*10年後入れ替わりネタです
*CPが逆に見える瞬間がありますがシルデュです。
以上すべて大丈夫な方はスクロール↓
今日は、魔法薬学の補習の日だ! 理由は……聞かないでくれ! いつものだ!
ってわけで、同じく居眠りで補習になったシルバー先輩と、魔法薬学室に集まっている。
「では、説明は以上。調合はじめ!」
クルーウェル先生の指示に従い、僕らは大鍋に材料をぽいぽい入れ、かき混ぜて調合が始まる。
そして。……なんか。変な匂いがしてきたな、と思ったら。鍋がぐらぐら煮立ってきて。
「あ、やべ」
案の定、爆発した。
で、爆発したとき。咄嗟にシルバー先輩の手が、僕の目の前にあったような、気はしたんだけど。
「ケホッ、ケホッ……。シルバー先輩、大丈夫ですか!?」
「その、声は……、デュース、か……?」
煙が晴れたとき、目の前にいたのは。なんだか、雰囲気と服装の変わった、シルバー先輩だった。
「はえ? シルバー先輩、なんか急にやたら恰好良くなりました……?」
シルバー先輩は、きょろきょろとまわりを見渡して、僕の顔に描かれたスペードのスートを見ると、懐かしいな、そういうことかと頷いた。
「ふっ。そういえば、こんなこともあったな? ……こんにちは、デュース。今日は補習の日、だったか? 俺は……この日から10年経ったその日、大人として毎日を暮らしているシルバーだ」
一言で言えば、未来のシルバー先輩だぞ、と。大人のシルバー先輩は、僕に向けてぱちりとウィンクをした。
「ほああ……っ!!」
僕はその態度に、驚く。シルバー先輩、こんな格好良くなるんだ!! 髪ちょびっと伸ばして、縛るんだ!! そしてウィンクできるようになったんだ!! こないだ先輩、ウィンクしてみようとして、意識して片方だけ一瞬目を閉じるという動作が難しいって言いながら、鏡を睨みつけてたのに!!
「そういうわけです、クルーウェル先生。突然母校にお邪魔していますが、1~2時間で元に戻ると思うので、ご心配なく」
「そうか。では、スペード。呼び出した以上は責任を持ってこいつの世話を焼いておくように。……次回お前たちは再度補習だ、今日は解散!」
「さらっと僕に面倒ごと押し付けていきませんでした!?」
「どちらかというとシルバーに押し付けている。気にするな」
戻ったら報告するように! そう言ってクルーウェル先生は僕らを教室から追い出す。教室の外に追い出された僕は、シルバー先輩を見て、どうしよう、とドギマギしてうまく言葉が出てこなくなった。
「えっと、あの、シルバー先輩……っ」
するとシルバー先輩は、なんだか面白そうに笑う。
「……ふっ。懐かしいな、その呼び方は。それにしても、この頃のお前は……こんなに初々しくて、可愛らしかったんだな」
もっと堪能しておくべきだったか? と、シルバー先輩は僕をひょいと両腕を脇の下に入れて小さい子のように抱き上げる。
「な、なんですかっ!? 下ろしてください~!!」
「はは、すぐに下ろしてやる。せっかくだから、デートでもしようか、デュース?」
「で、デート、ですかっ!?」
「いいだろ? 同じ人間なんだから、浮気にはならない。だから……な?」
お願い、聞いてくれるか? と尋ねるシルバー先輩に、僕は。
「は、はひ……っ」
と。そう答えるしか、なくなったのだった。
とりあえず学園内を適当に歩いていると、するりと手が繋がれる。
「ほぁあ……っ!!」
ぎゅっと指を絡ませ、握られて、僕はぎゅっと握られた手のひらと、シルバー先輩の顔を何度も交互に見る。
シルバー先輩はそんな僕の態度が可愛くて仕方ないとでも言うかのように、くつくつと笑っていた。
「さあ、デュース。何がしたい? せっかくなら、勉強だって見てやっていいぞ?」
「ほんとですか!?」
大人になったシルバー先輩なら、いろんなことを知ってるかもしれない! たくさんいろいろ聞いてみよう!
そう思って、じゃああそこのベンチに座って、一緒にお勉強してくださいと手を引いた。
一緒にベンチに座ると、シルバー先輩は教科書を覗き込む。
さらりと前髪が降りてきて、僕はそれにもドキッとした。
「……ん? この辺り、どう解くのだったか。学生の頃の記憶は、やはり薄れていくな……」
シルバー先輩は、すまない、と苦笑いをする。それだけでも、僕の心臓はドキドキと音を立てて止まない。
「デュース。できたら、お前が俺に教えてくれるか? この頃、どんなことを学んでいた?」
お前の言葉で、教えてほしい。と、シルバー先輩は、僕の唇を、親指でそっとなぞる。
「ふぇ、ぁ……、ぅ……」
僕は、その仕草から漂う色気に。こんなえっちなのだめだろって思ってしまって。
真っ赤なまま、ばらつく教科書を膝に落としながら涙目になっていると。
「ん? ……ああ、すまない。この頃のお前には、やりすぎ、だったか」
ようやくシルバー先輩は、勘弁してくれた。と、思ったのも、束の間。
「……だが、お返しはしておかないとな、このときのお前にも」
と言って。シルバー先輩は、僕の口に、ちゅっとキスをした。
「ふっ、可愛い」
「せ、せんぱ……っ」
「……長く、口をくっつけるキスもしてやろうか? ほら、口を開けてごらん?」
大丈夫、その先まではしない。昔の俺のために取っておいてやらなくちゃな、と言いながら。
先輩は僕の口を開けさせ。ちゅーっと、長く口をくっつけてるキスを僕にした。
「ん……、これで、大人の世界の、仲間入りだな?」
少しだけ先取りしてしまったが……。これから、元に戻った俺ともちゃんと一歩ずつ進んでいくんだぞ?
と、シルバー先輩は、僕の髪を優しく撫でる。僕は、突然の刺激に、何も言えなくなって、何も分からなくなって。
「ふぁ、は、は、い……」
わけわかんなくなったまま、頷くことしかできないのだった。
*
……ここは、どこだろうか? 誰かの家の中に、いる。
魔法薬の調合失敗の効果によって、どこかに飛ばされてしまったのだろうか。
とりあえず家主を探して、事情を説明しなければ、と思ったとき。
目の前に。……何故か、急に美人になった、デュースに似た人がいた。
「あなたは……?」
俺がそう告げ終わるのが早いか否か。その人は立ち上がり、俺に抱きついた。
「ふはっ、可愛い~!! NRCの実験着ってことは……そっか、今日があの日だったのかぁ!!」
「あ、あの、ええと……!!」
は、放してください、と。少し動揺しながら告げると、デュース似の人物は笑った。
「ああごめんごめん、今説明するな!」
……それから。俺は説明を聞いた。俺たちは補習中、魔法薬学の実験の失敗によって、10年後の俺と10年前の俺、つまり……今ここにいる俺と、本来ここにいたはずの大人になった俺が入れ替わってしまったのだという。と、いうことは。今俺がいるここは、未来の世界ということで。
そして、目の前にいるのは。……大人になった、未来のデュースというわけで。
「んー? どした、じっと見て」
「い、いえ……っ、なん、でも……っ」
……なんというか。なんだか、動揺してしまう。……その。未来の、デュース。
大人になった、デュースは。幼さが消えて、すごく、美人に、なっていて。
なんと言うか、その。つまり、ええと……。……好み、で。
「今日は僕もシルバーもお休みだから、ゆっくりしてていいぞ? コーヒー淹れようか?」
「い、いえ、おかまいなく……っ」
シルバー、という呼び方にも、敬語でない口調の、距離の近く気安い雰囲気にも、どう接していいか分からず、ぎこちなくなっていると、デュースが、俺の座らせてもらった椅子の前にやってきて。
じっと俺の目を見た。
「……」
「な、なん、でしょう、か?」
「そんなぎこちなくなることないぞ? もう確か、この頃は僕ら付き合ってただろ?」
「そ、それはそう、なのですが……」
俺が、なんと言えばいいのか、と、困って狼狽えていると。
デュースは、もう我慢できない、と俺をぎゅっと抱きしめた。
「やっばい……こんな可愛かったっけ!?」
「あ、あのっ、良くないです、これは、その!」
抱きしめられた腕を解こうと、少し身体を押し返そうとするが、力が入らない。……くっ、俺の身体は正直だ。
「なんでだ? 僕はデュースなんだから、未来の恋人ってだけで、浮気じゃないぞ?」
それに、未来のアンタは僕に散々悪戯してってくれたからな。こっちもお返ししとかないとな? と、デュースは悪戯っぽく笑う。
ドキリ、と鼓動が音を立てる。そ、そんな顔もするように、成長、するのか。今は子うさぎのように、素直で可愛らしいデュースは。
「あ、あの……」
「しっ。……黙って目閉じて、上向いて?」
「……っ」
どうすることもできず、言われた通りにすると、唇にふに、と柔らかいものが落ちてきて。
「でゅ、デュース! これは……っ」
「ふはっ、照れちゃって可愛いな! でも、嫌じゃなかった、んだろ? もっとしてやろっか、ん?」
「~~~~……っ」
ちゅ、ちゅ、と頬や耳元、唇にキスを繰り返され、また、目の前に広がる、デュースの大きく開いたVネックから覗く胸元の色気に、俺はタジタジになってしまう。
「あ、あの、ダメです、これは……っ、だ、ダメだ……っ!!」
「……な、シルバー。僕のこと、このまま食べてみたい……?」
「そ、それは……っ!!」
「どうだ? お前にとって、今の僕、うまそうに見えてるか……?」
指先を絡められ、流されてしまいそうになっていると、大人のデュースはようやく唇を離してくれた。
「……へへっ、可愛い。このまま本当につまみ食いしちまいたい気分だけど……。もうそろそろ、時間だよな」
「あ、の……?」
デュースはぽんぽんと俺の頭を撫でて。そして、ぎゅっと抱きしめ、耳元でささやいた。
「最後に一言だけ。……僕のこと、ずっと捕まえてろ。今日この日が来るまで、ちゃんと掴んで、逃がすなよな? ……そしたら今日の続き、してやるから」
それじゃあ、またいつかな、とデュースは告げて。俺は、気が付いたら。
元のNRCに、戻っていた。何故か、デュースを……膝の上に置いて。
「デュ、デュース!? そんなところで、何してるんだ!?」
「ふ、ふぁあ……っ!? せ、せんぱいが僕を膝に乗せたんじゃないですかぁ……っ!!」
ってあれ、元のシルバー先輩? とデュースは言う。
とりあえずデュースを降ろし、ベンチに座らせてやると、デュースはやっと落ちついたようだった。
「何故、膝に。……未来の俺と、何してたんだ?」
「そ、それはその……っ!! ひ、秘密です、秘密っ!! シルバー先輩こそ、未来の僕となんかありました!?」
「そ、それは、ええと……っ!! ……未来のお前は、その、とても……綺麗だった!! そっちはどうだ!?」
「えっと……!! シルバー先輩は、格好良くなりすぎてました!!」
「……そうか!」
と。俺たちは互いに、相手の未来の姿を思い描いて。よく分からないテンションのまま、お互いに顔を見れない時間を過ごしていた。
*
一方その頃、10年後では。
「デュース。あのときはよくもやってくれたな?」
「なんだ、可愛かったのにもうおしまいか~。……ってか、悪戯はお互い様だろ? どうだった、昔の僕は?」
「とても、可愛らしかった。そっちはどうだった?」
「めちゃくちゃ初心で可愛かった! 僕のこと意識してるのがバレバレすぎたな!!」
「そっ、そうか……」
だけど、まあ。あの時の言葉に、返事するときが来たみたいだな、とデュースは言う。
「……『こんな風に育つ俺を、好きになっていただけますか?』だっけ? ったく、昔の僕の前だからってキザに格好つけすぎなんだよな!」
「いいだろう、別に。お前も昔の俺に好き放題していた」
「僕を最終的に膝に乗せて猫かわいがりしてた奴には言われたくないな!」
「……で? そろそろご褒美は貰っていいのか、お兄さん?」
「仕方ないなー、……いいぜ、『シルバー先輩』?」
そうして、俺たちは笑い合う。今頃過去の僕らどうしてたんだっけな、なんて、初々しい頃のふたりを思い出しながら。
過去の自分たちがこれから歩む未来、つまり俺たちの今までに、改めて想いを馳せるのだった。
*
「ってかシルバー先輩、なんでそんな顔真っ赤なんですかっ!! さっきから僕の方見てくれないし、そんなに大人の僕の方が良かったんですかっ!!」
「い、いや違う、その、そうじゃなくて、すまない! あの、今のお前も、好きだ、というか、今の俺には、今のお前がいいと思う! ……うん! それがきっと、似合いなんだ!!」
「ほんとですか!? ほんとですね!! 信じますからね!!」
「あ、ああ! 信じてくれて、かまわない!」
「……じゃあ、許してあげますっ」
そうして俺たちは。お互いに、未来の相手とどんな時間を過ごしたのかは、互いになんとなく、秘密にしつつ。
(『逃がすなよ』、か。……が、頑張ろう、その日が来るまで……。別に、褒美のためではないが!!)
どういう経緯を経て俺たちはああなっていくのかと、そればかりを考えているのだった。
*おしまい
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