢いなのか、自分からぎゅっと抱きついてくる。……自分から触れるのは平気なようだな。
「好き、好きです、シルバー先輩。僕、先輩とひとつになりたい。今すぐには無理でも、ちゃんと、乗り越えて」
「……まったく。あまり殺し文句を言わないでくれ。困ってしまうだろう?」
 デュースの髪を再びぽんぽんと撫でる。へへ、とデュースがいたずらっ子のように笑って、そして、ここから俺たちの克復の日々は始まった。
 
「ちょっとずつ乗り越える、って言っても……どんな風にしていけばいいんだろう」
「そうだな。まず、何に怯えているかを知る必要がある。先程は、俺がお前に覆い被さるような形になっていたが……」
 デュースの様子をちらりと見る。思い出したのか、それだけでも気色が悪そうだ。
「……大丈夫だ、再現したりはしない」
 デュースの頬に手を触れると、ほっとしたようにデュースは安堵のため息をついた。
「……すいません、手間かけて」
「必要なことだ、気にするな」
 デュースを十分に落ち着かせ、いろいろと確認をとる。
「部屋にふたりでいるぶんは平気か?」
「平気です」
「カギをかけてみても大丈夫か?」
「大丈夫、みたいです」
「キスは平気……だったよな」
「……は、はい。別の意味では大丈夫じゃないかもしれないですけど……」
 なら、と俺はひとつの提案をしてみる。
「俺は傍には行かないから、試しに俺のベッドでひとりで横になってみてくれ」
「いいんですか?」
「ああ、試して欲しい」
 お邪魔します、とデュースは俺のベッドで横になった。そのデュースの姿に少し心にざわめくものを感じ、それを律する。今はまだそのときではない。まだしまっておけ、俺。けして今、デュースに邪な気持ちを悟られるな。それがアイツの恐怖を思い出させてしまうかもしれないのだから。
 デュースの様子を見ると、落ち着かなさそうに寝転がっている。
「どうだ?」
「……えっと。怖くはないです。先輩の匂いがして、落ち着かないですけど……」
 ……可愛い事を言わないで欲しい。己を律するのが大変なんだ。
「なら、少し端に避けてくれ」
 こうですか、とデュースは人ひとり分のスペースを空ける。その空いたスペースに、まずは腰かけてみた。
「ベッド脇に腰かけてみたが、これは恐ろしいか?」
「えっと……。ドキドキしますけど、怖くは無いです」
 なぜコイツは俺を煽るようなことばかり言うのか。心頭滅却して次の確認に移る。
「なら、これはどうだ?」
 とさり、と音を立ててデュースの隣に寝転び向き合う。驚いたデュースの丸い目が目の前にあって、可愛らしいと思った。
「……こ、わく、ない、です……」
 近い距離が恥ずかしいのか、デュースの目が泳ぐ。あまりにも可愛らしいので、手を伸ばすと、ぎゅっと目が閉じられた。
 お互い横たわったまま、けして覆い被さる形にはならないように、唇を寄せ合うようにして口づける。この形ならデュースも怖くはないようで、唇を離せばほう、とうっとりした吐息を吐いていた。
「今日のところはここまで、だな。少しずつ、こうした触れ合いに慣れていけばいい」
 デュースの頬に手を触れさせれば、はい、と答えて手が重ねられた。その手の暖かさに、俺はだんだんと意識が遠くなっていくのを感じた。

 *

「シルバー先輩、寝ちゃった……」
 シルバー先輩の頬をつつく。起きない。すやすやと寝息を立てるシルバー先輩の綺麗な顔を見て、不思議に思う。僕はどうして、この人のことを怖いなんて思ったんだろう。
 自分からくっつくのは平気みたいだし、と、すすす、と眠るシルバー先輩の腕の中へとこっそり近づいた。暖かい。いつも、シルバー先輩にぎゅっと優しく抱きしめられるときのあの温度と一緒だ。
「……へへっ。今だけは、僕だけのシルバー先輩だぞ、なんちゃって……」
 シルバー先輩には、もし俺がお前とふたりのときに眠ってしまったら好きにしていいぞと言われている。だから、こんな風にシルバー先輩には内緒でこっそり自分からいちゃいちゃすることはよくあった。
 暖かい。シルバー先輩の腕の中は、わずかにコーヒーとミントの香りがして、落ち着く。少しだけ眠気が来て、僕も一緒に眠ってしまおうかとうとうとしながら瞼を閉じた。

 *

 うたた寝の夢を渡った先で見たのは、まさしくデュースが話した、思い出したくもない過去だった。
 幾人もの男が、まだ髪を金に染めていた頃のデュースを取り囲み、その衣服を乱暴に脱がせ、次々と彼らのものを口に下にと容赦なく挿入していく。話としては聞いていたものの、実際にその光景を目の当たりにして、尚更怒りが立ち上った。

 俺は、夢の中で自分を殴り、急いで目を覚ました。こんな夢、長く見せていたくはない。急いで起きて、起こしてやった方がいいと思った。いつの間にか俺の腕の中にいた、苦しそうな表情をし、涙を流しながら眠るデュースの肩を、怖がらせないようにそっと揺さぶった。
「デュース。起きろ」
「ん、あれ……シルバー先輩?」
 ぱちぱちとデュースは瞼を開閉し、濡れた目をこする。
「あれ、僕……やだな、悪い夢見たみたいです。せっかく先輩と寝てたのにな」
 はは、とデュースは笑う。俺は自分がまた眠らないようにと身体を起こし、ベッドから降りた。
「デュース。こっちに来い」
 手招きをし、デュースを呼び寄せる。素直にデュースが俺の目の前に来ると、その身体をけして怖くないようにと優しく抱きしめた。
「シルバー、せんぱい?」
「……お前の、夢を見た」
 デュースには既に、俺のユニーク魔法の詳細については話してある。だから、この一言ですべてが伝わったようで、デュースは俺の腕の中で小さくちぢこまった。
「やだな、見られちゃったんですか……。あまり、昔の僕のこと見られるのは恥ずかしいな」
「すまない。出来るだけすぐに起きる努力はした」
「いえ、先輩が悪いってわけじゃないので……」
 そう言いながらも、デュースの身体はわずかに震えている。俺は、デュースの背中をさすり、頭を撫で、ただずっと抱きしめていることしかできなかった。それでもデュースは俺に身体を寄せて、安心します、と言ってくれた。俺が、心の支えになっていればいいのだが。

 *

 それからも、デュースと過ごす日は出来るだけ俺が覆いかぶさるような形になったり、デュースに影を落とす姿勢にならないように気を付けた。だが、恋人としての接触が減るのを淋しがっていたようなので、それならばと事前に実験しておいた添い寝や、座しての姿勢からの接触だったり、デュースから近づいてもらったりと工夫をしての接触をするようにした。
 今のところ、この作戦はうまくいっている。……添い寝すると、俺が必ず寝落ちしてしまうことを除けば、だが。
 もちろん、回避だけでは始まらない。克服のため、デュースが俺に慣れるように、添い寝の際に少しずつ角度をあげていくようにもしている。服装を少しずつ薄くしていくようにも、だ。それが功を奏したのか、今度の逢瀬ではシャツとズボンだけで横たわるデュースに顔を覆いかぶせるようにしてキスをしても、恐れさせなかった。克服を始めてから、幾度目かの逢瀬のことだった。
「今、僕……、キス、できましたよね?」
「ああ。この角度まで近づいても、平気になってきたみたいだな」
「……やった……! シルバー先輩、もっとキス、してください!」
「ああ。……また恐ろしくなったら、すぐに言ってくれ」
 そうして身体をベッドに横たえたデュースに、何度も触れるだけのキスをする。だが、やがてそれだけでは物足りなくなったのか、デュースが長く深いキスをねだりはじめた。
 デュースが恐ろしいと感じていないのなら、と俺はねだられるままにキスを続ける。やがて二人の息が上がり、頬が上気しはじめた。今ならいけるだろうか、と、デュースの唇を舐め、舌を差し入れようとする。デュースは迷いながら、それを受け入れた。
 デュースの口の中を一通り味わい尽くして唇を離すと、互いの唇に糸が引いた。デュース側のそれを親指で拭ってやると、デュースはうっとりした上目遣いでこちらを見つめた。
「先輩。僕、今なら……」
 ごくり、と喉が鳴った。だが、まだだ。この後も、やはり駄目だとデュースは恐れてしまうかもしれない。だから、俺は、出来る限り、俺に思いつく限りの理性と、優しさと、穏やかさを持って、デュースに触れることにした。
「分かった。だが、やはり、できるだけ負担をかけないようにしたい。お前の心にも、身体にも。だから……」
 デュースの身体を起こし、己の膝に乗せる。起き上がり、向き合った対等な状態なら恐ろしいことは少ないだろう。
「この姿勢から、始めていいか?」
「……は、はい。でも、恥ずかしいので、あんまり、顔見ないで下さい……」
「それは、できない相談かもしれないな」
 真っ赤な顔でうつむくデュースに、下から口づける。また深いキスをすると、デュースは気持ちよさそうに目を細め、ん、と声を漏らした。
 猫を撫でるように喉元をくすぐると、デュースはくすぐったそうな笑い声をあげた。それを可愛いと思いながら、撫でたのとは反対側の鎖骨にくちづける。
 ちゅう、と強く吸って痕を残すと、デュースはそれをなぞって嬉しそうにほほ笑んだ。
「……へへ。シルバー先輩のものって感じがする」
「まったく、お前ときたら……あまり可愛いことばかり言ってくれるな」
 そのまま、白い肌にキスを落としながら、様子を見てデュースのシャツのボタンをひとつひとつゆっくりと外していく。デュースは初めて事に至る程度の緊張はしているが、大きな怯えはないようだ。
 シャツの下からデュースの腰や背中を下から上にと指先で撫でていくと、デュースは体を小刻みに震わせた。
「ん、くすぐったくて、ぞくぞくする……」
「痛みや不安はないか?」
「……気持ちいい、です」
「ふっ、そうか」
 デュースの身体を撫で続け、尻を持ち上げて膝で立たせたデュースの腹や臍のまわりにキスをする。
「や、もう、くすぐったい……っ、あっ!」
 腰まわりに吐息がかかるのがくすぐったいようで、足を震わせて耐えるデュースがやがてバランスを崩して後ろに倒れる。
 俺は咄嗟にそのデュースを庇おうとして手を伸ばし、うっかりベッドに押し倒す姿勢になってしまった。
「あ……」
 デュースの目に、怯えの色が映る。しかしデュースはぎゅっと目をつぶり、少しの間を置いてそれを開くと、自ら俺に手を伸ばしてきた。
「シルバー先輩。好き……好きです」
「デュース……、大丈夫、なのか?」
 頬に手を触れさせ尋ねれば、デュースはほほ笑んだ。
「確かに、倒れた瞬間はちょっと怖かったです。でも、思ったんだ。目の前にいるのは、アイツらなんかじゃなくて、とびきり優しいシルバー先輩なんだから、って。だから……もう、大丈夫なんです。シルバー先輩となら、きっと」
「デュース……」
 引き寄せられるように、デュースの唇にキスをする。
「俺も、好きだ。お前のことが、大切で……こんなにも愛おしい」
 何度も、何度も。あの日できなかったキスの続きを、優しく触れて繰り返す。俺の持ちうる限りの優しさが、デュースの傷を癒せたというのなら。もっともっと、治してやりたい。忌まわしい過去の悪夢を、暖かな夢に塗り替えてやりたい。
 姿勢を倒してから十度目のくちづけをしたころ、デュースの目はぼうと俺を見上げていた。

 *

「ん……」

 僕の口からは、気持ちよさそうな声が勝手に上がっていく。

(なんだ、これ。シルバー先輩のキスも指先も、ぜんぶ、触ったところからとろけてくみたいだ。やっぱり、痛くて苦しくて、悔しいだけだったあのときとは全然違う……)

 シルバー先輩の手が、ずっと僕の身体のあちこちをマッサージするように撫でてくれている。でも、優しいこの人はまだ決心がつかないのか、僕の下半身には、足や太ももにすら全然触れようとしてこない。だから、僕はちょっとだけ勇気を出すことにした。
「シルバー先輩」
「……なんだ?」
 声をかけると、律儀に止まってくれるシルバー先輩の手を取り、自分の太ももへと持っていく。
「……こっち側も、触って大丈夫です。上と同じように、いっぱい、撫でてくれますか……?」
「……分かった」
 シルバー先輩は一言返事をすると、そのまま僕の足を撫で始めた。かと思うと何を思ったのか足の裏をくすぐられ、僕は笑ってしまう。
「や、やあ、くすぐったい……っ!」
「ふっ、すまない。少しいたずらをした」
「もう……」
 なんだか可愛いイタズラだ。シルバー先輩でも、こんなこともするんだな。そう思うと同時に、少しほっとした。シルバー先輩も、この行為を楽しんでいる。それが伝わってきたから。シルバー先輩は僕に気を遣ってばかりで、疲れたりするんじゃないかなって思ったから。
 そんなことを考えていると、シルバー先輩は難しく照れた顔をして、僕にいいか、と尋ねてきた。はい、と返事をすると、シルバー先輩の手が布越しに、やっぱり優しく僕のものに触れてきた。
 まずは指先で、なぞるようにそっと上下に触れられていく。僕の方がじれったくなってしまうくらい、シルバー先輩は慎重に僕に触れていく。
 やがて、シルバー先輩の手全体が包むようにやわやわと僕のものを握った。
「ん……」
 ずっと、シルバー先輩の視線を感じる。器用なことにシルバー先輩は僕のものをいじりながらも、僕の様子を逐一観察してるみたいだ。大事にしてくれてるのは分かるけど、僕は繊細な女の子とかじゃないんだから、ここまでされるのは少し恥ずかしい気もする。
 そんなことを考えてる間にも先輩の手はちょっとずつ僕のものを揉んだり撫でたりしていて、繰り返される優しい刺激に僕はすっかり焦れてしまう。
「先輩、もう、直接……」
 少しだけズボンを自分で下げながら言うと、残りはシルバー先輩が下着ごと脱がせてくれた。
 うう、好きな人に初めて見せる裸だ。恥ずかしい、けど、また、たくさん触って欲しい。そんな気持ちが、僕に膝を閉じた足を少しだけ開かせた。
「……さ、触って、ください……」
 シルバー先輩の指が、ゆっくりと僕のものに触れる。また、大きな手で包み込まれて、僕は背中にぞくりとするものが上がっていくのを感じた。
「デュース」
 僕のものをゆっくりと上下にしごきながら、シルバー先輩は耳元で名前を呼んでくれる。
「あ、は、はい、シルバー先輩……っ」
 シルバー先輩のシャツの腕をぎゅっと掴めば、怖くない、と唇にキスをくれた。
 ……怖いんじゃなくて、気持ちいいんだけどな。でも、シルバー先輩のそんな優しい声が、触れるだけのキスが、どちらも心地よくて、僕はどんどん夢中になっていった。

 *

 デュースは、もうすっかり怯えてはいないようだった。それでも、俺の行動の何がトリガーになって辛い記憶を呼び覚まさせるかは分からない。
 だから、自分でも丁寧すぎると思うくらい、デュースを丁重に扱った。世界でひとつしかない宝石を扱うかのように、大袈裟なほど優しく。
 俺は大雑把なところがあると親しい人間にはよく言われるから、それくらいの態度でちょうどいいと思った。
 ……のだが、やりすぎてしまったのだろうか。
「し、るばー、せん、ぱい……」
 デュースのものに触れ、怖がらせないように、痛くないようにと潤滑液をたっぷり使って、少しずつゆっくり後ろをほぐしていっていたのだが……。
 気が付いたときには、もう気持ちいいと顔に描いてあるようなまでにとろけきったデュースが完成していた。
 ……デュースがあまり激しく声をあげていなかったから、ここに至るまでデュースが感じ入っていることにまったく気付いていなかった。これは俺の失態だ。うっかり体力を使わせすぎてしまったりはしていないだろうか。
「大丈夫か、デュース?」
「ん……」
 デュースの頬に触れると、けっこうな熱を持っていた。あまりずっと、身体に熱を帯びさせているのも良くないだろう。それはデュースも分かっているようで、俺に続きをねだってきた。
「先輩、もう、そろそろ……」
「ああ、分かっている。……待たせてしまったようですまないが……もう少しだけ、頑張ってくれ」
 ほぐしきったデュースの後ろに、避妊具をつけた自分のものを宛てがう。挿れるぞ、と声をかけるとデュースはこくりと頷いた。
 ぐっと腰に力を入れれば、つぷりと音がして、俺のものがデュースの身体に飲み込まれていく。
「ん……っ」
 デュースは身体を震わせ、感じているようだ。痛みや恐れを感じていないのならと、最後まで入るようにぐっと押し進める。
「全部、入ったぞ」
「は、い……」
 デュースと繋がっていると思うと、なんだかくちづけたくなったので、デュースの口にキスをする。するとデュースは嬉しそうに笑って、自分からもキスをしてくれた。
「先輩、シルバー先輩」
「ああ、なんだ?」
「へへ……」
 俺の首に手を回して抱きついたまま、デュースは嬉しそうに笑っている。可愛くて、また何度もキスをした。
「ん、先輩、僕、くるかも……」
「……分かった。動いて大丈夫か?」
「ん、んん……はやく……っ」
 焦れるデュースにねだられるまま、腰を動かしていく。
「あ、あっ、シルバー先輩、も、もちょっと激しく……っ」
「こう、か?」
 デュースの言葉に、少しだけ腰を動かす速度を早める。だが、デュースにはこれでもまだ足りないようだ。
「ん、んん、あっ、も、まだ……っ、これじゃ、先輩、イけないんじゃ……っ」
「……俺のことなら、心配いらない。自分のことだけに夢中になっていろ、ほら」
「あ、あっ、ああ……っ!」
 また少し、腰を動かす速度を早めていく。デュースの様子を見れば、腰の動きと比例して乱れていくのが分かった。
「あ、あっ、先輩、これ、いま、今すごい気持ちい……っ」
「ふっ、このくらいがちょうどいいのか……覚えたぞ」
 デュースの耳元で、そんなことを囁く。それが最後の刺激になったのか、デュースは達したようで、ひときわ甘く甲高い声を上げた。
「あ、あああっ………………っ」
「ふっ、く……っ!」
達したデュースの強い締めつけにつられて、自身も達する。びゅる、と液体が飛び出ていく感覚がして、大きく息を吐いた。

 *

「はあ……っ」

 二人で、熱い息を吐く。シルバー先輩の腰が動き、僕の中からシルバー先輩のものが抜けていってしまうのがわかった。なんだか、ちょっと淋しいな。
「でき、ましたね」
「そうだな……平気だったか?」
 シルバー先輩は僕の前髪をさらりと撫でながら、やっぱりこっちを気遣ってくれる。
「……全然、違った。アイツらのとは、全然違って、甘くて、恥ずかしいくらい、とにかく優しくて……アイスクリームみたいに、溶けるかと思いました」
 素直な感想を言うと、シルバー先輩は少し照れてみせた。
「そ、そうか……それなら良かった」
 うっかり横になって眠らないためなのか、枕の隣で肘をつくシルバー先輩の方を向いてねだる。こんなときじゃないと、言えないからな。
「僕、また、したいです。……シルバー先輩となら」
 そう言うと、シルバー先輩はふっと笑って僕の頬を指先で撫でてくれた。
「……ああ。お前が怖いというのなら、何度でも、どれだけでも優しくしてやる」
「はは。それはそれで、ちょっと怖いかもな……」
 軽口を叩けるのなら、もう安心だな。そう言ってシルバー先輩は、また僕に優しいキスをくれた。きっと、もう悪い夢は見ない。なんとなくだけど、そんな予感がした。

 *おしまい

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