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「月を見に行かないか」
「月、ですか?」
「ああ」
夏の暑さが薄れ始めて、秋の足音が近づいてきた9月のこと。シルバー先輩から、唐突にそんな誘いを受けた。僕はそれを快諾して、ローズハート寮長から、日々の記録をつけて予定を管理するといいよ、と言いつけられたスケジュール帳にしっかりと予定を書き込む。僕がシルバー先輩の誘いを断ることなんて、滅多にない。だって、先輩は護衛の仕事とか、鍛錬とかでいつも忙しい人だから、一緒に過ごせる時間はどうしたって少ないし。だから、僕はシルバー先輩からのお誘いは優先的に予定に入れることにしているんだ。さ、さすがに目印をハートマークなんかにはしないけどな。だってそれはほら、なんていうか……浮かれすぎだろ。いや、可愛い女の子とかがやるならいいんだよ! 僕がやるのはちょっと、ほら、なんていうか……。まあとはいえ、この……僕の手帳に書かれた、『先輩とデートだ!!!』って文字も、浮かれてないとは言わないが。
……デートの話に戻ろう! 月を見るって目的なら、夜からですか、と尋ねたら、昼も一緒にいたければ、空けられると思うが、と答えが返ってきた。だから、遠慮なく、いたいです! って言ったら、シルバー先輩はふっと笑って、分かった、ならそのように、と僕の頭を撫でた。
撫でてもらえたのが嬉しくて、ちょっと勇気出してぎゅって抱きついたら、抱きしめ返してくれた。へへっ。やっぱり僕、シルバー先輩のことが大好きだ。あ、そのときも同じこと言ったかもしれない。『へへっ、大好きだ』って。そしたら、シルバー先輩はぽんぽんって僕の頭撫でてくれたんだ。……大人の余裕って感じで、格好良かったな! 僕とひとつしか違わないはずなのに、なんで先輩はあんなに落ち着いてて格好いいんだろうな? 僕も来年はああなれるかな……!?
いや、うん、話が逸れまくったな……。悪い。僕、浮かれてるのかもしれない。浮かれてるな。だって、シルバー先輩からデートに誘ってもらえたんだ。一緒に月を見よう、って。なんかロマンチックじゃないか? 他のどいつでもない、僕に言ってくれたんだぞ!? あのシルバー先輩が!! 嬉しい、嬉しすぎて転げまわりそうだ。実際ベッドで転げ回っていたら、うるさいぞ浮かれ野郎って同室のやつら全員に怒られた。なんだよ! 浮かれ野郎で悪かったな!!
デートの日付はまだ先だったけど、先輩の言葉を何回も頭の中で繰り返したから、街中で月のマークを見かけるだけで嬉しくなったりなんかして。気を抜くと、何ニヤニヤしてんだよ、ってジャックとかエースから言われちまうくらいに。時にはエペルやオルトまで、どうせシルバーさんでしょ、って……分かりやすくて悪かったな!
で、ようやくデート当日。楽しみにしすぎて待ちきれなくて、待ち合わせの時間より30分も早く到着してしまったから、近くの喫茶店でカフェオレなんか頼んで時間潰しなんかして。街の人たちを横目に思うんだ。
いいだろ、僕今日デートなんだぞ! すごく格好いい人とデートするんだ! 今日の僕は特別なんだぞ、世界一格好良くて、男前で、渋くて、最高な人と過ごせるんだ!! なんて、得意げに心の中で自慢しまくったり、髪はねてないよな? メイクは崩れてないか? なんて、鏡で確認したり。
……僕は学園の他の奴らほど、普段からメイクはしっかりする方じゃない。そもそも男だし、すっぴんの方が楽なくらいだ。でも、学校ではメイクしてるのに、好きな人と出かけるときには見た目に気合い入れないワケ? お洒落してかないワケ!? ってエースに言われて……。ちょっと気になってしまったから、失敗しないような簡単なやつだけ教わってきた。だから、おかしくはなってない、はずだ……たぶん。学園を出る前に、おかしいところはないかチェックしてもらったし。でも、これ以上はやめておこう! ちょっと直してもらったりもしたから、僕が変にいじると余計に悪くなりそうだ。
なんてことばっかり気にしてたら、うわ、もう約束の時間ギリギリになってるじゃないか! 急いでカフェオレを飲み干して、会計して、待ち合わせの場所へ向かう。急がなきゃ、急がなきゃ!!
待ち合わせの場所に辿り着くと、同じように小走りになった先輩が向かってきているのが見えた。良かった、間に合ったみたいだ。
「シルバー先輩! 良かった、間に合ったみたいですね」
「ああ。俺も、たった今ここへ辿り着いたところだ。どうにか遅れなかったようで、良かった」
「ははっ、僕も今、急いでここに来ました……。じゃあ、えっと。さっそくですけど、デート……はじめます?」
「……ああ」
じゃ行きましょう、と前へ進もうとすると、ああ、って言いながら、手を繋がれた。嬉しくて、ぎゅっと握り返して、へへっ、って笑っちゃって、また進んでいこうとすると、お前は本当に俺が好きだな、とシルバー先輩に笑われてしまった。
「す、好きで何か悪いんですか!」
「……いや。嬉しい、ありがとう。とても可愛らしいと思っている」
「う、浮かれてるだけで、可愛くはないと思いますけどっ……」
「ふっ、そうか。浮かれてくれていたのか」
そんな話をしながら、街中を歩いていく。お月見するなら、団子とか用意するといいよって監督生が言ってました、と言うと、ならばあとで菓子屋にも寄るか、と先輩は言った。
「てか今日、泊まりですよね? へへっ、楽しみだな~」
今日の予定は、こうだ。まず昼間は麓の街でデートして、夕方に近くなってきたら学園に戻って泊まり用の荷物をとって、小さくて安いモーテルみたいなところを一泊分だけ借りつつ、近場の丘で月見をする。そんなに高いホテルやきっちりした旅館みたいな場所じゃなくて、本当に泊まるだけみたいな施設だけど、それでもたくさん一緒に過ごせることがすごく嬉しい。
「お前はいつも楽しそうだな」
シルバー先輩の言葉に、僕はびっくりする。思い当たる節しかないからだ。
「先輩と一緒にいられるって思うと、つい、楽しくて……」
「そうか。俺は、話もあまり上手くなく、表情も変わらない方だ。だから、そんなに喜んでくれているとは思わなかった。……ありがとう」
僕はこの言葉に、ちょっとムッとする。僕はそんなシルバー先輩と一緒にいられることを、心から楽しみにして、それでいて喜んでるんだぞ。そう思ったから、ちょっとそこらの店に入って、休憩ついでに、シルバー先輩に向けて、デートに誘われてから今までの話を伝えてみた。そしたら、なんか……すごく、笑われてしまった。
「そっ……、くくっ、そ、そう、だったのか……っ」
「あ、笑ってます!? 先輩笑ってますね!? 顔見せてくださいっ!!」
「い、いや……すまない、まさか、お前がそんなに今日のことを楽しみにしてくれていたとは……思っていなくて……」
お洒落までしてくれていたのに、気づかなくてすまなかったな、とても綺麗だぞとシルバー先輩は僕の頭を撫でる。
照れ隠しにアイスティーをストローで啜ると、先輩は愛おしそうな顔でこっちをほほ笑ましそうに見つめてきていた。……なんだよ、照れるだろ。
それで、僕たちはいろんなお店とか見て回って、欲しいと思ったものや、必要かなと思ったものの買い物を終える。そんなことをしているうちに夕方が近くなってきたので、いったん学園に戻って泊まり用の荷物を取りに行くことにした。
「すぐ戻ってきますね!」
「そんなに急がなくても大丈夫だ。俺は逃げない」
「早く先輩に会いたいので!」
「ふっ、そうか。なら俺も、少し急ぐとしよう」
そんなやり取りをしてから、荷物を取りに行く。部屋でくつろいでいたエースにお帰り~と言われたので、今からが本番だと返して、ついでだからと、先に街で買った土産を渡しておいた。普通帰ってから渡さねえ!? と言われたけど、いたから渡しただけだし、まあそんなのは今の僕にはどうだっていいことだ。
それで、なんかいろいろ言ってるエースを放ってまた急いで学園の門へ戻ると、シルバー先輩もなんだか申し訳なさそうな顔で戻ってきていた。
「どうしたんですか? しょげてますけど……」
「危うく、居眠りしそうになった。偶然セベクがやってきて、叩き起こしてくれたが……。お前を待たせてしまい、この逢引きも台無しにしてしまうところだった」
「そうだったんですね! でも、来なかったら迎えに行ってたから大丈夫ですよ!」
「ふっ、そうか」
じゃあさっそく移動しましょう、と宿泊予定のモーテルへ向かう。着いてすぐに受付を済ませて、部屋に荷物を運び入れた。
「日沈み始めてきたとはいえ、まだ月は昇ってないですね。その辺でメシにしますか?」
「そうだな。何が食べたい?」
「えーっと……」
なんにしようか。あとで月見用の団子とかも食べるし、軽くサッと食べられて、それなりに腹持ちがいいけど、あとでまた何か食べられるくらいの軽いものがいいよな。で、僕らの好物、キノコや卵が入ってるものだとなおいいんだけど……。あ、そうだ。それなら!
「パスタ! パスタにしましょう!」
「パスタだな、分かった」
それで僕らは、近くのパスタ屋さんに入って、それぞれ好みのソースを頼む。僕は少しだけチリの入ったカルボミートのパスタを、先輩はマッシュルームがたくさん入ったトマトとツナのパスタを頼んでいた。
「パスタはたくさんソースの種類があって、迷いますよね。どれもおいしそうで、コンプリートしたくなるんですけど、その前に季節が変わって、メニューが変わっちまって。それに結局、季節限定のメニュー選ばないで、定番のお気に入りのやつを頼んだりなんかしちゃったりして」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
先輩と他愛ない話をしながら、パスタに舌鼓を打つ。先輩は、優しい人だから、僕のどんな話でも興味深そうに聞いてくれる。一度、なんで僕の話なんでも聞いてくれるんですか、って聞いたら、お前が俺のいない間、どんな暮らしを送っているのか知れることはとても嬉しいからだ、って言ってくれて。なんでも報告してくれ、って言われたから、先輩にはついついなんでも話してる。良いことも、悪いことも、悲しいことも、嬉しかったことも、大好きなことも、全部、全部だ。
でも、できたら良いことの方をたくさん報告したいから、良いことの方が増えるようにって、毎日頑張ってもいるんだ。ま、まあ結果が伴っているとは言い切れないけど……。それでも! 僕なりには頑張ったつもりだってことだけでも伝えると、始めのうちは結果が伴っていなくとも、まずは自分に胸を張れるように頑張るのは、とてもいいことだって褒めてくれるから。だから、僕は毎日また頑張れる。大好きなシルバー先輩のお陰で。
なんてことを考えながらパスタをもぐもぐ食べていたら、先輩が、ほっぺにソースがついてるぞ、って、親指で拭ってくれた。それで、考えごとか? って聞かれた。これは、分かりにくいけど、心配してくれてるんだ。僕がご飯中も考えごとしなきゃいけないくらい、不安なことや心配なことがあるんじゃないのか、って。
だから僕は、笑って答える。先輩のこと、やっぱり大好きだなってつい考えちゃってたんです、って。そしたら、食事のときくらいは俺のことを考えていなくてもいい、って、額をつん、ってされた。怒られちゃったのかと思ったけど、顔を隠しながら、夜の景色が映る窓の方を見ていたから、たぶん、これは照れてるだけだな、って思った。へへっ。先輩も、僕のこと好きでいてくれるんだ。嬉しいな。
なんで僕、今こんなに先輩のこと好きなんだろう。好きでいられるって気持ちが嬉しくて、楽しくて、爆発しそうだ。
温玉に絡めたカルボミートをもぐもぐ飲み込んで、ごちそうさまでした、って手を合わせる。先輩も、ごちそうさま、と合わせてくれて、おいしかったか、って聞くから、すっごく! って言ったら、それは良かった、って笑ってくれた。
なんでもないことだよな。これってただのなんでもない、誰とでもする会話なんだ。そのなんでもない話を、シルバー先輩とできるのがすっごく嬉しい!
嬉しくなってぴょこぴょこって店の外に出て歩いてたら、落ち着け、ってシルバー先輩から笑われてしまった。
「何がそんなに楽しいんだ?」
「シルバー先輩と一緒にいっぱい居られるのが、なんかすごく楽しくて、嬉しいんです!」
「……そうか」
シルバー先輩は、夜の道で立ち止まる。街灯と街灯の間の、ちょうど暗くなっているところに立っていて、その表情は見えづらい。
「先輩?」
僕が駆け寄ろうとすると、シルバー先輩は申し訳なさそうに言った。
「……すまない。本当はお前とも、もっとたくさん、一緒にいてやれればいいのだろうな」
こんな風に時間を取ってやれるのは、本当にたまにのことだから、お前はこんなにも喜んでみせてくれているのだろう、と。
……まったく、変なところで後ろ向きな人だな。僕は先輩と一緒にいられてただ嬉しいって、それだけなのに。
「先輩」
「なんだ?」
「言っとくけど、僕は毎日シルバー先輩に会って、一緒にいられても、なんなら一緒に住んだりしたって、同じように喜びますよ。朝からおはようって言ったら、あ、シルバー先輩に会えた! って」
「そ、うなのか?」
先輩の手を、正面からぎゅっと握って、顔真っ赤にして、それでも言うんだ。初めて告白したときと同じくらい、いつだってドキドキしてる。今も。
「そうですよ! ……僕は、世界で一番、シルバー先輩のこと、格好良くて最高の恋人だって思ってるんです!! だから、嬉しいんだって。……会える日が少ないからとか、僕のこと見てくれるのは珍しいからとか、そんなことじゃない。僕は、先輩に一目会うだけで、いつだって、大好きになって、めちゃくちゃに嬉しいんです!!」
なんかもう、自分が何を言ってるのかもわかんないけど、それでも伝われって、先輩の手をぎゅっと握ってたら、そしたら、先輩が、うつむいて、言うんだ。
「……すごい殺し文句だな……」
「へっ!? そ、そうですか!?」
「……ああ。すまない。お前の気持ちを、変に穿った目で見てしまったようだ」
シルバー先輩は顔を上げる。白い街灯に照らされたはずのその顔は、赤く染まっていて。それでも、僕をまっすぐに見据え返してくれて。
「月を見よう、デュース。お前と2人で、月を見たい」
「……はいっ! もちろん、喜んで!!」
何度だって僕は、先輩の言葉にうなずくんだ。
それから。モーテルの近くの、海の見える丘で、ガゼボを見つけた。こんな時間だから誰もいないしちょうどいいなって、そこに昼間、麓の街で買ってきた団子なんかを広げて、海に浮かぶ月を見ることにした。
「なんか、ゆらゆらしてますね」
「ゆらゆら? ……ああ、海に映った月か。確かに、波に揺れているように見えるな」
綺麗だなーって月を眺める。月を大人しく見てる、なんてしっとりした雰囲気はあまり僕には似合わないかもなあ、なんて思ったけど、別にいっか、って思うんだ。だって、僕にそれが似合わなくても、似合ってても、隣にシルバー先輩はいてくれるだろ。なら、別にいいんだ。
綺麗な月があれば、静かな波の音があれば、より嬉しいのかもしれないけど、なくても嬉しくないわけじゃないんだ。先輩が隣にいてくれるってだけでさ。
そんなこと考えながら、じーって月を見てる。月の影がウサギみたいに見えて、地元の街で、ホワイトラビットフェスに行ったことを思い出した。あの頃は、まだ先輩と付き合ってなかったな。まだ、こんなに大好きになれること、分かってなかったな。
――告白したのは、僕からだ。ひょんなことだった。学園裏の森で、ウサギと一緒に寝てる先輩の顔見てたら、ああ、好きだな、って思ってしまって、その寝顔に、ね、僕、先輩のことが大好きで、好きでしょうがないみたいなんですって伝えたら、先輩が、赤い顔で起きてきて。
あ、やべ、って思ってたら、少しだけ、考えさせてくれ、って言われて。はい、って答えたら、次の日に、お前のことが頭から離れなくて、可愛くてしょうがなくなった、どうしてくれる、って言われて。それで、お付き合い始めたんだ。
それからはずっと、大事にしてくれて。可愛いとか、綺麗だとか、言われ慣れて。……ごめん嘘だ! 全然言われ慣れてない。先輩に褒められる度にドキドキするし、素直に受け止めると、先輩にそう思われてるってことが嬉しすぎるから、ついつい可愛くないです、って素直じゃないこと言っちまう! 別に可愛いと思われたいわけじゃないが、思われないよりはいいかもしれないっていうか、とにかく先輩からの好意的な感情ならなんでもよくなってきてるっていうか……。僕、おかしいかな? なんでこんなに先輩のこと、大好きなんだろうな。でも、悪くないよな。なんて。
そんなこと考えてたら、シルバー先輩の視線に気づいた。
「どうしたんですか?」
「……いや。なんでも、ない」
なんでもないのかあ、そっか。なんて、思ったんだけど。でも、先輩は、少しだけ顔を隠して、やっぱり言おうって意を決したみたいで。
「すまない、嘘をついた。なんでもない、のではなくて……綺麗だと思って、見ていた。お前の横顔を」
「へっ!?」
「……お前はいつも、言葉にしてくれるから。俺が返さないのは、不平等だと思った」
そう言って、先輩はやっぱり照れくさそうに、口元と赤く染まった頬を手で隠しながら、そっぽを向いてしまうんだ。僕は言いたくて言ってるだけだから、先輩は気にすることなんかないのに、でも、なんていうか、やっぱりほら……めちゃくちゃ嬉しい!
「せ、先輩は、綺麗な僕、好きですか?」
「……好きだ」
「なら……めちゃくちゃ嬉しいです! ありがとうございます!!」
「ああ」
やっぱり、先輩はすごい。シルバー先輩は、確かに口数は少ないけど、その少ない言葉で、僕をこんなにも嬉しくさせちまう。もうこれ、魔法だよな。魔法だってホント! じゃなきゃ、僕がこんなに嬉しいことってあるか?
「だ、団子食べましょうか! そろそろ!」
「そ、そうだな」
なんだか気恥ずかしくなって、団子のパックを開ける。とろりとしたみたらしのソースに、パリパリの海苔を巻き付けて食べる。うん、おいしい。
「うまい!」
「……ああ、甘いな」
まるでお前みたいだ、とシルバー先輩は言う。
「ど、どうしたんですか、今日……」
いつもそんなこと言わないじゃないですか、って言ったら、先輩は笑って言う。
「そうだな。当てられてしまったのかもしれない。……お前があまりにもはしゃいでくれるから」
素直になりたくなったんだ、とシルバー先輩は言った。す、素直に、って。それって、普段から、言わないだけで思ってくれてはいるってことじゃないか?
「……先輩、好き」
「ああ。俺も、だ」
あんまり嬉しいから、顔を覆っていると、先輩の手が、僕の頬に触れてきて、くい、って上を向かせた。
「あ……」
ドキドキと鳴る胸と、期待の中、優しくほほ笑むシルバー先輩の顔を見つめてから、目を閉じる。
月明かりのシルエットに、僕たちの影が重なったような気がした。
*おしまい
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