*リクエスト小説『乱心甜心』からの続きを勝手に書き続けています! 本当にすいません。
*『禁断の幕~ワガママ許して~』の続編となります。今回はRなし。
*シルバーとデュース、セベクとデュースがそれぞれ合意の上で3人で付き合っています。
*続き物なのでリクエスト本棚に放り込んでいます。
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僕は今日、ディアソムニア寮へと遊びに来ていた。
……表向きはもちろん、恋人として付き合っていると公言している、シルバー先輩の恋人として、だ。
でも、実は僕には今、恋人がふたり、いる。だけど、浮気とか二股……ってわけじゃなくって。
僕が、「ふたりとも好きになってしまったから、ふたりともと付き合いたい」って言ったら、ふたりは頷いてくれた。
だから、今の僕には、シルバー先輩とセベクの、ふたりの恋人がいる。
それで、その。たまにはデートくらいしてみようってことで、お家デート……ってわけじゃないんだけど、ディアソムニア寮のシルバー先輩の部屋でデートしようってことになってて。
セベクは後から、適当に言い訳をつけて合流してくるそうだ。
それで。シルバー先輩が、寮の入り口まで迎えてくれる。ディアソムニア寮の入り口は招かれていない人を中に入れてくれないから、そのためだ。
「お邪魔します」
「よく来てくれたな。俺の部屋へ案内する。こっちだ」
ルームメイトには恋人が遊びに来ると言ったら外してもらえた、ちなみに「そういうのは早く言え」と怒られもした、と雑談をしながら、シルバー先輩はディアソムニア寮の中を案内する。これから何度も来ることになるだろうからな、と。
やがて、シルバー先輩の部屋へと辿り着く。
「し、失礼します」
星送りのときにも一回来たことはあったけど、こうして意識ある時に入るのは久々だな。
「何、そう緊張することはない。……そのうちセベクも来るだろう」
だが、その前に少しばかり抜け駆けしてしまおうか、とシルバー先輩が僕の顎を引く。
え、もうキスとかするのか、なんて思いつつも、嫌じゃなくて、きゅっと目を閉じて受け入れそうになったら、コンコンとノックの音がして、ドアが開いた。
「茶菓子を持ってきてやったぞ! まあデュースのおもたせだがな……ん? なんだ貴様ら、その様子は。もしやシルバー、お前抜け駆けしていたのではあるまいな」
「さて、なんのことだか」
セベクはしらばっくれるシルバー先輩を睨みつけながら、部屋の中へと入って来る。
そうして、ようやく僕たちは恋人3人になり。……なんとなく気まずい沈黙が、流れた。
「ええと。デートというのは、何から、すればいいのだろうか?」
「知らん! ……だが、今日の目的は、デートだけではない。まずは先にさっさと、そちらを済ませてしまおう」
「そ、そうだな! ええっと……、話し合わなきゃいけないのは……」
僕たちは、それぞれノートを取り出したり、ペンを借りたりして、話し始める。
これから3人で付き合っていくに当たって、普通に付き合うのとは違う、どんな問題が出るのか、どういう風にそれを解決していくのか、とか。普通のお付き合いじゃないからこそ、ちゃんと最初にルールを決めておこうってことになった。
「まず第一に。俺とセベクは、争わない。じゃれ合いくらいならしてもいいが、本気でデュースを困らせないのが最優先だ」
「ああ、分かっている。僕もそれでかまわん。原則はデュースの意思を優先、だな」
「い、いいのかそんなの!?」
僕が躊躇っていると、ふたりはそれで問題ない、と告げた。
「俺たちの間で決めようとすると、争いになってしまって、決まらないことの方が多いだろう。むしろ、お前には、決定権を持たせる以上、負担や責任を強いてしまうが、そこが辛いときはいつでも言ってくれ。……そういうときは俺が身を引き、我慢しよう」
「わ、分かりました……。できるだけ僕も、頑張って決めます!」
それから、デートはひとりずつとすることもあるのかとか、3人で何かをする頻度はどれくらいにするかとか、いろいろと細々な取り決めをしていって。そのうちに、シルバー先輩が言った。
「やはり、親父殿とマレウス様には、告げるべき……だろうか?」
僕たちは、それに困った。確かに、それは大事なことだ。
「俺は、言うべきではないかと思う。ある程度内密にするのは、必要な措置といえど、マレウス様や親父殿に対してもいつまでも黙ったままだ、というのは。……大切な人たちを騙しているようで、心苦しい」
それに対して、セベクが言った。
「しかし、受け入れてくださるかは分からない。もし反対されたらどうする? それに、僕たちのことで無駄にお二方の御心を煩わせるのも……」
僕は、セベクの気持ちも分かる、と思った。怖いよな、大切な人に拒まれたら、って思うと。でも、だからこそ。
僕はちゃんと、ぶつかり合うべきだって思った。
「デュースは、どうだ? ……どう、思う?」
シルバー先輩が水を向けてくれたので、僕はハッキリと答える。
「言いましょう。ふたりが言いにくいなら、僕が言います。そもそもこの関係の言い出しっぺは僕なんだ。ふたりの大切な人たちに、ちゃんと挨拶しないなんて筋が通らねえ!」
なんなら今すぐにでも行ってきます、と立ち上がると。それなら俺(僕)たちも行く、と。ふたりは僕について立ち上がった。
ふたりに案内されながら、談話室へ向かい。ソファでくつろいでいるドラコニア先輩を見つける。
「ドラコニア先輩!! ……ちょっと、今、いいですか」
そう告げる僕に向けて、ドラコニア先輩は、ゆったりとほほ笑んだ。
「何やら、大切な話がありそうだな? ……良い。誰か、リリアを呼んできてくれるか? 今日は皆、特別に……。僕の部屋へ、招待してやろう」
そうして僕たちは、ドラコニア先輩の私室へと招かれた。
僕ら3人とドラコニア先輩が部屋で待っていると、呼ばれたヴァンルージュ先輩が部屋に入ってきた。
「おお、なんじゃ仰々しいのう。それにおぬし、ハーツラビュルの……デュースか」
「こんにちは、ヴァンルージュ先輩。さっそくですけど今日は僕たちから、大事なお話があって」
そして僕たちは、本当のことを告げた。
僕はセベクとシルバー先輩とそれぞれと、そういう形で、僕たちは、3人でお付き合いしていることを。
「その……っ、こういう形には、なったんですけど! 僕はちゃんと責任取って、ふたりを幸せにしたいって思ってます! ドラコニア先輩やヴァンルージュ先輩の大事な人たちを預かる以上、覚悟はちゃんと、キメてきてるんで!! それは、分かってほしいって思うんです!!」
シルバー先輩が、僕の言葉に続く。
「俺たちも、同じ気持ちです。というか、むしろ先に責任を取るべきなのは俺たちの方だった。その、俺たちはもうデュースを傷物に……」
「お、おい、そこまでは詳しく言わんでいい! ……ですが、僕もこいつと同じ気持ちです! つまり、僕たちはそれぞれ、双方納得の上で、この関係を選んでいる、という、こと、なの、ですが……」
セベクは、チラリ、と。ドラコニア先輩の方を見る。……セベクは、とにかくドラコニア先輩のことを尊敬しているし、大事にしている。……怖い、だろうな。きっと、シルバー先輩も、同じだ。この人たちは、ふたりとも。シルバー先輩とセベクの、大切な人だから。
だから、僕は。なんとしてでも、分かってもらわなきゃならねえ!
「い、いかがでしょうか……」
改めて気合を入れ直していると、セベクが、そう告げた。そして、僕たちの話を聞いて、最初に口を開いたのは――ヴァンルージュ先輩だった。
「やっぱりの~。お前ら、そうじゃないかと思っとったんじゃ……。茶菓子を持っていったセベクがやたら帰ってこん辺りとか、怪しかったしのう……」
まさかな、とは思うとったが、とヴァンルージュ先輩は言う。そして、シルバー先輩の頭を、ぽん、と撫でた。
「怖かったじゃろうなあ。よしよし、安心せいよ、怒っとらんから」
それからヴァンルージュ先輩は僕らに向けて言う。
「正直に言わせてもらえば、わしからすると個人的な違和感はあるが。それがこの時代に生きるお前たちの、自分たちで切り開く新たに選んだ道ならば、止め立てはせん。好きにすると良い」
ただし、新たな道を歩むのなら、その選択によって起こる責任はきちんと受け止めるのじゃぞ、とヴァンルージュ先輩は笑う。
「で、マレウスの方は、どうじゃ?」
ごくり、と僕らは息を呑む。ドラコニア先輩は、ゆっくりと口を開いた。
「僕は――……そう、だな」
例え話をしようか、とドラコニア先輩は告げる。
「僕は常々、疑問に思っていたのだ。僕は、王子だ。そして、王族というものは、血を残すため、時に側室、つまり第二の王妃を作ることがある。ともすれば、恋人を複数持つような状態も、公に、当たり前に受け入れられている。だが、なぜ一般の民にはそれが適用されないのか、と。……僕としては、彼らひとりひとりの家の名、血筋を残していくことも、民にとって重要なことなのではないのだろうか、と考えることもあり。また、それでなくとも、愛の形、真実の愛というものは、一対の男女だけが普遍的に選べるものではなく。もっと、ひとりひとりに合わせた、自由気ままな形をしているのではないのか、と。最近、よく思うのだ。さすればお前たちにも、その自由な形が与えられてみるのも、おかしくはないだろう。まあ、少々本筋から逸れてしまったが、つまり、何が言いたいかと言うと、だな。……良いのではないか? 僕はあまり、気にしていない」
その言葉を聞いたセベクとシルバー先輩は、ふたりとも声を揃えて言った。
「「ありがとうございます、マレウス様、親父殿(リリア様)! 寛容なお言葉、感謝いたします!!」」
それに続けて、僕も勢いをつけて誓う。
「ありがとうございますっ!! 僕、絶対ふたりに恥じない恋人になりますっ!!!」
するとヴァンルージュ先輩は、若いもんはみな元気で良いのう、と笑った。
「良い、良い。ただし、じゃ。恋愛劇が縺れて、血みどろの悲劇にだけはなってくれるなよ?」
そうしたらドラコニア先輩が、僕たちを庇った。
「リリア。それは恋人の人数が少なかろうと、同じ心配が起こることだろう?」
「それもそうじゃな! こりゃ一本取られたわ!」
そして皆、和気あいあいと笑い合い。ヴァンルージュ先輩の「さ、デートの続きを楽しめよ。そのために来たんじゃろ」という言葉を最後に、部屋へと帰る流れになった。
*
――シルバーたちが去ったあと。リリアとマレウスの間では、こんな会話が成されていた。
「ふーむ、本当に3人で付き合っておったとは、のう。ああは言ったが、しかし、うーむ。……わしの価値観、古いんかのう?」
どうにか息子たちの関係を自分なりに呑み込もうと首を傾げるリリアを、マレウスが笑って眺める。
「ふふ。お前は本当に不器用だな、リリア。息子にそっくりだ。焦らずとも、ゆっくり馴染んでいけばいい。時代は今もめまぐるしく変わり続けている、そうだろう?」
それとも、あれらの誰かが泣く結末の方がお前は好みか、とマレウスが問う。リリアは、そんなことはないと答えた。
「そう、じゃな。……これからは、あの子たちの時間、あの子たちの時代、あの子たちの選ぶ道筋で、結末よ」
わしにできることは、保護者としてあの子たちを守ってやることだけじゃ。ならば、わしもあやつらに合わせて頭を柔らかくしてやらんといかんのう、と。リリアは笑う。
急ぐことはない。彼奴らの態度が当たり前に慣れていけば、きっとそのうち、お前も慣れて当たり前になっていく、と。
マレウスはリリアに向け、鷹揚にほほ笑みを返していた。
*
そして、シルバー先輩の部屋に戻った僕たちは。パタンとドアを閉めたあと、全員で、一気に息を吐いて、それぞれ適当な場所へとしゃがみこんだ。
「ぷは~っ!! 緊張したぁ!!」
「ああ……。マレウス様も、親父殿も。心広く受け入れてくださって、本当に良かった」
「僕は最初から分かっていたぞ! 若様はきっと海よりも広い御心で受け入れてくださると!!」
何言ってんだよお前最初誰よりビビってたじゃねえか、とセベクの態度に笑っていると、シルバー先輩が言った。
「さて、デュース。気を抜いている場合ではないぞ? 俺たちの時間は、ここからが本番だろう」
まだデートらしいことは何もしていないからな? と笑うシルバー先輩に、僕は慌てる。
「切り替え早いですね!?」
「せっかく、お前と過ごせる時間だからな。惚けてばかりいる場合ではない。お二方の寛容に、報いるためにも、俺たちはずっと幸せでいなければ」
シルバー先輩は、ぎゅっと僕の手を握る。そうすると、セベクも負けじと、反対側の僕の手を繋いだ。
「貴様ばかりずるいぞ、シルバー! 僕も繋ぐ!」
僕はそれにもツッコミを入れる。
「両手塞がっちまったじゃねえか! これだと僕何もできないだろ!」
「茶菓子なら食べさせてやる。ほら、口を開けろ」
するとシルバー先輩が、最初部屋に来たときセベクの持ってきていたお茶菓子(僕がディアソムニア寮に訪問すると言ったら、「あそこはウチと同じくらい礼儀に厳しいからな」と、クローバー先輩から手土産として持たされた、プチフールのセットだ)のひとつを摘まんで、僕の口に放り込む。ひとくちサイズのプリンを飾ったようなケーキだ。
「んむっ」
もぐもぐ、とケーキを噛んで飲み込むと、シルバー先輩が、可愛い、とほほ笑んで僕の頭を撫でる。
そしたらセベクも僕に自分の方を向かせて、同じように僕にひとくちサイズのシュークリームを食べさせた。
「僕からのも食べろ! どうだ、どちらの方がうまく感じる!?」
そう告げるセベクに、僕はシュークリームを飲み込んで答える。
「どっちもうまい……、さすがクローバー先輩のケーキだ……」
するとシルバー先輩は、おや、デート中なのに、俺たち以外の他の男の話は良くないな? と告げ、そして、僕の手から、一度手を外した。
「ほら、デュース。今度はお前が、俺たちに食べさせてくれるか?」
「わ、分かりました。ほら、それじゃ、セベクも一回離してくれ」
ふたりの手が離れたのを確認し、僕はまず、じゃあシルバー先輩から、と。シルバー先輩にケーキを食べさせる。
シルバー先輩はよくコーヒーを飲むから、ティラミスっぽいやつにした。
「ん、うまい。ありがとう、デュース」
そうしてシルバー先輩は僕の頬にお礼のキスをする。赤くなっていると、セベクが待ち構えていた。
「僕の番はまだか、デュース」
「い、今やる! ほら、あーん」
そうして、セベクにも食べさせる。セベクには、フルーツがたくさん乗ってるやつにした。大食いだから、大きめのケーキの方が嬉しいだろうな、と思って。そうするとセベクは「うまい!」と満足して、ケーキを飲み込んだ。
「シルバーが頬なら、僕は口に返してやろう」
そう言って、セベクは僕の口にキスをする。
「……なんか、ケーキの味がする……」
そう呟いたら、シルバー先輩も僕の口へとキスをした。
「本当だ、甘いな」
それで僕が真っ赤になっていると、シルバー先輩はそのまま、僕を前からぎゅっと抱きしめた。
「可愛い、デュース」
「えっ、あっ、ちょっ、シルバー先輩……っ」
嬉しいけど、恥ずかしい。真っ赤になって戸惑っていたら、後ろからセベクもぎゅっと僕を抱きしめてきて。
「ふっ。このまま、また僕たちふたりで可愛がってやろうか?」
なんて言い出す。
「きょ、今日はちゃんとしたデートするんだ! ヘンなことしない!」
それならば、とシルバー先輩が僕の耳元でささやく。
「愛の言葉だけでも、ささやいても構わないか? 好きだ、デュース。愛してる」
反対側から、セベクも僕の耳元で同じようにささやく。
「ふん、僕も言葉にしてやろう。……好きだ、デュース。本当だぞ? 嘘ではないと、証明するか? その気になったら、いつでも言え」
「ふ、ふぁあ……!! こ、これやばい……っ! ホントに、ふたりとも、マジで手加減してくれ……っ!!」
「「ふっ、断る」」
そうして僕は。ふたりからずっと抱きしめられたまま、愛の言葉や、あちこちへのキスを、代わる代わる交互に、次から次へ、なみなみたっぷりと、心のグラスいっぱいに注がれて。身体中、ふたりぶんの愛情でいっぱいに満たされたあと、満足した気持ちで、だけど照れくさい気持ちもあって。だから、そこから急いで逃げていくみたいに、うさぎのように走ってハーツラビュルへと帰ったのだった。
*おしまい
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