*シルバーがわりと堂々と真昼間から性的にデュースを口説いてくるオープンスケベです。
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僕には、好きな人がいる。それで、向こうも僕のこと悪く思ってはない、と思うんだけど、その、理由っていうのが……。
「デュース。浮かない顔だな? 俺が、慰めてやろうか。……身体と言葉、どちらがいい?」
「こ、言葉でお願いしますっ!!」
……これだ。ええと、つまり。何から説明すればいいかな……。
僕の好きな人っていうのは、シルバー先輩、なんだけど。でも、その。
そのシルバー先輩が、僕に対して……なんか、こういう、なんていうか。
……えっちな感じの冗談を、言うんだ。僕が何しても。
そう、例えば、だな。僕が、エースたちと一緒に、新しい服買ってきて。
試しにあれこれ着替えて歩いてみてたときも。
「ん? デュース、制服じゃないなんて、珍しいな」
「新しく買ったんで、不都合がないか軽く着て歩いてみてるんです。どうですか? 似合ってますかっ?」
「……ああ。似合っているな。あとで脱がすのが、勿体ないくらいだ」
「脱っ……!? な、何言ってるんですか、もう!!」
そのときも、冗談だ、よく似合っている、とシルバー先輩は笑って誤魔化した。一緒にいたダチ、エースやエペルに、えっ何、ふたりはそういう関係~? と、めちゃくちゃからかわれたのを覚えてる……。しかもシルバー先輩、そういう関係だぞ、って悪ノリまでしてたし……。違います、って言ってテンパってたの僕だけだったかもしれない。
ええと、それだけじゃないぞ。なんていうか……。他にもある。
雨の日に、僕が傘を忘れて、水浸しになってたときも。
シルバー先輩は、おいで、ってぐいって僕の身体を引き寄せながら、差し掛けた傘の中に入れてくれて。それで、ハーツラビュルの前まで送ってくれて。
それで、僕に自分の上着を着せて、言うんだ。
「お前の肌が見られるのは嬉しいが、他の男の目にも入ってしまうからな。……部屋に戻ったら、すぐに暖かいシャワーを浴びて、着替えるんだぞ?」って。
肌がってなんですかっ、って僕が真っ赤になって怒ったら、シルバー先輩はくすくす笑いながら、ジャケットは今度でいい、って言いながら帰って行った。
タオル持って出迎えてくれたクローバー先輩が苦笑いして、はは、お前も大変だな、って言ってたのを覚えてる……。ローズハート寮長も、シルバーはなんでキミの前ではああなるんだい、って呆れた顔してた。
それから、えっと。購買部で何か甘いものを買おう、って。お気に入りのプリンとかシュークリームとかいくつか買ったあと、シルバー先輩に会ったら。
「甘いもの、か? たくさん買ったんだな。 疲れてでもいるのか? ……俺の部屋に来れば、もっとお前の身体中を癒して、甘いものを与えてやるぞ? お前が満足して、もう嫌だというまで、な」
みたいなこと言われて。隣に居たアーシェングロット先輩が、シルバーさん、公共の場でそういうことを言うのはどうかと思いますよ、ってちょっと赤くなって窘めてたのを覚えてる。
あとは、そうだな。僕が、将来ってか、いつかやってみたいことなんか話してて。
「もし、好きな人と旅行とかに行けたら、同じ部屋に泊まったりして……っ、な、なんて、ちょっと僕にはまだ早い、ですかね……? はは……」
って、言ったら。
「確かに、な。……俺と同じ部屋に泊まるのだったら、お前をいつ寝せてやれるかは、保証もできないことだしな」
「どっ、どういう意味ですかっ!?」
「……聞きたいか?」
「い、いいですやめときますっ!!」
なんてやり取りさえ、する羽目になって。近くを通りすがってた2年生の先輩たち、ブッチ先輩とかリーチ先輩(フロイド先輩の方だ)あたりが、『シルバーくんやるぅ~!!』と盛り上がって冷やかしてきてて、すごく恥ずかしかった……。
だから、その、ええと、つまり、なんていうか。
……シルバー先輩、この頃、すぐに僕にえっちな冗談を言うんだ。
いやでもその、僕だってシルバー先輩のことが嫌いなわけではないし、むしろその……好き、だし。シルバー先輩がそういう冗談を言ってくれるのは、僕にある意味気を許してくれてる、僕ならそういうことを言っても大丈夫、って思われてる証拠だとも思うわけで。だからそれ自体が嫌なわけじゃないんだけど、でも、ええと、その。
僕としては、嬉しいんだけど。シルバー先輩がそういう冗談を言ってくれるってことは、僕が、シルバー先輩にとって、そういう対象、つまり恋愛対象に見られてる、ってことでもあるはずだから。だから、意識してもらえてるのなら、それは別に全然いいし、嬉しいんだけど!!
でも!! ……普段からこんなガツガツ来られちまってたら、その、なんていうか、だな!!
……こ、告白したらすぐにそういうことになっちまうのかなって思って、ちょっと二の足踏んじまうだろ!
それで、僕がどうしよう、シルバー先輩のことは好きだけど、僕だけ好きだって言わないままなのもな、でもシルバー先輩に好きだって言ったら僕その瞬間にぺろりって食べられちまうんじゃないかな、まだそこまでの覚悟はできてないぞ、ってぐるぐる迷って慌てて悩んでたら。
やっぱり、シルバー先輩が僕の元にやってきてくれて。それで、言うんだ。
「どうしたんだ、何かお悩みか、優等生さん」
って、手の甲にキスをされて。僕は、ひゃわぁってなって、慌てて手を引っ込めて、それで。……でも、僕がこうやって困ってると、いや困ってなくても、シルバー先輩はいつも声をかけにきてくれるんだよな、って思って。
それで、僕は拗ねて頬をふくらまかして、言った。
「……僕、好きな人がいるんですけど! その人が積極的すぎて、困ってるんですよ! こ、告白したり、したい、けど! ……もし好きだって言ったら、その、すぐにぱくって食べられちまうのかな、なんて、思って……」
僕が体育座りになりながらそう言うと、シルバー先輩はくすくす笑いながら、言った。
「その人も案外、お前の照れた反応が好きで、冗談半分でやっていて。実際、無理強いするつもりなんてないのかもしれないぞ?」
「そうなんですか?」
意外な言葉に、僕が顔を上げて、尋ねると。
「おや、俺のことがやっぱり好きか?」
と、シルバー先輩は、僕のことをからかった。
「もう!」
真面目に聞いてくれてないのか、と僕が拗ねると、シルバー先輩はそっと僕の頭を撫でて、そして、焦らなくていい、と言った。
「その人だって、お前の気持ちは分かっているさ。ただ、お前のことが可愛くて、どうしようもないだけなんだ」
「……そう、だったらいいんですけど!」
そうして僕は、今日もシルバー先輩に好きですって言わないまま、言えないまま。でも、なんかすごく愛されてるなって自信だけはつけていくのだった。
そんなある日のこと。僕は、上級生に絡まれて。
「ハーツラビュルの問題児くーん、遊んでくれよ?」
「俺たちヒマなんだよ~」
そんなことを言う先輩たちを一瞥して、僕は言う。
「……ヒマなら勉強のひとつでもしたらどうですか」
堅いこと言うなよ、と言って。先輩たちは、僕の腕を引く。
「……」
僕は先輩たちを睨みつけるが、向こうはそんなのちっとも意に介さない。
それで。
「ぐっ……!」
どうにかして腕を振り払い、逃げ出す隙を伺っているうちに、後ろから思いっきり、腹を蹴られ。僕は、どこかへ担がれていった。
気がつくと、そこは。人気のない、校舎裏の辺り、のような気がした。
まわりを取り囲む先輩たちの顔を見回して、僕は尋ねる。
「俺を、どうする気だ……っ」
「決まってんだろ? 輪姦(マワ)すんだよ!」
「そうそう、大人しくしてりゃ痛くはしねえぜ!!」
ヒャハハハ、と笑い、僕に手を伸ばしてくる先輩たちに。僕は、抵抗する。
「やめろ、触んな……っ!!」
「大人しくしろ、っつの!!」
「……っ!!」
四方八方から飛んでくる拳や蹴りを、魔法と拳でなんとか凌いで。
でも、このままじゃ防戦一方だ。魔法を使った私闘は校則で禁止されてるし、かといって、普通の私闘をしても寮長から大目玉を食らうし……!!
どうしよう、と思いつつ、とにかく手を出さなきゃいいんだ、と、攻撃をいなしていく。コイツらが諦めるまで、攻撃を防ぎ続けられれば……!!
そんな中、なかなか諦めない僕に痺れを切らしたのか。
面倒くせぇ、魔法でカタつけようぜ、とひとりが言い出して。
先輩たちのそれぞれが魔法をかまえ、僕に撃とうとしてくる。
まずい、僕の魔法障壁や防御魔法じゃ上級生からのたくさんの魔法は防ぎきれない、と思いながらも。
「……っ、だからって、諦められるか!! この身体は、お前らのために取っておいたものじゃねえんだっ!!」
魔法障壁を張れるだけ張って、腕でも自分をガードする。
すると。先輩たちの魔法が、僕に向かって放たれて。その瞬間。
……僕の出したものよりも、さらに厚い魔法障壁が、僕のまわりに張られた。
「よく言った、デュース。後は任せろ」
そう言って、空から目の前に降り立ったその人は。降り立つ勢いそのままに、ひとりを蹴り飛ばして気絶させ。ふたりをアッパーとジャブのような流れる拳でノックアウトさせ。残りのふたりをロープでふんじばり、ぎゅっと踏みつけた。
「シルバー先輩……」
「まったく。この学園に、このような下賤の輩がいたとは、信じたくないものだな」
そう言って、シルバー先輩は全員を手際良くロープで縛りあげると。ぱんぱん、と手を打ち払った。
「すまないが、先生を呼んでもらえるか?」
シルバー先輩が、上の方に向けて声をかける。その向こうでは、こっちの様子を見ていたらしいアジーム先輩とバイパー先輩が手でOKのサインを作っていた。……え、3階だぞ、あそこ。シルバー先輩、まさかあそこから来たのか……!?
僕が驚いていると、すぐに学園長が来て。これはどういうことですか、と嘆いていた。シルバー先輩が学園長に淡々と事情を説明し、俺は被害者を保健室に連れていくので、後のことはお任せします、と言った。
「それじゃあ、デュース。お前は保健室に連れていくからな」
「は、はい……」
それで、僕は保健室に連れていかれ。養護教諭がいなかったので、シルバー先輩に、傷の手当てをしてもらった。
「いてて、沁みますね」
「我慢だ。耐えてくれ」
それで、ふと、僕は思った。……先生のいない保健室なんて、絶好のシチュエーションだと思うけど。シルバー先輩、今日はそういう冗談言わないのかなあ、なんて。
「……」
「どうした、俺の顔をじっと見て。……何か、ついてるか? 返り血とか……」
「い、いえ! その……、今日は、その。え、えっちな冗談? みたいなの、言わないんだな、って、思って!」
なんか別に待ってたわけじゃないんですけどなけりゃないで淋しいような気がして、と僕が言うと。
シルバー先輩は、まったく、と困ったような顔をした。
「……お前は、今、悪漢に襲われかけていたんだ。そんなときに不快だろうことを言うほど、俺は無神経でも馬鹿でもない」
「す、すいません。でも、その。……シルバー先輩のは、嫌じゃない、から」
アイツらみたいに、乱暴じゃないし、その、僕のこと好きだから言ってくれてるんだって、分かるから、と、僕が言えば。
「……お前が無事で、良かった」
と。シルバー先輩は、ぎゅっと優しく、僕の身体を抱きしめてきて。
僕は、ああそっか、と腑に落ちたように、シルバー先輩の背中に腕を回し返した。
「……へへっ。シルバー先輩、すごく優しいんですねっ」
「そうか? ……お前がそう言ってくれるのなら、そうなのかもしれないな」
それで、僕は。先輩、って声をかけて。それで、言った。
「シルバー先輩、僕、シルバー先輩のこと、好き、です」
シルバー先輩は、僕のこと、好きですか、と尋ねると。
「……分からないか? もちろん、好きだ。とても……大切な人だと、思っている」
と、シルバー先輩は、僕の頬をそっと撫でた。
僕は。キス、したいです、と、先輩の胸元を少し引き、ねだる。
シルバー先輩は、少し驚いた顔をして。それで、ふっと笑って。
まだ、キスだけだぞ、と言って。僕の口に、ちゅ、とキスを落としてくれた。
……と、そのとき。
「うわっ!? 押すなって!!」
「馬鹿、崩れる……うわあああ!!」
という、やかましい声と共に。保健室のドアがガラガラと開いて、そこには、何人かの先輩たちと、同級生が集まっていた。
「何してんだお前らっ!!」
「デバガメに決まってるじゃない! あれだけ散々堂々と口説いてたんだし、そろそろくっついたかなって!!」
何故かいつの間にか混ざりにきていたらしいオルトに堂々と反論され、僕は呆れて物も言えなくなる。
「俺は違うぞ! 見舞いがてらその後の経過を報告に来たらいい雰囲気だから入れなくなっただけだ!」
なんてことを言うバイパー先輩もいるし。
「でも、良かったじゃないか、シルバー! デュースのこと大好きだっていつも言ってたもんな!」
と、普通にシルバー先輩に話しかけてるアジーム先輩もいるし、で。
他にもエペルだとか、リーチ先輩(ジェイド先輩の方だ)とか、なんかいろんな人がいるけども。
「お前ら他にやることないのか……」
と、僕が呆れると。あっ、心配して来てあげたのにそれはないんじゃない、とブーイングされ。
収拾がつかなくなってきた一同に、シルバー先輩が言った。
「見ての通り、デュースは無事だ。そして、俺のものになってくれた。安心していいぞ」
そうすると皆、なんだノロケかー、無事ならいいやじゃあね、と散り散りに帰って行った。なんなんだよ!!
僕が呆れたジト目になって帰っていくみんなの背を見送っていると、シルバー先輩が、お前は愛されているな、とほほ笑んでいた。
半分くらいは面白がっているだけだと思います、と僕は答えて。
それで。シルバー先輩に、耳を貸してください、と言った。
「うん? なんだ……?」
僕は、そのシルバー先輩の耳に、こっそりと言った。
「……この身体は、誰のために取っておいたのかは……先輩は、考えといてくださいねっ」
と。
そうして、それじゃあ僕はいったんこれで、と。パタパタと走って、言い逃げして。それで、一瞬だけちらっと振り返ったシルバー先輩の、手で隠された口元の端が嬉しそうに上がっているような気がしたのを、これはたぶん気のせいじゃないよな、と思うのだった。
*おしまい
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