*10年後入れ替わりネタ「好きになっていただけますか?」のおまけ・続きシリーズである「余韻」あたりの続きとなります。ネタのヒントくださったフォロワーさんありがとうございますw
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――あれから。妄想の中で時折、未来のデュースを自分のものにしてしまうことで少しは落ち着いていた俺は、ベッドの中、夢を見ていた。……今日の夢は、最近よく見るあの蠱惑的な夢ではなかった。なんとなくホッと安堵しつつ、どこか残念に思う気持ちに見ないふりをした。そして、そのとき、思考回路に魔が差した。
(そういえば今朝、廊下で会ったとき。デュースも何か、様子が変、というか、おかしかったな……)
俺の様子がおかしい理由は、自分で一番よく分かっている。未来のデュースに会ったその日から、その色香にやられてしまっていたからだ。だが、デュースも何故、態度がおかしかったのだろうか?
(……もし、かして)
デュースも、俺と同じことに、なってしまって、いる、のか?
だとしたら……デュースはどんな、甘美な夢を見ているのだろう。俺に、何を求めているのだろうか。
それが知りたくなって。俺は、少しの躊躇いを覚えながらも。ユニーク魔法を、最後まで詠唱した。
ユニーク魔法での移動を何度か繰り返し、無事デュースの夢の中に渡った、その先で見たもの、俺の目に飛び込んできた光景、それは。
『ふっ、ふにゃあぁ……!』
『よしよし、デュース、可愛い。今日もちゃんとお前は可愛い、俺の子猫ちゃんだな』
『先輩、せんぱい、ぼくこれやだ、はずかしい……っ』
『本当に恥ずかしいか? ……もっと、してほしくない?』
『ぁ、ぅ……、も、もっと……♡』
猫のように首輪をかけられたデュースが、やたらとキザったらしい俺に似た男に、首筋や身体のあちこちを撫でられ、うにゃうにゃと猫のような鳴き声をあげさせられている光景だった。
「な……っ!?」
驚いて赤面し、思わず声が出そうになる。咄嗟に口元を手で押さえてその後の様子を窺うと、俺に似た男はデュースの懇願に向けてこう言った。
『待て、だ。デュース。……できるよな?』
『ふ、ぁぅ、は、はい……』
『……ふっ、いい子だ。いい子には、褒美をやらなくては』
そうして、男はデュースの口にキスをする。俺がまだしたことのない、長く口をくっつけるようなキスさえ。
「……っ!! い、『いつか会った人に、いずれ会う人に……! 同じ夢を見よう(ミート・イン・ア・ドリーム)』!!」
これ以上この夢にはいられない、と。俺は再び、ユニーク魔法を詠唱した。
そして、適当に渡ったセベクの夢に逃げ。そこでようやく、息を整えた。
(なんだったんだ、アレ……)
それから。現実世界で目を覚ました俺は、ずっとあの夢のことを考えていた。
普段なら夢の内容なんて忘れてしまうはずだが、印象が強いというか、今の俺には、あの夢は刺激的すぎた。
「あっ、シルバー先輩。こんにちは!」
「……ああ、こんにちは……」
そして、なんでもないような顔をして、俺に挨拶をしてくるデュースに、腹が立ってきた。
だから。
「ちょっと来い」
「うぇ? シ、シルバー先輩?」
適当な空き教室に、デュースを引き込んで。そして、ドアを閉めるなりデュースを壁に押し付け、乱暴にキスをした。
デュースの襟元を開いて首筋にもぢゅ、と音を立ててキスマークをつけ、デュースのことを睨みつける。
「んっ」
「……は……、デュース」
「せ、先輩……? どう、したんですか……?」
急にこんな、恥ずかしいです、と目を伏せるデュースを可愛く思いながらも、俺の勢いは止まらない。
「……恥ずかしい? 夢の中にいる俺には、あんな姿を見せるのに、現実の俺には見せられないのか……?」
「ふぁ、はっ!? み、見てた、んです、かっ!?」
「……答えろ、デュース」
じっと目を見つめていると、デュースは恥ずかしそうに目を逸らし、それから上目遣いに俺を見つめた。
「……先輩、僕にああいうの、したい、んですか……?」
「い、いや。それは、その……っ」
……したくはない、と言えば、嘘になるが。だが、……それを正直に言うのは、忍びない。
それでも。デュースは言う。ヒビが入り続けていた俺の理性を、ハンマーでたたき壊すかのように。
「……僕のこと、食べたい、ん、ですか、シルバー、せんぱい……? 僕、先輩から、見て……うまそうに、見えて、ます、か……?」
少しだけ恥ずかしそうに。だが、それでも確かな誘惑をしてくるデュースの姿を見て、俺は、未来の記憶がフラッシュバックする。
――俺が10年後の未来へ、少しだけ飛ばされたとき。そこにいた未来のデュースから、与えられたあの言葉。
『どうだ? お前にとって、今の僕、うまそうに見えてるか……?』
今、俺の目の前にいるデュースの言葉に、確かな未来の面影を感じながら、ちらりとはだけたシャツの首元の色気にごくりと唾を飲み込み、デュースの耳元で囁く。
「ああ。この場でぺろりと食ってしまいたいくらい、うまそうだ。……お前は、ああいうキザな男が好きなんだな? 待ってろよ、デュース。絶対にあの男になって、余すことなくお前を食ってやるからな」
するとデュースは、いっぱいいっぱいな様子で言い返す。
「だ、だったら僕も、先輩が思わず食べちまいたくなるような、えっちな人になりますっ! 絶対!」
(もうなってるんだお前は!)
と、そんなことを心の中でツッコミつつ。今はそれが本題ではない、と、俺はデュースの目をじっと見つめる。
「なら……今のうちに、つまみ食いくらいは、させてもらおうか?」
未来のデュースが、俺をつまみ食いしたい、と言っていたのを思い出しながら、彼が俺にしたことをやり返すかのように、デュースの頬や口に、ちゅ、ちゅとキスを繰り返す。
「う、うぁ……」
しばらくデュースはされるがままでいたが、何を思い立ったのか、潤んだままの目で、急に俺の方をじっと見つめてきた。
「……せんぱい……」
「なんだ、デュース?」
「くち、開けて……くだ、さい」
言われた通りにすると、デュースは俺の開いた口に、ちゅう、と。長く口をくっつけるキスをした。
これは、デュースが、あの夢の中。未来の俺と、していたキス、だ。
「……ん…、これで僕らも、大人の仲間入り、ですね?」
へへ、先輩、大人の人たちみたいなことがしたいのかなって思ったから、しちゃいました、とデュースは照れくさそうに笑う。
俺は。……耐えてきた理性が、限界に近いのを感じた。
「……すまない、デュース。本当に嫌だったら殴ってでも止めてくれ……っ!!」
「うわっ!?」
デュースをがばりと床へ押し倒す。するとデュースは、慌てて俺の唇に指を当て、俺のことを止めた。
「ま、待て、できます、よね?……その、いい子、だから……」
(それは、アイツの……!)
デュースが今言った言葉も、唇へ指を当てる動作も。それも夢の中で、大人の俺がやっていたことだ。
それになんだかむかっ腹が立ち、アイツよりも今の俺の方を見せたくなった。
「……それは聞けない相談だな、子猫ちゃん?」
耳元でささやくと、デュースはびくりと身体を震わせる。俺はその瞬間、理屈でなく感覚で納得した。
(ああ、なるほど。『こう』やるのか)
そのままデュースの耳元に時折ふうと息を吹きかけつつ、ささやき続ける。
「どうした、デュース? 俺に、こんなふうに可愛がられたいんじゃなかったのか? なあ、俺の、可愛いデュース?」
「ふ、ふぁあ……っ!!」
真っ赤になっていっぱいいっぱいになっていくデュースに、俺は満足を覚える。なるほど。夢の俺があんなに楽しそうなわけだ。
「ほら、デュース。にゃあって可愛い鳴き声、俺にも聞かせてくれないか?」
「そ、そんなの……っ」
嫌がって抵抗するデュースの手のひらに、キスをしながら尋ねる。
「……俺には、見せられない、か?」
「……うっ……」
「夢の俺には、見せられるのに? ……本当の恋人は、俺だろ?」
「う、あ、そ、その……っ! ……にゃ、にゃあ……っ!」
「ふっ。可愛い、デュース」
そうして俺は、夢の俺と同じように。昼休み終了の鐘が鳴るまで、デュースのことを散々可愛がったのだった。
*
一方その頃、デュースの頭の中では。
(うう……っ、シルバー先輩め……! 僕にこんな恥ずかしいことさせて……っ!! 絶対、絶対いつか、やり返してやる……っ!! シルバー先輩が、おんなじくらい僕にタジタジになってくれるその日まで、僕絶対、今日この日のこと忘れないからなっ……!!)
そして本当に10年後の未来、大人になったデュースによるシルバーへの仕返しが果たされるその日まで。
ふたりは一歩ずつ、10年後の自分たちへと近づいていけるように、今日も歩んでいくのであった。
*おしまい
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